

こんばんは。
今回「犬猫の悩みを即解決!」が自信を持ってお届けする記事は「猫のパスツレラ症|ほぼすべての猫が、持っています」です。ではどうぞ!
パスツレラ症という名前を、猫がかかる病気として聞いた方が多いと思います。
けれど、この菌には少し変わったところがあります。猫の口の中には、100%近く常在していると報告されているのです。
つまり、「うつったかどうか」を心配する菌ではありません。健康な猫でも、当たり前に持っています。
問題になるのは、その口が、皮膚を破ったときです。そして多くの場合、傷を負うのは飼い主のほうです。
結論
パスツレラ症は犬や猫などのペットと人間に共通の「人獣共通感染症」です。原因となるパスツレラ・ムルトシダは猫の口腔内には100%近く、犬の口腔内には約75%、猫の爪にも約25%常在していると報告されています。つまり健康な猫でも当たり前に持っている菌で、猫自身は無症状のことがほとんどです。問題になるのは咬まれたり引っかかれたりしたときで、早ければ数時間で傷口に発赤や腫脹が現れます。さらに皮下組織に炎症が広がったり(蜂窩織炎)、膿がたまったり(膿瘍)するほか、関節や骨まで達する傷であれば関節炎や骨髄炎を発症することもあります。治療にはペニシリン系、セフェム系抗菌薬が用いられ、猫にかまれた場合は重症化することがあるので、症状が軽くても抗菌薬の投与を検討します。
この記事でわかること
- ✓ほぼすべての猫が、持っています
- ✓猫自身は、ふつう何ともありません
- ✓猫の側で問題になるのは、けんかのあとです
- ✓咬まれたら、数時間で腫れてきます
- ✓猫の牙は、思っているより深く刺さります
- ✓咬まれたときにすること
- ✓免疫が落ちている人は、とくに注意を
- ✓うつさない・咬ませない暮らし方
ほぼすべての猫が、持っています

まず、数字を見てください。
パスツレラ・ムルトシダは猫の口腔内には100%近く、犬の口腔内には約75%、猫の爪にも約25%常在していると報告されています。
これは感染率ではなく、常在率です。病気の猫の割合ではなく、ふつうの猫が当たり前に持っている割合を示しています。
だから、検査で減らす病気ではありません
ほかの感染症であれば、検査して、陽性なら治療するという流れになります。
けれどこの菌は違います。調べればほぼ全頭が陽性になるからです。
ですから、考え方が変わります。「持っているかどうか」ではなく、「その口が皮膚を破らないようにする」——そこが対策の中心になります。
猫の爪にも約25%いるという点も、覚えておく価値があります。引っかかれただけでも、起こりうるということです。
猫自身は、ふつう何ともありません
常在菌ですから、持っているだけで猫が具合を悪くすることはありません。
口の中でおとなしくしているかぎり、何も起こりません。猫はその状態で、ずっと健康に暮らしています。
問題が起きるのは、この菌が本来いない場所に入り込んだときです。
免疫が落ちると、猫でも症状が出ることがあります
ただし、例外はあります。猫の抵抗力が大きく落ちているときです。
- 猫免疫不全ウイルス感染症がある
- 猫白血病ウイルス感染症がある
- 子猫で、免疫がまだ育っていない
- 高齢で、抵抗力が落ちている
- ほかの病気の治療中である
- 大きなストレスが続いている
こうしたとき、くしゃみ、鼻水、発熱、食欲不振といった形で症状が出ることがあります。
猫免疫不全ウイルス感染症や猫白血病ウイルス感染症があると、ふだんは何でもない菌が問題になる——その代表例のひとつがこれです。
猫の側で問題になるのは、けんかのあとです

猫でこの菌がいちばん問題になるのは、猫同士のけんかのあとです。
咬んだ猫の口の中にいた菌が、咬まれた猫の皮膚の下に入り込みます。
猫の牙は細く、傷口はすぐにふさがります。菌だけが皮膚の下に閉じ込められる——これが、膿がたまる仕組みです。
数日たってから、腫れてきます
咬まれた直後は、傷が小さいので気づかないことがあります。異変が出るのは、数日たってからです。
| 時期 | 起きること |
|---|---|
| 咬まれた直後 | 小さな傷。気づかれないことも多い |
| 翌日〜数日 | 皮膚の下で、菌が増えていく |
| 数日後 | その場所が腫れ、しこりのようになる |
| そのころ | 発熱し、元気と食欲が落ちる |
| さらに進むと | 皮膚が破れて、膿が出てくる |
| 気づき方 | 撫でていて、しこりに触れて分かることが多い |
外に出る猫では、体を触って確かめる習慣が役に立ちます。とくに顔まわり、首、しっぽの付け根、足——けんかで咬まれやすい場所を見てください。
⚠ こんなときは、受診してください
- 体に、硬いしこりを触れる
- その場所を触ると、痛がる
- 熱があり、元気がない
- けんかをした心当たりがある
- 膿が出てきた
- その部分だけ、熱を持っている
膿がたまってからでは、切って出す処置が必要になります。けんかに気づいた時点で診せられれば、薬だけで済むことがあります。
咬まれたときに、ほかの病気ももらいます
けんかの咬み傷は、この菌だけの入口ではありません。
猫免疫不全ウイルス感染症やヘモプラズマ感染症も、同じ経路で伝わります。
ですから「けんかをした」という出来事そのものが、いくつもの病気を考える理由になります。
外に出している猫がいるなら、完全室内飼育への切り替えがまとめて効く対策になります。
咬まれたら、数時間で腫れてきます

ここからは、人の側の話です。
犬や猫にかまれたり引っかかれたりした後、早ければ数時間で傷口に発赤や腫脹が現れます。
これは、ほかの傷とくらべて非常に速い反応です。
進むと、深いところまで届きます
さらに皮下組織に炎症が広がったり(蜂窩織炎)、膿がたまったり(膿瘍)するほか、関節や骨まで達する傷であれば関節炎や骨髄炎を発症することもあります。
手を咬まれた場合、関節のすぐそばまで牙が届いていることがあります。手指の関節は皮膚が薄く、深いところが近いためです。
「小さな穴だから大丈夫」という判断が、この菌ではいちばん危ないものになります。
どこを咬まれたかで、危なさが変わります
同じ咬み傷でも、場所によって重さが違います。
| 咬まれた場所 | 気をつけたい理由 |
|---|---|
| 手・指 | 皮膚が薄く、関節や腱がすぐ下にある |
| 手首 | 深い組織まで届きやすい |
| 顔 | あとが残りやすく、目の近くは危険 |
| 足首 | 腫れると歩きにくくなる |
| 関節の上 | 関節炎や骨髄炎につながることがある |
| どこであれ | 猫の咬み傷は、その日のうちに受診する |
とくに手を咬まれたときは、軽く見ないでください。指の関節に達していると、あとから動かしにくくなることがあります。
猫の牙は、思っているより深く刺さります
なぜ、猫の咬み傷はこれほど問題になるのでしょうか。
理由は、牙の形にあります。
猫の犬歯は、細く鋭い針のような形をしています。そのため入口は小さいのに、深く刺さります。
傷口が、すぐにふさがってしまいます
問題は、そのあとです。
刺し傷は表面がすぐに閉じてしまいます。洗い流したくても、奥まで届きません。
菌だけが、深いところに閉じ込められる——これが、猫の咬み傷が化膿しやすい理由です。
切り傷のように大きく開いた傷のほうが、むしろ洗い流せて安全ということさえあります。
見た目の小ささと、危なさは比例しません。
咬まれたときにすること

咬まれてしまったときの対応を、整理しておきます。
- すぐに、流水でしっかり洗い流す
- 石けんを使って、周囲もよく洗う
- 出血を、無理に止めすぎない
- 清潔なもので覆う
- その日のうちに、医療機関を受診する
- 猫に咬まれたことを、必ず伝える
最後の一行が大切です。「猫に咬まれました」と伝えるだけで、医師の判断が変わります。
腫れる前に、受診してください
猫にかまれた場合には重症化することがあるので、症状が軽くても抗菌薬の投与を検討します。
つまり「腫れてから行く」のでは遅いという考え方です。
数時間で反応が始まる菌ですから、まだ何ともない段階で手を打つことに意味があります。
治療としてはペニシリン系、セフェム系抗菌薬の投与を行ないます。処方されたら、決められた期間を最後まで続けてください。
🩺 獣医療の現場では
動物病院ではなく、人の医療機関へ行ってください。
そのときに伝えるとよいのは「いつ」「どこを」「どんな状況で」の三つです。飼い猫か、外の猫か。深く刺さったか、引っかかれただけか。この情報で、必要な処置が変わります。
ほかの病気の可能性も、考えます
猫に咬まれたときに問題になるのは、この菌だけではありません。
破傷風のことも考えますし、猫ひっかき病という別の病気もあります。
受診したときに、破傷風の予防接種をいつ受けたかを聞かれることがあります。分かる範囲で答えられるようにしておくとよいと思います。
どの病気であっても、対応の入口は同じです。よく洗い、その日のうちに受診する。そのあとの判断は、医師に任せてください。
免疫が落ちている人は、とくに注意を
この菌は、多くの人にとって咬まれなければ問題になりません。
けれど、抵抗力が落ちている方では話が変わります。
| こんな方は | 気をつけたいこと |
|---|---|
| 高齢の方 | 重くなりやすく、治りにくい |
| 糖尿病がある方 | 感染が広がりやすい |
| 治療で免疫が下がっている方 | 軽い接触でも注意がいる |
| 呼吸器に持病がある方 | 気道の症状が出ることがある |
| 小さなお子さん | 顔を近づけやすく、咬まれやすい |
| 妊娠中の方 | 心配なことは、早めに相談を |
こうした方がいるご家庭では、咬まれない・引っかかれない工夫がそのまま健康管理になります。
口移しや、顔をなめさせることは避けてください
猫の口の中に100%近く常在する菌ですから、唾液に触れる行為には注意が要ります。
- 口移しで食べ物を与えない
- 顔や口のまわりをなめさせない
- 同じ食器やスプーンを使わない
- 傷がある手で、猫の口まわりを触らない
- 猫と触れ合ったあとは、手を洗う
- 猫のいる場所で、食事をしっぱなしにしない
かわいがることをやめる必要はありません。触れ合ったあとに手を洗う——それだけで、ほとんどのことは防げます。
うつさない・咬ませない暮らし方
この菌については、「なくす」ことができません。ほぼすべての猫が持っているからです。
できるのは、皮膚を破らせないことです。
猫に咬ませないための工夫
多くの咬みつきには、理由があります。その理由をなくすほうが、確実です。
- 手を使って遊ばない(おもちゃを間に入れる)
- 嫌がるサインが出たら、すぐにやめる
- しっぽを振る、耳を伏せる、うなる——これらは警告
- 寝ているところを、急に触らない
- 抱っこを無理に続けない
- 子どもには、触り方を教えておく
手をおもちゃにして遊ばせないのは、子猫のうちからやっておきたいことです。小さいうちの甘噛みが、大きくなってからの咬みつきになります。子猫のころは痛くなくても、成猫の牙は皮膚を貫きます。
猫のためにできること
猫の側で予防できるのは、けんかによる膿瘍のほうです。
完全室内飼育にすれば、外の猫と咬み合う機会はなくなります。
去勢・避妊手術も、けんかに向かう行動を減らします。
多頭飼いの家では、隠れ場所と高い場所を増やすことで逃げ道をつくってやってください。追い詰められなければ、咬み合いは起きにくくなります。逃げ場のない部屋こそ、けんかが起きやすい場所です。
よくある質問
Q. パスツレラ症とは、どんな病気ですか?
A. 犬や猫と人間に共通の「人獣共通感染症」です。パスツレラ・ムルトシダという細菌によるもので、咬まれたり引っかかれたりしたときに問題になります。
Q. うちの猫は持っていますか?
A. ほぼ確実に持っています。この菌は猫の口腔内に100%近く常在していると報告されており、健康な猫でも当たり前に持っているものです。
Q. 猫は具合が悪くなりますか?
A. ふつうは何ともありません。常在菌なので、持っているだけで症状は出ません。ただし免疫が大きく落ちているときには、症状が出ることがあります。
Q. 猫の側では、何が問題になりますか?
A. けんかで咬まれたあとの膿瘍です。咬んだ猫の口の菌が皮膚の下に入り込み、数日たってから腫れてしこりになります。
Q. けんかのあと、どこを見ればよいですか?
A. 顔まわり、首、しっぽの付け根、足を触ってください。咬まれやすい場所です。硬いしこりに触れたら受診してください。
Q. 咬まれると、どうなりますか?
A. 早ければ数時間で、傷口に発赤や腫脹が現れます。さらに皮下組織に炎症が広がったり(蜂窩織炎)、膿がたまったり(膿瘍)します。
Q. 小さな傷でも危ないのですか?
A. むしろ小さな刺し傷のほうが危ないことがあります。猫の牙は細く深く刺さり、入口がすぐふさがるため、菌だけが深いところに閉じ込められてしまいます。
Q. 引っかかれただけでも、うつりますか?
A. 可能性はあります。この菌は猫の爪にも約25%常在していると報告されています。引っかき傷でも、洗って様子を見てください。
Q. 咬まれたら、どうすればよいですか?
A. すぐに流水でよく洗い、その日のうちに医療機関を受診してください。腫れてから行くのでは遅いことがあります。受診のときは「猫に咬まれた」と必ず伝えてください。
Q. どんな治療をしますか?
A. ペニシリン系、セフェム系の抗菌薬を投与します。猫に咬まれた場合は重症化することがあるため、症状が軽くても抗菌薬の投与が検討されます。
Q. 予防できますか?
A. 菌をなくすことはできませんが、咬まれないようにはできます。手を使って遊ばない、嫌がるサインが出たらやめる、口移しや顔をなめさせることを避ける——これで多くは防げます。
Q. 猫をかわいがるのを、やめたほうがよいですか?
A. その必要はありません。触れ合ったあとに手を洗い、口まわりの濃厚な接触を避ける。それだけで、ほとんどのことは防げます。
まとめ|持っていることではなく、傷が問題です
この菌は、ほぼすべての猫が口の中に持っています。それは異常なことではありません。
ですから考えるべきは、「持っているかどうか」ではなく「皮膚を破らせないこと」です。
猫の側では、けんかによる膿瘍。人の側では、咬まれたときの急速な炎症。どちらも、傷から始まります。
そして、猫に咬まれたときは腫れる前に受診してください。この菌の反応は、数時間で始まります。
この病気を知る意味は、猫を遠ざけることではありません。咬まれない距離感を覚えることと、咬まれたときに迷わないこと——その二つのためです。
猫は、理由もなく咬みません。嫌がるサインを読めるようになれば、この病気とは無縁のまま暮らしていけます。
今日できる3つ
- 1手をおもちゃにして遊んでいないか、遊び方を見直す
- 2外に出る猫なら、体を触ってしこりがないか確かめる
- 3咬まれたら「その日のうちに受診する」と決めておく
この菌は、猫と切り離せないものです。だから対策は、菌ではなく傷のほうに向けます。

本日の「犬猫の悩みを即解決!」の記事「猫のパスツレラ症|ほぼすべての猫が、持っています」でした。
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