

こんばんは。
今回「犬猫の悩みを即解決!」が自信を持ってお届けする記事は「犬の肺動脈狭窄症|元気なのに、走ると倒れる理由」です。ではどうぞ!
ふだんは、元気そのもの。
食欲もあるし、散歩にも行きたがる——
それなのに、走り回ったあとや来客に興奮したあとにふらついた——
あるいは、一瞬崩れるように倒れた——
そういうことが起こる心臓病があります。
肺動脈狭窄症です。
心臓から肺へ血液を送り出す出口が生まれつき狭い病気で犬の先天性心疾患のなかでは2番目に多いとされています。
そして、この病気の特徴は「安静時には分からない」というところにあります。
じっとしているときに必要な量なら狭い出口でもなんとか送り出せる——
けれど、走れば足りなくなるのです。
結論
肺動脈狭窄症は生まれつき肺動脈弁の付近に狭窄があり、右心室から肺への血流が悪くなる病気です。犬の先天性心疾患のなかで2番目に多く、小型犬に多いのが特徴で、チワワ、フレンチ・ブルドッグ、ボクサー、ミニチュア・ピンシャー、ミニチュア・シュナウザーなどが好発犬種とされています。血液を押し出しにくいため、右心室に大きな負担がかかります。狭窄が軽度から中程度の犬では無症状のことが多く、健康診断で心雑音が聴取されて見つかるケースが多くなります。重度の犬では、興奮時や運動時のふらつきや失神、舌の色が白っぽいなど低酸素による症状が見られます。治療では、心臓カテーテルを用いたバルーン弁拡張術で狭くなった弁を押し広げます。開胸手術ではないため、体への負担が小さいのが特徴です。
この記事でわかること
- ✓出口が狭いということ
- ✓負担がかかるのは、右心です
- ✓元気に見えても、動くと倒れる
- ✓なりやすい犬種があります
- ✓バルーンで、広げられます
- ✓重症度で、することが変わります
- ✓暮らしのなかで、できること
出口が狭いということ

心臓の右側は全身から戻ってきた血液を肺へ送り出す係です。
肺で酸素を受け取った血液が左側へ戻り、そこから全身へ送り出される——
その、右心室から肺へ向かう出口についている弁を肺動脈弁といいます。
| 正常なとき | 狭窄があるとき | |
|---|---|---|
| 弁の開き方 | 大きく開き、抵抗なく通る | 十分に開かず、通り道が細い |
| 右心室 | ふつうの力で押し出せる | 強い力で押す必要がある |
| 心筋の変化 | 変わらない | 壁が分厚くなっていく |
| 安静時 | 問題ない | なんとか足りていることが多い |
| 運動時 | 必要な分だけ増やせる | 増やせず、足りなくなる |
| 音 | 雑音はない | 狭い所を通る流れが、雑音になる |
狭い出口から血液を押し出す——
そのために右心室は強い力で収縮しなければなりません。
力を出し続ければ筋肉は厚くなります。
それは、一見すると「たくましくなった」ように思えるかもしれません。
けれど、心臓の場合はそうではありません。
- 壁が厚くなると、部屋の内側が狭くなる
- ためられる血液の量が減る
- 厚い筋肉ほど、多くの酸素を必要とする
- 広がりにくくなり、戻ってくる血液を受けにくい
- 不整脈が起こりやすくなる
- 長く続けば、右心の働きそのものが落ちていく
「厚くなること」自体が次の問題を生む——
そこが、この病気の進み方です。
なぜ、生まれつき狭いのか
この病気の原因は先天性の肺動脈弁の形成異常だとされています。
母胎のなかで心臓がつくられていく過程で弁がうまく分かれなかった、あるいは厚く癒着したまま残った——
そういう成り立ちをしています。
だから、生まれたときからその状態です。
途中で発症するものではありません。
そして、飼い方や食事で起きるものでもありません。
「何かしてしまったのか」と思われる必要はない——そこは、はっきり書いておきます。
好発犬種があることからも遺伝的な要因が関わっていると考えられています。
負担がかかるのは、右心です

心臓の病気を理解するときに役に立つ見方があります。
「どちら側に負担がかかっているか」です。
| 右心に負担 | 左心に負担 | |
|---|---|---|
| 代表的な病気 | 肺動脈狭窄症 | 僧帽弁閉鎖不全症、心室中隔欠損症 |
| 起きていること | 送り出しにくい | 戻ってくる量が多い |
| 心臓の変化 | 右心室の壁が厚くなる | 左心房・左心室が広がる |
| 出やすい症状 | 運動時のふらつき、失神 | 咳、呼吸が速くなる |
| 進んだとき | お腹に水がたまる | 肺に水がたまる |
| 共通 | 心雑音で見つかることが多い | 心雑音で見つかることが多い |
この違いを知っておくと症状の意味が分かりやすくなります。
僧帽弁閉鎖不全症や心室中隔欠損症では咳が主な症状になります。
左心が広がり、肺がうっ血するからです。
けれど、肺動脈狭窄症では咳はあまり目立ちません。
代わりに出てくるのが「動いたときの症状」です。
肺へ送り出せる量が増やせないのですから体が酸素を必要とする場面で足りなくなる——
そして、さらに進むと右心が受けきれなくなった血液が全身の静脈に滞り、お腹に水がたまることもあります。
元気に見えても、動くと倒れる
この病気でいちばん警戒してほしい症状を書きます。
失神です。
重度の犬では興奮時や運動時のふらつきや失神、舌の色が白っぽくなるといった低酸素による症状が見られます。
安静にしているときには何も起こりません。
だから、「元気だから大丈夫」という判断がこの病気では通用しないのです。
その一瞬を、必ず伝えてください
倒れて、すぐに起き上がった——
そのあとけろりとしていると「疲れただけかな」と受け取ってしまいがちです。
けれど、失神は脳へ十分な血液が届かなかったということです。
心臓病における失神は治療の方針を変える出来事になります。
「一瞬倒れました」と必ず伝えてください。可能なら動画を撮っておくとけいれんとの区別もつきやすくなります。
そして、舌の色——
白っぽくなる、青みがかるのはチアノーゼ——酸素が足りていない合図です。
健康な犬の舌はきれいなピンク色をしています。
ふだんの色を見ておくことが変化に気づく前提になります。元気なときに一度、写真を撮っておくのも有効です。
なりやすい犬種があります

この病気にははっきりした好発犬種があります。
| 犬種 | 備考 |
|---|---|
| チワワ | 小型犬に多い病気の代表 |
| フレンチ・ブルドッグ | 呼吸器の負担とも重なりやすい |
| ボクサー | 心臓の病気が知られる犬種 |
| ミニチュア・ピンシャー | 活発なため、運動時の症状に注意 |
| ミニチュア・シュナウザー | ほかの心臓病も含めて確認したい |
| 共通して | 子犬のうちに、聴診を受けておく |
これらの犬種を迎えたなら子犬のうちに一度、聴診を受けておいてください。
先天性の心疾患は見た目では分かりません。
元気に走り回っていても音として先に見つかることがあります。
そして活発な犬種ほど注意が必要です。
ミニチュア・ピンシャーのようなよく動く犬ではそもそも運動する場面が多いため症状の出る機会も増えます。
ミニチュア・シュナウザーのようにほかの心臓の問題も知られる犬種ではあわせて確認しておくと安心です。
バルーンで、広げられます
この病気には希望のある治療法があります。
バルーン弁拡張術——
心臓カテーテルを用いて狭くなった弁の部分をバルーンで押し広げるという方法です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 方法 | 血管からカテーテルを入れ、弁の位置でバルーンを膨らませる |
| 開胸の有無 | 開胸手術ではない |
| 体への負担 | 開胸に比べて小さい |
| 目的 | 狭窄をゆるめ、右心室の負担を減らす |
| 対象 | 主に重度の狭窄 |
| 施設 | 設備と技術が必要。紹介になることが多い |
胸を開かずに心臓のなかを治療できる——
これは、先天性の心疾患としては大きな利点です。
血管からカテーテルを進め、狭い場所でバルーンをふくらませる——
それだけで通り道が広がり、右心室の負担が減ります。
負担が減れば厚くなっていた壁の変化もそれ以上進みにくくなります。
そして、運動時に送り出せる量も増える——
失神やふらつきが軽くなることが期待できます。
ただし、弁そのものが正常な形に戻るわけではありません。
広げたあとも定期的に検査を受けて状態を確かめていくことになります。
「治療して終わり」ではなく「治療してから、見ていく」——そう考えてください。
🩺 開胸しないという意味
「カテーテルなら簡単」というわけではありません。
心臓のなかで行う処置ですから麻酔も、技術も、設備も必要になります。
行える施設は限られるため紹介になることが多いのが実際です。
けれど、開胸して心臓を止める手術と比べれば体への負担はずっと小さい——
「治療の選択肢がある病気」だと知っておいてください。
重症度で、することが変わります
すべての犬が治療を必要とするわけではありません。
| 程度 | 症状 | 対応 |
|---|---|---|
| 軽度 | 無症状のことが多い | 定期的に検査を受けて経過を見る |
| 中程度 | 無症状〜運動時に疲れやすい | 検査値と症状を見ながら判断する |
| 重度 | ふらつき、失神、舌が白っぽい | バルーン弁拡張術が検討される |
| 症状がある場合 | — | 薬で心臓の負担を軽くすることも |
| 共通 | — | 激しい運動と興奮を避ける |
狭窄が軽度から中程度の犬では無症状のことが多く健康診断で心雑音が聴取されて見つかることが多くなります。
その場合はすぐに治療せず、定期的に見ていくという方針になります。
ここでも大切なのは「次にいつ来るか」をはっきりさせておくことです。
- 次の検査の時期を、必ず聞いておく
- 失神やふらつきがあれば、予定を待たずに受診する
- 舌の色が変わったときも同じ
- 成長にともなって状態が変わることがある
- 記録を残しておくと、変化が分かりやすい
- ほかの心疾患が重なっていないかも確認する
子犬のうちは体も心臓も成長していきます。
だから、一度の検査で終わりにしないでください。
重症度は心エコーで測ることができます。
狭くなった場所を血液がどれだけの速さで通り抜けているか——
その速度が狭さの程度を示す指標になります。
狭いほど勢いよく通るからです。
そして、右心室の壁がどれだけ厚くなっているかもあわせて見ます。
数値として残るため前回と比べれば進んでいるかどうかが分かります。
「同じ検査を、同じ間隔で受け続ける」ことに意味があるのはそのためです。
暮らしのなかで、できること

この病気で暮らしのなかで気をつけたいことははっきりしています。
激しい運動と、強い興奮を避けることです。
| 場面 | 工夫 |
|---|---|
| 散歩 | 歩く速さで。全力で走らせない |
| 遊び | ボール投げなど、興奮するものは控えめに |
| 来客 | 飛びつき、激しい吠えを減らす工夫を |
| 暑さ | 夏場は室温を保つ。負担が増える |
| 体重 | 太らせない。心臓の負担になる |
| 散歩の道具 | 首輪をやめ、ハーネスにする |
「まったく動かさない」という意味ではありません。
歩く速さの散歩なら多くの場合続けられます。
避けたいのは「急に、全力で」という場面です。
ほかの犬を見て走り出す、来客に興奮して飛び回る、階段を駆け上がる——
そうした瞬間に心臓は急に多くの血液を求めます。
けれど、出口が狭ければそれに応えられない——
だから、そこで倒れるのです。本人が無理をしているのではなく体が求める量に心臓が追いつけない——そういう出来事です。
家で見ておきたいこと
- 眠っているときの呼吸数を数えて記録する
- 運動のあとに、ふらつきや座り込みがないか
- 興奮したときの様子を、注意して見る
- 舌と歯ぐきの色を、ふだんから確かめておく
- お腹が膨らんできていないか
- 体重が順調に増えているか(子犬の場合)
お腹の張りは右心の病気で見ておきたい変化です。
右心が受けきれなくなると全身から戻る血液が滞り、お腹に水がたまってくることがあります。
太ったのではなくお腹だけが張ってくる——
そういう変化ならすぐに受診してください。
そして、興奮させない工夫をいくつか——
来客のときは先に別の部屋へ入れておく、インターホンの音量を下げる、散歩の支度を見せないところでする——
「興奮してから止める」のではなく「興奮する場面を減らす」——
そのほうが本人にとっても楽です。
叱って止めようとするとかえって興奮が強まることもあります。
環境のほうを変えてしまうのがこの病気では有効な考え方です。
よくある質問
Q. 肺動脈狭窄症とはどんな病気ですか?
A. 生まれつき肺動脈弁の付近が狭く、右心室から肺への血流が悪くなる病気です。犬の先天性心疾患のなかで2番目に多く、小型犬に多いのが特徴です。血液を押し出しにくいため、右心室に大きな負担がかかります。
Q. 元気なのに、病気なのですか?
A. 安静時に必要な量なら、狭い出口でもなんとか送り出せるためです。狭窄が軽度から中程度の犬では無症状のことが多く、健康診断で心雑音が聴取されて見つかるケースが多くなります。
Q. 走ったあとに倒れました
A. 失神かもしれません。必ず伝えてください。重度の犬では、興奮時や運動時のふらつきや失神、舌の色が白っぽいなど低酸素による症状が見られます。心臓病における失神は、治療の方針を変える出来事です。
Q. なりやすい犬種はありますか?
A. チワワ、フレンチ・ブルドッグ、ボクサー、ミニチュア・ピンシャー、ミニチュア・シュナウザーなどが好発犬種とされています。これらの犬種を迎えたら、子犬のうちに一度、聴診を受けておいてください。
Q. ほかの心臓病と、何が違うのですか?
A. 負担がかかる側が違います。僧帽弁閉鎖不全症や心室中隔欠損症は左心に負担がかかり、咳が主な症状になります。肺動脈狭窄症は右心に負担がかかるため、運動時のふらつきや失神が出やすくなります。
Q. 治療法はありますか?
A. 心臓カテーテルを用いたバルーン弁拡張術があります。狭くなった弁の部分をバルーンで押し広げる方法で、開胸手術ではないため体への負担が小さいのが特徴です。
Q. 散歩はさせないほうがよいですか?
A. 歩く速さの散歩なら、多くの場合続けられます。避けたいのは「急に、全力で」という場面です。ほかの犬を見て走り出す、来客に興奮して飛び回る——そうした瞬間に心臓は急に多くの血液を求めます。
まとめ|動いたときの様子を、見てください
この病気はじっとしているときには分かりません。
元気に見えるし、食欲もある——
けれど、走れば足りなくなる——
だから、見るべきは「動いたあと」です。
ふらつく。座り込む。一瞬、崩れる。舌が白っぽい——
そうした場面がこの病気を教えてくれます。
そして、この病気には治療の選択肢があります。
胸を開かずにカテーテルで弁を広げる——
先天性の心疾患としては恵まれた構造だと言えます。
好発犬種を迎えたならまず子犬のうちに聴診を受けてください。
そこで何も言われなければそれも大切な情報です。
雑音を指摘されたなら心エコーまで進んで程度を確かめる——
軽度なら見守っていけばよく、重度なら打てる手がある——
どちらにしても知っておくことに意味がある病気です。
今日できる3つ
- 1運動や興奮のあとに、ふらつきがないか見る
- 2舌と歯ぐきのふだんの色を確かめておく
- 3好発犬種なら、子犬のうちに聴診を受ける
安静時は無症状——それがこの病気の顔です。動いたときの様子に、答えがあります。

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