

こんばんは。
今回「犬猫の悩みを即解決!」が自信を持ってお届けする記事は「犬の門脈シャント|壁に頭を押し付けていたら、疑ってください」です。ではどうぞ!
壁に向かって、じっと頭を押し付けている——
部屋の隅で同じ方向にぐるぐると回り続けている——
呼んでも、反応が鈍い——
そして、その様子が食事のあとに強くなる——
もし、そういう場面を見たことがあるなら疑ってほしい病気があります。
門脈体循環シャント——短く「門脈シャント」とも呼ばれます。
腸から吸収した血液が肝臓を通らずにそのまま全身へ流れてしまう——
そういう血管の異常です。
肝臓は解毒をする臓器ですからそこを素通りすれば毒素がそのまま体をめぐります。
そして、脳に届く——
それが、あの不思議な行動の正体です。
結論
門脈体循環シャントは腸から吸収した血液を肝臓へ運ぶ血管(門脈)が肝臓を迂回してそのまま全身の循環へ流れてしまう病気です。解毒されない毒素が体中に運ばれるため、ふらつく、壁に頭を押し付ける、ぐるぐると回り続ける、発作を起こす、昏睡状態に陥るといった神経症状(肝性脳症)が現れます。下痢や嘔吐といった消化器症状、排尿障害や血尿といった泌尿器症状も見られることがあります。トイ・プードルやヨークシャー・テリアなどの小型犬では肝臓の外側にできる肝外性、ラブラドール・レトリーバーやゴールデン・レトリーバーなどの大型犬では肝内性が多く認められます。先天性のものの根本的な治療は手術によるシャント血管の閉鎖で、内科治療は手術の前後や、手術が困難な場合に選択されます。
この記事でわかること
- ✓血液が、肝臓を通らずに流れる
- ✓壁に頭を押し付けるという、サイン
- ✓食後に悪くなる理由
- ✓尿から見つかることもあります
- ✓体格で、タイプが違います
- ✓手術で、治せる病気です
- ✓内科治療と、食事
血液が、肝臓を通らずに流れる

まず、本来の流れから説明します。
腸で吸収されたものはいきなり全身へ回るのではありません。
まず、門脈という血管を通って肝臓へ運ばれます。
| 正常な流れ | シャントがあると | |
|---|---|---|
| 腸で吸収 | 栄養も毒素も取り込む | 同じ |
| その次 | 門脈を通って、肝臓へ | 肝臓を迂回してしまう |
| 肝臓で | 有害なものを無害に変える | 通らないので、処理されない |
| 全身へ | きれいになった血液が回る | 毒素を含んだまま回る |
| 脳では | 問題ない | 毒素が届き、神経症状が出る |
| 肝臓自体 | 血液を受けて育つ | 血液が来ず、十分に育たない |
肝臓は体のなかの処理場のような役割をしています。
腸から入ってきたものをいったんそこで点検してから全身へ送り出す——
ところが、その処理場を通らない道ができてしまっている——
それが、シャント(短絡)という言葉の意味です。近道ができてしまっていると考えてください。
そして、もうひとつ問題があります。
肝臓そのものが十分に育たないのです。
門脈から流れてくる血液には肝臓が育つために必要な成分も含まれています。
それが届かなければ肝臓は小さいまま——
だから、この病気の犬では肝臓が小さいことが画像で分かることがあります。
壁に頭を押し付けるという、サイン

この病気でもっとも特徴的な症状を挙げます。
壁に頭を押し付ける——
部屋の隅や家具の前で頭をぐっと押し当てたまま動かない——
知らなければ「変な癖がついた」と思ってしまう行動です。
けれど、これは神経症状です。
- 壁や家具に、頭を押し付けて動かない
- 同じ方向にぐるぐると回り続ける
- ふらつく、まっすぐ歩けない
- 呼んでも反応が鈍い、ぼんやりしている
- 視覚に障害が出ることがある
- 重くなると、発作や昏睡に至る
これらをまとめて肝性脳症と呼びます。
解毒されなかった毒素が脳に影響している——そういう状態です。
発作なら、てんかんとの区別が要ります
けいれん発作が起きた場合——
それだけを見ればてんかんとの区別がつきません。
けれど、血液検査で肝臓の値やアンモニアを調べれば見分けられます。
若い犬で発作が起きたときにはこの病気も候補に入ります。
「食後に強くなるか」という情報が大きな手がかりになります。
そして神経症状のほかにも現れるものがあります。
下痢や嘔吐といった消化器の症状——
そして、元気がない、食欲がない、疲れやすい——
さらに、発育不良——
同腹の兄弟より小さいままだったり体重が増えなかったりという形で気づかれることもあります。
食後に悪くなる理由
この病気の症状にははっきりしたタイミングがあります。
食事のあとです。
なぜか——
腸から吸収されるものが増えるからです。
| 時間 | 起きていること |
|---|---|
| 食事をする | 腸で消化・吸収が始まる |
| 吸収される | 栄養とともに、アンモニアなども取り込まれる |
| 本来なら | 肝臓で処理されるはず |
| けれど | 迂回して、そのまま全身へ |
| 1〜2時間後 | 脳に届き、症状が出てくる |
| しばらくすると | 落ち着くこともある |
とくに、たんぱく質を多く含む食事のあとに強く出ることが知られています。
たんぱくが分解されるとアンモニアが生じる——
それを解毒するのが肝臓の仕事だからです。
だから、受診のときには「食後に強くなる」という情報を必ず伝えてください。
この一言で疑う病気が大きく絞られます。ただ「ふらつきます」と伝えるのとでは調べる方向が変わってきます。
そして、動画を撮っておいてください。
壁に頭を押し付けている場面は言葉では伝わりにくいものです。
診察室では緊張して出ないこともあります。
そして、もうひとつ気づかれやすい場面があります。
麻酔からの覚めが悪い——
避妊去勢手術のときなどに「なかなか目が覚めない」ことでこの病気が疑われることがあります。
麻酔の薬も肝臓で処理されるものだからです。
処理する力が落ちていれば薬が体に残り続ける——
だから、手術の前の血液検査には意味があります。
「若いから大丈夫」と省略しないほうがよい理由がここにあります。
尿から見つかることもあります
意外に思われるかもしれませんがこの病気は尿の異常から見つかることがあります。
排尿障害や血尿という泌尿器の症状が現れることがあるのです。
- 肝臓で処理されない物質が、尿に多く出る
- それが結晶となり、石をつくることがある
- 石が膀胱や尿道を傷つけ、血尿になる
- 頻尿や、出しにくさが現れる
- 若い犬の尿石は、この病気を疑う理由になる
- とくにオスでは、詰まれば緊急事態になる
若い犬で尿の石が見つかった——
そのときに「なぜ、この年齢で」と考えることがこの病気の発見につながります。
尿路結石にはいくつかの種類がありそのうちのひとつがこの病気と関わります。
同じように特定の物質が尿に出やすい犬種——たとえばダルメシアンのような犬でも尿石ができやすいことが知られています。
血尿が出た、頻繁にトイレに行く——
そういう場面を膀胱炎として治療しているのに繰り返すなら背景を調べる価値があります。
体格で、タイプが違います

この病気には大きく2つのタイプがあります。
| 肝外性 | 肝内性 | |
|---|---|---|
| 血管の場所 | 肝臓の外側 | 肝臓の内部 |
| 多い犬種 | トイ・プードル、ヨークシャー・テリアなど | ラブラドール、ゴールデンなど |
| 体格 | 小型犬に多い | 大型犬に多い |
| 手術 | 血管を見つけて閉じる | 肝臓の中にあり、到達が難しい |
| 難度 | 比較的、対応しやすい | 上がる |
| 共通 | 画像で位置を確かめてから決める | 画像で位置を確かめてから決める |
小型犬では肝臓の外側に余分な血管があるタイプが多く——
大型犬では肝臓の内部に血管が残っているタイプが多いとされています。
この違いは手術のしやすさに直結します。
外側にある血管なら見つけて閉じることができます。
けれど、肝臓の中にあるならそこへ到達すること自体が難しくなる——
だから、まず画像でどこにあるのかを確かめることになります。
後天性のものもあります
ここまで生まれつきのものを中心に書いてきましたがあとからできることもあります。
肝臓が硬く変化して血液が通りにくくなると体が別の道をつくろうとする——
その結果として迂回路ができてしまうのです。
- 先天性——生まれつき、1本の太い血管があることが多い
- 後天性——肝臓の病気の結果、細い血管が多数できる
- 先天性は、若いうちに症状が出る
- 後天性は、もとの肝臓病が背景にある
- 手術で閉じられるのは、主に先天性のもの
- 後天性では、閉じると行き場を失ってしまう
後天性の場合——
その迂回路は体が必要に迫られてつくったものです。
だから、閉じてしまえばかえって危険になります。
同じ「シャント」でも対応がまったく違う——
そこを分けるためにも画像検査が必要なのです。
手術で、治せる病気です

ここが、この病気の希望のある部分です。
先天性の門脈体循環シャントの根本的な治療は手術によるシャント血管の閉鎖です。
余分な血管を閉じてしまえば血液は本来の道を通るようになります。
肝臓に血液が届けば肝臓も育っていく——
生まれつきの病気で根本的に治せるものはそう多くありません。
そういう意味でこの病気は恵まれていると言えます。
🩺 一度に閉じることはできません
ただし、血管を一度に閉じることはできません。
長いあいだそこを流れていた血液を急に止めれば行き場を失って別の問題が起きるからです。
だから、少しずつ細くしていくという方法がとられます。
時間をかけて本来の血管が育つのを待つ——
手術のあともしばらくは見ていく必要があるのはそのためです。
そして、手術ができる施設は限られます。
画像診断の設備も術後の管理体制も必要だからです。
紹介が必要になることも多いため「どこで受けられるか」を早めに聞いておいてください。
手術の時期についても触れておきます。
症状が強く出ている状態でそのまま手術に臨むことはふつうありません。
まず内科治療で毒素を減らし、状態を整えてから——
そのうえで手術という順番になります。
「すぐ手術しないのですか」と思われるかもしれませんが準備そのものが手術の一部だと考えてください。
体が整っているほど手術も、そのあとも安全に進みます。
内科治療と、食事
内科的治療は手術の前後や、手術を行うことが困難な場合に選択されます。
| 方法 | 目的 |
|---|---|
| 食事療法 | たんぱくの量と質を調整し、毒素を減らす |
| 腸内環境への働きかけ | アンモニアを発生させにくくする |
| 抗菌薬 | 毒素を作る腸内の菌を減らす |
| けいれんへの対応 | 発作が起きた場合に用いる |
| 術前 | 状態を整えてから手術に臨む |
| 術後 | 安定するまで、続けることがある |
食事で重要になるのはたんぱく質です。
たんぱくが分解されればアンモニアが生じる——
だから、量を調整することで症状を軽くできます。
ただし、減らせばよいというものでもありません。
成長期の犬にはたんぱくが必要です。
量だけでなく「どういうたんぱくか」も関わってきます。
だから、自己判断で決めず処方された療法食を使ってください。
肝臓の数値の見方については肝臓病の記事でも解説しています。
そして、食事の与え方にも工夫の余地があります。
1回にまとめて与えるとそのぶん一度に多くの毒素が生まれます。
同じ量でも回数を分ければ1回あたりの負担は小さくなる——
症状が食後に出る病気ですからこの工夫には意味があります。
そして、おやつ——
療法食をきちんと守っていてもおやつでたんぱくを多く与えていれば台無しになります。
家族全員で「何を与えてよいか」を共有しておいてください。
症状が出たときの、対応
肝性脳症の症状が出ているとき——
- 安全な場所へ移し、けがをしないようにする
- 壁や家具の角から遠ざける
- 無理に押さえつけない
- そのまま食事を続けさせない
- その日のうちに受診する
- 発作が続くなら、夜間でも受診する
ぼんやりしている状態で食べさせようとすると誤嚥する危険があります。
落ち着くまで待ってください。
そして、その日のうちに受診してください。
症状がいったん治まったとしても起きたこと自体が重要な情報です。何時ごろ、食事からどのくらい経っていたかをメモしておいてください。
よくある質問
Q. 門脈シャントとはどんな病気ですか?
A. 腸から吸収した血液を肝臓へ運ぶ血管が、肝臓を迂回して全身へ流れてしまう病気です。解毒されない毒素が体中に運ばれるため、神経症状などが現れます。多くは生まれつきのものです。
Q. 壁に頭を押し付けるのは、なぜですか?
A. 肝性脳症という神経症状のひとつです。解毒されなかった毒素が脳に影響しています。「変な癖」ではなく、この病気に特徴的な動作です。
Q. なぜ食後に悪くなるのですか?
A. 腸から吸収されるものが増えるためです。とくにたんぱく質が分解されるとアンモニアが生じ、本来なら肝臓で処理されるはずのものが、そのまま全身へ回ります。食後1〜2時間で症状が出てくることが多くなります。
Q. 血尿で見つかることもあるのですか?
A. あります。肝臓で処理されない物質が尿に多く出て、結晶から石をつくることがあります。若い犬で尿の石が見つかったら、「なぜこの年齢で」と考えることが発見につながります。
Q. 犬種によって違いがありますか?
A. あります。トイ・プードルやヨークシャー・テリアなどの小型犬では肝臓の外側にできる肝外性、ラブラドールやゴールデンなどの大型犬では肝内性が多く認められます。
Q. 手術で治りますか?
A. 先天性のものの根本的な治療は、手術によるシャント血管の閉鎖です。余分な血管を閉じれば血液は本来の道を通り、肝臓も育っていきます。ただし一度に閉じることはできず、少しずつ細くしていく方法がとられます。
Q. 手術しない場合、どうなりますか?
A. 内科治療で症状を抑えながら過ごすことになります。食事療法でたんぱくの量と質を調整し、腸で発生する毒素を減らす薬を使います。手術の前後や、手術が困難な場合に選択される方法です。
まとめ|その行動を、癖にしないでください
この病気でいちばん覚えて帰ってほしいことはひとつの動作です。
壁に頭を押し付ける——
知らなければ「変わった癖」で終わってしまう行動ですがこれは神経症状です。
そして、食後に強くなる——
その2つがそろっているなら血液検査を受けてください。
肝臓の値とアンモニアを調べれば手がかりが得られます。
そして、この病気には根本的な治療があります。
血管を閉じれば血液は本来の道を通り、肝臓も育っていく——
生まれつきの病気でそこまで戻せるものは多くありません。
早く見つかるほど肝臓が育つ時間も残されています。
「小さいけれど、元気だから」と様子を見てきた——
その発育の遅れ自体がこの病気のサインだったかもしれません。
体重が増えない、同腹の兄弟より小さい——
そういう気づきも受診の理由になります。
今日できる3つ
- 1壁に頭を押し付ける、ぐるぐる回るなどの動作がないか思い出す
- 2その様子が食後に強くなっていないか、数日見てみる
- 3若い犬で血尿や尿石があったなら、背景を調べてもらう
それは癖ではなく、神経の症状かもしれません。食後に強くなるなら、必ず伝えてください。

本日の「犬猫の悩みを即解決!」の記事「犬の門脈シャント|壁に頭を押し付けていたら、疑ってください」でした。
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