

こんばんは。
今回「犬猫の悩みを即解決!」が自信を持ってお届けする記事は「犬の喉頭麻痺|声が変わったら、夏が来る前に相談してください」です。ではどうぞ!
吠え声が、以前と違う。
かすれたような、低くつぶれたような声になってきた——
そして、散歩のあとや興奮したあとにゼーゼーという音が聞こえるようになった——
「歳のせいだろう」と思われるかもしれません。
けれど、その2つがそろっているなら考えてほしい病気があります。
喉頭麻痺(こうとうまひ)です。
のどにある「ふた」が動かなくなる病気で中年齢以降の大型犬——とくにラブラドール・レトリーバーやゴールデン・レトリーバーに多く見られます。
そして、この病気でもっとも危険な季節が夏です。
結論
喉頭麻痺はのどの入口にある軟骨が動かなくなる病気です。息を吸うときに左右へ開くはずの部分が開かず、空気の通り道が狭いままになります。中年齢以降の大型犬——とくにラブラドール・レトリーバーやゴールデン・レトリーバーに多く、先天性のものは生後1年以内に発症することもあります。症状は、進行していく呼吸の喘鳴(ゼーゼー・ガーガー)、運動を嫌がるようになること、咳、えずき、嘔吐、そして声の変化です。激しい運動や暑い環境で症状が悪化するためそうした場面は避ける必要があります。手術(被裂軟骨側方化術)では90%の症例で呼吸の改善が認められると報告される一方、誤嚥性肺炎という合併症が10〜20%で起こるとされています。
この記事でわかること
- ✓のどの「ふた」が、動かなくなる
- ✓最初のサインは、声の変化
- ✓吸うときに鳴るのが、特徴です
- ✓夏が、いちばん危ない
- ✓手術という選択
- ✓誤嚥を防ぐ、日ごろの工夫
- ✓受診と、急ぐべきサイン
のどの「ふた」が、動かなくなる

喉頭はのどの奥、気管の入口にあります。
そして、2つの仕事をしています。
| 場面 | 本来の動き | 麻痺すると |
|---|---|---|
| 息を吸う | 左右へ開いて、空気を通す | 開かない。通り道が狭いまま |
| 飲み込む | 閉じて、気管にふたをする | 閉じきらない。むせやすくなる |
| 吠える | 声帯を震わせて、音を出す | 声がかすれる、変わる |
| 運動する | 大きく開いて、たくさん吸う | 吸えない。すぐ疲れる |
| 暑いとき | 開いて、熱い息を出す | 熱を逃がせない |
「開かない」と「閉じない」が同時に起こる——
これが、この病気のやっかいなところです。
息を吸おうとしても入口が狭いままで十分に吸えない。
そして、飲み込むときにはふたが効かないため水や食べ物が気管のほうへ入りやすくなる——
呼吸の問題と、誤嚥の問題が両方起きてくるのです。
原因は喉頭を動かす神経の働きが落ちることにあります。
- 加齢にともなう神経の変化が、もっとも多い
- 全身の神経や筋肉の病気の一部として起こることも
- 甲状腺の働きが落ちていることが背景にあることも
- 首の手術やけがのあとに起こることもある
- 先天性のものは、生後1年以内に現れる
- 片側だけのこともあれば、両側のこともある
最初のサインは、声の変化
この病気でいちばん早く現れる変化を書いておきます。
吠え声です。
声帯は、喉頭のなかにあります。
だから、喉頭の動きが悪くなれば声もいっしょに変わる——
かすれる、低くつぶれる、以前ほど響かない——
そうした変化は呼吸の音より先に出てくることがあります。
「歳のせい」で済ませないでください
声がかすれてきた——
人でも歳を重ねれば起こることですからそう受け取られやすいのは自然です。
けれど、犬の場合——
声の変化と、息を吸うときの音がそろっているならそれは喉頭を疑う理由になります。
そして、この病気は夏に急変します。気づくのが春のうちなら打てる手が多いのです。
そのほかの症状も挙げておきます。
- 散歩を嫌がる、途中で止まるようになった
- 少し歩いただけで、息が上がる
- 咳やえずきが増えた
- 水を飲んだあとに、むせる
- 寝ているときの呼吸音が大きくなった
- 興奮すると、呼吸が苦しそうになる
「運動を嫌がるようになった」——
これも「歳のせい」にされやすい変化です。
けれど、本人にとっては「動くと息が吸えない」から止まっている——
そういうことがあるのです。
「散歩に行きたがらなくなった」という変化は足腰の衰えと受け取られがちです。
けれど、歩き出しは元気なのに途中で止まる、座り込む——
そういう止まり方なら呼吸のほうを疑う理由があります。
足が痛い犬は最初から歩き方がおかしいものです。
一方、息が吸えない犬は動き始めてしばらくしてからつらくなります。
「どこで止まるか」を見ておいてください。
吸うときに鳴るのが、特徴です

のどが鳴るという症状はいくつもの病気で起こります。
見分けの手がかりが「いつ鳴るか」です。
| 喉頭麻痺 | 気管虚脱 | |
|---|---|---|
| 鳴るとき | 息を吸うとき | 息を吐くとき |
| 音 | ゼーゼー、ヒューという高めの音 | ガーガーというガチョウのような音 |
| 多い犬種 | 中高齢の大型犬 | 小型犬 |
| 声 | 変わることが多い | 変わらないことが多い |
| むせ | 飲み込みでむせやすい | むせは少ない |
| 共通点 | 暑さ・興奮・運動で悪化する | 暑さ・興奮・運動で悪化する |
息を吸うときに鳴る——
これは、空気の入口が狭いことを示しています。
吸おうとする力で狭いところを空気が通るため音が出るのです。
一方、吐くときにガーガーと鳴るなら気管虚脱のほうを考えます。
そして、湿った咳が続くなら気管支炎——もっと下の気道です。
のどの症状の分け方は咽頭炎の記事でも解説しています。
受診のときには動画を持っていってください。
吸うときなのか、吐くときなのか——言葉で説明するのはとても難しいものです。音が出ている場面をそのまま撮っておけば判断が早まります。
夏が、いちばん危ない

この病気には季節があると言ってもいいほどです。
犬は、汗をかいて体温を下げることがほとんどできません。
代わりに、口を開けてはっはっと呼吸する——パンティングと呼ばれる動作で熱を逃がしています。
そして、そのとき喉頭は大きく開いている必要があります。
けれど、麻痺していれば開きません。
| 起きること | その結果 |
|---|---|
| 暑い | 体温を下げようとする |
| 激しく呼吸する | けれど、のどが開かない |
| 熱が逃げない | 体温がさらに上がる |
| もっと呼吸する | のどの粘膜が腫れてくる |
| 通り道が、さらに狭くなる | 呼吸困難が悪化する |
| 悪循環 | 短時間で危険な状態になる |
これが、この病気でもっとも恐ろしい流れです。
熱中症と呼吸困難が同時に、そして互いを悪くしながら進んでいく——
「昨日まで平気だったのに」という急変が起こるのはこの構造のためです。
だから、暑い時期には次のことを守ってください。
- 散歩は、早朝や夜の涼しい時間に
- 激しい運動をさせない。興奮も引き金になる
- 留守番中も、エアコンで室温を保つ
- 首輪をハーネスに替える
- 車の中に、短時間でも置いていかない
- 興奮しやすい場面を、あらかじめ避ける
そして、舌の色を見てください。
紫がかっている、白っぽい——
それは、酸素が足りていない合図です。その場で涼しい場所へ移し、すぐに受診してください。
健康な犬の舌はきれいなピンク色をしています。
ふだんの色を見ておくといざというときに違いが分かります。
手術という選択

症状が進んだ場合には手術が検討されます。
被裂軟骨側方化術——「タイバック」とも呼ばれる方法です。
動かなくなった軟骨の片側を外側へ引いて固定し、空気の通り道を開いたままにしておく——
それが、この手術の中身です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 目的 | 息を吸うときの通り道を確保する |
| 効果 | 90%の症例で呼吸の改善が認められると報告される |
| 主な合併症 | 誤嚥性肺炎。10〜20%で起こるとされる |
| なぜ起こるか | 開いたままのため、飲み込むときのふたが効かない |
| 片側だけ | 両側を開くと、誤嚥の危険がさらに増す |
| 術前 | 全身の状態や、ほかの病気がないかを確認する |
ここには、はっきりしたトレードオフがあります。
呼吸を取れば、誤嚥の危険が増す——
通り道を開いたままにするのですから飲み込むときに閉じるという働きも失われるのです。
それでも手術が行われるのは呼吸ができないことのほうが命に直結するからです。
そして、誤嚥の危険は暮らし方の工夫で減らせます。
片側だけを開くのにも理由があります。
両側を開いてしまえば呼吸はもっと楽になる——けれど、誤嚥の危険もそのぶん大きくなります。
だから、片側だけ——
「呼吸を確保しつつ、誤嚥をできるだけ抑える」というぎりぎりの折り合いがそこにあります。
この病気の治療を理解するうえで大切な点だと思います。
🩺 いつ手術を考えるか
「手術しかないのですか」と思われるかもしれません。
症状が軽いうちなら環境を整えることでしばらく過ごせることもあります。
涼しく保つ、運動を制限する、興奮させない、体重を落とす——
けれど、この病気は進んでいくものです。
「呼吸ができなくなってから」では手術そのものの危険も高くなります。元気なうちに相談しておいてください。
高齢での手術では心臓や腎臓の状態もあわせて確認されます。
腎臓についてはこちらの記事でも解説しています。
誤嚥を防ぐ、日ごろの工夫
手術をしてもしなくてもこの病気では誤嚥に気をつける必要があります。
ふたが効かないのですから飲み込むときの工夫がそのまま肺を守ることになります。
| 場面 | 工夫 |
|---|---|
| 食事の高さ | 台に載せて、少し高くする |
| 食べる速さ | 早食い防止の食器で、ゆっくりに |
| 一口の量 | 小さく。分けて与える |
| 形状 | むせるならふやかす。とろみをつけることも |
| 水 | 一気に飲ませない。回数を分ける |
| 食後 | すぐ寝かせず、しばらく体を起こしておく |
食後、しばらく体を起こしておく——
これは見落とされやすい工夫です。
食べてすぐ横になるとのどに残ったものが気管へ流れ込みやすくなります。
10分から15分ほどそばにいて起きている状態を保つだけで危険は下がります。
食器の高さも効きます。
床に置いたまま食べると首を下げた姿勢になります。
台に載せて少し高くするとのどから食道へ自然に流れやすくなる——
大型犬ならとくに差が出る工夫です。
そして、むせたあと——
熱が出る、元気がなくなる、呼吸が速くなるという変化が数日以内に出てきたら誤嚥性肺炎を疑って受診してください。
受診と、急ぐべきサイン
受診のときに伝えてほしいことを挙げます。
- 吠え声が、いつごろから変わったか
- 音は、吸うときか吐くときか
- 散歩の距離や様子が変わっていないか
- 水や食べ物でむせることがあるか
- 暑い日に、症状が強くならないか
- 甲状腺など、ほかの病気を指摘されていないか
検査では麻酔をかけた状態で喉頭の動きを直接見ることが行われます。
息を吸うときに左右へ開いているかどうか——それを確かめるのが診断の中心です。
そして、次のような状態は夜間でも受診すべきものです。
- 舌や歯ぐきが、紫や白っぽくなっている
- 座ったまま、首を伸ばして呼吸している
- 呼吸のたびに、大きな音が鳴っている
- 横になれず、立ったままでいる
- 体が熱く、ぐったりしている
- 倒れた、意識がはっきりしない
とくに、座ったまま首を前へ伸ばして呼吸している——
これは、少しでも空気を通そうとしている姿勢です。
本人がそこまでしているならすでにかなり苦しいと考えてください。
運ぶときの、注意
呼吸が苦しい犬を動物病院へ運ぶときにはいくつか気をつけることがあります。
- 首を締めない。抱えるときは体を支える
- 車内を、あらかじめ冷やしておく
- 興奮させない。静かに、落ち着いて運ぶ
- 無理に押さえつけない。姿勢は本人に選ばせる
- 可能なら、先に電話で状況を伝えておく
- 水を無理に飲ませない
あわてて抱きかかえ、興奮させてしまうことがかえって悪くすることもあります。
静かに、涼しく、首を締めずに——
この3つを覚えておいてください。
そして、呼吸が苦しいときの姿勢は本人がいちばん楽な形を選んでいます。
抱き上げて無理に体勢を変えることがかえって苦しくさせることもあるのです。
よくある質問
Q. 喉頭麻痺とはどんな病気ですか?
A. のどの入口にある軟骨が動かなくなる病気です。息を吸うときに左右へ開くはずの部分が開かず、空気の通り道が狭いままになります。中年齢以降の大型犬、とくにラブラドールやゴールデンに多く見られます。
Q. 最初のサインは何ですか?
A. 吠え声の変化です。声帯は喉頭のなかにあるため、動きが悪くなれば声も変わります。かすれる、低くつぶれる——呼吸の音より先に出てくることがあります。
Q. 気管虚脱と、どう見分けますか?
A. いつ鳴るかで分かれます。喉頭麻痺は息を吸うときにゼーゼー、気管虚脱は吐くときにガーガーと鳴ります。喉頭麻痺は大型犬に多く、声の変化とむせを伴いやすいのも違いです。
Q. なぜ夏に危険なのですか?
A. 犬は口を開けて呼吸することで熱を逃がすためです。そのとき喉頭は大きく開いている必要がありますが、麻痺していれば開きません。熱が逃げず、体温が上がり、粘膜が腫れて通り道がさらに狭くなる——悪循環に入ります。
Q. 手術で治りますか?
A. 90%の症例で呼吸の改善が認められると報告されています。片側の軟骨を外側へ固定して、通り道を開いたままにする方法です。ただし、飲み込むときのふたも効かなくなるという面があります。
Q. 手術の合併症はありますか?
A. 誤嚥性肺炎が最も多く、10〜20%の症例で起こるとされています。通り道を開いたままにするため、飲み込むときに閉じる働きが失われるためです。食事の高さや速さ、食後の姿勢を工夫することで、危険は減らせます。
Q. どんなときに、すぐ受診すべきですか?
A. 舌や歯ぐきが紫や白っぽい、座ったまま首を伸ばして呼吸している——こうした状態は夜間でも受診してください。首を締めず、車内を冷やし、興奮させずに静かに運んでください。
まとめ|声が変わったら、春のうちに
喉頭麻痺は炎症の病気ではありません。
のどのふたが動かなくなる病気です。
だから、薬で腫れを引かせても根本は変わりません。
そして、少しずつ進んでいきます。
最初に出るのは、声——
次に、息を吸うときの音——
そして、運動を嫌がるようになる——
いずれも「歳のせい」に見えてしまう変化です。
けれど、この病気は夏に急変します。
暑さのなかで熱を逃がせず、呼吸困難と熱中症が重なっていく——
だからこそ、涼しいうちに相談しておいてください。
春のうちに分かっていれば夏の迎え方が変わります。
室温の管理、散歩の時間、ハーネスへの変更、そして手術を考えるかどうか——
準備できることはたくさんあります。
けれど、苦しくなってからでは選ぶ時間がありません。
大型犬で、中高齢で、声が変わってきた——
その3つがそろっているなら一度、のどを見てもらってください。
今日できる3つ
- 1吠え声が、以前と変わっていないか思い出す
- 2呼吸の音が、吸うときか吐くときかを動画で確かめる
- 3大型犬で中高齢なら、暑くなる前に一度相談する
最初のサインは、声です。気づくのが春なら、打てる手はまだ多くあります。

本日の「犬猫の悩みを即解決!」の記事「犬の喉頭麻痺|声が変わったら、夏が来る前に相談してください」でした。
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