

こんばんは。
今回「犬猫の悩みを即解決!」が自信を持ってお届けする記事は「猫の自律神経障害|キー・ガスケル症候群という病気です」です。ではどうぞ!
両方の瞳が開いたまま、明るくしても細くならない。
目が乾き、鼻もかさついている。
食べても吐き出してしまい、便も出ない。
これらが同時に起きているとき、自律神経障害——キー・ガスケル症候群という病気が考えられます。まれな病気ですが、知っておく価値があります。
結論
猫の自律神経障害はキー・ガスケル症候群として知られ、1982年に英国で初めて報告され、その後ヨーロッパ、アメリカ、日本でも記録されています。この病気では発汗、立毛、消化管の運動など、ふだん意識せずに営まれている働きを担う自律神経の機能が損なわれます。具体的な症状としては、食欲不振、元気消失、涙の分泌の低下、瞳孔が開いたままになること、第三眼瞼の露出などが挙げられます。また腸管神経系が障害されることで巨大食道となり、それに伴う合併症が起こることがあります。原因は依然として不明で、諸説あるもののさらなる研究が必要とされています。予後は非常に厳しく、回復する例はまれで、治療には1年以上を要します。国際的な報告によれば、集中的な看護と治療にもかかわらず生存する猫は4分の1に満たないとされ、嚥下障害による誤嚥性肺炎が大きな脅威となります。
この記事でわかること
- ✓自律神経とは、何をしているのか
- ✓その神経が、広く傷んでしまいます
- ✓目に、最初のサインが出ます
- ✓体のあちこちに、症状が出ます
- ✓原因は、分かっていません
- ✓診断は、症状の組み合わせから
- ✓見通しは、厳しいものです
- ✓それでも、できることがあります
自律神経とは、何をしているのか

まず、自律神経とは何かから。
意識せずに、動いているものです
自律神経は、発汗、立毛、消化管の運動など、ふだん意識せずに営まれている働きを担っています。
心臓を動かす、呼吸を続ける、食べ物を運ぶ——
猫が「やろう」と思っていないのに動いているものは、すべてこの神経が動かしています。
目や、涙も含まれます
瞳孔の大きさを調節するのも自律神経です。
涙や唾液をつくらせるのも、この神経です。
だから、この神経が傷むと目に症状が出ます。
人の言う「自律神経の乱れ」とは別です
人では「自律神経が乱れる」という言い方をします。
けれどこの病気は、それとはまったく別のものです。
ストレスで調子が崩れる、という話ではありません。
神経そのものが、実際に傷んでしまう病気です。
その神経が、広く傷んでしまいます
この病気で起きているのは、自律神経の広い範囲での機能不全です。
一か所ではありません
目だけ、腸だけ、膀胱だけ——そういう話ではありません。
体じゅうの自律神経が、同時に働かなくなります。
だから、症状が同時にあちこちへ出るのです。
だから、組み合わせで気づきます
ひとつひとつの症状は、ほかの病気でも起こります。
けれど、これだけがそろって出る病気は多くありません。
瞳孔が開いたまま、涙が出ない、吐き出す、便が出ない——
この組み合わせが、この病気を疑う手がかりになります。
報告されている病気です
1982年に英国で初めて報告され、その後ヨーロッパ、アメリカ、日本でも記録されています。
まれな病気ですが、知られていないわけではありません。
そして、猫だけの病気でもありません。馬や犬、ウサギでも報告されています。
目に、最初のサインが出ます

早い段階で気づけるとすれば、目のことが多いものです。
瞳孔が、開いたままになります
瞳孔が開いたままになることが、特徴的な症状のひとつです。
明るいところに連れていっても、細くなりません。
そして両目に出ます。
ホルネル症候群とは、逆です
ここは、区別しておくと分かりやすくなります。
ホルネル症候群では瞳孔が小さくなり、片側に出ます。
この病気では瞳孔が大きくなり、両側に出ます。
| 自律神経障害 | ホルネル症候群 | |
|---|---|---|
| 瞳孔 | 開いたまま(散大) | 小さくなる(縮瞳) |
| 左右 | 両側に出る | 主に片側 |
| 涙 | 分泌が低下する | 大きく変わらない |
| 全身の症状 | 消化管や膀胱にも出る | 目のまわりだけ |
| 見通し | 非常に厳しい | 原因しだいだが、多くは回復 |
乾きも、目立ちます
涙の分泌の低下が起こります。
目が乾き、目やにがねばつくようになります。
そして第三眼瞼の露出——目頭から白い膜が出てきます。
鼻の頭も乾いて、かさついてきます。
体のあちこちに、症状が出ます

目だけでは、終わりません。
食欲がなくなり、元気もなくなります
食欲不振、元気消失が現れます。
いちばん最初に気づかれるのは、ここかもしれません。
けれどこれだけでは、多くの病気と区別がつきません。
食道が広がります
腸管神経系が障害されることで巨大食道となり、それに伴う合併症が起こることがあります。
巨大食道とは食道が広がって、動かなくなった状態です。
飲み込んだものが胃まで運ばれず、そのまま戻ってきてしまいます。
吐くのとは違って、力まずにこぼれ落ちるように出てきます。
ほかにも、こんな症状が出ます
- 脈が遅くなることがある
- 立ち上がったときに、ふらつく
- 肛門から、便が出たままになることがある
- 口の中が乾き、よだれが減る
- 毛づやが悪くなり、毛が逆立たなくなる
- 脱水が、進んでいく
自律神経は体じゅうにあるので、症状も体じゅうに出ます。
便も、尿も出にくくなります
腸の動きが落ちれば、便秘になります。
膀胱が働かなければ、尿がたまり続けます。
お腹が張ってくることがあります。
これらは、命に関わる問題になりえます。
ほかの病気と、間違えられやすいところ
ひとつずつの症状は、よくあるものです。
| 症状だけを見ると | こう考えられがち |
|---|---|
| 食欲がない、元気がない | どんな病気でも起こる |
| 吐き出す | 毛玉や、胃腸の不調と思われる |
| 便が出ない | ただの便秘と思われる |
| 目が乾く | 結膜炎の一種と思われる |
| だから | 組み合わせで見ないと、たどりつけない |
受診のとき、症状をまとめて伝えてください。
「目のことも、便のことも」——その並べ方が、診断を助けます。
原因は、分かっていません
正直に書きます。
いまだに、不明です
原因は依然として不明で、諸説あるもののさらなる研究が必要とされています。
1982年の報告から、四十年以上たっています。
それでも、まだ分かっていないのです。
ほかの動物でも、同じです
馬、犬、ウサギでも同じ病気が報告されています。
けれど、どの動物でも原因は特定されていません。
これは、飼い主さんの世話とは関係のない病気です。
何かをしたから、しなかったから起きたのではありません。
だから、予防もできません
原因が分からない以上、防ぐ方法もありません。
「ストレスを減らせば防げる」といった話ではないのです。
ワクチンで防げるものでも、食事で防げるものでもありません。
できるのは、気づいたときに早く動くことだけです。
診断は、症状の組み合わせから
どうやって診断するのかを見ていきます。
そろい方を、見ます
この病気を確定する簡単な検査は、ありません。
だから、症状の組み合わせから疑います。
- 瞳孔が開いたまま、光に反応しない
- 両目に出ている
- 涙が少なく、目が乾いている
- 鼻の頭が乾いている
- 食べたものを、力まずに吐き出す
- 便が出ない、尿が出ない
- 食欲がなく、元気がない
これらが同時に出ていることが、いちばんの手がかりです。
ほかの病気を、除外します
血液検査、画像検査などでほかの原因がないかを調べます。
巨大食道はレントゲンで確かめられます。
膀胱の張り具合も、触診や画像で分かります。
目の乾きは、涙の量を測る検査で確かめます。
薬を使った検査もあります
ごく薄めた目薬を使って、瞳孔の反応を見る検査が行われることがあります。
神経の支配が失われた組織は、わずかな刺激にも過敏に反応します。
ふつうなら反応しない濃さで瞳孔が縮めば、神経が切れていることの裏づけになります。
見通しは、厳しいものです

ここは、正直に書いておく必要があります。
数字を、お伝えします
予後は非常に厳しく、回復する例はまれで、治療には1年以上を要します。
国際的な報告によれば、集中的な看護と治療にもかかわらず生存する猫は4分の1に満たないとされています。
四頭に一頭に届かない——これは、厳しい数字です。
誤嚥性肺炎が、大きな脅威です
嚥下障害による誤嚥性肺炎が大きな脅威となります。
飲み込む力が落ちているので、食べ物や水が気管に入ってしまうのです。
そこから肺炎になります。
だから、食べさせ方が生死を分けることがあります。
何が結果を分けるのか
| 場面 | 気をつけること |
|---|---|
| 食べさせ方 | 誤嚥させない姿勢と、形のもの |
| 水分 | 脱水させない。点滴が要ることも |
| 排泄 | 便と尿を、出してあげる |
| 目 | 乾かさない。角膜の傷を防ぐ |
| 呼吸 | 速さの変化を、毎日見る |
とくに誤嚥を防ぐことが、いちばん大きな分かれ目になります。
数字は、その猫の運命ではありません
統計は、目安です。
回復する猫もいます。
ただし、1年以上かかることを覚悟しておく必要があります。
数字を知っておくことは、覚悟するためではなく、備えるためです。
それでも、できることがあります
治す薬はありません。
けれどやることは、たくさんあります。
支えることが、治療になります
目を乾かさない。
誤嚥させずに、食べさせる。
便を出し、尿を出す。
脱水させない。
この四つを続けることが、この病気での治療です。
受診のたびに、確かめてほしいこと
- 脱水していないか(点滴が要るかどうか)
- 体重が、減っていないか
- 肺に、異常な音がないか
- 膀胱に、尿がたまっていないか
- 角膜に、傷ができていないか
- 次にいつ来ればよいか
とくに肺の音は、誤嚥性肺炎を早く見つけるために大事です。
「肺の音はどうですか」と聞いてみてください。
具体的なやり方は、別の記事にまとめました
毎日の介護のしかたについては、
支える暮らしの、実際のところでくわしく書いています。
食べさせ方、便の出し方、目の守り方——
手を動かす部分は、そちらを読んでください。
この病気は、看護がそのまま治療になります。
だから、やり方を知っていることに意味があります。
⚠ こんなときは、すぐ受診してください
呼吸が速い、苦しそうにしている。
咳をする、ゼーゼーいう。
尿が丸一日以上、出ていない。
ぐったりして、動かない。
呼吸の変化は、誤嚥性肺炎のサインかもしれません。
🩺 伝えておきたいこと
この病気は、飼い主さんのせいではありません。
原因は、いまだに分かっていません。
ストレスや世話のしかたで起きるものでもありません。
自分を責めないでください。
この記事の要点
キー・ガスケル症候群と呼ばれ、1982年に英国で初めて報告されました。
食欲不振、元気消失、涙の分泌低下、瞳孔が開いたまま、第三眼瞼の露出などが症状です。
腸管神経系が障害されて巨大食道となり、合併症が起こることがあります。
原因は不明で、予後は非常に厳しく、生存する猫は4分の1に満たないという報告があります。
Q. 自律神経障害とは、どんな病気ですか?
A. キー・ガスケル症候群と呼ばれる病気です。発汗、立毛、消化管の運動など、ふだん意識せずに営まれている働きを担う自律神経の機能が損なわれます。
Q. 人の「自律神経の乱れ」と同じですか?
A. まったく別のものです。ストレスで調子が崩れるという話ではなく、神経そのものが実際に傷んでしまう病気です。
Q. どんな症状が出ますか?
A. 食欲不振、元気消失、涙の分泌の低下、瞳孔が開いたままになること、第三眼瞼の露出などです。消化管や膀胱にも症状が出ます。
Q. いつごろから知られていますか?
A. 1982年に英国で初めて報告されました。その後、ヨーロッパ、アメリカ、日本でも記録されています。
Q. 原因は何ですか?
A. 依然として不明です。諸説あるものの、さらなる研究が必要とされています。
Q. 私の世話が悪かったのでしょうか?
A. そうではありません。原因は分かっておらず、馬や犬、ウサギでも同じ病気が報告されています。飼い主さんの世話とは関係のない病気です。
Q. 巨大食道とは何ですか?
A. 食道が広がって動かなくなった状態です。腸管神経系が障害されることで起こり、飲み込んだものが胃まで運ばれず戻ってきてしまいます。
Q. 吐くのと、どう違いますか?
A. 力まずに、こぼれ落ちるように出てきます。胃から吐き戻すのではなく、食道に残ったものが出てくるためです。
Q. どうやって診断しますか?
A. 症状の組み合わせから疑います。血液検査や画像検査でほかの病気を除外し、涙の量の測定や、薬を使った瞳孔の検査を行うこともあります。
Q. 治りますか?
A. 予後は非常に厳しいものです。回復する例はまれで、治療には1年以上を要します。
Q. 生存率はどのくらいですか?
A. 国際的な報告によれば、集中的な看護と治療にもかかわらず、生存する猫は4分の1に満たないとされています。
Q. いちばん危険なことは何ですか?
A. 嚥下障害による誤嚥性肺炎です。飲み込む力が落ちているため、食べ物や水が気管に入ってしまうことがあります。
Q. 治療法はありますか?
A. この病気を治す薬はありません。目を乾かさない、誤嚥させずに食べさせる、便と尿を出す、脱水させないという支持療法が中心になります。
Q. 予防できますか?
A. 原因が分からないため、防ぐ方法もありません。できるのは、気づいたときに早く動くことです。
Q. ホルネル症候群と似ていますか?
A. 逆の症状です。ホルネル症候群では瞳孔が小さくなり主に片側に出ますが、この病気では瞳孔が開いたままになり、両側に出ます。
Q. ほかの猫にうつりますか?
A. 感染症ではありません。同居猫に対して、隔離などの特別な対応は必要ありません。ただし気になることがあれば、獣医師に確かめてください。
Q. 回復した猫は、元どおりになりますか?
A. 時間がかかり、症状が一部残ることもあります。回復には1年以上を要するとされており、その間ずっと介助が必要になります。
まとめ|まれですが、知っておく意味があります
キー・ガスケル症候群は、まれな病気です。
そして、見通しも厳しいものです。
原因は四十年以上たった今も分かっていません。
それでも、知っておく意味はあります。
瞳孔が開いたまま、涙が出ない、吐き出す、便が出ない——
この組み合わせを覚えておけば、早く受診できます。
そしてこの病気は、飼い主さんのせいではありません。
ストレスでも、世話のしかたでもありません。自分を責めないでください。
できるのは、支えることです。そのやり方は、次の記事にまとめました。
今日できる3つ
- 1明るい場所で、両方の瞳が細くなるか確かめる
- 2鼻の頭が乾いていないか、さわって確かめる
- 3便と尿が出ているかを、毎日記録する
症状がそろって出るのが、この病気の特徴です。組み合わせに気づいたら、受診してください。

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