

こんばんは。
今回「犬猫の悩みを即解決!」が自信を持ってお届けする記事は「犬のナルコレプシー|楽しいときにだけ、崩れ落ちるなら」です。ではどうぞ!
ごはんを出したとたん——
遊んでいて盛り上がったとたん——
帰ってきた飼い主に駆け寄ったとたん——
ふっと力が抜けて崩れ落ちる——
そして、数秒から数分で何事もなかったように起き上がる——
そういうことが起きているなら
ナルコレプシーという病気があります。
この病気のいちばんの特徴は
楽しいときにだけ起きるということです。
そして、もうひとつ——
けいれんとは違います。
その違いを知っておくことがこの記事の目的です。
結論
犬のナルコレプシーは突然強い眠気に襲われる睡眠発作を特徴とする睡眠障害です。カタプレキシー発作を起こした犬は首がだらりと垂れ下がり、床に突っ伏したまま数秒〜数分間動かなくなります。犬においては食べ物、遊び、飼い主、仲良しの犬との遭遇など主としてポジティブな感情の高まりが引き金になります。摂食や睡眠といった生理作用に関与する脳内のオレキシン受容体に起こる変異が発症原因の一つであると報告されており、ドーベルマン犬ではHCRTR2遺伝子のSINE挿入が関連していることが発見されています。症状は通常、生後4週目から6か月目の間に現れます。
この記事でわかること
- ✓楽しいときに、崩れ落ちます
- ✓けいれんとは、はっきり違います
- ✓脳のなかで、何が起きているのか
- ✓生後4週から6か月の間に現れます
- ✓動画を撮ってください
- ✓命に関わる病気ではありません
- ✓暮らしのなかで、できること
楽しいときに、崩れ落ちます

この病気をほかと分けるのがこの点です。
犬においては食べ物、遊び、飼い主、仲良しの犬との遭遇など
主としてポジティブな感情の高まりが引き金になります。
| 場面 | 起きること |
|---|---|
| ごはんを出す | 喜んだところで、崩れる |
| 遊びが盛り上がる | 興奮したところで、力が抜ける |
| 飼い主が帰ってくる | 駆け寄ったところで、倒れる |
| 仲良しの犬に会う | うれしくなったところで、動けなくなる |
| おやつを見せる | 期待が高まったところで、起きる |
| 共通点 | どれも、うれしい場面である |
これは、とても不思議な特徴です。
ふつう、体調を崩すのは負担がかかったとき——
けれど、この病気では逆なのです。
だから、飼い主は戸惑います。
喜ばせてはいけない、ということではありません
「うれしいと倒れる」と知ると
喜ばせることをためらってしまいます。
けれど、それは違います。
発作そのもので命に関わることはありません。
大事なのは「場所」——
危ない場所で興奮させないように気をつける——
そこだけ整えれば楽しく過ごせます。
けいれんとは、はっきり違います

「倒れる」という見た目から
てんかんと思われることがあります。
けれど、この2つはいくつもの点で違います。
| ナルコレプシー | てんかん発作 | |
|---|---|---|
| 体の様子 | 力が抜ける(脱力) | 硬直する、けいれんする |
| 意識 | 保たれていることが多い | 失われることが多い |
| 失禁 | しない | することがある |
| 引き金 | 楽しい場面で起きる | とくに決まっていないことも |
| そのあと | すぐいつも通りに戻る | しばらくぼんやりする |
| 時間 | 数秒〜数分 | 数十秒〜数分 |
とくに分かりやすいのが「そのあと」です。
ナルコレプシーなら終わったとたんに何事もなかったように起き上がります。
けれど、てんかん発作のあとには
ふらついたりぼんやりしたりする時間があります。
そして、「楽しいときにだけ」という引き金——
これがいちばん強い手がかりです。
名前を呼んでみてください
倒れているあいだにできる確かめ方があります。
名前を呼んでみる——
- 耳が動く、目で追う、しっぽが動く
- そういう反応があれば、意識がある
- まったく反応がなければ、別の可能性も
- 強く揺すったりはしない
- 声をかけるだけでよい
- その反応を、受診のときに伝える
ナルコレプシーでは体は動かせなくても
周りのことは分かっていることがあります。
目がこちらを追っている——
そういう様子が見られたならそれは大きな情報です。
できれば、その場面も動画に残してください。
脳のなかで、何が起きているのか

摂食や睡眠といった生理作用に関与する脳内のオレキシン受容体に起こる変異が
発症原因の一つであると報告されています。
オレキシンとは目を覚ましている状態を保つことに関わる物質です。
- 眠りと目覚めの切り替えに関わっている
- その受け手(受容体)に変異が起きる
- 切り替えが、うまくいかなくなる
- 起きているのに、眠りの状態が割り込む
- 体の力が抜けるのは、眠っているときと同じ状態
- だから、突然崩れ落ちる
眠っているとき体の力は抜けています。
それが、起きているときに割り込んでくる——
そう考えると「首がだらりと垂れ下がる」という様子も納得できます。
カタプレキシー発作を起こした犬は首がだらりと垂れ下がり床に突っ伏したまま数秒〜数分間動かなくなります。
そして、この病気は遺伝性の病気だとされています。
ドーベルマン犬ではHCRTR2遺伝子のSINE挿入が関連していることが発見されました。
なぜ、楽しいときなのか
「うれしいと力が抜ける」——
不思議に思われるかもしれません。
| 段階 | 起きていること |
|---|---|
| 感情が高ぶる | 脳が、強く働く場面になる |
| 切り替えが乱れる | 目覚めを保つ仕組みが働ききらない |
| 眠りの状態が割り込む | 体の力を抜く働きが、突然入る |
| 結果 | 起きているのに、体だけ眠った状態になる |
| だから | 意識はあるのに、動けない |
| そして | 数秒〜数分で、元に戻る |
眠っているときに体の力が抜けているのは意味のあることです。
夢を見ているあいだに体が動き出さないようにしてくれています。
その仕組みが起きているときに割り込む——
そう考えるとこの病気の姿が見えてきます。
生後4週から6か月の間に現れます
症状は通常生後4週目から6か月目の間に現れます。
つまり、子犬のころ——
迎えてまもない時期に気づかれることが多くなります。
| こんなとき | 考えること |
|---|---|
| 子犬が、遊びの途中で寝てしまう | ふつうの子犬でも、よくあること |
| けれど、崩れ落ちる | 眠るのとは、動きが違う |
| 首がだらりと垂れる | 脱力している |
| いつも楽しい場面で起きる | 引き金が決まっている |
| 何度も繰り返す | 記録してほしい |
| そのうえで | 動画を持って受診する |
子犬はよく眠ります。
遊んでいる途中で電池が切れたように寝てしまう——
これ自体はめずらしいことではありません。
けれど、「崩れ落ちる」という動きは違います。
横になって眠るのではなく
その場で力が抜けて突っ伏す——
そこを見ておいてください。
好発犬種について
この病気は遺伝性の病気とされており
犬種によっては原因となる遺伝子が特定されているものもあります。
| こんなとき | 考えること |
|---|---|
| 好発犬種である | 疑う理由のひとつになる |
| 血縁に同じ症状 | 大きな手がかり。伝えてほしい |
| 兄弟にも起きている | 迎えた先に確かめる価値がある |
| 遺伝子検査 | 犬種によっては、調べられることがある |
| 繁殖を考えるなら | あらかじめ相談する |
| いずれも | 飼い方で防げるものではない |
「うちの子だけおかしいのでは」と心配されるかもしれません。
そうではありません。
生まれつきの仕組みの違い——
そして、多くの場合うまく付き合っていけるものです。
動画を撮ってください
この病気でいちばん役に立つものは動画です。
理由は単純です。
診察室で起きてくれることがほとんどないからです。
- 発作は、楽しい場面で起きる
- 診察室は、楽しい場所ではない
- だから、その場では見せられない
- 言葉で説明しても、伝わりにくい
- 動画があれば、一目で分かる
- スマートフォンで撮れば、じゅうぶん
撮っておいてほしいのは発作のそのものだけではありません。
| 撮っておきたいこと | なぜ |
|---|---|
| 直前の様子 | 何が引き金になったか分かる |
| 倒れ方 | 脱力か、硬直かが分かる |
| 倒れているあいだ | けいれんの有無が分かる |
| 名前を呼んでみる | 意識があるかどうかの手がかりに |
| 起き上がるところ | そのあとの様子が分かる |
| 時間 | どのくらい続いたか |
あわててしまうかもしれませんが
数秒でも撮れれば大きな情報になります。
そして、そのあとに日付ときっかけをメモしておいてください。
「撮っている場合か」と思われるかもしれません。
けれど、この病気では数秒で終わります。
抱き上げたり揺すったりする必要はありません。
危ない場所でないのなら
撮ることがいちばん役に立つ行動です。
命に関わる病気ではありません

ここは、はっきり伝えておきます。
発作そのもので命を落とすような病気ではありません。
数秒から数分で戻ってきます。
けれど、気をつけたいことがひとつ——
倒れる場所です。
- 階段の上で起きれば、落ちてしまう
- 水のそばで起きれば、危ない
- 道路の近くなら、事故につながる
- 高い場所からの落下も、気をつけたい
- だから、興奮する場所を選ぶ
- 危ない場所では、リードを離さない
「楽しませない」のではなく
「安全な場所で楽しませる」——
そこを考えてあげてください。
生活のしづらさは、人にも出ます
この病気で困るのは犬だけではありません。
飼い主も気を張り続けます。
- 目を離せない、という気持ちが続く
- 楽しませることに、ためらいが出る
- 散歩や外出が、こわくなる
- ほかの人に説明しにくい
- 「どうしたの」と聞かれるのがつらい
- そういう気持ちも、相談してよい
「病気の説明」だけでなく
「どう暮らせばよいか」を聞くことも受診の目的になります。
そして、この病気は見た目が強烈です。
初めて見たときは誰でも驚きます。
けれど、何なのか分かっていると落ち着いて見ていられます。
それも、診断をつける意味です。
⚠ 水辺と階段には、とくに注意を
この病気で本当に危ないのは発作そのものではなく
倒れた場所です。
水のなかで力が抜ければそのまま沈みます。
階段の上なら落ちます。
どちらも「楽しくなりやすい場所」だというところがやっかいです。
柵を使うそばを離れない——
その備えで防げます。
暮らしのなかで、できること
この病気との付き合い方は「取り上げる」ことではありません。
整えることです。
| 場面 | 工夫 |
|---|---|
| 食事 | 落ち着いて食べられる場所と流れをつくる |
| 遊び | 安全な場所で。盛り上がりすぎたら休憩 |
| 帰宅時 | いきなり盛り上げず、落ち着いてから |
| ほかの犬と会う | 広く安全な場所で。リードは離さない |
| 階段 | 柵を設ける。そばで見ている |
| 水辺 | 近づけない、または必ずそばにいる |
そして、発作が起きたとき——
あわてて揺すったりしないでください。
数秒から数分で戻ってきます。
そのあいだはそばで見ていてあげる——
危ない場所なら安全なところへ移してあげる——
それでじゅうぶんです。
そして、戻ってきたらいつも通りに接してあげてください。
本人はけろりとしています。
🩺 どこまで対応するかは、程度によります
治療については症状の程度によって考え方が変わります。
頻度が少なく生活に困っていないなら
暮らしを整えるだけで過ごせることもあります。
けれど、回数が多い日常に支障が出ているなら
薬による対応を相談できることもあります。
「どのくらい困っているか」を伝えてください。
記録しておきたいこと
相談するときに数字があると話が早くなります。
- 週に何回くらい起きているか
- どんなときに起きるか(引き金)
- どのくらいの時間、続くか
- 増えているか、減っているか
- 危ない場面はあったか
- 生活に困っていることはあるか
「たまに倒れます」より
「週に3回くらいごはんのときに起きます」のほうが
ずっと伝わります。
そして、その記録は治療を始めたあとにも役に立ちます。
効いているかどうかを比べられるからです。
「なんとなく減った気がする」では
判断ができません。
数えていた記録があればはっきり比べられます。
カレンダーに印をつけるだけでじゅうぶんです。
よくある質問
Q. ナルコレプシーとは、どんな病気ですか?
A. 突然強い眠気に襲われる睡眠発作を特徴とする、睡眠障害です。発作を起こした犬は首がだらりと垂れ下がり、床に突っ伏したまま数秒〜数分間動かなくなります。
Q. どんなときに起きますか?
A. 楽しい場面です。食べ物、遊び、飼い主、仲良しの犬との遭遇など、主としてポジティブな感情の高まりが引き金になります。
Q. てんかんとの違いは何ですか?
A. 体の様子と、そのあとが違います。ナルコレプシーでは力が抜け(脱力)、けいれんせず、失禁もせず、終わればすぐいつも通りに戻ります。てんかん発作では硬直やけいれんがあり、終わったあともしばらくぼんやりすることがあります。
Q. 原因は何ですか?
A. 脳内のオレキシン受容体に起こる変異が、原因の一つと報告されています。オレキシンは、摂食や睡眠といった生理作用に関与する物質です。ドーベルマン犬では、HCRTR2遺伝子のSINE挿入が関連していることが発見されました。
Q. いつごろ症状が出ますか?
A. 通常、生後4週目から6か月目の間に現れます。迎えてまもない時期に気づかれることが多くなります。
Q. 遺伝しますか?
A. 遺伝性の病気とされています。犬種によっては、原因となる遺伝子が特定されているものもあります。
Q. 命に関わりますか?
A. 発作そのもので命を落とすような病気ではありません。ただし、階段の上や水のそばで起きれば危険になります。倒れる場所に気をつけてあげてください。
Q. 喜ばせないほうがよいのでしょうか?
A. その必要はありません。大事なのは場所です。危ない場所で興奮させないようにすれば、楽しく過ごすことができます。
Q. 倒れているとき、どうすればよいですか?
A. そばで見ていてあげてください。揺すったり抱き上げたりする必要はありません。数秒から数分で戻ってきます。危ない場所であれば、安全なところへ移してあげてください。
Q. 薬で治せますか?
A. 症状の程度によって、考え方が変わります。頻度が少なく生活に困っていないなら、暮らしを整えるだけで過ごせることもあります。回数が多く日常に支障が出ているなら、薬による対応を相談できることもあります。
Q. 受診のときに、何を持っていけばよいですか?
A. 動画です。発作は楽しい場面で起きるため、診察室では見せられません。直前の様子から起き上がるところまで撮れていると、大きな情報になります。
まとめ|次に起きたら、動画を撮ってください
この病気でいちばん大事なことは「けいれんではない」と分かることです。
楽しいときに起きている——
力が抜けて崩れ落ちる——
終わったらすぐいつも通り——
この3つがそろっているなら
この病気を考える理由があります。
そして、次に起きたとき——
動画を撮ってください。
その数秒がいちばん確かな情報になります。
そして、名前がつけば
この先は落ち着いて見ていられます。
それが、この病気でいちばん変わることです。
今日できる3つ
- 1次に起きたときのために、すぐ撮れる準備をしておく
- 2どんなときに起きているか、引き金を書き出してみる
- 3階段や水辺で、興奮させていないか見直す
楽しい時間まで、取り上げる必要はありません。安全な場所を選べば、それでいいのです。

本日の「犬猫の悩みを即解決!」の記事「犬のナルコレプシー|楽しいときにだけ、崩れ落ちるなら」でした。
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