

こんばんは。
今回「犬猫の悩みを即解決!」が自信を持ってお届けする記事は「犬の前立腺炎|熱と痛みが出たら、その日のうちに」です。ではどうぞ!
昨日まで、元気だった。
それが今朝は、うずくまったまま動かない——
抱き上げようとしたら、鳴いた。体が、いつもより熱い——
未去勢のオスでこうした変化が急に起きたとき——候補に入れておいてほしい病気があります。
前立腺炎です。
前立腺に細菌が入り込んで炎症を起こす病気で、急性のかたちでは発熱と強い痛みが出ます。
そして、重ければ敗血症——菌が全身に回った状態まで進むことがあります。
同じ前立腺の病気でも前立腺肥大とは、急ぎ方がまるで違う——そこを、まず知っておいてください。
結論
前立腺炎は前立腺に細菌が入って起こる病気で、未去勢のオスに多く見られます。急性では、発熱・強い腹部の痛み・元気食欲の低下が出て、重症では敗血症に至ることもあります。一方慢性ではほとんど症状が出ず、血尿や膀胱炎を繰り返すかたちで現れます。治療は抗菌薬ですが前立腺は薬が届きにくい場所のため急性で4週間以上、慢性なら1〜2か月と長く続ける必要があります。膿瘍を作っている場合は手術が必要になることもあります。去勢手術で、発症を防げることが多い病気です。
この記事でわかること
- ✓菌は、どこから入るのか
- ✓急性と慢性、2つの顔
- ✓薬が届きにくい場所です
- ✓膿瘍という、その先
- ✓検査と、受診のしかた
- ✓去勢という、根本の対策
菌は、どこから入るのか

前立腺は膀胱のすぐ下にあり、尿道を取り囲むような形をしています。
そして、その尿道は外につながっています。
つまり、外から菌が入り込む道がもともと通っている——それが、この病気の前提です。
| 経路 | 説明 |
|---|---|
| 尿道からの逆行 | もっとも多い。外から尿道をさかのぼる |
| 膀胱から下りてくる | 膀胱炎が前立腺まで広がる |
| 血液に乗って | ほかの場所の感染が運ばれてくる |
| 精巣・精管から | つながった器官をたどってくる |
| 下地として | 前立腺肥大があると、菌が住みつきやすい |
「たまたま菌が入った」のではなく「入った菌が、住みつける状態だった」——そう考えるほうが実際に近いと言えます。
健康な前立腺にも菌はときどき入り込みます。けれどふつうは、そこで排除されます。
問題になるのは、排除しきれない事情があるときです。
- 前立腺が大きくなり、内部に隙間ができている
- 嚢胞(液体のたまった袋)がある
- 尿がうまく出きらず、たまりやすい
- 結石があり、粘膜が傷ついている
- 糖尿病などで、感染に弱くなっている
- 高齢で、全体の抵抗力が落ちている
だからこそこの病気は「未去勢の中高齢のオス」に集中します。
男性ホルモンの影響で前立腺が大きくなっている——その状態そのものが、菌にとっての住みかになるのです。
肥大と前立腺炎は、別々の病気ではなくつながっている——そう理解しておくと話が早くなります。
もうひとつ、知っておいてほしいことがあります。
前立腺は、尿の通り道のすぐそばにあります。
だから、この場所で炎症が起きればその影響は尿にも現れます。血が混じる、膿が混じる、出しにくくなる——そうした変化が同時に起きてくるのです。
逆に言えば——尿の異常はこの病気に気づく数少ない手がかりでもあります。とくに慢性の場合、尿の変化しか出ないことが少なくありません。
急性と慢性、2つの顔

この病気のやっかいなところはまったく違う2つの現れ方をすることです。
| 急性 | 慢性 | |
|---|---|---|
| 発熱 | ある | ない |
| 痛み | 強い。触ると鳴く | ほとんどない |
| 元気・食欲 | 落ちる | 変わらない |
| 尿 | 血が混じる、出しにくい | 血尿を繰り返す |
| 気づかれ方 | 急に様子が変わる | 膀胱炎の再発として |
| 急ぎ方 | その日のうちに | 近いうちに、必ず |
急性のときは見逃しようがありません。
熱が出て、うずくまり、お腹に触れると鳴く——誰が見ても「おかしい」と分かる状態になります。
問題は、慢性のほうです。
元気もある。食欲もある。熱もない。ただ、ときどき血尿が出る——
そして膀胱炎として治療され、いったん良くなり、しばらくするとまた戻る——
この繰り返しが慢性前立腺炎の典型的な姿です。
繰り返す膀胱炎は、疑う理由になります
オスの犬で膀胱炎を何度も繰り返す——
これは、それ自体が手がかりです。
そもそもオスは尿道が長く細いためメスより膀胱炎になりにくい——それなのに繰り返すなら「菌が居座れる場所」がどこかにあると考えるのが自然です。
その場所としてまず疑われるのが前立腺であり、次に結石です。
「また膀胱炎ですね」で3回目、4回目を迎えているなら——
「前立腺は診てもらえますか」と一度、口に出してみてください。
急性は、なぜ危ないのか
急性の前立腺炎が「その日のうちに」と言われるのには理由があります。
前立腺には、血管が豊富に通っています。
そこで菌が増えれば血流に乗って全身へ運ばれる——それが敗血症です。
敗血症になると血圧が下がり、各臓器に血が回らなくなります。腎臓、肝臓、そして血液を固める仕組みまで次々に崩れていく——そうなれば、集中的な治療が必要な状態です。
「熱があるだけ」と見えていてもその内側ではそこへ向かう変化が始まっていることがあります。
半日、一日の差が結果を分けることがある——だから、待たないでほしいのです。
薬が届きにくい場所です

治療は抗菌薬です。細菌が原因なのですから、それを叩く——方針としては単純です。
ただし、ここにこの病気特有の難しさがあります。
前立腺は、薬が届きにくい臓器なのです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 期間(急性) | 少なくとも4週間の投薬が推奨される |
| 期間(慢性) | 1〜2か月ほど、根気よく続ける |
| 薬の選び方 | 前立腺の中まで届く薬が選ばれる |
| 培養検査 | 菌の種類と、効く薬を調べる |
| 再検査 | 終了前に、治っているか確かめる |
| 自己判断の中止 | 再発の最大の原因になる |
「症状が消えたのに、まだ薬を飲ませるのですか」——
よく出る質問です。そしてこの病気では、答えははっきりしています。
続けてください。
症状が消えることと菌がいなくなることは別のことだからです。
数日で痛みも熱も引きます。けれど、前立腺の奥に残った菌はまだ生きています。
そこでやめれば、残った菌がまた増える——しかも、中途半端に薬を浴びた菌は次に同じ薬が効きにくくなることもあります。
再発しやすい病気だと言われるのはこの構造のためです。
なぜ、前立腺には薬が届きにくいのか——
前立腺の内部は血液から薬が入り込みにくいつくりになっています。
血液の中に十分な濃度の薬があっても前立腺の奥までは同じだけ入っていかない——そういう性質を持っているのです。
だから、薬の種類も限られます。「膀胱炎に効く薬」がそのまま使えるとは限らない——前立腺の中まで届く薬を選ぶ必要があるのです。
培養検査がすすめられるのもここに理由があります。菌の種類と、その菌に効く薬が分かれば長い治療を無駄なく進められます。
薬を続けるための工夫
- 1〜2か月かかると、最初に聞いておく
- 飲ませ方が難しければ、剤形の相談をする
- 飲めなかった日は、記録して伝える
- 途中で症状が戻ったら、すぐ連絡する
- 終了前の再検査を、必ず受ける
- 「もういいだろう」で判断しない
1か月を超える投薬は飼い主にとっても負担です。
だからこそ、最初に「どれくらいかかるか」を聞いておいてください。
「2週間で終わる」と思って始めるのと「2か月かかる」と知って始めるのでは続けやすさがまるで違います。
膿瘍という、その先

炎症が進むと前立腺の中に膿がたまることがあります。
前立腺膿瘍——この病気の、もっとも危険なかたちです。
| 状態 | 起きること | 対応 |
|---|---|---|
| 炎症だけ | 発熱・痛み | 抗菌薬 |
| 膿がたまる | 薬が中まで届かない | 手術が検討される |
| 膿瘍が破れる | 腹膜炎を起こす | 緊急手術 |
| 菌が全身へ | 敗血症。命に関わる | 集中的な治療 |
膿がたまってしまうと口から飲んだ抗菌薬はその中まで届きません。
膿という袋の外側で薬が止まってしまう——だから、外科的に出す必要が出てくるのです。
そして、その袋が破れれば——膿がお腹の中に広がり、腹膜炎になります。
ここまで来れば、夜間でも受診すべき状況です。
🩺 なぜ、超音波を撮るのか
膿瘍ができているかどうかは外からは分かりません。
超音波で内部を見て、はじめて確かめられるものです。
「熱が出た」という同じ入口から抗菌薬で治る場合と手術が必要な場合に分かれていく——
だから、画像検査をすすめられたら受けておいてください。方針そのものが変わる情報だからです。
「明日の朝、病院が開いてから」では間に合わないことがある——それが、この病気でもっとも伝えたい点です。
待てないサイン
- 体が熱い、震えている
- お腹を触ると鳴く、逃げる
- うずくまって動かない
- 尿の姿勢をとるのに、出ていない
- 歯ぐきが白い、または紫色
- 呼吸が速く、ぐったりしている
このうち複数がそろっているなら時間を置かないでください。
とくに尿が出ていない場合は尿道の閉塞が重なっている可能性もあり、それ自体が数時間で命に関わる状態です。
検査と、受診のしかた
診断は、触診と画像検査、そして尿の検査で進められます。
| 検査 | 何が分かるか |
|---|---|
| 直腸からの触診 | 大きさ、左右差、そして痛みの有無 |
| 超音波検査 | 内部の状態。膿瘍や嚢胞があるか |
| 血液検査 | 白血球の数など、炎症の程度 |
| 尿検査 | 血、膿、細菌が混じっていないか |
| 細菌培養 | 菌の種類と、効く薬 |
| レントゲン | 周囲への影響、結石の有無 |
触診で強い痛みがある——それだけで、肥大と炎症を分ける大きな手がかりになります。
肥大だけなら、触られてもふつうは痛がりません。痛みがあるということ自体が炎症を示す情報になるのです。
受診のときに伝えてほしいことを挙げておきます。
- 去勢しているかどうか(していないなら年齢も)
- いつから様子が変わったか
- 熱を測ったなら、その数字
- 尿は出ているか、色はどうか
- 過去に膀胱炎を繰り返していないか
- ほかに持病や、飲んでいる薬はないか
とくに「去勢しているかどうか」——
これを伝えるだけで疑う病気の順番が変わります。未去勢のオスなら、前立腺は最初に候補に挙がるべき場所だからです。
そして、過去の膀胱炎の履歴も必ず伝えてください。「繰り返している」という情報が慢性の前立腺炎を浮かび上がらせることがあります。
去勢という、根本の対策
抗菌薬で炎症を抑えたあと——もうひとつ、考えるべきことがあります。
去勢手術です。
この病気の下地には「大きくなった前立腺」があります。
去勢すれば男性ホルモンの影響がなくなり、前立腺は数週間から数か月かけて小さくなっていきます。
| 対応 | できること | できないこと |
|---|---|---|
| 抗菌薬だけ | 今の炎症を抑える | 下地は残る |
| 去勢も行う | 前立腺が小さくなる | 今の菌は薬で叩く必要がある |
| 両方 | 再発しにくくなる | — |
| 予防として | 若いうちの去勢で、発症を防げることが多い | — |
「薬で治ったのだから、手術までは」——
そう思われるのは自然なことです。
けれど下地が残ったままならまた同じことが起こりえます。
そして、再発のたびに1〜2か月の投薬——それを繰り返すことになるのです。
もちろん、高齢や持病があれば手術の負担も考える必要があります。
「どちらが良いか」ではなく「この子にとってどうか」——そこを、獣医師と一緒に考えてください。
なお、急性の炎症が起きている最中には手術は行われないのがふつうです。
炎症が強い場所にメスを入れれば出血も、感染も広がりやすい——だから、まず薬で落ち着かせてからという順番になります。
「治療が終わったあと」が去勢を考えるタイミングだと覚えておいてください。
詳しい判断のしかたは前立腺肥大の記事で解説しています。
なお、熱が続いたあとには脱水や、腎臓への負担が残ることもあります。水を飲む量や尿の量に変化がないかもしばらく見ておいてください。気になる場合は腎臓の記事も参考になります。
よくある質問
Q. 前立腺炎とはどんな病気ですか?
A. 前立腺に細菌が入り込んで、炎症を起こす病気です。未去勢のオスに多く、大きくなった前立腺が菌の住みかになることで起こります。急性では発熱と強い痛みが出て、重ければ敗血症に至ることもあります。
Q. 前立腺肥大とは違うのですか?
A. 違います。肥大はホルモンによるもので、発熱も強い痛みも出ません。前立腺炎は感染によるもので、熱が出て、触ると強く痛がります。ただし肥大が下地になって前立腺炎が起こるため、つながってもいます。
Q. 慢性だと、どんな症状が出ますか?
A. ほとんど症状が出ないのが慢性の特徴です。血尿が出たり、膀胱炎を繰り返したりするかたちで現れます。オスで膀胱炎を何度も繰り返すなら、前立腺を疑う理由になります。
Q. 治療にはどれくらいかかりますか?
A. 急性で少なくとも4週間、慢性なら1〜2か月ほどかかります。前立腺は薬が届きにくい場所のため、長く続ける必要があります。症状が消えても、指示された期間は必ず飲ませてください。
Q. 症状が消えたら、薬をやめてよいですか?
A. やめないでください。再発の最大の原因になります。症状が消えることと、菌がいなくなることは別のことです。残った菌が増え、次に同じ薬が効きにくくなることもあります。
Q. 手術が必要になるのはどんなときですか?
A. 膿瘍——前立腺の中に膿がたまってしまった場合です。口から飲んだ抗菌薬は膿の中まで届かないため、外科的に出す必要があります。膿瘍が破れると腹膜炎を起こすため、緊急の対応になります。
Q. 予防はできますか?
A. 去勢手術で、発症を防げることが多い病気です。精巣を取り除けばテストステロンがほとんど出なくなり、前立腺は数週間から数か月かけて小さくなっていきます。
まとめ|熱が出たら、待たないでください
前立腺炎は「感染の病気」です。
同じ前立腺でも、肥大とはまるで急ぎ方が違います。
熱がある。お腹を触ると鳴く。うずくまって動かない——
この3つがそろったならその日のうちに受診してください。
そして、治療が始まったら最後まで薬を続けること。
1〜2か月——長いと感じられるはずです。
けれど、前立腺は薬が届きにくい場所で途中でやめればほぼ確実に戻ってきます。
もうひとつ——
元気も食欲もあるのに血尿だけを繰り返すという静かなかたちもこの病気にはあります。
「またか」で終わらせず「なぜ繰り返すのか」を一度、確かめてください。
そして、この病気の多くは去勢で防げます。
未去勢のオスと暮らしているなら「まだ何も起きていないうち」に一度、話題にしておいてください。起きてから考えるより選べる幅がずっと広いはずです。
今日できる3つ
- 1体が熱くないか、お腹を触って痛がらないかを確かめる
- 2尿の色と、出ているかどうかを見る
- 3膀胱炎を繰り返しているなら、前立腺を診てもらえないか相談する
急性なら、その日のうちに。熱と強い痛みは、待ってよいサインではありません。

本日の「犬猫の悩みを即解決!」の記事「犬の前立腺炎|熱と痛みが出たら、その日のうちに」でした。
下記の#タグキーワードからも、関連記事を検索できます。
Others 同じカテゴリの記事 |

犬の寒冷凝集素症|冬に、耳の先だけが傷んでいくなら |
犬の外耳炎|繰り返すなら、原因は耳の外にあります |
犬の角膜浮腫|目が青白く濁るのは、何かの合図 |
犬の角膜炎|原因が違えば、見通しも変わる |
犬の核硬化症|白内障と間違えやすい、加齢の変化 |
犬の角膜潰瘍|深さで変わる、危険の度合い |




