犬の変形性関節症|「歳のせい」に、いちばんされる病気

犬の変形性関節症

散歩に、行きたがらなくなった。

寝ている時間が、増えた。

おもちゃを見せても、以前ほど乗ってこない——

「歳をとって、落ち着いてきたな」——

そう受け取られることがいちばん多い病気があります。

変形性関節症——

関節の軟骨がすり減り、骨どうしが直接こすれ合って変形していく病気です。

そして、犬は痛みを「痛い」とは言いません。

代わりに、動かなくなる——

だから、老化に見えてしまうのです。

結論

変形性関節症は関節の軟骨がすり減り、炎症とともに関節が変形していく病気です。患部の関節の周りに腫れや痛みが現れ、四肢に及べば、跛行(足を引きずる)や歩き方の異常が見られます。シニア犬では、原因そのものを治すというよりいま出ている痛みや炎症を和らげることが治療の中心になります。体重管理関節への過剰な負担を減らし、動きにくさを和らげます。消炎鎮痛薬は犬の変形性関節症の第一選択薬とされ、関節の炎症を抑えて動きやすさを改善し、関節のさらなる損傷を防ぎます。グルコサミンやコンドロイチンなどのサプリメント食事管理とあわせて用いられることもあり、マッサージ、鍼灸、ストレッチといった理学療法すべらない床、室内の段差をなくすといった環境の改善も有効です。

この記事でわかること

  • 「歳のせい」に、いちばんされる病気
  • 痛みは「動かない」という形で出ます
  • 軟骨は、戻りません
  • 薬の順番があります
  • 体重が、いちばん効きます
  • 床と段差を、見直してください
  • 冬に、悪くなります

「歳のせい」に、いちばんされる病気

老化に見える変化
その落ち着きは、痛みかもしれません。

高齢の犬動かなくなる——

それを「老化」だと受け取るのは自然なことです。

実際、年齢とともに活動量は落ちていきます。

けれど、その裏痛みが隠れていることがあります。

同じ変化の、2つの読み方
見えること 老化として読むと 痛みとして読むと
散歩を嫌がる 体力が落ちた 歩くと関節が痛い
寝てばかりいる よく眠るようになった 起き上がるのがつらい
遊ばなくなった 落ち着いてきた 走ると痛みが出る
階段を使わない 足腰が弱った 上り下りで、関節に力がかかる
抱かれるのを嫌がる 気難しくなった 触られると痛い場所がある
怒りっぽくなった 性格が変わった 痛みで、余裕がなくなっている

右と左——

見えていることは同じです。

けれど、読み方が違えばすることも変わります。

「老化」受け取れば何もしません。

「痛み」受け取れば和らげる方法を探します。

そして、この病気の痛み和らげられます。そこが、読み方を変える意味です。

「歳だから」で、片づけないでください

シニア期に起きる変化には調べれば手が打てるものたくさんあります。

目が見えにくくなった、耳が聞こえにくくなった——

そうした変化にも治せるものとそうでないものあります。

シニア期の目についても別の記事で解説しています。

「歳だから仕方ない」調べたあとで言う言葉です。

痛みは「動かない」という形で出ます

ここが、この病気でもっとも大切な理解です。

犬は痛みを隠します。

足を引きずるという分かりやすい症状出るころにはかなり進んでいることがあります。

その前出てくる変化「動かなくなること」です。

  • 散歩の距離が、少しずつ短くなった
  • 途中で立ち止まる、帰りたがる
  • ソファやベッドに、上がらなくなった
  • 階段を使わなくなった
  • 寝ている時間が増えた
  • 起き上がるのに、時間がかかるようになった

とくに、「起き上がるのに時間がかかる」——

朝いちばん長く寝たあと立ち上がりにくそうにしている——

これは、この病気でとても特徴的な現れ方です。

じっとしているあいだ関節がこわばり、動き始めがつらくなる——

しばらく歩くと少し楽になることもあります。

だから、散歩の最初だけつらそうということが起こります。「歩き出したら平気そうだから」見過ごさないでください。

そして、痛みが続く悪循環始まります。

痛いから動かない——

動かないから筋肉が落ちる——

筋肉が落ちれば関節を支える力が減り、さらに痛くなる——

この輪断つこと治療の目的になります。

そして、痛みは性格まで変えます。

触られるのを嫌がる、抱かれると怒る、以前より気難しくなった——

そうした変化「歳をとって頑固になった」受け取ってしまうことがあります。

けれど、痛みを抱えていれば余裕はなくなります。

人でも同じことだと思います。

「性格が変わった」という変化にも理由があるかもしれない——

そう考えてみる価値あります。

軟骨は、戻りません

軟骨がすり減っていく
一度減った軟骨は、戻りません。

関節には骨と骨のあいだ軟骨というクッションあります。

衝撃をやわらげ、なめらかに動かすための仕組みです。

その軟骨加齢や長年の負荷少しずつすり減っていきます。

関節が変わっていく道すじ
段階 起きていること
はじめ 軟骨が、少しずつ削れていく
進むと クッションが減り、骨が直接こすれる
炎症 関節の内側で、炎症が起きる
腫れと痛み 患部の周りが腫れ、痛みが出る
変形 関節のかたちそのものが変わっていく
そして 一度すり減った軟骨は、戻らない

「戻らない」——

厳しい事実ですが知っておいてほしいことです。

だから、この病気の治療「治す」ではなく「進行を遅らせ、痛みを抑える」ことになります。

シニア犬では原因そのものを治すというよりいま出ている痛みや炎症を和らげること治療の中心です。

そして、その背景には若いころの関節の状態関わっていることもあります。

股関節形成不全のようにもともと関節にゆるみがあった犬ではこすれ続けた結果としてこの病気に至る——

若いころに診断がついているならその先を見越して管理していくことに意味があります。

薬の順番があります

治療の組み立て
順番に、意味があります。

「関節によいサプリメント」数多く売られています。

それらを試したくなるのは自然なことです。

けれど、順番あります。

治療の組み立て
方法 位置づけ 内容
体重管理 土台 関節への過剰な負担を減らす
消炎鎮痛薬 第一選択とされる 炎症を抑え、動きやすさを改善する
理学療法 あわせて行う マッサージ、鍼灸、ストレッチ
サプリメント 補助として グルコサミン、コンドロイチンなど
環境の改善 毎日のこと すべらない床、段差の解消
共通 痛みを取って、動けるようにする

消炎鎮痛薬犬の変形性関節症の第一選択薬だとされています。

関節の炎症を抑えて動きやすさを改善し、関節のさらなる損傷を防ぐ——

「痛み止めはその場しのぎでは」思われるかもしれません。

けれど、この病気では違います。

痛みが取れれば動けるようになる——

動けば筋肉が保たれ、関節を支える力が残ります。

つまり、痛みを抑えること自体悪循環を断つ働き持っている——そういう位置づけです。

🩺 サプリメントは、補助です

サプリメント「補助」だと受け取ってください。

グルコサミンやコンドロイチン痛みを減らすのに役立つされており食事管理とあわせて用いられます。

けれど、すでに強い痛みがある状態それだけで抑えることは難しい——

「サプリメントで様子を見る」あいだ動かない時間が増えれば筋肉は落ちていきます。

まず痛みを取る。そのうえで、補助を足す——その順番相談してください。

体重が、いちばん効きます

治療のなか飼い主がいちばん大きく関われる部分体重です。

体重管理関節への過剰な負担を減らし、動きにくさを和らげます。

関節にかかる力そのまま体重に比例する——

  • いまの体重を量り、記録する
  • 目標体重を、獣医師に確認する
  • おやつを含めて、1日に与えるものを書き出す
  • 急に減らさず、ゆっくり落とす
  • 家族全員で、与える量を共有する
  • 減量用の食事が処方されることもある

そして、この病気の犬では減量が難しいという事情あります。

痛くて動けないのですから運動で減らすことができません。

だからこそ、食事の見直し中心になります。

そして、痛みを薬で抑えて動けるようにすることが減量にもつながっていく——

ここでも、順番が効いてくるのです。

減らし方の、注意

急に減らそうしないでください。

体に負担がかかるうえに筋肉まで落ちてしまうことがあります。

関節を支えているのはその周りの筋肉ですからそこを失えば本末転倒です。

ゆっくり、確実に落としていく——

そして、たんぱく質を極端に減らさない——

減量用の食事処方されることもあります。

「量を減らす」のではなく「内容を変える」ほうが本人もつらくありません。

おなかが空いて落ち着かないという状態続けば続けられなくなります。

床と段差を、見直してください

家のなかでできること
床と段差を、見直してください。

環境の改善有効だとされています。

すべらない床、室内の段差をなくすこと——

家のなかでできること
場所 工夫
すべり止めのマットを敷く
段差 スロープを置く。抱いて移動する
階段 柵をつけ、使わせない
寝床 厚みのあるものに。硬い床で寝かせない
食器 高さを上げ、かがまずに食べられるように
足裏 毛を整え、爪を切る

すべる床この病気の犬にとって毎日の負担です。

踏ん張れなければ余計な力が関節にかかります。

そして、すべって転べば痛みも増えます。

よく通る動線から優先してマットを敷いてください。

そして、寝床——

硬い床長い時間寝ることは関節に痛みを生みます。

厚みのある、体が沈み込むベッド用意してあげてください。

起き上がるとき力を入れやすいという点でも意味があります。

そして、食器の高さ——

床に置いた器食べることは首を下げ、前足に体重をかける姿勢とることになります。

前足の関節痛みがある犬にはつらい姿勢です。

台に載せて少し高くするだけで食べやすくなります。

「最近、食べる量が減った」という変化実は食べる姿勢のつらさだった——

そういうこと実際にあるのです。

マッサージという方法

理学療法としてマッサージ、鍼灸、ストレッチ効果的な場合があるされています。

家でできることあります。

  • まず、獣医師にやり方を教わる
  • 痛がる場所を、強く押さない
  • 周りの筋肉を、やさしくほぐす
  • 嫌がったら、すぐにやめる
  • 温めてから行うと、やりやすい
  • 毎日、短い時間で続ける

自己流で関節そのものを動かそうとしないでください。

かえって痛みを強めることがあります。

やり方を教わったうえ続けてください。

そして、触れること自体にも意味があります。

毎日体をなでていれば「ここを触ると嫌がる」という変化早く気づけます。

痛む場所が増えていないか、腫れが出ていないか——

そうした確認スキンシップのついでにできるようになります。

冬に、悪くなります

この病気には季節による波あります。

寒い時期には関節がこわばりやすくなります。

「冬になったら急に動かなくなった」——

そういう変化起こることがあります。

  • 寝床のある部屋を、暖かく保つ
  • 床からの冷えを、マットで防ぐ
  • 散歩は、暖かい時間帯に
  • 出かける前に、体を温めてから
  • 服を着せることも、選択肢になる
  • 寒い日は、無理に外へ出さない

そして、冬に悪くなったならそのことを受診のときに伝えてください。

薬の量を季節で調整することもあります。

記録をつけておくその判断がしやすくなります。

「今週は何回、立ち上がるのに手間取ったか」——

そのくらいの記録でも十分に役立ちます。

記録しておきたいこと
残すこと 見えてくること
散歩の距離・時間 歩ける量が変わっていないか
立ち上がりの様子 手間取る日が増えていないか
階段や段差 使わなくなった場所はないか
体重 目標に近づいているか
薬を飲んだ日 効いているかどうかの判断材料
天気・気温 季節との関係が見えてくる

この病気ゆっくり進みます。

だから、毎日見ていると変化が分かりません。

記録があれば「3か月前と比べてどうか」見えてきます。それが、薬や食事を見直す材料になります。

後ろ足の動きがおかしいという症状椎間板ヘルニアでも起こります。

また、急に足を痛がるなら関節の炎症腱の問題も考えられます。

よくある質問

Q. 変形性関節症とはどんな病気ですか?

A. 関節の軟骨がすり減り、炎症とともに関節が変形していく病気です。患部の周りに腫れや痛みが現れ、四肢に及べば跛行や歩き方の異常が見られます。一度すり減った軟骨は戻りません。

Q. ただの老化ではないのですか?

A. 老化と誤解されやすい病気です。散歩を嫌がる、寝てばかりいる、遊ばなくなる——これらは「落ち着いてきた」とも「痛くて動けない」とも読めます。読み方が違えば、することも変わります。

Q. 足を引きずってはいませんが

A. 犬は痛みを「動かない」という形で示します。跛行が出るころには、かなり進んでいることがあります。その前に、散歩の距離が短くなる、ソファに上がらない、起き上がるのに時間がかかるといった変化が出てきます。

Q. 朝だけ、立ち上がりにくそうです

A. この病気に特徴的な現れ方です。じっとしているあいだに関節がこわばり、動き始めがつらくなります。しばらく歩くと少し楽になることもあります。

Q. サプリメントだけで様子を見てもよいですか?

A. 順番があります。消炎鎮痛薬が第一選択薬とされ、炎症を抑えて動きやすさを改善します。グルコサミンやコンドロイチンは補助として、食事管理とあわせて用いられます。様子を見ているあいだに動かない時間が増えれば、筋肉は落ちていきます。

Q. 家でできることは何ですか?

A. 体重管理と、床・段差の見直しです。関節にかかる力は体重に比例します。また、すべらない床にする、室内の段差をなくすといった環境の改善も有効です。

Q. 冬になると悪くなる気がします

A. 寒い時期は関節がこわばりやすくなります。寝床を暖かく保ち、散歩は暖かい時間帯を選んでください。季節で薬の量を調整することもあるため、そのことを受診時に伝えてください。

まとめ|落ち着いたのか、痛いのか

この病気は「歳のせい」にいちばんされる病気です。

散歩を嫌がる。寝てばかりいる。遊ばなくなった——

それを「落ち着いてきた」読むか「痛いのかもしれない」読むか——

そこで、その先の暮らしが変わってきます。

軟骨は戻りません。

けれど、痛みは和らげられます。

そして、痛みが取れれば動けるようになり、筋肉が保たれ、関節を支える力が残る——

「痛いから動かない、動かないから弱る」という断つことこの病気の治療です。

「歳だから仕方ない」調べたあとで言う言葉だと思ってください。

そして、できることの多く家のなかにあります。

体重を落とす。床にマットを敷く。寝床を厚くする。食器の高さを上げる——

どれも特別なことではありません。

けれど、毎日のことだからこそ積み重なります。

今日できる3つ

  • 1朝いちばん、立ち上がるまでの様子を見てみる
  • 2体重を量り、目標体重を獣医師に聞いておく
  • 3よく通る場所の床に、すべり止めを敷く

落ち着いてきたのではなく、痛いのかもしれません。その違いが、残りの年月を変えます。