犬の低たんぱく血症|痩せているのに、お腹だけふくれているなら

犬の低たんぱく血症

背中を触ると骨が分かる。

痩せてきている——

それなのに、お腹だけがふくれている——

この組み合わせには意味があります。

太ったのではありません。

水がたまっているのです。

そして、その水血液中のたんぱく足りなくなったしるしかもしれません。

それが、低たんぱく血症——

けれど、この言葉病名ではありません。

「状態」表す言葉です。

大事なのは、どこで失われているのか——

その出口を探すこと治療の始まりになります。

結論

低たんぱく血症は血液中のたんぱくが不足した状態です。犬でよく問題になるのが蛋白漏出性腸症で、これは腸から蛋白質が漏出し不足することで様々な症状が起きる症候群です。血液中の蛋白質の一種であるアルブミンが漏出すると低蛋白血症や低アルブミン血症が引き起こされ、下痢や食欲不振、削痩、腹水、胸水などの症状があらわれます。主な原因は腸リンパ管拡張症、胃腸型リンパ腫などの腫瘍、IBDと呼ばれる炎症性腸疾患などで、その他には寄生虫やウィルスによる感染性腸炎に起因することもあります。治療は原因に沿って、低脂肪食などの食事療法や、腸の炎症を抑えるステロイド剤などの薬の投与が行われ、少量の腹水や胸水、体のむくみには利尿剤が使用されます。

この記事でわかること

  • これは、状態を表す言葉です
  • 痩せているのに、お腹がふくれます
  • なぜ、水がたまるのか
  • どこで失われているかを、探します
  • いちばん多いのは、腸から漏れているとき
  • 食べる量を増やしても、解決しません
  • 治療で行われること

これは、状態を表す言葉です

「低たんぱく血症です」言われたとき——

それは診断がついたということではありません。

「たんぱくが足りていません」という事実分かった——

そこまでです。

診断までの流れ
段階 分かること
血液検査 たんぱくが足りないと分かる
次に なぜ足りないのかを探す
出口を探す 腸か、腎臓か、肝臓か
原因が分かる そこで初めて、治療の方向が決まる
だから 検査がいくつも続くことがある
それは 回り道ではなく、必要な道のり

「検査が多いのでは」感じられるかもしれません。

けれど、出口が違えばやることも違います。

腸から漏れているのと肝臓でつくれていないのでは

まったく別の治療なるのです。

なぜ、たんぱくが大事なのか

「たんぱくが足りない」言われても

どれくらい困ることなのか伝わりにくいものです。

  • 血管のなかに、水を引き止めている
  • 体をつくる材料になっている
  • いろいろな物質を、運んでいる
  • 傷を治す働きにも関わっている
  • 足りなければ、全身に影響が出る
  • だから、数値として重く見られる

ただの「栄養が足りない」という話ではないのです。

体を成り立たせている土台薄くなっている——

そう考えるとなぜ急いで原因を探すのか分かります。

そして、たんぱくが減れば傷の治りも遅くなります。

手術が必要な状態でも数値が低いままでは行えないことがあります。

痩せているのに、お腹がふくれます

太ったのか、水がたまっているのか
背中とお腹を、分けて見てください。

この病気家でいちばん気づきやすい変化これです。

下痢や食欲不振、削痩、腹水、胸水などの症状あらわれます。

  • 背骨や肋骨が、触って分かるようになった
  • それなのに、お腹だけが張っている
  • 体重は減っているのに、見た目は変わらない
  • 下痢が続いている
  • 食欲が落ちている
  • 足やお腹の下が、むくんでいる

「太ったのかな」思われがちですが

背中を触ってみてください。

骨がはっきり分かるのにお腹だけ出ている——

それは、太ったのではありません。

⚠ 胸に水がたまると、呼吸に関わります

水がたまる場所お腹だけではありません。

胸水——

胸のなかにたまる肺がふくらめなくなります。

呼吸が速い浅い呼吸を繰り返す横になりたがらない——

これらは、急いで受診してほしいサインです。

お腹の張りよりずっと急ぎます。

なぜ、水がたまるのか

水がたまる仕組み
血管のなかに、水を引き止められなくなります。

仕組みが分かる症状の意味つながります。

血液中のたんぱく——

とくにアルブミンには大事な役割あります。

血管のなか水を引き止めておくことです。

アルブミンと水の関係
段階 起きること
アルブミンが十分にある 水は血管のなかにとどまる
アルブミンが減る 引き止める力が落ちる
水がしみ出す 血管の外へ出ていく
お腹にたまれば 腹水になる
胸にたまれば 胸水になる
皮膚の下にたまれば むくみになる

だから、「水を抜く」だけでは終わりません。

アルブミンが減ったままならまたたまってきます。

抜くこと楽にするための処置——

根本から治すこととは別なのです。

そして、少量の腹水や胸水、体のむくみには利尿剤が使用されます。

むくみは、押すと分かります

皮膚の下水がたまっているときの確かめ方あります。

むくみの確かめ方
場所 確かめ方
後ろ足 指で軽く押して、へこみが残るか見る
お腹の下 だぶついた感じがないか触る
あご下・のど ふくらんでいないか確かめる
押し方 強くしない。数秒当てるだけ
へこみが残る むくみがあるしるし
見つけたら いつからかを添えて、伝える

ふつうの皮膚なら指を離せばすぐ戻ります。

けれど、水がたまっているへこみがしばらく残ります。

毎日触っていれば変化に気づけます。

増えているのか減っているのか——

それが分かるだけで治療が効いているか手がかりになります。

どこで失われているかを、探します

どこで失われているか
出口を探すことが、治療の始まりです。

たんぱく減るのにはいくつかの道すじあります。

たんぱくが減る道すじ
出口 起きていること 手がかり
腸から漏れ出している 慢性的な下痢がある
腎臓 尿に混じって出ていく 尿検査で分かることがある
肝臓 つくる力が落ちている 肝臓の数値に変化が出る
出血 血ごと失われている 貧血もあわせて起きる
重い炎症 消耗している ほかの症状もある
栄養 取り込めていない 食べられていない期間がある

アルブミンつくっているのは肝臓です。

だから、肝臓の働き落ちているつくれなくなります。

肝臓病門脈シャントが背景にあることもあります。

そして、犬でいちばん多いのは

腸から漏れている場合です。

出口によって、聞くことが変わります

どこで失われているか分かれば

次に何を聞けばよいか見えてきます。

受診のときに聞きたいこと
出口 聞いてみたいこと
下痢はいつから続いているか、伝える
腎臓 尿の検査はしたか、聞いてみる
肝臓 肝臓の数値はどうかを、確かめる
出血 貧血もあるかどうか、聞く
まだ分からない 次に何を調べるのかを、聞いておく
共通 「原因を探している段階か」を確かめる

「いま、どの段階ですか」——

この質問役に立ちます。

原因を探しているのかもう分かっていて治療しているのか——

そこが分かる飼い主も見通しが立ちます。

いちばん多いのは、腸から漏れているとき

蛋白漏出性腸症——

腸から蛋白質が漏出し不足することで様々な症状が起きる症候群です。

本来なら腸は栄養を取り込む場所——

それが、逆にたんぱくを出していくのです。

  • 腸リンパ管拡張症
  • 胃腸型リンパ腫などの腫瘍
  • IBDと呼ばれる炎症性腸疾患
  • 寄生虫による感染性腸炎
  • ウィルスによる感染性腸炎
  • いずれも、腸に問題が起きている

手がかりなるのは下痢です。

慢性的な下痢続いている——

そして、痩せてきた——

お腹が張ってきた——

この順番進むことが多くなります。

下痢のほう先に出ていることが多いのです。

だから、そこで気づけるかどうか分かれ目になります。

「長く続く下痢」を、軽く見ないでください

下痢よくある症状です。

だから、続いていても「お腹が弱い子」済まされがちです。

けれど、何週間も続くのならそれは別の話です。

その間ずっとたんぱくが失われ続けている可能性があります。

体重を測ってみてください。

減っているなら受診の理由になります。

食べる量を増やしても、解決しません

食事について
増やすことではなく、内容を変えることです。

ここは、誤解されやすいところです。

「たんぱくが足りないのなら肉を増やせばよいのでは」——

そう考えるのは自然なことです。

けれど、この病気入ってくる量問題ではありません。

出ていく量問題です。

食事についての考え方
考え方 実際には
たくさん食べさせる 漏れていれば、出ていくだけ
高たんぱくの食事 腸に負担がかかることもある
脂肪の多い食事 漏れを悪化させることがある
行われるのは 低脂肪食などの食事療法
目的 腸からの漏れを、減らすこと
だから 指示された食事を、守ることが治療になる

原因に沿って低脂肪食などの食事療法行われます。

大事なのは「量」ではなく「内容」——

そして、指示された食事続けることがそのまま治療です。

おやつほかの食べもの足したくなるかもしれません。

けれど、それが台無しにすることがあります。

心配なら「これはあげてよいですか」聞いてください。

食べてくれないとき

療法食すすめられたけれど食べてくれない——

これは、よくあるつまずきです。

  • 少しずつ、いまの食事に混ぜていく
  • 温めると、においが立って食べることがある
  • いくつか種類があれば、変えてみる
  • どうしても食べないなら、相談する
  • 食べないまま放置しないこと
  • 「食べない」も、伝えるべき情報

「食べてくれません」言いにくい感じるかもしれません。

けれど、食べていないのなら治療が進んでいないのと同じです。

ほかの選択肢相談できることもあります。

そして、食欲が落ちること自体この病気の症状でもあります。

「わがまま」決めつけずに伝えてください。

治療で行われること

治療原因に沿って行われます。

治療の内容
行われること 内容
食事療法 低脂肪食などが用いられる
腸の炎症を抑えるステロイド剤など
利尿剤 少量の腹水や胸水、むくみに使われる
水を抜く 量が多く、苦しいときに行われる
原因への治療 腫瘍や感染があれば、そちらへも
経過 数値を見ながら、調整していく

腸の炎症背景にあるならステロイド剤使われます。

免疫の働き抑えることで炎症を落ち着かせる——

そういう使い方です。

効き方すぐには分かりません。

アルブミンの数値上がってくるか見ながら進めていきます。

🩺 効果は、数値で見ます

この病気治療の効果見るのは見た目ではありません。

血液検査の数値です。

お腹の張り引いたとしても

それは利尿剤が効いただけかもしれません。

たんぱくが戻ってきているか——

そこを見るために定期的な検査必要になります。

家で見ておいてほしいこと

数値は病院で測るものですが

家でも見られることあります。

  • 体重を、定期的に測る
  • お腹の張りが、変わっていないか
  • 足やお腹の下に、むくみがないか
  • 呼吸が速くなっていないか
  • 便の状態と、回数
  • 食べている量

とくに、呼吸——

胸に水がたまってくるそこに出てきます。

寝ているときお腹の動き見ておいてください。

いつもより速いなら早めに連絡してください。

そして、むくみ——

足を指で軽く押してへこみが残るなら伝えてほしい変化です。

そして、体重——

この病気では体重の見方ひとつ注意が要ります。

体重の読み方
変化 考えられること
体重が減った 痩せてきている、または水が抜けた
体重が増えた 回復した、または水がたまった
だから 数字だけでは、判断できない
あわせて見る 背中の骨の触れ方
あわせて見る お腹の張り、むくみの有無
そのうえで 血液検査の数値で確かめる

「体重が増えたからよくなった」とは限りません。

水がたまっただけということもあるからです。

だから、体重と一緒に背中の触り心地記録しておいてください。

よくある質問

Q. 低たんぱく血症とは、どんな状態ですか?

A. 血液中のたんぱくが不足した状態です。病名というより、状態を表す言葉です。なぜ足りないのか、どこで失われているのかを探すことが次の段階になります。

Q. なぜ、お腹に水がたまるのですか?

A. アルブミンが、水を血管内に引き止めているからです。それが減ると引き止める力が落ち、水が血管の外へしみ出します。お腹にたまれば腹水、胸にたまれば胸水、皮膚の下にたまればむくみになります。

Q. 太ったのだと思っていました

A. 背中を触ってみてください。背骨や肋骨がはっきり触れるのにお腹だけ張っているなら、太ったのではなく水がたまっている可能性があります。

Q. 犬では、どんな原因が多いですか?

A. 蛋白漏出性腸症が、よく問題になります。腸リンパ管拡張症、胃腸型リンパ腫などの腫瘍、IBDと呼ばれる炎症性腸疾患などが原因となり、その他には寄生虫やウィルスによる感染性腸炎に起因することもあります。

Q. たんぱくの多い食事を、たくさん与えればよいですか?

A. それでは解決しません。入ってくる量ではなく、出ていく量の問題だからです。治療では、原因に沿って低脂肪食などの食事療法が行われます。

Q. 治療では何をしますか?

A. 原因に沿って、食事療法や薬の投与を行います。腸の炎症を抑えるステロイド剤などが使われ、少量の腹水や胸水、体のむくみには利尿剤が使用されます。

Q. 水を抜けば、治りますか?

A. 抜くことは、楽にするための処置です。アルブミンが減ったままなら、また水はたまってきます。原因を治療しなければ、繰り返すことになります。

Q. 下痢が続いていますが、関係ありますか?

A. 大いにあります。腸から漏れているとき、慢性的な下痢が手がかりになります。何週間も続く下痢があり、体重が減っているなら、受診の理由になります。

Q. 体重が増えたので、よくなったのでしょうか?

A. そうとは限りません。水がたまって増えていることもあります。体重の数字だけでなく、背中の骨の触れ方やお腹の張り、むくみの有無もあわせて見て、最終的には血液検査の数値で確かめることになります。

Q. 療法食を食べてくれません

A. そのことを伝えてください。食べていないなら、治療が進んでいないのと同じです。少しずつ混ぜる、温めるなどの方法もありますし、ほかの選択肢を相談できることもあります。

Q. 呼吸が速いのですが

A. 急いで受診してください。胸に水がたまると、肺がふくらめなくなります。お腹の張りより、ずっと急ぐ状態です。

まとめ|背中を触って、確かめてください

この病気で家でできるいちばんのこと

背中を触ることです。

お腹が出ているのに背骨がはっきり分かる——

そのちぐはぐさこの病気の顔です。

そして、「低たんぱく血症です」言われたときには

「どこで失われているのですか」聞いてみてください。

その答えが分かれば治療の進む方向決まります。

数値を戻すこと目標——

お腹の見た目ではなくそちらを見ていってください。

時間のかかる病気です。

食事も、薬も、検査も続いていきます。

けれど、出口が分かってそこを塞げれば

数値は戻ってきます。

今日できる3つ

  • 1背中を触って、骨が分かるかどうか確かめる
  • 2体重を測って、記録を始める
  • 3寝ているときの呼吸の速さを、見ておく

水がたまるのには、理由があります。その出口を探すことが、治療の始まりです。