

こんばんは。
今回「犬猫の悩みを即解決!」が自信を持ってお届けする記事は「犬の僧帽弁閉鎖不全症|心雑音があっても、すぐ薬とは限りません」です。ではどうぞ!
「心臓に雑音がありますね」——
健康診断や、別の理由での受診でそう言われたという方は少なくないはずです。
そして、そのあとに「今は治療しなくて大丈夫です」と続いた——
「心臓の病気なのに、薬を出さなくていいのだろうか」と不安になられたかもしれません。
けれど、その判断にははっきりした理由があります。
僧帽弁閉鎖不全症——犬の心臓病でもっとも多いものです。
心臓のなかにある弁が閉じきらなくなり、血液が逆流する病気で小型犬の高齢期にとくに多く見られます。
そして、この病気には段階(ステージ)があります。
その段階によってすることが変わる——だから、「雑音があるのに治療しない」ということが起こりうるのです。
結論
僧帽弁閉鎖不全症は心臓の弁が変性して閉じきらなくなり、血液が逆流する病気です。逆流した血液で左心房が広がり、拡大した左心房が気管を圧迫することと肺のうっ血により乾いた咳が出ます。心拡大が進むと不整脈を起こし、脳に血液が回らず失神することもあります。心雑音があるだけの段階(ステージB1)では治療は行わず、心エコーで心臓の拡大を確認してB2以上になった段階で薬物療法を始めます。B2でピモベンダンなどを開始することで、無症状の期間を1〜2年以上延ばせることが示されています。症状が出た段階(C)では利尿薬などを加え、症状を抑えることを重視します。
この記事でわかること
- ✓弁が閉じなくなるということ
- ✓なぜ、咳が出るのか
- ✓心雑音があっても、すぐ薬とは限りません
- ✓B2で始めることの意味
- ✓家でできる、いちばん有効なこと
- ✓肺水腫という、急変
- ✓暮らしのなかで、できること
弁が閉じなくなるということ

心臓は4つの部屋に分かれています。
そして、その部屋のあいだには血液が一方向にしか流れないようにする弁がついています。
僧帽弁は左心房と左心室のあいだにある弁です。
| 正常なとき | 閉鎖不全のとき | |
|---|---|---|
| 弁の状態 | 薄く、しなやかに閉じる | 厚く硬くなり、閉じきらない |
| 血液の流れ | 全身へ送り出される | 一部が、左心房へ逆流する |
| 左心房 | 大きさは変わらない | 戻る血の分だけ、広がっていく |
| 音 | 雑音は聞こえない | 逆流する音が、心雑音として聞こえる |
| 肺 | 問題ない | 圧が高まり、うっ血していく |
| 全身へ送る量 | 十分 | 減っていく。疲れやすくなる |
逆流——
送り出したはずの血液が一部、元の部屋へ戻ってしまう——
その分だけ全身へ届く血液は減り、戻ってきた分だけ左心房は広がっていきます。
- 小型犬の高齢期に、とくに多い
- キャバリアでは、より若い年齢から見られる
- 数年かけて、ゆっくり進行する
- 初期は無症状で、心雑音だけが手がかり
- 健康診断の聴診で見つかることが多い
- 弁そのものを薬で元に戻すことはできない
この病気が早く見つかるのは聴診で音が聞こえるからです。
症状が何も出ていない段階でも雑音だけは先に聞こえる——
だから、定期的な健康診断に意味があります。
とくにキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルではほかの犬種よりずっと若い年齢から現れることが知られています。
なぜ、咳が出るのか

この病気の症状としていちばんよく知られているのが咳です。
けれど、「心臓の病気なのに、なぜ咳が出るのか」——
そこが分かりにくいと思います。
理由は、2つあります。
| 理由 | 起きていること |
|---|---|
| 気管への圧迫 | 広がった左心房が、すぐ上の気管を押し上げる |
| 肺のうっ血 | 肺に血液がたまり、刺激となって咳が出る |
| 咳の質 | 乾いた咳であることが多い |
| 出る時間 | 夜間や明け方、興奮したあとに強くなる |
| 進むと | 安静にしていても呼吸が速くなる |
| さらに進むと | 肺水腫。呼吸困難となり、緊急を要する |
心臓のすぐ上を気管が走っている——
だから、左心房が広がれば物理的に押し上げてしまうのです。
押されれば気管は刺激を受け、咳が出ます。
この段階はまだ肺水腫ではありません。
「咳が出た=もう手遅れ」ではない——そこは、知っておいてください。
気道の咳と、混同されやすいのです
小型犬の高齢期には気管虚脱も気管支炎も起こりやすくなります。
そして、どれも夜間や明け方に強くなる——
症状だけでは分けられません。
聴診で雑音を確かめ、レントゲンで心臓の大きさを見て、心エコーで逆流の程度を測る——
そこまでしてはじめて分かるものです。
そして咳のほかにも現れる症状があります。
心拡大が進むと心筋が伸びて刺激がうまく伝わらなくなり、不整脈を起こすことがあります。
そうなれば脳に血液が回らず失神してしまうこともあるのです。
「一瞬、倒れた」——
すぐ戻ったとしてもそれは必ず伝えるべき出来事です。その一瞬が治療の内容を変えることがあります。
心雑音があっても、すぐ薬とは限りません

ここが、この病気でもっとも誤解されやすい部分です。
この病気には国際的な指針にもとづく段階分けがあります。
| 段階 | 状態 | すること |
|---|---|---|
| A | まだ発症していないが、なりやすい犬種 | 定期的に聴診を受ける |
| B1 | 心雑音はあるが、心臓は広がっていない | 治療はせず、経過を見る |
| B2 | 心エコーで、心臓の拡大が確認された | 薬を始める段階 |
| C | 心不全の症状(咳・呼吸困難)が出た | 利尿薬などを加え、症状を抑える |
| D | 通常の治療で抑えきれない | 薬を増やし、生活の質を保つ |
B1——心雑音はあるが、心臓はまだ広がっていないという段階では治療を行いません。
「早く薬を飲ませたほうがよいのでは」と思われるかもしれません。
けれど、この段階で薬を使っても進行を遅らせる効果は確かめられていません。
むしろ、「いつ始めるか」がはっきり決まっていることに意味があります。
そして、その判断のために必要なものが心エコーです。
聴診だけではB1なのかB2なのかは分かりません。
雑音の大きさと心臓の広がり方は必ずしも一致しないからです。
「雑音がありますね」と言われたら心エコーを受けてください」——
それが、この病気でいちばん大切な一歩です。
どのくらいの間隔で見てもらうか
B1の段階で「治療はしません」と言われた場合——
そこで終わりにしないでください。
この病気は数年かけてゆっくり進みます。
いつB2に入るかは誰にも分かりません。
- 次にいつ来ればよいか、必ず聞いておく
- 半年から1年ごとの再検査が目安になることが多い
- 咳が出始めたら、予定を待たずに受診する
- 安静時呼吸数が増えてきたときも同じ
- 雑音の大きさが変わったと言われたら、心エコーを
- 記録を残しておくと、変化が分かりやすい
「様子を見ましょう」という言葉には「いつまで、何を見るのか」という中身が必要です。
そこをはっきりさせておくと次の受診が遅れません。
B2で始めることの意味
心臓の拡大が確認された段階——B2で薬が始まります。
まだ、症状は何も出ていません。
咳もしないし、散歩も元気に行く——
それなのに薬を飲ませることに迷いを感じられるかもしれません。
けれど、ここにははっきりした根拠があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 始める時期 | 心エコーで心拡大を確認したB2から |
| 主な薬 | ピモベンダンなど |
| 期待できること | 無症状の期間を1〜2年以上延ばせるとされる |
| やめると | 病状が進行するため、生涯続けるのが前提 |
| C以降 | 利尿薬などを加え、症状のコントロールを重視 |
| 共通 | 弁そのものが元に戻るわけではない |
無症状の期間を1〜2年以上延ばせる——
これは、とても大きなことです。
咳をせず、散歩を楽しみ、ふつうに眠れる時間がそれだけ長くなる——
「症状が出てから治療する」のと「出る前から始める」のでは過ごせる時間の質が違ってくるのです。
🩺 やめると、戻ってしまいます
そして、始めた薬はやめないでください。
ピモベンダンを中止すると病状が進行するため生涯続けることが前提とされています。
「元気だから、そろそろやめてもいいのでは」——
元気なのは薬が効いているからである可能性があります。
減らすかどうかの判断は必ず検査の結果をもとに決めてください。
家でできる、いちばん有効なこと

この病気には家庭でできるとても有効な観察があります。
安静時呼吸数です。
眠っているとき、静かに横になっているときの呼吸の回数を数えます。
- 胸やお腹が上下する回数を、15秒数える
- その数を4倍すれば、1分あたりの回数になる
- 必ず、眠っているか安静のときに数える
- 毎日、同じような時間帯に測る
- ノートやスマートフォンに記録しておく
- ふだんの数を知っておくことが、いちばん大切
なぜ、これが有効なのか——
肺にうっ血が起こり始めると安静時の呼吸数が増えてくるからです。
咳より先に数字に出ることがあります。
そして、呼吸数の変化は「なんとなく苦しそう」よりずっと確かな情報です。
「ふだんは20回台なのに、この3日は30回を超えています」——
そう伝えられればすぐに対応を考えてもらえます。
薬が効いているかどうかもこの数字で追えるようになります。
数え方のコツをひとつ——
触ったり、声をかけたりしないでください。
目を覚ませば呼吸数は変わってしまいます。
離れた場所から胸やお腹の動きを見るだけで十分に数えられます。
そして、パンティング(口を開けた呼吸)をしているときは数えても意味がありません。
暑いときや運動の直後ではなく静かに眠っているときを選んでください。
肺水腫という、急変
この病気でもっとも警戒すべき状態を書いておきます。
肺水腫——肺のなかに水がしみ出してしまう状態です。
逆流によって肺の側の圧が高まり続けると血管から水分が漏れ出して肺にたまっていきます。
そうなれば酸素の受け渡しができなくなる——
- 安静にしているのに、呼吸が速く浅い
- 座ったまま、首を伸ばして呼吸している
- 横になれず、立ったままでいる
- 舌や歯ぐきが、青紫や白っぽい
- ピンク色の泡を吐いた
- ぐったりして、動けない
これらは、夜間でも受診すべき状態です。
とくに、ピンク色の泡——
肺のなかの水分が血液とまじって出てきたものですでにかなり進んだ状態を示します。
舌の色が変わっているならチアノーゼ——酸素が足りていない合図です。
運ぶときには興奮させず、首を締めず、本人が選んだ姿勢のまま——
抱きかかえて体勢を変えることがかえって苦しくさせることもあります。
暮らしのなかで、できること
薬とあわせて整えたいことを挙げます。
| 項目 | 工夫 |
|---|---|
| 体重 | 太らせない。心臓の負担が増える |
| 運動 | 激しい運動は避ける。散歩は無理のない範囲で |
| 興奮 | 来客やチャイムなど、心拍が上がる場面を減らす |
| 暑さ | 夏場は室温を保つ。負担が大きい |
| 塩分 | おやつを含め、与えるものを相談する |
| 散歩の道具 | 首輪をやめ、ハーネスにする |
「もう散歩に行かせないほうがよいですか」と聞かれることがあります。
段階にもよりますが多くの場合、無理のない範囲での散歩は続けられます。
まったく動かさないことは筋力の低下や気持ちの落ち込みを招きます。
避けたいのは「急に強く動く」場面です。
全力で走る、他の犬に興奮して飛びかかる、階段を駆け上がる——
そうした瞬間に心臓へ大きな負担がかかります。
「歩く速さで、本人が行きたがる範囲まで」——
そのくらいの散歩なら多くの場合続けられます。
途中で立ち止まったり、座り込んだりするようになったらそこが本人の限界です。
無理に歩かせず、そのことを次の受診で伝えてください。
「以前は30分歩けたのに、いまは10分で座り込む」——
それは、進行を示す確かな情報になります。
薬を続けるうえで
- 飲ませられなかった日は、記録して伝える
- 定期的な検査を、必ず受ける
- 水を飲む量と、尿の量も見ておく
- 食欲が落ちたら、早めに相談する
- ほかの病院にかかるときは、薬を伝える
- 自己判断で量を変えない
利尿薬を使い始めた場合には腎臓への影響も見ていくことになります。
水を飲む量、尿の量を意識しておいてください。
心臓と腎臓は互いに影響し合う関係にあり、腎臓の状態を見ながら薬の量が調整されます。
よくある質問
Q. 僧帽弁閉鎖不全症とはどんな病気ですか?
A. 心臓の弁が変性して閉じきらなくなり、血液が逆流する病気です。犬の心臓病でもっとも多く、小型犬の高齢期にとくに見られます。逆流した血液で左心房が広がっていきます。
Q. 心雑音があると言われました。すぐ治療が必要ですか?
A. 必ずしもそうではありません。心雑音はあるが心臓が広がっていない段階(B1)では治療を行いません。心エコーで拡大を確認し、B2以上になった段階から薬物療法を始めます。
Q. なぜ咳が出るのですか?
A. 理由は2つあります。広がった左心房がすぐ上の気管を押し上げること、そして肺のうっ血です。乾いた咳になることが多く、夜間や明け方に強くなります。
Q. 症状がないのに薬を飲ませるのですか?
A. B2でピモベンダンなどを始めることで、無症状の期間を1〜2年以上延ばせるとされています。咳をせず散歩を楽しめる時間が、それだけ長くなるということです。症状が出てから始めるのとは、過ごせる時間の質が違ってきます。
Q. 薬をやめてもよいですか?
A. やめないでください。ピモベンダンを中止すると病状が進行するため、生涯続けることが前提とされています。元気なのは薬が効いているからかもしれません。
Q. 家でできることはありますか?
A. 安静時呼吸数を数えて記録することです。眠っているときに胸の上下を15秒数えて4倍します。肺のうっ血が始まると咳より先に数字に出ることがあり、薬が効いているかどうかも追えるようになります。
Q. 急いで受診すべきサインは何ですか?
A. 安静時に呼吸が速く浅い、座ったまま首を伸ばして呼吸している、舌が青紫や白っぽい、ピンク色の泡を吐いた——これらは肺水腫を疑う状態で、夜間でも受診してください。
まとめ|雑音と言われたら、心エコーを
この病気は症状が出るより先に音として見つかります。
健康診断の聴診で「雑音がありますね」——
それが、この病気との出会い方です。
そこで「治療はしません」と言われても見放されたわけではありません。
まだ心臓が広がっていない段階だからです。
大切なのは「いつB2になったか」を見逃さないこと——
そのために心エコーを受け、定期的に見てもらってください。
そして、家では眠っているときの呼吸数を数える——
その数字が次の一手を決める材料になります。
この病気は弁そのものを元に戻すことはできません。
けれど、始める時期を間違えなければ穏やかな時間を長く保てます。
「いつ気づいたか」より「いつ始めたか」が結果を分ける——そういう病気です。
今日できる3つ
- 1眠っているときの呼吸数を15秒数えて4倍し、記録する
- 2心雑音を指摘されているなら、心エコーを受けたか確かめる
- 3夜と明け方の咳の回数を、数日つけてみる
雑音だけの段階で見つかるのが、この病気です。そこからの数年を、どう過ごすかが決まります。

本日の「犬猫の悩みを即解決!」の記事「犬の僧帽弁閉鎖不全症|心雑音があっても、すぐ薬とは限りません」でした。
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