

こんばんは。
今回「犬猫の悩みを即解決!」が自信を持ってお届けする記事は「犬のてんかん|発作が起きたら、まず時計を見てください」です。ではどうぞ!
横倒しになって、手足を突っ張らせ、がくがくと震えている——
よだれを流し、呼んでも反応しない——
初めて見た飼い主が冷静でいられる場面ではありません。
それでも、たったひとつだけしてほしいことがあります。
時計を見てください。
何時何分に始まったのか——
そして、何分で終わったのか——
この病気では「続いた時間」と「24時間のうちの回数」が命に関わる基準になります。
そして、もうひとつ——
口に手を入れないでください。
結論
犬のてんかんの約6割は特発性てんかんで、原因は明確には分かっていませんが遺伝的な素因が強く関わっており、特定の犬種で発症しやすい傾向があります。発作が5分以上続く場合は「てんかん重積状態」と呼ばれ命に関わる状態です。短時間で複数回発作が起きる場合も危険な兆候とされます。発作が5分以上続いた場合や、24時間以内に複数回起きた場合にはすぐに動物病院へ連絡してください。発作の日時・時間・様子を書き留めておくことが治療の調整に役立ちます。特発性てんかんでは約70%の症例で抗てんかん薬により良好に発作をコントロールできるとされ、残りの30%は複数の薬が必要になることがあります。第一選択薬としてもっとも広く使われるのはフェノバルビタールです。
この記事でわかること
- ✓まず、時計を見てください
- ✓してはいけないこと
- ✓5分と、24時間
- ✓記録が、治療を決めます
- ✓原因の6割は「分からない」
- ✓薬との、つきあい方
- ✓発作に見えて、違うもの
まず、時計を見てください

発作が起きたとき——
飼い主にできることは実はそう多くありません。
止める方法はないのです。
だからこそ、「情報を残すこと」がいちばんの仕事になります。
| すること | 理由 |
|---|---|
| 始まった時刻を見る | 5分という基準があるため |
| 周りを片づける | ぶつかって、けがをしないように |
| 動画を撮る | 言葉では伝えきれないため |
| 終わった時刻も見る | 何分続いたかを、正確に残す |
| そばで見守る | 触らず、静かに |
| 回復までを見る | 元に戻るまでの時間も、情報になる |
「何分続きましたか」——
受診したときに必ず聞かれることです。
けれど、その場にいた飼い主の体感はほとんど当てになりません。
目の前で犬が倒れている——
その30秒は5分にも10分にも感じられます。
だから、時計なのです。
スマートフォンの時刻でも時計の秒針でもかまいません。
「始まったときの時刻」を見る——
それだけでその後の判断がまったく変わります。「たぶん3分くらい」と「3時12分から3時14分まで」では伝わる確かさが違います。
してはいけないこと

よかれと思ってしてしまいがちなことを先に書きます。
- 口に手やものを入れない
- 体を押さえつけない
- 抱き上げて移動させない
- 大声で名前を呼ばない
- 体を揺さぶらない
- 水や薬を飲ませようとしない
とくに、口に手を入れることは絶対に避けてください。
「舌を飲み込んでしまう」と心配されることがありますが犬でそれは起こりません。
一方、発作の最中の顎にはとても強い力が入ります。
意識がない状態ですから加減もできません。
指を入れれば重いけがをします。タオルや棒などを噛ませることも避けてください。
押さえつけても、発作は止まりません
震えているのを見ると止めてあげたくなる——
けれど、発作は脳で起きていることです。
体を押さえても止まりません。
むしろ、無理に押さえれば関節や筋肉を痛めることがあります。
できることは周りの危険なものをどけることだけです。
階段のそばや家具の角——
そこから離すためにそっと床を引きずるのはやむを得ません。
けれど、抱き上げて運ぶことは避けてください。
暴れる体を抱えれば落としてしまう危険があります。
そして、発作が終わったあと——
しばらくはぼんやりしていたり、ふらついたり、落ち着きなく歩き回ったりします。
この時間にも無理に触らず見守ってください。
本人はまだはっきりしていません。
発作のあとの、数十分
発作そのものが終わったあとにもしばらくふつうではない時間が続きます。
- ぼんやりして、呼んでも反応が鈍い
- ふらつきながら、あてもなく歩き回る
- 一時的に、目が見えていないように見える
- 異常に水を飲む、食べたがる
- 怯えたり、攻撃的になったりすることがある
- 数分から、数時間続くこともある
この時間にいつものように抱き上げようとすると噛まれることがあります。
怒っているのではありません。
まだ状況が分かっていないだけです。
階段や段差から落ちないようにだけ気をつけてそっと見守ってください。
小さなお子さんには「終わったあともしばらく触らない」ことを伝えておいてください。
5分と、24時間

この病気にははっきりした2つの基準があります。
| 基準 | 呼び方 | 対応 |
|---|---|---|
| 5分以上続く | てんかん重積状態 | 命に関わる。すぐに連絡 |
| 24時間に複数回 | 群発発作 | 危険な兆候。すぐに連絡 |
| 意識が戻らないまま次へ | 重積に含まれる | すぐに連絡 |
| 初めての発作 | — | 原因を調べる必要がある |
| 短く、1回で終わった | — | 記録して、受診の予約を取る |
発作が5分以上続く場合は「てんかん重積状態」と呼ばれる命に関わる状態です。
そして、短時間で複数回発作が起きる場合も危険な兆候とされています。
なぜ、そこまで警戒するのか——
長く続く発作では体温が上がり、脳そのものが傷ついていくからです。
そして、この違いは数字にも現れます。
発作重積がない場合の平均生存期間は11.3歳、重積を起こした場合は8.3歳というデータがあります。
およそ3年の差がそこにあるということです。
だから、重積を起こさせないことに大きな意味があるのです。
そのためにできることが「5分」という基準を知っておくことと「その場で時計を見ること」——
そして、重積が起きたときに使う薬をあらかじめ処方してもらえることがあります。
発作を繰り返している犬では家庭で使える薬を備えておくという方法がとられることがあります。
「長く続いたときはこれを使ってください」と渡されているなら使い方をしっかり確かめておいてください。
そのときになって説明書を読む余裕はありません。
家族全員が使えるようにしておいてください。
記録が、治療を決めます

この病気で飼い主の役割がもっとも大きい部分が記録です。
発作の日時・時間・様子を書き留めておくことが治療の調整に役立ちます。
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 日付・時刻 | 何月何日、何時何分に始まったか |
| 続いた時間 | 何分何秒で終わったか |
| 様子 | 全身か、体の一部か。どう動いたか |
| 直前の状況 | 寝ていた、興奮していた、食後など |
| 回復まで | 元に戻るまでの時間 |
| 薬 | その日、きちんと飲めていたか |
なぜ、記録がそこまで大切なのか——
薬の量を決める材料がそれしかないからです。
診察室で発作が起こることはまずありません。
血液検査でも発作の頻度は分かりません。
「先月は2回、今月は5回」という情報だけが薬を増やすかどうかを決めてくれるのです。
「なんとなく増えた気がします」では判断できません。
カレンダーに印をつけるだけでも十分です。
スマートフォンのメモでもかまいません。
続けられる形を選んでください。
原因の6割は「分からない」
犬のてんかんの約6割は特発性てんかんだとされています。
「特発性」とは「原因が特定できない」という意味です。
検査をしても脳に異常が見つからない——
それでも発作は起きる——
- 約6割が、この特発性てんかん
- 原因は明確には分かっていない
- 遺伝的な素因が、強く関わるとされる
- 特定の犬種で発症しやすい傾向がある
- 多くは若い年齢で発症する
- 残りは、脳の病気などが背景にある
「原因が分からない」と聞くと不安になられると思います。
けれど、それは「打つ手がない」という意味ではありません。
むしろ、検査で脳の病気などが見つからなかった——
それ自体がひとつの結果です。
そして、特発性てんかんは薬でコントロールしやすい——
だから、調べることに意味があるのです。
とくに、若い犬で初めて発作が起きたときにはほかの原因も確かめる必要があります。
いずれも発作を起こしうる病気でそれぞれ治療が違います。
薬との、つきあい方
特発性てんかんでは約70%の症例で抗てんかん薬により良好に発作をコントロールできるとされています。
残りの30%は難治性と呼ばれ複数の薬が必要になることがあります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 第一選択薬 | フェノバルビタールがもっとも広く使われる |
| 目標 | 発作をゼロにするより、頻度と強さを抑える |
| 飲み方 | 毎日、決まった時間に。血中濃度を保つ |
| 自己判断 | やめない、量を変えない |
| 検査 | 定期的に血液を調べ、量を調整する |
| 難治性の場合 | 複数の薬を組み合わせることがある |
この治療でいちばん大切なことは「毎日、同じ時間に飲ませる」ことです。
薬が効くのは血液のなかの濃度が一定に保たれているからです。
飲み忘れればその濃度が下がり、発作が起きやすくなります。
🩺 効いているから、起きていないのです
「発作が起きなくなったから、そろそろやめてもいいのでは」——
この病気でもっとも危険な考えです。
起きていないのは薬が効いているからであって治ったからではありません。
そして、急にやめることは重積を招くことがある——
減らすかどうかの判断は必ず獣医師と相談して決めてください。
そして、定期的な血液検査——
薬の量が適切か、肝臓に負担がかかっていないかを確かめるためです。
長く飲み続ける薬ですから体への影響も見ていく必要があります。
飲み始めのころにはふらつく、眠そうにする、よく食べる、よく水を飲むといった変化が出ることがあります。
多くは体が慣れるにつれて落ち着いていきますが気になるならそのまま伝えてください。
「副作用が心配だから飲ませない」という選択はこの病気では危険が大きい——
発作を繰り返すこと自体が脳を傷つけていくからです。
心配なことはやめる前に相談してください。
発作の起きやすい場面
記録を続けていると傾向が見えてくることがあります。
- 寝ているとき、寝入りばなに多い犬がいる
- 強く興奮したあとに起きることがある
- 雷や花火など、大きな刺激のあと
- 体調を崩したとき、発熱時
- 薬を飲み忘れた日
- 季節や気圧の変化と重なる犬もいる
傾向が分かれば避けられる場面も出てきます。
そして、「そろそろ起きそうだ」と身構えられることにも意味があります。
あわてずに時計を見られるからです。
そして、記録を続けていくうちに「増えてきた」ことに早く気づけます。
薬を調整する時期を逃さずに済む——
記録は面倒な作業に見えるかもしれません。
けれど、この病気ではそれがいちばん確かな治療の材料です。
発作に見えて、違うもの
倒れた、けいれんした——
そう見える出来事のすべてがてんかんとは限りません。
| てんかん発作 | 失神 | 前庭の問題 | |
|---|---|---|---|
| 意識 | 失われる | 短時間、失われる | ある |
| 体の動き | 突っ張る、震える | 力が抜ける | ふらつく、傾く |
| そのあと | ぼんやりする時間が続く | すぐ戻ることが多い | 傾いたまま続く |
| きっかけ | まちまち | 運動や興奮のあとが多い | 急に始まる |
| 疑う場所 | 脳 | 心臓 | 耳の奥、または脳 |
運動や興奮のあとに倒れたなら心臓の病気による失神も考えられます。
首が傾いて、目が揺れているなら中耳炎・内耳炎など平衡感覚の問題——
だから、動画を撮ってほしいのです。
「けいれんしました」という言葉だけではこれらを分けられません。
10秒でよいのでその場面を残す——
それが、正しい診断へのいちばんの近道です。
撮るときのコツをひとつ——
顔だけでなく全身が映るように少し離れてください。
体のどこがどう動いているか——
全身なのか、片側だけなのか、顔だけなのか——
そこが重要な情報になります。
そして、音も残しておいてください。
呼びかけに反応しているかどうかが分かります。
よくある質問
Q. 発作が起きたら、まず何をすればよいですか?
A. 時計を見てください。何時何分に始まったかを確認し、終わった時刻も見ます。5分という基準があるため、続いた時間が判断を分けます。そのうえで周りの危険なものをどけ、動画を撮ってください。
Q. 口に手を入れて、舌を引っ張るべきですか?
A. 絶対にやめてください。犬が舌を飲み込むことはありません。一方、発作中の顎にはとても強い力が入り、意識がないため加減もできません。指を入れれば重いけがをします。
Q. 押さえつけて止めたほうがよいですか?
A. 止まりません。発作は脳で起きていることです。無理に押さえれば関節や筋肉を痛めることがあります。できるのは、周りの危険なものをどけることだけです。
Q. どんなときに、すぐ連絡すべきですか?
A. 発作が5分以上続いた場合と、24時間以内に複数回起きた場合です。5分以上続くのは「てんかん重積状態」と呼ばれ、命に関わります。短時間で複数回起きるのも危険な兆候です。
Q. 記録は、本当に必要ですか?
A. 薬の量を決める材料が、それしかありません。診察室で発作が起こることはまずなく、血液検査でも頻度は分かりません。「先月は2回、今月は5回」という情報だけが、治療の調整を可能にします。
Q. 原因は分かるのですか?
A. 犬のてんかんの約6割は特発性で、原因は明確には分かっていません。遺伝的な素因が強く関わり、特定の犬種で発症しやすい傾向があります。ただし、脳の病気などが背景にないかを調べることには意味があります。
Q. 薬はやめられますか?
A. 自己判断でやめないでください。発作が起きていないのは薬が効いているからで、治ったからではありません。急にやめることは重積を招くことがあります。特発性では約70%が薬で良好にコントロールできるとされています。
まとめ|あわてる前に、時計を
発作を目の前にして冷静でいられる飼い主はいません。
だからこそ、することをひとつに絞ってください。
時計を見る——
5分を超えるかどうかが命に関わる基準だからです。
そして、口に手を入れない。押さえつけない——
よかれと思った行動がけがを生みます。
できるのは周りをどけて、そばで見守ることだけ——
そして、終わったら記録することです。
その記録が薬の量を決め、重積を防ぎ、そのあとの年月を変えていきます。
発作を目にするたびに心が削られると思います。
けれど、この病気の多くは薬でうまく付き合っていけるものです。
約70%が良好にコントロールできるとされています。
「発作をゼロにする」より「頻度と強さを抑えて穏やかに暮らす」——
それが、この治療の目標です。
今日できる3つ
- 1発作が起きたときの手順を、家族全員で共有しておく
- 2スマートフォンに、発作記録用のメモを作っておく
- 35分を超えたら連絡する——その基準を覚えておく
止めることはできません。けれど、記録することはできます。

本日の「犬猫の悩みを即解決!」の記事「犬のてんかん|発作が起きたら、まず時計を見てください」でした。
下記の#タグキーワードからも、関連記事を検索できます。
Others 同じカテゴリの記事 |

犬の寒冷凝集素症|冬に、耳の先だけが傷んでいくなら |
犬の外耳炎|繰り返すなら、原因は耳の外にあります |
犬の角膜浮腫|目が青白く濁るのは、何かの合図 |
犬の角膜炎|原因が違えば、見通しも変わる |
犬の核硬化症|白内障と間違えやすい、加齢の変化 |
犬の角膜潰瘍|深さで変わる、危険の度合い |




