

こんばんは。
今回「犬猫の悩みを即解決!」が自信を持ってお届けする記事は「犬の腱鞘炎|前足をかばうのは、関節ではないかもしれません」です。ではどうぞ!
前足を、かばっている。
歩き出しに片方をつかない——
けれど、数日休ませたらよくなった——
そして、また遊ばせたら戻ってきた——
その繰り返しに心当たりがあるなら考えてほしい病気があります。
腱鞘炎——
犬では上腕二頭筋腱という前足の肩関節にある腱やその周囲が炎症を起こすことで知られています。
中型から大型の中高齢の犬によく発症するとされています。
そして、この病気でいちばんやっかいなことは「休むと治ってしまう」という点です。
結論
上腕二頭筋腱炎(腱鞘炎)は前足の肩関節にある腱やその周囲が炎症を起こす疾患で、中型〜大型の中高齢の犬によく発症します。上腕二頭筋は前肢の運動に重要な役割を果たしており、肩甲骨から肘にかけて伸びています。この疾患により、前肢の跛行(歩行異常)が生じます。原因としては、外傷、前足の過剰な使用、過伸展(前足を正常以上に伸ばすこと)、関節内の小さな骨片などによる物理的刺激が考えられていますが、犬では実際の原因を特定することが難しい場合も多いとされます。診断には視診や触診、レントゲン検査が用いられます。初期の軽い症状では、安静に保ち運動を控えさせることから始め、非ステロイド系の消炎鎮痛剤で炎症を抑え、痛みを和らげます。症状が重い場合や繰り返し現れる場合には、外科治療が選択されることがあります。
この記事でわかること
- ✓関節ではなく、腱の病気です
- ✓前足を、かばっていませんか
- ✓「使いすぎ」で起こります
- ✓休むと治り、再開すると戻る
- ✓安静が、治療そのものです
- ✓診断と、治療の順番
- ✓遊び方を、変えてください
関節ではなく、腱の病気です

「足が痛い」というときまず思い浮かぶのは関節だと思います。
けれど、痛みの出どころは関節だけではありません。
| 組織 | 役割 |
|---|---|
| 関節 | 骨と骨のつなぎ目。曲げ伸ばしをする |
| 軟骨 | 関節のクッション |
| 靭帯 | 骨と骨をつなぎ、関節を安定させる |
| 腱 | 筋肉を骨につなぎ、力を伝える |
| 腱鞘 | 腱を包み、なめらかに動かす鞘 |
| この病気 | 腱とその周囲で、炎症が起きる |
腱は筋肉と骨をつなぐひも状の組織です。
筋肉が縮む力を骨に伝えて足を動かしています。
そして、その腱は腱鞘という鞘に包まれてなめらかに滑っています。
上腕二頭筋は前肢の運動に重要な役割を果たしており、肩甲骨から肘にかけて伸びています。
その腱が肩関節のあたりを通る部分で炎症が起きる——
それが、この病気で起きていることです。
だから、レントゲンを撮っても関節にははっきりした変化が見られないことがあります。
「骨には異常ありません」と言われたのに痛がり続ける——
そういうときに候補に入る病気だと知っておいてください。骨に写らないものが痛みの元であることは珍しくありません。
前足を、かばっていませんか

この病気で現れるのは前肢の跛行——前足の歩行異常です。
後ろ足の跛行とは見えるものが少し違います。
- 歩き出しに、片方の前足をつかない
- 痛む前足を出すとき、頭を上に振る
- 肩の前あたりを触ると、嫌がる
- 前足を前へ伸ばされるのを嫌がる
- 運動した翌日に、目立つことがある
- 数日休ませると、軽くなる
「頭が上下する」——
これは、前足の跛行でよく見られる動きです。
痛む足に体重をかけたくないのでその足を出すときに頭を持ち上げて重心を後ろへ逃がす——
だから、歩いているとき頭がリズミカルに上下するように見えるのです。
動画は、横から撮ってください
前足の跛行を確かめるには横から見るのがいちばん分かりやすい——
頭の上下と足の出し方が同時に見えます。
後ろ足の問題なら後ろから撮るのがよいのですが前足なら横から——
歩く速さで10秒ほど——
診察室では緊張して分かりにくいことも多いのです。
そして触られるのを嫌がる場所——
肩の前あたりをそっと触れて反応を見てみてください。
ただし、強く押したり、無理に前足を伸ばしたりしないように——
痛みを強めるだけですし触られること自体を嫌がるようになります。
「使いすぎ」で起こります
原因として考えられているものを挙げます。
| 原因 | 説明 |
|---|---|
| 外傷 | ぶつけた、ひねったなど |
| 前足の過剰な使用 | 使いすぎによる、繰り返しの負担 |
| 過伸展 | 前足を、正常以上に伸ばすこと |
| 関節内の骨片 | 小さなかけらによる物理的な刺激 |
| 体格・年齢 | 中型〜大型の中高齢に多い |
| 実際には | 原因を特定するのが難しいことも多い |
「前足の過剰な使用」と「過伸展」——
この2つが暮らしのなかで起きていることを考えてみてください。
ボールを追って急に止まる——
フリスビーに飛びついて着地する——
ソファから飛び降りる——
そうした瞬間に前足には強い力がかかります。
止まるとき体重を支えるのは前足だからです。
そして、着地の衝撃も前足が受けます。
運動好きな犬ほどこの病気になりやすい——
そういう構造をしています。
「よく走る、元気な子」だからこそ起きやすい——
そこが、この病気の皮肉なところです。
中型から大型の中高齢——
若いころからよく動いてきた犬が年齢を重ねたころに現れてくることが多いのです。
休むと治り、再開すると戻る

ここが、この病気でもっとも見落とされやすい部分です。
痛がるので、散歩を控える——
数日すると、よくなる——
「治ったな」と思って運動を再開する——
また痛がる——
この繰り返しがこの病気の典型的な経過です。
- 休めば、炎症が引いて痛みが減る
- けれど、腱そのものは治りきっていない
- そこへ、また負担がかかる
- 炎症がぶり返し、少しずつ積み重なる
- 繰り返すほど、治りにくくなっていく
- やがて、外科治療を考える段階になる
「休ませたら治る」ことがかえって受診を遅らせます。
「病院に行くほどではない」と判断してしまうからです。
けれど、繰り返しているならそれは治っていないということです。
そして、症状が重い場合や繰り返し現れる場合には外科治療が選択されることがあります。
繰り返すということ自体が治療の方針を変える理由になるのです。
だから、「3回目です」と伝えてください。
記録しておくと、伝わります
「ときどき前足をかばいます」——
そう伝えても「ときどき」がどれくらいなのかは伝わりません。
- かばった日を、カレンダーに印をつける
- どちらの前足だったかも書く
- その前日に何をしたかも残す
- 何日で治まったかを書く
- 数か月ぶんが並べば、回数が見える
- その記録を、受診のときに見せる
「この3か月で5回」と言えればそれは確かな情報です。
そして、「前日に何をしたか」——
ドッグランで走った、ボール遊びをした、階段を上り下りした——
きっかけが見えてくれば避けるべき場面もはっきりします。
安静が、治療そのものです

初期の軽い症状では安静に保ち、運動を控えさせることから始めます。
そして、非ステロイド系の消炎鎮痛剤を用いることで炎症を抑え、痛みを和らげます。
薬より先に「安静」が来ていることに注目してください。
使いすぎで傷んでいるのですから使わないことがいちばんの治療です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 期間 | 指示された期間を、必ず守る |
| 散歩 | 控える、または短くゆっくりに |
| 遊び | 走る、跳ぶ、追いかける遊びをやめる |
| 段差 | ソファへの飛び乗り・飛び降りを防ぐ |
| 床 | すべり止めを敷き、踏ん張れるように |
| 薬 | 指示どおりに使い、途中でやめない |
「痛がらなくなったから」と早く解除してしまう——
それが、この病気でいちばん多い失敗だと言えます。
薬が効いて痛みが取れているだけで腱の炎症はまだ続いていることがあります。
🩺 動きたがる犬を、どう休ませるか
運動好きな犬を休ませることは簡単ではありません。
本人は遊びたがります。
けれど、「本人が動きたがるから」と許してしまえば治りません。
体を使えないぶんはにおいを使う遊びや知育玩具で満たしてあげてください。
頭を使う遊びは思った以上に犬を疲れさせます。
診断と、治療の順番
診断には視診や触診、そしてレントゲン検査が用いられます。
触診では肩の前あたりを押したり、前足を伸ばしたりして痛みが出るかを確かめます。
そして、レントゲン——
骨に異常がないか、関節のなかに小さな骨片がないかを調べます。
- まず、ほかの原因を除いていく
- 骨折や脱臼がないかを確かめる
- 関節そのものの病気ではないかを見る
- 神経の問題ではないかも考える
- そのうえで、腱の可能性を検討する
- より詳しく調べる方法がとられることもある
前足の跛行にはほかにも多くの原因があります。
関節そのものの炎症なら関節炎——
加齢による変性なら変形性関節症——
首のあたりの神経が関わっているなら椎間板の問題も考えられます。
そして、後ろ足の問題で前足に負担がかかっていることもあります。
股関節の問題がある犬は重心を前へ移して歩くため前足が疲れやすくなる——
だから、全身を見て判断することになります。
受診のときに伝えてほしいことを挙げておきます。
- どちらの前足を、いつからかばっているか
- これまでに何回、同じことがあったか
- 症状が出る前に、何をしていたか
- 休ませると、どのくらいで治まるか
- ふだんの運動量と、遊びの種類
- ほかに痛がる場所がないか
とくに「休ませると治る」という情報は必ず伝えてください。
それ自体がこの病気を疑う手がかりになります。
骨折や脱臼なら休んでもそう簡単には治りません。
「数日で軽くなる」という経過が炎症らしさを示しているのです。
遊び方を、変えてください
回復したあと——
そして、予防のためにも見直したいことがあります。
遊び方です。
| 避けたいこと | 理由 |
|---|---|
| ボールを追って急停止 | 止まる衝撃を、前足が受け止める |
| 高く飛びついて着地 | 着地の衝撃が、前足に集中する |
| 急な方向転換 | ひねる力が、腱にかかる |
| ソファからの飛び降り | 毎日のことなら、積み重なる |
| すべる床での走行 | 踏ん張れず、余計な力がかかる |
| 長時間の激しい運動 | 疲れてくると、フォームが崩れる |
「遊ばせない」という意味ではありません。
遊びの種類を変えればよいだけのことです。
においを使った探し物、知育玩具、ゆっくり歩く散歩——
そうした遊びなら前足への負担を抑えたまま楽しめます。
そして、家のなかの床——
すべる床で急に走り出せば踏ん張れずに余計な力がかかります。
よく通る場所にすべり止めを敷く——
それだけで毎日の負担が減ります。
そして、散歩の道も見直す価値があります。
硬いアスファルトより土や芝生のほうが足への衝撃は小さくなります。
近くにそういう場所があるなら選んでみてください。
また、急な坂の上り下りも前足に強い力がかかります。
とくに下り——
体重を前足で受け止めながら降りることになるからです。
平らな道を選ぶだけでも負担は変わります。
再開するときの、進め方
安静の期間が終わったあといきなり元どおりにしないでください。
- まず、短い時間の平地歩行から始める
- 数日ごとに、少しずつ時間を延ばす
- 走らせるのは、いちばん最後
- 痛みが戻ったら、すぐに止める
- 「どのくらいから」を、獣医師に確認する
- ボール遊びは、しばらく控える
「治ったから、思いきり遊ばせてあげたい」——
その気持ちは分かります。
けれど、そこでまた繰り返しが始まる——
ゆっくり戻すことが結局は近道になります。
そして、体重も見直しておいてください。
安静にしていた期間に太ってしまうことがあります。
動いていないのに同じ量を与えていれば当然のことです。
そして、体重が増えれば前足にかかる力も増える——
せっかく休ませたのに再開したときの負担が重くなっている——
そうならないように安静の期間中は与える量を少し減らしておいてください。
おやつも含めてです。
「遊べないぶん、おやつくらいは」と思ってしまうのは自然ですがそこはこらえてください。
よくある質問
Q. 腱鞘炎とはどんな病気ですか?
A. 腱やその周囲が炎症を起こす病気です。犬では、前足の肩関節にある上腕二頭筋腱で起こることが知られています。中型〜大型の中高齢の犬によく発症します。
Q. 関節の病気とは違うのですか?
A. 違います。腱は、筋肉を骨につないで力を伝える組織です。だから、レントゲンで関節にはっきりした変化が見られないこともあります。「骨には異常ありません」と言われたのに痛がり続けるとき、候補に入ります。
Q. どんな症状が出ますか?
A. 前足の跛行です。歩き出しに片方の前足をつかない、痛む足を出すときに頭を上へ振る、肩の前あたりを触ると嫌がるといった様子が見られます。
Q. 原因は何ですか?
A. 外傷、前足の過剰な使用、過伸展、関節内の小さな骨片などが考えられています。ボールを追って急に止まる、飛びついて着地するといった動きで、前足には強い力がかかります。ただし、原因を特定するのが難しい場合も多いとされます。
Q. 休ませたら治りました。受診は必要ですか?
A. 繰り返しているなら、治っていないということです。休めば炎症が引いて痛みは減りますが、腱そのものは治りきっていません。そこへまた負担がかかると、炎症が積み重なっていきます。
Q. 治療はどう進めますか?
A. 初期の軽い症状では、安静に保ち運動を控えさせることから始めます。そのうえで非ステロイド系の消炎鎮痛剤で炎症を抑え、痛みを和らげます。症状が重い場合や繰り返す場合には、外科治療が選択されることがあります。
Q. 運動はいつから再開できますか?
A. いきなり元どおりにしないでください。短い時間の平地歩行から始め、数日ごとに少しずつ延ばします。走らせるのはいちばん最後です。「どのくらいから」を獣医師に確認してください。
まとめ|繰り返しているなら、治っていません
この病気でいちばん伝えたいことはひとつです。
「休ませたら治った」を繰り返しているならそれは治っていないということです。
休めば痛みは減ります。
けれど、腱そのものはまだ傷んだまま——
そこへまた負担がかかれば炎症は積み重なっていきます。
そして、繰り返すほど治りにくくなり、やがて外科治療を考える段階になる——
だから、「何回目か」を伝えてください。
そして、治療の中心は薬ではなく「休ませること」です。
動きたがる犬をどう休ませるか——
そこが、この病気のいちばんの工夫のしどころです。
体を使う遊びを取り上げるなら頭を使う遊びで埋めてあげてください。
おやつを隠して探させる、知育玩具を使う、新しい合図を教える——
そうした時間は思った以上に犬を満足させます。
そして、その習慣は回復したあとにも役に立ちます。
激しい運動を減らしながら満足させる方法を知っておくことが再発を防ぐからです。
今日できる3つ
- 1歩く様子を、横から10秒動画で撮ってみる
- 2この1年で何回、前足をかばったかを思い出す
- 3ボール遊びを、においを使う遊びに置き換えてみる
休むと治るから、受診が遅れます。繰り返しているなら、それは治っていません。

本日の「犬猫の悩みを即解決!」の記事「犬の腱鞘炎|前足をかばうのは、関節ではないかもしれません」でした。
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