

こんばんは。
今回「犬猫の悩みを即解決!」が自信を持ってお届けする記事は「犬の自己免疫性疾患|守るはずの力が、自分を攻撃しています」です。ではどうぞ!
免疫とは体を守る力です。
入ってきた細菌やウイルスを見つけて攻撃する——
その力があるから犬は生きていられます。
けれど、その力が向きを間違えることがあります。
自分の細胞を敵だと見なしてしまう——
それが、自己免疫性疾患です。
そして、この病気には知っておくと見通しがよくなる点があります。
攻撃される場所によってまったく違う病名になるのです。
赤血球なら貧血血小板なら出血関節なら関節炎——
ばらばらに見える病気の根っこがひとつなのです。
結論
自己免疫性疾患は免疫が自分自身の細胞を攻撃してしまう病気です。免疫介在性溶血性貧血は2〜8歳の犬に多く、とくに雌では雄の3〜4倍の発生率とされています。症状には寒がる、食欲不振、落ちつきがない、運動時疲れる、脱力などがあり、歯茎が白っぽい、皮膚のピンク色がなくなるのは重大な貧血のサインです。まれに赤色尿や黄疸も見られ、消化器症状(嘔吐、下痢)がみられることもあります。治療は過剰な免疫を抑えることが中心で、多くの場合ステロイド剤での治療に反応し、状況によっては並行して他の免疫抑制剤が使用されます。
この記事でわかること
- ✓免疫が、自分を攻撃しています
- ✓どこを攻撃するかで、病名が変わります
- ✓赤血球が壊されるとき
- ✓血小板が壊されるとき
- ✓両方が同時に起きることがあります
- ✓治療は「免疫を抑える」ことです
- ✓薬を減らしていく道のり
免疫が、自分を攻撃しています
ふつう、免疫は「自分」と「自分でないもの」を見分けています。
入ってきたものだけ攻撃する——
その見分けがうまくいかなくなると
自分の細胞を攻撃し始めます。
| 項目 | この病気では |
|---|---|
| 原因のありか | 外からではなく、体の内側にある |
| 治療の方向 | 感染症は菌を叩く。この病気は免疫を抑える |
| うつるか | うつらない |
| 予防 | 飼い方で防げるものではない |
| 原因 | はっきりしないことが多い |
| 経過 | 抑えながら付き合っていくことが多い |
「何かをしてしまったから」ではありません。
飼い方や食べもので防げるものではないのです。
ここは、はっきり書いておきます。
自分を責める飼い主が多い病気だからです。
なぜ向きが変わってしまうのか——
そこは、はっきりしないことが多いのです。
感染や薬がきっかけになることもあると考えられていますが
「これが原因でした」と言えることは多くありません。
だから、原因を探すことより
いま起きている攻撃を止めることから始まります。
どこを攻撃するかで、病名が変わります

ここが、この病気を理解する鍵です。
仕組みは同じ——
けれど、免疫がどこを狙うかで出てくる症状がまったく違います。
| 攻撃される場所 | 起きること | 見えること |
|---|---|---|
| 赤血球 | 壊されて、貧血になる | 歯ぐきが白い、疲れる |
| 血小板 | 壊されて、血が止まらない | 赤い点、鼻血、血尿 |
| 関節の滑膜 | 複数の関節が炎症を起こす | あちこち痛がる、熱が出る |
| 甲状腺 | ホルモンがつくれなくなる | 元気がない、太る、毛が抜ける |
| 皮膚 | ただれ、水ぶくれができる | 鼻や目のまわりの皮膚が荒れる |
| 複数同時 | いくつもの場所で起きることも | 症状が重なって見える |
だから、「関節炎」と「貧血」というまるで違う病気が
同じ根っこから出ていることがあるのです。
複数の関節が同時に腫れて熱が出るなら関節炎の記事もあわせて読んでみてください。
そして、甲状腺が攻撃されると甲状腺機能低下症につながります。
「免疫が関わっているリンパ球甲状腺炎」——
これも、自己免疫の仲間です。
いくつも重なることがあります
免疫の向きが狂っているのですから
ひとつの場所だけで終わるとは限りません。
- 貧血と血小板減少が、同時に起きることがある
- 関節と皮膚に、同時に出ることがある
- ひとつ治まっても、別の場所に出ることがある
- だから、全身を見ながら診ていく
- 「新しい症状」は、必ず伝えてほしい
- 関係なさそうに見えても、つながっていることがある
「これは別の病気だろう」と思うようなことでも
伝えておいてください。
ばらばらに見える症状をつなげるのがこの病気の診かただからです。
飼い主が気づいたことがその糸口になります。
赤血球が壊されるとき

免疫介在性溶血性貧血——
赤血球が免疫に攻撃されて壊されていく病気です。
2〜8歳の犬に多くとくに雌では雄の3〜4倍の発生率とされています。
- 寒がる。暖かい場所を探す
- 食欲不振
- 落ちつきがない
- 運動時に疲れる。少し歩いて座り込む
- 脱力する。力が入らない
- 嘔吐、下痢などの消化器症状が出ることも
そして、いちばん見てほしいのが歯ぐきの色です。
歯茎が白っぽい皮膚のピンク色がなくなる——
これらは重大な貧血のサインです。
⚠ 歯ぐきの色を、いま見てください
唇をめくって歯ぐきの色を見てみてください。
健康な状態ならきれいなピンク色です。
白っぽい血の気がない——
そう見えるならすぐに受診してください。
そして、元気なうちに一度見ておくと
「いつもの色」が分かります。
比べる基準があることが大切です。
まれに赤色尿や黄疸も見られます。
おしっこの色が赤い、またはこげ茶色——
白目や歯ぐきが黄色っぽい——
これらは、壊された赤血球の成分が出てきているしるしです。
急いで受診してほしいサインです。
なぜ、こんなに疲れるのか
赤血球の役割は酸素を運ぶことです。
それが壊されているのですから
体じゅうに酸素が届かなくなります。
| 症状 | つながり |
|---|---|
| すぐ疲れる | 筋肉に酸素が足りない |
| 寒がる | 体を温める力が落ちている |
| 脱力する | 力を出す余裕がない |
| 落ちつきがない | 苦しさから、そわそわする |
| 食欲不振 | 体全体が弱っている |
| 呼吸が速い | 少しでも多く酸素を取り込もうとする |
「散歩に行きたがらない」——
それは、わがままでも老いでもなく
本当に動けないからかもしれません。
急にそうなったならとくに調べてほしい変化です。
血小板が壊されるとき

血小板は出血を止めるための細胞です。
それが壊されると血が止まりにくくなります。
免疫介在性血小板減少症は過剰な免疫を抑える治療を行い自己免疫による血小板の破壊を止めます。
| 見えること | 説明 |
|---|---|
| 皮膚に赤い点 | 小さな出血が、点になって見える |
| あざができる | ぶつけた覚えがないのに、内出血する |
| 鼻血 | 理由なく出る、止まりにくい |
| 血尿・血便 | 体の中でも出血している |
| 歯ぐきから出血 | 触っただけで、にじむ |
| 元気がない | 出血が続けば、貧血にもなる |
お腹の毛の薄いところを見てみてください。
赤い小さな点が散らばっているならそれが手がかりです。
「虫刺されかな」と思われがちですが
押しても色が消えないのが出血による点の特徴です。
血が止まらない、という状態
血小板が減っているときにいちばんこわいことは
見えないところで出血することです。
| 場所 | 気づき方 |
|---|---|
| 皮膚 | 赤い点、あざとして見える |
| 鼻 | 鼻血。止まりにくい |
| 口 | 歯ぐきからにじむ |
| 消化管 | 黒い便、血の混じった便 |
| 尿 | 赤い、またはピンク色 |
| 体の中 | 見えない。元気がなくなることで気づく |
黒い便——
これは、胃や腸で出血しているときに出ることがあります。
「タールのような便」と表現されるものです。
気づいたら写真を撮って受診してください。
そして、この時期はぶつけないように気をつけてください。
激しい運動や高いところからの飛び降りは控えてほしい時期です。
両方が同時に起きることがあります
ここは、知っておいてほしいところです。
免疫介在性溶血性貧血を一緒に発症するエヴァンス症候群になると
赤血球の破壊により貧血が同時に起こるため非常に危険な状態になります。
- 血小板が減り、出血が止まらない
- 同時に、赤血球も壊されて貧血になる
- 出血しやすいのに、血が足りない
- この組み合わせが、非常に危険
- 急いで治療を始める必要がある
- 輸血が必要になることもある
出血が起きても補えない——
そういう状態だと考えてください。
だから、この病気では「様子を見る」という時間がありません。
歯ぐきが白い赤い点がある血が止まらない——
どれかがあればその日のうちに受診してください。
治療は「免疫を抑える」ことです

ここが、ほかの病気といちばん違うところです。
感染症なら免疫を助けたい——
けれど、この病気では免疫を抑えます。
攻撃しているのが免疫そのものだからです。
| 薬 | 位置づけ |
|---|---|
| ステロイド剤 | まず最初に使われる。多くはこれに反応する |
| シクロスポリン | 免疫抑制剤のひとつ |
| アザチオプリン | 同じく、免疫抑制剤 |
| ミコフェノール酸モフェチル | 併用されることがある |
| レフルノミド | 選択肢のひとつ |
| ダナゾール | あわせて使われることがある |
多くの場合ステロイド剤での治療に反応し
主に最初はステロイド剤が使われ状況によってはそれと並行して他の免疫抑制剤が使用されます。
「ステロイドはこわい薬」という印象を持っているかもしれません。
けれど、この病気では攻撃を止めるための薬です。
使わなければ壊され続けます。
副作用があるのは本当です。
けれど、その副作用と壊され続けることを比べたうえで選ばれています。
心配なことはそのまま聞いてください。
納得したうえで続けるほうが長い治療を支えられます。
重いときは、支える治療も
貧血が進んでいるときには攻撃を止めるだけでは間に合わないことがあります。
- 輸血で、足りない血を補うことがある
- 点滴で、体を支えることがある
- 入院して、経過を見ることがある
- 酸素が必要になることもある
- いずれも、時間を稼ぐための処置
- その間に、薬が効いてくるのを待つ
薬が効き始めるまでには時間がかかります。
その間をもちこたえるための処置——
だから、「入院しましょう」と言われたときは
そのほうが安全だからだと考えてください。
🩺 治療中に、気をつけてほしいこと
免疫を抑えるということは感染に弱くなるということでもあります。
だから、治療中は体調の変化に気をつけてください。
熱が出た下痢が続く咳が出る——
ふだんなら様子を見ることでも相談してほしいのです。
そして、水をよく飲むよく食べる息が荒いなど
薬による変化も伝えてください。
薬を減らしていく道のり
この病気の治療には時間がかかります。
攻撃を止めるそして、落ち着いたら少しずつ減らす——
この「少しずつ」がとても大事です。
- 急にやめると、攻撃が再び始まることがある
- だから、時間をかけて減らしていく
- 検査をしながら、減らせるかを判断する
- 減らしている途中で、戻ることもある
- 自己判断でやめない
- 再発することもあると、知っておく
「よくなったからやめてよいですか」——
その気持ちはよく分かります。
けれど、よくなっているのは薬が攻撃を抑えているからです。
急にやめれば抑えるものがなくなります。
減らす判断は検査の数値を見ながら行われます。
定期的な受診がそのまま治療の一部です。
再発することもあります
正直に書いておきます。
治療がうまくいって薬を減らせたあと再び起きることがあります。
| こんなとき | 考えること |
|---|---|
| 薬を減らした直後 | 症状が戻っていないか、注意して見る |
| 歯ぐきの色が薄い | すぐ連絡する |
| また赤い点が出た | すぐ連絡する |
| 元気がなくなった | 早めに相談する |
| 再発したら | また抑えるところから始める |
| 大事なこと | 早く気づけば、対応しやすい |
再発は失敗ではありません。
この病気にはそういう性質がある——
だからこそ、気づける目を持っておいてほしいのです。
歯ぐきの色とお腹の赤い点——
この2つを覚えておいてください。
早く気づけばまた抑えるところから始められます。
よくある質問
Q. 自己免疫性疾患とは、どんな病気ですか?
A. 免疫が自分自身の細胞を攻撃してしまう病気です。本来は外から入ってきたものを攻撃する仕組みが、自分の細胞を敵とみなしてしまう状態です。
Q. どんな症状が出ますか?
A. 攻撃される場所によって、まったく違います。赤血球なら貧血、血小板なら出血、関節なら関節炎、甲状腺ならホルモン不足というように、同じ仕組みでも出てくる症状が変わります。
Q. 貧血のサインは何ですか?
A. 歯茎が白っぽい、皮膚のピンク色がなくなることです。これらは重大な貧血のサインとされています。ほかに、寒がる、食欲不振、運動時に疲れる、脱力なども見られます。
Q. どんな犬に多いですか?
A. 免疫介在性溶血性貧血は、2〜8歳の犬に多いとされています。とくに雌では、雄の3〜4倍の発生率と報告されています。
Q. 赤いおしっこが出ました
A. 急いで受診してください。まれに赤色尿や黄疸も見られます。壊された赤血球の成分が出てきているしるしのことがあります。
Q. 治療では何をしますか?
A. 過剰な免疫を抑える治療を行います。多くの場合ステロイド剤での治療に反応し、状況によってはそれと並行して他の免疫抑制剤が使用されます。
Q. 免疫抑制剤には、どんなものがありますか?
A. シクロスポリン、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、レフルノミド、ダナゾールなどが挙げられます。状況に応じて、ステロイド剤と並行して使われます。
Q. エヴァンス症候群とは何ですか?
A. 血小板減少症に、免疫介在性溶血性貧血を一緒に発症した状態です。赤血球の破壊により貧血が同時に起こるため、非常に危険な状態になります。
Q. よくなったので、薬をやめてよいですか?
A. 自己判断でやめないでください。急にやめると、攻撃が再び始まることがあります。検査をしながら、時間をかけて減らしていくことになります。
Q. 黒い便が出ました
A. 受診してください。胃や腸で出血しているときに、黒い便が出ることがあります。血小板が減っている状態では、見えないところで出血していることがあります。写真を撮って持っていくと伝わりやすくなります。
Q. うつりますか?
A. うつりません。外から入ってきたものが原因の病気ではなく、免疫が自分の細胞を攻撃してしまう病気だからです。飼い方や食べもので防げるものでもありません。
まとめ|歯ぐきの色を、覚えておいてください
この病気で家でできることはそう多くありません。
けれど、気づくことはできます。
歯ぐきの色——
元気なうちに一度見ておいてください。
それが「いつもの色」——
比べる基準があれば変化に気づけます。
そして、お腹の毛の薄いところに赤い点がないか——
この2つだけ覚えておいてください。
治療は長くなりますが抑えられる病気です。
早く気づけたぶんだけ楽に進みます。
そして、この病気は飼い主のせいではありません。
防げるものでもうつるものでもないのです。
できることは気づくことと続けること——
その2つでじゅうぶんです。
今日できる3つ
- 1唇をめくって、歯ぐきの色を見ておく
- 2お腹の毛の薄いところに、赤い点がないか確かめる
- 3薬を飲んでいるなら、次の検査がいつか確かめる
免疫は、守るための力です。その向きが変わってしまったときに、支える方法があります。

本日の「犬猫の悩みを即解決!」の記事「犬の自己免疫性疾患|守るはずの力が、自分を攻撃しています」でした。
下記の#タグキーワードからも、関連記事を検索できます。
Others 同じカテゴリの記事 |

犬の寒冷凝集素症|冬に、耳の先だけが傷んでいくなら |
犬の外耳炎|繰り返すなら、原因は耳の外にあります |
犬の角膜浮腫|目が青白く濁るのは、何かの合図 |
犬の角膜炎|原因が違えば、見通しも変わる |
犬の核硬化症|白内障と間違えやすい、加齢の変化 |
犬の角膜潰瘍|深さで変わる、危険の度合い |




