

こんばんは。
今回「犬猫の悩みを即解決!」が自信を持ってお届けする記事は「犬の心室中隔欠損症|子犬の心雑音は、意味が違います」です。ではどうぞ!
迎えたばかりの子犬を初めての健診に連れて行った——
そこで「心臓に雑音があります」と言われた——
頭が真っ白になったという方もおられるはずです。
まだ数か月の子犬に心臓の病気——
けれど、まず知っておいてほしいことがあります。
子犬の心雑音と高齢の犬の心雑音は意味がまったく違います。
高齢の犬で雑音が聞こえたなら多くは僧帽弁閉鎖不全症——年齢とともに弁が変性していく病気です。
けれど、子犬の場合は生まれつきの心臓の形の異常を疑うことになります。
そのひとつが心室中隔欠損症です。
結論
心室中隔欠損症は心臓の右心室と左心室を仕切っている壁(心室中隔)に穴があいている先天性の病気です。欠損孔が小さい場合はほとんど問題になりませんが、ある程度大きい場合には左心室から右心室へ血液が短絡し、左心系への負担が大きくなります。左心が拡大し、咳や運動不耐性(疲れやすさ)が現れます。診断は聴診と画像検査で行われ、子犬の時期の心雑音は先天性の心奇形が疑われるため注意が必要です。内科治療では強心剤・血管拡張剤・利尿薬などで心臓の負担を軽くしますが、進行を抑えることはできても完治はしません。欠損孔が大きい場合には、外科手術で穴をふさぐことが検討されます。小さな穴が自然にふさがることもありますが、非常にまれとされています。
この記事でわかること
- ✓生まれつき、壁に穴があるということ
- ✓子犬の心雑音は、意味が違います
- ✓穴の大きさが、すべてを決めます
- ✓雑音が大きい=重い、ではありません
- ✓治療——ふさぐか、支えるか
- ✓迎えたばかりの方へ
- ✓暮らしのなかで、できること
生まれつき、壁に穴があるということ

心臓は4つの部屋に分かれています。
下側の2つが左心室と右心室——そのあいだを仕切っている壁を心室中隔といいます。
その壁に生まれつき穴があいている——それが、この病気です。
| 正常なとき | 穴があるとき | |
|---|---|---|
| 左右の心室 | 完全に分かれている | 穴でつながっている |
| 血液の流れ | 左は全身へ、右は肺へ | 左から右へ、一部が流れ込む |
| 肺へ行く血液 | 必要な量 | 余分に増える |
| 左心房・左心室 | 大きさは変わらない | 戻る血が増え、広がっていく |
| 音 | 雑音はない | 穴を通る流れが、雑音になる |
| 症状 | — | 穴が大きければ、咳や疲れやすさ |
なぜ、左から右へ流れるのか——
左心室は全身へ血液を送り出す部屋ですから右心室よりずっと強い力で収縮します。
圧が高いほうから低いほうへ流れる——だから、左から右へという向きになるのです。
そして、右心室へ流れ込んだ血液はもう一度、肺へ送られます。
すでに酸素を受け取った血液がまた肺を回る——
その分だけ肺を通る血液が増え、左心へ戻ってくる量も増える——
結果として左心が広がっていくのです。
ここが、この病気の分かりにくいところだと思います。
穴があいているのは左右の心室のあいだなのに負担がかかるのは左心のほう——
右へ逃げた血液が肺を回ってまた左へ帰ってくるからそうなります。
逃げた分だけ余計に働かなければならない——
そういう構造をしているのです。
だから、レントゲンや心エコーでは「左心が広がっているかどうか」が重要な手がかりになります。
子犬の心雑音は、意味が違います
ここが、この記事でいちばん伝えたい部分です。
心雑音という同じ所見でも年齢によって疑うものが変わります。
| 子犬の心雑音 | 高齢犬の心雑音 | |
|---|---|---|
| まず疑うもの | 生まれつきの心臓の形の異常 | 加齢による弁の変性 |
| 代表的な病気 | 心室中隔欠損症、肺動脈弁狭窄など | 僧帽弁閉鎖不全症 |
| 進み方 | 生まれたときから、その状態 | 数年かけて、ゆっくり進む |
| 見つかる場面 | 初回のワクチンや健診の聴診 | 健康診断の聴診 |
| 必要な検査 | 心エコーで形と流れを確かめる | 心エコーで拡大の程度を測る |
| 共通 | 音だけでは、程度は分からない | 音だけでは、程度は分からない |
子犬の時期の心雑音は先天性の心奇形が疑われるため注意が必要だとされています。
だから、「様子を見ましょう」で終わらせず心エコーまで進んでほしいのです。
ただし、子犬の心雑音のすべてが病気とは限りません。
成長の過程で一時的に聞こえる雑音があり数か月のうちに消えていくこともあります。
けれど、それを聴診だけで見分けることはできません。
「消えるかもしれない雑音」と「生まれつきの穴による雑音」を分けるためにも画像で確かめる必要がある——
そう考えてください。
初回健診が、見つける機会になります
先天性の心臓病は見た目では分かりません。
元気に走り回り、よく食べ、ふつうに育っているように見える——
そういう子犬でも聴診ではじめて分かることがあります。
迎えたら早めに一度、健康診断を受けてください。初回のワクチンのときがその機会になります。
そして、そこで何も言われなければそれも大切な情報です。
穴の大きさが、すべてを決めます

この病気で見通しを決めるものは穴の大きさです。
欠損孔が小さい場合はほとんど問題になることはありません。
流れ込む血液の量が少なければ心臓への負担も小さい——
症状が何も出ないままふつうに一生を過ごす犬もいます。
- 小さい穴なら、治療せず経過を見ることが多い
- ふつうに散歩し、ふつうに遊べる
- 定期的に検査を受けて、変化がないか確かめる
- まれに、自然にふさがることもある
- ただし、それは非常にまれとされる
- 「ふさがるのを待つ」方針にはならない
一方、ある程度大きい場合——
左心室から右心室へ多くの血液が流れ込み、左心系への負担が大きくなります。
左心が拡大し、咳や運動不耐性——疲れやすさが現れてきます。
「同腹の兄弟より早くへばる」——
そういう気づき方をすることがあります。遊びの途中で座り込んでしまう——そんな場面です。
成長そのものが遅れることもあります。
大きい穴で、心配される変化
大きな欠損が長く続くと肺の側の血管にも変化が起きてきます。
余分な血液を何年も受け続けることで肺の血管の圧が上がっていく——
そして、その圧が左心室を超えるほど高くなると血液の流れる向きが逆転してしまうことがあります。
右から左へ——
そうなると酸素を受け取っていない血液がそのまま全身へ送られるため舌や歯ぐきが青みがかってきます。
ここまで進めば手術で穴をふさぐこと自体が難しくなります。
だからこそ、大きい穴では早い段階での判断が必要になるのです。
雑音が大きい=重い、ではありません

ここは、誤解されやすいので書いておきます。
「大きな雑音がします」と言われた——
不安になられると思います。
けれど、雑音の大きさと穴の大きさは比例しません。
むしろ、小さな穴のほうが大きな音を出すことがあります。
狭いところを勢いよく血液が通り抜けるから強い音になる——
ホースの先を指でつまむと水が勢いよく飛び出す——あの感覚に近いものです。
逆に、大きな穴では圧の差が小さくなり、かえって音が静かになることもあります。
だから、音の大きさで一喜一憂しないでください。
大切なのは心エコーで穴の大きさと心臓の広がり方を確かめることです。
🩺 音ではなく、画像で判断します
「大きな雑音だから重い」とも「小さな雑音だから軽い」とも言えない——
だからこそ、画像で確かめます。
心エコーなら穴の位置と大きさ、血液がどちら向きにどれだけ流れているかまで分かります。
そして、左心がどれだけ広がっているか——
そこが、治療するかどうかを決める材料になります。
治療——ふさぐか、支えるか
治療は大きく2つに分かれます。
| 方法 | 内容 | 限界 |
|---|---|---|
| 経過観察 | 小さい穴なら、定期的に見ていく | 大きくなることは通常ない |
| 内科治療 | 強心剤・血管拡張剤・利尿薬などで負担を軽くする | 進行を抑えられても、完治はしない |
| 外科手術 | 欠損孔が大きい場合、穴をふさぐ | 設備と技術が必要で、行える施設は限られる |
| 自然閉鎖 | 小さな穴なら、ふさがることもある | 非常にまれ。期待して待つものではない |
内科治療でできることは心臓の負担を軽くすることです。
穴そのものが薬でふさがるわけではありません。
症状の進行を抑えることはできても完治することはない——
そこは、はっきりさせておく必要があります。
根本的に解決するのは外科手術——穴をふさぐことです。
ただし、心臓の手術には特別な設備と技術が必要で行える施設は限られています。
紹介が必要になることも多いため「どこで受けられるか」を早めに聞いておいてください。
そして、手術を選ぶかどうかには体格も関わってきます。
体の小さな子犬ではある程度成長を待ってからという判断がとられることもあります。
その間、内科治療で心臓を支えながら時期を待つ——
「いつ、何をするか」という見通しを最初に共有しておくと迷いが減ります。
ほかの先天性心疾患も、あります
子犬の心雑音で見つかる病気はこれだけではありません。
- 肺動脈弁狭窄——弁が狭く、血液を送り出しにくい
- 動脈管開存——胎児期の血管が閉じずに残る
- 心房中隔欠損——上側の部屋を仕切る壁の穴
- 大動脈弁狭窄——大動脈側の弁が狭い
- 複数が重なっていることもある
- いずれも、心エコーで見分けられる
雑音が聞こえる場所や音の性質である程度の見当はつきます。
けれど、確かめるには画像が必要です。複数の異常が重なっていることもありそうなると見通しも治療も変わってきます。
肺動脈弁狭窄症については別の記事で解説しています。
迎えたばかりの方へ
迎えたばかりの子犬に心臓の病気が見つかった——
そのときに考えるべきことを書いておきます。
- まず、心エコーで程度を確かめる
- 小さい穴なら、ふつうに育つことがほとんど
- 販売元にも、診断の結果を伝える
- 契約に医療的な取り決めがないか確認する
- 先天性の病気は、繁殖にも関わる情報
- 感情的にならず、事実として伝える
先天性の心疾患には遺伝的な要因が関わることがあります。
同じ親から生まれた犬にも同じことが起きている可能性があるということです。
責めるためではなく、情報として渡す——
そういう伝え方で十分です。
そしていちばん大切なこと——
病名がついたこととその子がつらい思いをすることは別です。
穴が小さければ生涯何ごともなく過ごす——そういう犬はたくさんいます。
「心臓病の犬」という言葉から思い浮かべる姿と実際の暮らしはまったく違うことがある——
そこを、最初に知っておいてください。
心エコーの結果を聞くまでは不安な時間が続くと思います。
けれど、その検査で見通しがはっきりします。
「何も分からないまま心配する」時間を短くするためにも早めに受けてください。
暮らしのなかで、できること

経過を見ていくことになった場合——
家で見ておきたいことがあります。
| 項目 | 見ること |
|---|---|
| 安静時呼吸数 | 眠っているとき、15秒数えて4倍する |
| 運動のあと | 同じくらいの犬より早く疲れないか |
| 咳 | 夜間や明け方に出ていないか |
| 成長 | 体重が順調に増えているか |
| 舌の色 | 青みがかっていないか |
| 検査 | 次にいつ来るか、必ず聞いておく |
安静時呼吸数はこの病気でも有効な指標です。
肺に血液が多く回るようになれば呼吸数が増えてきます。
ふだんの数を知っておくことが変化に気づく前提になります。
子犬のうちから測る習慣をつけておくとあとで役に立ちます。
成長にともなって数字も変わっていくためその推移そのものが情報になるからです。
そして体重の記録もあわせて残してください。
心臓に負担がある子犬では成長が遅れることがあります。
「よく食べているのに体重が増えない」——
それも、伝えるべき情報です。
そして舌の色——
青みがかっているならチアノーゼ——酸素が足りていない状態です。
健康な犬の舌はきれいなピンク色をしています。ふだんの色を見ておいてください。
青みがかっていると感じたらすぐに受診してください。
咳が出始めた場合には心臓によるものか、気道によるものかを確かめてもらうことになります。咳の見分けは気管支炎の記事でも解説しています。
よくある質問
Q. 心室中隔欠損症とはどんな病気ですか?
A. 心臓の左右の心室を仕切っている壁に、生まれつき穴があいている病気です。圧の高い左心室から右心室へ血液が流れ込み、その分だけ肺を余分に回って左心へ戻るため、左心が広がっていきます。
Q. 子犬の心雑音は、高齢犬と違うのですか?
A. 疑うものがまったく違います。高齢犬の雑音は加齢による弁の変性(僧帽弁閉鎖不全症)が多いのに対し、子犬の時期の心雑音は先天性の心奇形が疑われるため注意が必要です。
Q. 雑音が大きいと、重いのですか?
A. 比例しません。むしろ小さな穴のほうが大きな音を出すことがあります。狭いところを勢いよく血液が通るためです。音の大きさで判断せず、心エコーで穴の大きさと心臓の広がりを確かめます。
Q. 穴が小さければ、大丈夫ですか?
A. 欠損孔が小さい場合は、ほとんど問題になりません。症状が出ないまま、ふつうに一生を過ごす犬もいます。ただし定期的な検査は受けて、変化がないか確かめてください。
Q. 自然にふさがることはありますか?
A. 小さな穴であればふさがるケースもありますが、非常にまれです。「ふさがるのを待つ」という方針にはなりません。現在の状態を確かめ、必要なら治療を始めることになります。
Q. 薬で治りますか?
A. 内科治療でできるのは、心臓の負担を軽くすることです。強心剤・血管拡張剤・利尿薬などを使いますが、穴そのものはふさがりません。進行を抑えることはできても完治はしないため、大きい場合は手術が検討されます。
Q. 手術はどこでも受けられますか?
A. 心臓の手術には特別な設備と技術が必要で、行える施設は限られています。紹介が必要になることも多いため、「どこで受けられるか」を早めに聞いておいてください。
まとめ|音ではなく、画像で確かめてください
この病気でいちばん伝えたいことは2つです。
ひとつは、子犬の心雑音は意味が違うということ。
高齢犬なら加齢の弁ですが子犬なら生まれつきの形の異常を疑います。
だから、「様子を見ましょう」で終わらせず心エコーまで進んでください。
もうひとつは、雑音の大きさは重さを表さないということ。
小さな穴ほど大きな音が出ることもあります。
だから、音で判断せず画像で確かめる——
そして、穴が小さければ——
病名はついてもふつうに育っていけることがほとんどです。
大切なのは定期的に見てもらいながら変化がないかを確かめ続けること——
そして、家では眠っているときの呼吸数を数えておくことです。
その2つがこの病気と付き合っていくうえでの土台になります。
今日できる3つ
- 1子犬で雑音を指摘されたなら、心エコーを受けたか確かめる
- 2眠っているときの呼吸数を15秒数えて4倍し、記録する
- 3次の検査がいつなのか、はっきり聞いておく
音の大きさは、重さを表しません。穴の大きさを、画像で確かめてください。

本日の「犬猫の悩みを即解決!」の記事「犬の心室中隔欠損症|子犬の心雑音は、意味が違います」でした。
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