

こんばんは。
今回「犬猫の悩みを即解決!」が自信を持ってお届けする記事は「犬の関節炎|原因不明の熱が、関節から出ていることがあります」です。ではどうぞ!
熱が出る。
元気も食欲もない。
けれど、調べても原因が見つからない——
血液検査をして、レントゲンを撮って、それでも「はっきりしませんね」——
そういう経過をたどっているなら調べてほしい場所があります。
関節——そこかもしれません。
特発性多発性関節炎は犬の不明熱の原因としてもっとも多い疾患だと報告されています。
そして、この病気は加齢で軟骨がすり減る変形性関節症とはまったく別のものです。
免疫が自分の関節を攻撃してしまう——
だから、治療の方向も正反対になります。
結論
関節炎は大きく感染性と非感染性に分けられ、非感染性はさらにびらん性と非びらん性に分けられます。犬の免疫介在性の関節炎は免疫機能の異常により、突如として自身の免疫が関節にある滑膜を異物と認識し、攻撃することで発症します。特発性免疫介在性多発性関節炎は、犬の多発性関節炎のなかでもっとも多く見られます。症状は、発熱、跛行、関節痛、元気食欲の低下など。特発性多発性関節炎は、犬の不明熱の原因としてもっとも多い疾患だと報告されています。診断は問診や身体検査、血液検査、レントゲン検査から進め、多発性関節炎が疑わしい場合には関節液検査を行います。治療は、炎症の緩和と免疫反応の抑制を目的にステロイド剤を中心とした免疫抑制剤で行われます。
この記事でわかること
- ✓「熱が出るのに、原因が分からない」
- ✓変形性関節症とは、別のものです
- ✓複数の関節が、同時に痛む
- ✓免疫が、自分の関節を攻撃する
- ✓関節液を、調べます
- ✓治療は、免疫を抑えること
- ✓感染が原因のことも、あります
「熱が出るのに、原因が分からない」

この病気でもっとも知っておいてほしいことを先に書きます。
特発性多発性関節炎は犬の不明熱の原因としてもっとも多い疾患だと報告されています。
「不明熱」——
熱が出ているのに調べても原因が見つからない状態をそう呼びます。
| 見えること | 起きていること |
|---|---|
| 熱が出る | 関節で炎症が起きている |
| 元気・食欲がない | 全身に影響が及んでいる |
| 歩き方がおかしい | 関節が痛む |
| 痛む場所が日で変わる | 複数の関節に起きているため |
| 動きたがらない | どこを動かしても痛い |
| 触ると嫌がる | 関節のあたりに、痛みがある |
熱と、元気のなさが前に出るため「関節の病気」だとは思われにくいのです。
そして、歩き方の異常があったとしても——
複数の関節が同時に痛むため「どこが痛いのかはっきりしない」という形になります。
1本の足だけをかばうのならそこを疑えます。
けれど、全身がだるそうで日によって痛む足が変わる——
そうなると関節の病気だとは気づきにくいのです。
「なんとなく元気がない」——
そういう伝え方になってしまうため調べる場所も定まりません。
だから、「歩き方も気になります」という一言を添えてください。
それだけで見る場所が増えます。
検査を繰り返しているなら
熱が出て、調べて、分からず、また熱が出る——
そういう経過を繰り返しているなら
「関節を調べてもらえますか」と一度、口に出してみてください。
関節液を採って調べる検査ではじめて分かることがあります。
血液検査やレントゲンだけではたどりつけない——そういう病気です。
変形性関節症とは、別のものです

同じ「関節の病気」でもこの2つはまったく違います。
| 変形性関節症 | 免疫介在性の関節炎 | |
|---|---|---|
| 起きていること | 軟骨がすり減る | 免疫が関節を攻撃する |
| 始まり方 | 年単位で、ゆっくり進む | 突如として起こる |
| 年齢 | シニア期に多い | 若い犬にも起こる |
| 関節の数 | 負担のかかる場所から | 複数に同時に起こる |
| 発熱 | ふつうは出ない | ともなうことが多い |
| 治療 | 消炎鎮痛薬が第一選択 | ステロイドなど免疫抑制剤 |
いちばん大きな違いは治療の方向です。
すり減る病気には炎症と痛みを抑える薬——
免疫が攻撃している病気にはその免疫を抑える薬——
だから、見分けなければ正しい治療にたどりつけません。
そして、見分けの手がかりが「熱があるか」と「同時に複数の関節か」と「突然だったか」という3つです。
高齢の犬がゆっくり動かなくなってきたなら変形性関節症を考えます。
けれど、急に熱が出て、急に歩けなくなったならこちらの病気を疑うことになります。
複数の関節が、同時に痛む
「多発性」という言葉がこの病気の名前に入っています。
複数の関節に同時に起きる——
それが、この病気の特徴です。
- とくに、手足の先のほうの関節に出やすい
- 左右対称に起こることがある
- 日によって、痛む場所が変わって見える
- どこを触っても嫌がることがある
- 「全身がだるそう」という印象になる
- だから、関節の病気だと気づきにくい
報告では歩行異常がほとんどの症例で認められたとされています。
そして、発熱も多くの症例で見られました。
この2つがそろっているなら疑う理由があります。
「歩き方がおかしい」と「熱がある」——
ふつうは別々のことだと受け取られます。
けれど、この病気ではひとつのことから来ているのです。
記録が、つなげてくれます
「熱が出た日」と「歩き方がおかしかった日」を別々に覚えているとつながりません。
- 熱を測った日と、その数字を書く
- 歩き方が気になった日も、同じところに書く
- どの足をかばっていたかも、残す
- 食欲が落ちた日も、記録する
- 並べてみると、重なりが見えてくる
- その記録を、受診のときに見せる
同じ紙、同じ画面に書いておく——
それだけで「同じ日に起きていた」ことが見えてきます。
そして、その情報が関節を調べるきっかけになります。
「熱のときに、歩き方も悪くなっています」——
その一言が診断への近道になることがあります。
免疫が、自分の関節を攻撃する
何が起きているのかを説明します。
免疫は体に入ってきた異物を攻撃する仕組みです。
その仕組みが誤って自分の体の一部を異物だと認識してしまう——
犬の免疫介在性の関節炎では免疫機能の異常により、突如として自身の免疫が関節にある滑膜という部位を異物と認識し、攻撃することで発症します。
滑膜は関節を包む膜で関節液を作り、なめらかな動きを支えている部分です。
そこが攻撃されれば炎症が起き、腫れて、痛みが出る——
そして、その炎症が全身に影響して熱を生みます。関節の病気なのに熱が出るのはそのためです。
🩺 背景を探す意味
「特発性」という言葉がつくのはきっかけが特定できないという意味です。
けれど、ほかの病気が背景にあることもあります。
感染症、薬への反応、腫瘍、ほかの免疫の病気——
だから、全身を調べることに意味があります。
背景が見つかればそちらへの対応が必要になるからです。
免疫が関わる病気は関節だけに起こるわけではありません。
皮膚、血液、さまざまな場所で同じようなことが起こりえます。
詳しくは自己免疫性疾患の記事でも解説しています。
関節液を、調べます

診断は問診や身体検査、血液検査、レントゲン検査から進めていきます。
そして、多発性関節炎が疑わしい場合には関節液検査を行います。
| 検査 | 分かること |
|---|---|
| 問診・身体検査 | どこを痛がるか、熱があるか |
| 血液検査 | 炎症の程度、全身の状態 |
| レントゲン | 骨の破壊があるかどうか |
| 関節液検査 | 関節の液を採って、細胞を調べる |
| その所見 | 好中球という細胞が増えている |
| 培養 | 細菌がいないかを確かめる |
関節液検査が決め手になります。
関節のなかの液を少量採って顕微鏡で調べる——
炎症が起きていればそこに白血球の一種である好中球が増えています。
報告でも調べたすべての症例で関節液中の好中球の増加が認められています。
そして、同時に細菌がいないかどうかも確かめます。
感染が原因なら免疫を抑える治療は逆効果になるからです。
「そこまで調べるのか」と思われるかもしれません。負担も気になるはずです。
けれど、この検査で治療の方向が決まります。
関節液を採るという処置は鎮静や麻酔をかけて行われることがあります。
痛みのある関節に針を刺すのですから動かずにいてもらう必要があるからです。
複数の関節から採ることもあります。
「多発性」かどうかを確かめるためです。
1か所だけ調べて何も出なかったとしてもほかの関節では起きていることがあるのです。
治療は、免疫を抑えること

治療は炎症の緩和と免疫反応の抑制を目的にステロイド剤を中心とした免疫抑制剤で行われます。
免疫が自分の関節を攻撃しているのですからその攻撃を抑える——
- ステロイド剤が、治療の中心になる
- 効き方を見ながら、量を調整していく
- 効果が不十分なら、ほかの免疫抑制剤を加えることも
- 症状が落ち着いても、急にやめない
- ゆっくり減らしていくのが基本
- 再発することがあるため、経過を見ていく
ステロイドと聞いて不安になられるかもしれません。
けれど、この病気では免疫を抑えること自体が治療です。
使わなければ攻撃が続き、関節が壊れていくこともあります。
そして、自己判断でやめないでください。
急にやめれば症状が戻ってくることがあります。
減らすときには時間をかけて少しずつ——それが基本です。
そして、減らしている途中でまた症状が出たならすぐに伝えてください。
この病気は再発することがあります。
だから、「治った」とすぐに判断せず経過を見ていくことになります。
熱が出た日、歩き方が気になった日を記録し続けておくと再発にも早く気づけます。
治療が始まったあともその習慣は続けてください。
効いているかどうかもその記録で分かるようになります。
薬を使っているあいだ
免疫を抑える薬を使っているあいだには気をつけたいことがあります。
- 感染に、弱くなる
- 水を飲む量、尿の量が増えることがある
- よく食べるようになり、太りやすい
- 定期的な血液検査を、必ず受ける
- ほかの病院にかかるときは、薬を伝える
- 気になる変化は、そのつど相談する
体重が増えれば関節への負担も増えます。
「食欲が出た」のは薬の影響かもしれません。
与える量を見直しておいてください。
そして、水を飲む量が増えた——
それも薬の影響であることが多いものです。
だからといって水を制限してはいけません。
飲みたいだけ飲めるようにしておく——
そのうえで、「これくらい増えました」と受診のときに伝えてください。
薬の量を調整する材料になります。
感染が原因のことも、あります
関節炎は大きく感染性と非感染性に分けられます。
細菌などが関節のなかに入り込んで起こるものが感染性です。
| 分類 | 説明 | 治療の方向 |
|---|---|---|
| 感染性 | 細菌などが関節に入って起こる | 抗菌薬などで、菌を叩く |
| 非感染性 | 感染以外の原因で起こる | 免疫を抑える方向 |
| びらん性 | 非感染性のうち、骨が壊れていくもの | より積極的な治療が必要になる |
| 非びらん性 | 骨の破壊を伴わないもの | こちらのほうが多い |
| 見分け | 関節液の培養、レントゲン | 方向が逆になるため、必ず確かめる |
感染性と非感染性で治療がまったく逆になります。
菌が原因なら菌を叩かなければなりません。
そこで免疫を抑えればかえって菌が増えます。
だから、関節液の培養で細菌がいないかを確かめることに大きな意味があるのです。
けがのあとや関節への処置のあとに1か所だけ腫れて痛む——
そういう場合には感染を考えることになります。
そして、1本の足だけを急にかばうという症状なら腱の炎症や背骨の問題も候補になります。
若い大型犬なら股関節の問題も考えられます。
そして、びらん性という分類——
これは、炎症が続くうちに骨そのものが壊れていくタイプです。
レントゲンで関節の骨に変化が見られることがあります。
数としては非びらん性のほうが多いのですがびらん性ならより積極的な治療が必要になります。
だから、レントゲンにも意味があるのです。
よくある質問
Q. 関節炎には、どんな種類がありますか?
A. 大きく感染性と非感染性に分けられ、非感染性はさらにびらん性と非びらん性に分けられます。犬の多発性関節炎のなかでは、特発性の免疫介在性多発性関節炎がもっとも多く見られます。
Q. 熱が出るのに原因が分かりません
A. 関節を調べてもらってください。特発性多発性関節炎は、犬の不明熱の原因としてもっとも多い疾患だと報告されています。血液検査やレントゲンだけではたどりつけないことがあります。
Q. 変形性関節症とは違うのですか?
A. まったく別のものです。変形性関節症は軟骨がすり減って年単位でゆっくり進み、熱は出ません。免疫介在性の関節炎は突如として複数の関節に起こり、発熱をともなうことが多くなります。治療も、消炎鎮痛薬と免疫抑制剤で正反対です。
Q. なぜ、関節が攻撃されるのですか?
A. 免疫機能の異常により、自身の免疫が関節にある滑膜を異物と認識してしまうためです。滑膜は関節を包み、関節液を作ってなめらかな動きを支えている部分です。そこが攻撃されると炎症が起き、腫れと痛みが出ます。
Q. どうやって診断するのですか?
A. 関節液検査が決め手になります。問診・身体検査・血液検査・レントゲンから進め、疑わしい場合に関節の液を採って調べます。炎症があれば、好中球という細胞が増えています。
Q. 治療にはどんな薬を使いますか?
A. 炎症の緩和と免疫反応の抑制を目的に、ステロイド剤を中心とした免疫抑制剤で行われます。症状が落ち着いても急にやめず、ゆっくり減らしていくのが基本です。
Q. 感染が原因のこともありますか?
A. あります。だから関節液の培養で細菌がいないかを確かめます。菌が原因なら菌を叩く必要があり、そこで免疫を抑えれば逆効果になります。治療の方向がまったく逆になるため、必ず確かめる必要があります。
まとめ|熱と、歩き方をつなげてください
この病気で覚えて帰ってほしいことはひとつです。
熱が出て、調べても原因が分からない——
そのとき、関節を疑ってほしいのです。
特発性多発性関節炎は犬の不明熱の原因としてもっとも多いとされています。
そして、この病気は複数の関節に同時に起こるため「どこが痛いのか分からない」という形になります。
だから、「熱」と「歩き方」を別々のことだと思わないでください。
そのふたつをつなげたときにこの病気が見えてきます。記録して並べるだけで重なりが分かります。
そして、関節液を調べれば確かめられます。
治療の方向もはっきりしています。
免疫が攻撃しているのならその攻撃を抑える——
ただし、感染が原因ならまったく逆——
だからこそ、調べることに意味があるのです。
「熱の原因が分からない」まま時間が過ぎているなら一度、関節の話をしてみてください。
今日できる3つ
- 1熱が出た日と、歩き方がおかしかった日を並べてみる
- 2痛がる足が、日によって変わっていないか思い出す
- 3検査を繰り返しているなら、関節を調べてもらえないか相談する
熱と歩き方は、別々のことではないかもしれません。その2つがそろうなら、関節を疑ってください。

本日の「犬猫の悩みを即解決!」の記事「犬の関節炎|原因不明の熱が、関節から出ていることがあります」でした。
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