犬を迎えて、最初に取り組むことになるのがトイレトレーニングです。
何度教えても覚えないと悩む方は多いのですが、実はやり方の順番に原因があることがほとんどです。
トイレトレーニングは「教える」作業ではありません。
「失敗させない環境をつくり、成功を積み上げていく」作業です。この発想に立てば、やるべきことははっきりします。
結論
トイレトレーニングは失敗させない環境をつくることから始まります。行動範囲を狭くし、寝起き・食後に先回りして連れて行き、成功したその場で褒める——この3つだけです。できるようになったら少しずつ範囲を広げていきます。
この記事でわかること
- ✓トレーニングの全体像
- ✓準備|置き場所とサイズを決める
- ✓先回りして連れて行く
- ✓成功したその場で褒める
- ✓少しずつ範囲を広げる
トレーニングの全体像

最初に全体の流れをつかんでおきましょう。
多くの方が失敗するのはいきなり家中を自由にさせながら教えようとするからです。これは難易度が非常に高いやり方で、失敗する機会ばかりが増えて成功体験が積めません。
| 段階 | やること | 次へ進む条件 |
|---|---|---|
| 1 | 行動範囲を狭くする | 失敗できない状態にする |
| 2 | 先回りして連れて行く | 成功する回数を増やす |
| 3 | 成功したその場で褒める | 1〜2秒以内に |
| 4 | 少しずつ範囲を広げる | 数日連続で成功したら |
| 5 | 失敗が出たら、また狭める | 戻ることは失敗ではない |
| 6 | 家全体へ | 焦らず数週間〜数か月 |
この流れで重要なのが「戻ることを前提にしておく」ことです。
範囲を広げて失敗が出たらまた狭めればいいだけです。後戻りは失敗ではなく、計画のうちだと考えてください。
どれくらいで覚えるのか
見通しを持っておくことも大切です。
個体差が非常に大きいため断定はできませんが、数週間から数か月かかるのが一般的だと考えておいてください。
- 子犬は膀胱が小さく、我慢が効かない
- 月齢が上がるにつれて間隔が伸びる
- 生後3〜4か月頃から安定しはじめることが多い
- 完全に失敗がなくなるまでは時間がかかる
- 成犬・保護犬でも、やり直しは可能
- 焦るほど、うまくいかなくなる
「今週中に覚えさせる」といった目標は現実的ではありません。
成功の回数が少しずつ増えていく——この見方で進めてください。
準備|置き場所とサイズを決める
トレーニングを始める前に環境を整えます。
ここを間違えるとどれだけ丁寧に教えてもうまくいきません。
置き場所|寝床と食器から離す
犬には寝床や食事の場所では排泄したくないという性質があります。
トイレが寝床のすぐ隣にあると、犬はそこを避けて別の場所を探しに行きます。
| 条件 | 評価 |
|---|---|
| 寝床から離れている | 良い |
| 食器から離れている | 良い |
| 静かで落ち着ける | 良い |
| 人の通り道 | 落ち着いて排泄できない |
| 寝床のすぐ隣 | 避けてしまう |
| ドアの前・玄関 | 人の出入りで落ち着かない |
| 行くまでに段差やドアがある | 間に合わない |
見落とされやすいのが「行くまでの経路」です。
段差がある、ドアが閉まっている、遠い——こうした条件があると間に合わずに失敗します。
特に子犬は我慢が効きません。いる場所のすぐ近くに置いてください。
配置の考え方は犬の寝床とトイレは離して置くで詳しく解説しています。
サイズ|思っているより大きく
シートの端でしてしまう、はみ出す——
これはサイズが小さいというサインです。
犬は排泄前にくるくる回ることがあります。回れないほど狭いとそもそも使いにくいのです。
- 方向転換できる広さが必要
- 体長の1.5〜2倍程度が目安
- ワイドサイズやシートを複数枚並べる
- 足がはみ出す=狭い
- まず大きくしてみると解決することが多い
- 覚えてきたら、少しずつ小さくしてもよい
最初は大きく、後から小さく——この順番が失敗を減らします。
紛らわしい物を、床に置かない
意外に重要なのが床の状態です。
足の裏の感触で排泄する場所を判断している面があるため、シートに似た物があると混乱します。
| 紛らわしい物 | 起きること |
|---|---|
| バスマット・足ふきマット | トイレだと認識してしまう |
| ラグ・カーペット | やわらかい感触が似ている |
| 床に置いた洗濯物 | そこで覚えてしまう |
| 新聞紙・チラシ | シートに似ている |
| タオル類 | 一度成功すると、狙われ続ける |
覚えるまでは、床に布類を置かない——
これだけで失敗が大きく減ります。ラグやマットは一時的に撤去し、できるようになってから戻してください。
先回りして連れて行く

犬が知らせるのを待つのではなくこちらから先回りする——これが基本です。
知らせてから連れて行くのでは間に合いません。
| タイミング | 目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 寝起き | 起きた直後は必ず | 寝ている間にたまっている |
| 食後 | 15〜30分後 | 食べると腸が動く |
| 水を飲んだあと | しばらくして | — |
| 遊んだあと | 興奮のあとは出やすい | — |
| 床を嗅ぎながら歩き回る | すぐ | 場所を探している |
| くるくる回りはじめた | 急いで | 直前のサイン |
| 子犬の場合 | 1〜2時間ごとにも | 我慢が効かない |
直前のサインを覚える
犬は排泄の前に分かりやすい動きを見せることがあります。
- 床のにおいをしきりに嗅ぎながら歩く
- そわそわして落ち着かない
- 急に遊びをやめる
- 部屋の隅へ向かう
- くるくる回りはじめる
- しゃがむ姿勢を取りかける
床を嗅ぎながら歩き回るのは場所を探しているサインです。
ここで連れて行けば、ほぼ成功します。
くるくる回りはじめたらもう直前なので急いでください。
連れて行くときは、抱っこでもよい
自分で歩いて行かせることにこだわる必要はありません。
間に合わないほうが問題です。
最初のうちは抱っこで運んでも構いません。そこで成功する経験を積むことが先決です。
できるようになってきたら誘導して自分で歩かせる——この順番で進めてください。
成功したその場で褒める
トイレトレーニングで唯一の「教える」部分がここです。
正しい場所でできた瞬間に褒める——これに尽きます。
| やること | ポイント |
|---|---|
| 排泄が終わった直後に褒める | 1〜2秒以内に |
| おやつを与える | すぐ出せる状態にしておく |
| 静かな声で褒める | 大声だと驚いて中断する |
| 途中で声をかけない | 気が散って中断する |
| 毎回褒める | 慣れてきたらたまにでよい |
| 家族全員で同じ対応をする | 基準をそろえる |
途中で声をかけないのが、意外に重要
「いいこ、いいこ」と排泄の最中に声をかけたくなりますが——
驚いて中断してしまうことがあります。
中断すると残りを別の場所ですることになりかねません。
終わってから、静かに褒める——この順番を守ってください。
褒めるときも興奮させないことが大切です。高い声で騒ぐと跳ね回ってしまい、落ち着いて排泄できる場所という印象が薄れてしまいます。
「合図」を教えておくと役に立つ
余裕があれば排泄と言葉を結びつけておくと後々とても役立ちます。
- 排泄しはじめたら、決まった言葉をかける
- 「ワンツー」など、短い言葉でよい
- 終わったら褒めておやつ
- 数週間続けると、合図で出せるようになる
- 旅行先・災害時・動物病院で役立つ
- 雨の日に素早く済ませたいときにも便利
指示で排泄できるという状態は生涯にわたって役立ちます。
覚えてきた段階で取り入れてみてください。
少しずつ範囲を広げる

狭い範囲で確実に成功するようになったら、少しずつ広げていきます。
| 段階 | 行動範囲 | 進む条件 |
|---|---|---|
| 1 | サークル内(トイレと寝床のみ) | 数日連続で成功 |
| 2 | サークル+その周辺 | 失敗が出ない |
| 3 | 1部屋 | 数日連続で成功 |
| 4 | 隣の部屋も | 失敗が出ない |
| 5 | 家全体 | 焦らず進める |
| — | 失敗が出たら、前の段階へ | 戻ることは計画のうち |
広げて失敗が出たら、また狭める——
これを繰り返しながら成功の割合を保ったまま進めていくのがコツです。
目を離すときは、狭い範囲に戻す
見ていられないときは範囲を狭くしておくことも有効です。
- 家事で目を離すとき
- 来客があるとき
- 在宅ワーク中で集中したいとき
- 留守番のとき
- 夜、寝ている間
見ていられない時間に失敗されるとにおいが残り、そこが定着してしまうことがあります。
失敗を減らすことが、覚えるまでの近道です。
失敗したときの対応

失敗は必ず起きます。
大切なのはそのときの対応です。
| やってはいけないこと | 起きること |
|---|---|
| 叱る | 隠れて排泄するようになる |
| 現場に連れて行って叱る | その場所が怖くなるだけ |
| 犬の前であわてて片づける | 遊びだと誤解させる |
| ため息をつく・不機嫌になる | 犬は察知して不安になる |
| においを残したまま拭くだけ | 同じ場所で繰り返す |
⚠ 叱ると「隠れてする」ようになります
失敗を叱ると、犬は「排泄しているところを見られると怒られる」と学習することがあります。
場所が間違っていたことまでは伝わらないため、排泄という行為そのものが問題だと受け取られてしまうのです。
結果としてソファの裏やカーテンの陰でするようになったり、散歩中も人前でできなくなったりします。
さらに尿の色や量の変化に気づけなくなるという健康管理上の問題も生じます。
掃除は、においを残さない
失敗したときにやるべきことは掃除だけです。
ただしにおいを残さないことが重要になります。
- すぐに拭き取る(時間が経つほど残る)
- ペット用の消臭剤を使う
- アンモニア臭のする洗剤は避ける
- 犬の見ていない場所で片づける
- カーペットは繊維の奥まで念入りに
- 下地まで染みたら交換も検討する
犬の嗅覚は非常に鋭く、人が気づかないにおいも分かるとされています。
毎回同じ場所で失敗するならにおいが残っている可能性が高いといえます。
失敗が続くときの原因の切り分けは犬のトイレが覚えられない5つの原因で詳しく解説しています。
成犬・保護犬でも、やり直せる
「もう成犬だから手遅れ」と考える必要はありません。
手順は子犬とまったく同じです。
| 条件 | 進め方 |
|---|---|
| 成犬 | 子犬と同じ手順。集中力がある分、早いことも |
| 保護犬 | まず環境に慣れる時間を優先する |
| 外でしか排泄しない犬 | 指示と結びつけてから室内へ |
| シニア犬 | トイレを増やす。我慢が効かない |
| 急に失敗が増えた | まず体調を疑う |
保護犬の場合はまず環境に慣れることが優先されます。
不安な状態では学習が成立しません。数週間かけて落ち着いてから取り組むほうが、結果的に早く進みます。
急に失敗が増えたら、体を疑う
できていたのに、急にできなくなった——
この場合は体の問題を疑ってください。
- 回数が急に増えた
- 水をたくさん飲むようになった
- 排泄のときに鳴く・痛がる
- 尿の色が濃い・血が混じる
- 少量を何度もする
- 寝ている間に漏れる
これらの変化があれば受診を検討してください。
しつけの問題として扱い続けると発見が遅れます。
夜間と留守番のあいだは、どうするか
見ていられない時間をどう扱うかも重要です。
夜間と留守番中は範囲を狭くしておくのが基本になります。
| 場面 | やること |
|---|---|
| 夜間 | サークル内で過ごさせる |
| 留守番中 | トイレのある範囲に限定する |
| 子犬の夜 | 途中で起きて連れて行くことも |
| 長時間の留守番 | トイレを複数置く |
| 帰宅直後 | まずトイレへ連れて行く |
子犬は夜通し我慢できないことがあります。
最初のうちは夜中に一度起きて連れて行くことが必要になるかもしれません。
月齢が上がるにつれて間隔は伸びていきますので、この時期だけのことだと考えてください。
また帰宅直後はまずトイレへ連れて行ってください。
喜んで飛びついてくるのに応じていると、その間に失敗することがあります。
うまくいかないときに、確認すること
順調に進まないとき、次の点を確認してみてください。
| 確認項目 | 見るところ |
|---|---|
| 行動範囲 | 広すぎないか |
| トイレのサイズ | 方向転換できる広さか |
| 置き場所 | 寝床や食器に近すぎないか |
| 連れて行く回数 | 足りているか |
| 掃除 | においが残っていないか |
| 床の状態 | 紛らわしい布類がないか |
| 褒めるタイミング | 1〜2秒以内か |
| 家族の対応 | 統一されているか |
多くの場合「行動範囲が広すぎる」か「連れて行く回数が足りない」のどちらかです。
いったん範囲を狭めて、回数を増やす——
これで改善することが非常に多くあります。
遠回りに見えて、これがいちばん早い方法です。
よくある質問
Q. トイレはどれくらいで覚えますか?
A. 数週間から数か月が一般的です。個体差が非常に大きく、子犬は膀胱が小さく我慢が効きません。「今週中に」といった目標は現実的ではなく、成功の回数が増えていくという見方で進めてください。
Q. いちばん最初にやるべきことは何ですか?
A. 行動範囲を狭くすることです。広い家で自由にさせながら教えるのは難易度が高く、失敗する機会ばかり増えて成功体験が積めません。サークルなどで範囲を限定してください。
Q. いつ連れて行けばいいですか?
A. 寝起き・食後15〜30分・遊んだあとが基本です。また床を嗅ぎながら歩き回るのは場所を探しているサイン。ここで連れて行けばほぼ成功します。
Q. シートの端でしてしまいます。
A. サイズが小さい可能性が高いです。犬は排泄前にくるくる回ることがあり、方向転換できる広さが必要です。体長の1.5〜2倍程度を目安に大きくしてみてください。
Q. 失敗したら叱るべきですか?
A. 叱らないでください。「排泄しているところを見られると怒られる」と学習し、隠れてするようになります。尿の色や量の変化にも気づけなくなり、健康管理の面でも不利になります。
Q. バスマットの上でしてしまいます。
A. 覚えるまでは床に布類を置かないでください。足の裏の感触が似ているため、トイレだと認識してしまうことがあります。ラグやマットは一時的に撤去し、できてから戻しましょう。
Q. 成犬から始めても間に合いますか?
A. 間に合います。手順は子犬とまったく同じです。むしろ成犬のほうが集中力があり、早く進むこともあります。保護犬の場合は、まず環境に慣れる時間を優先してください。
まとめ|教えるのではなく、成功させる
トイレトレーニングは「教える」作業ではありません。
失敗させない環境をつくり、成功を積み上げていく作業です。
やることは3つだけ。行動範囲を狭くする。寝起き・食後に先回りして連れて行く。成功したその場で褒める。
そしてできたら少しずつ広げ、失敗が出たらまた狭める——後戻りは失敗ではなく、計画のうちです。
うまくいかないときは範囲が広すぎるか、回数が足りないことがほとんど。いったん狭めて、回数を増やす——遠回りに見えて、これがいちばん早い方法です。
今日から試してみたい3つのこと
- 1行動範囲をいったん狭くして、失敗できない状態にする
- 2寝起きと食後15〜30分に、こちらから連れて行く
- 3覚えるまで、床のラグやマットを片づけておく
トイレの成否は、犬の能力ではなく環境で決まります。失敗させないことが、いちばんの近道です。
