

こんばんは。
今回「犬猫の悩みを即解決!」が自信を持ってお届けする記事は「犬の耳血腫|抜くだけでは、また溜まります」です。ではどうぞ!
耳たぶが、ぷっくりと膨らんでいる。
触ると、水の入った風船のような感触。
昨日まで、こんなふうではなかったのに——
耳血腫(じけっしゅ)です。
耳たぶ——耳介(じかい)と呼ばれる部分の皮膚と軟骨のあいだに血がたまった状態をいいます。
そして、この病気には2つの誤解がつきまといます。
ひとつは「血を抜けば治る」ということ。
抜けば、その場では平らになります。けれど、血がたまっていた空間——袋のような部分はそのまま残っています。
だから、また溜まるのです。
もうひとつは「耳たぶの病気だ」ということ。
膨らんでいるのは耳たぶですがそうさせた原因は耳の中にあります。
結論
耳血腫は耳介(耳たぶ)の皮膚と軟骨のあいだに血がたまる病気です。外耳炎や耳ダニ、外傷などで耳が痒くなり、頭を激しく振る・後ろ足で掻く——その物理的な刺激で耳介の中の血管が破れて起こります。治療は、針で液を抜く方法から抜いたあと薬を注入する方法、器具で穴をあける方法、切開して縫い合わせる方法まであります。抜くだけでは再発することが少なくなく、切開・縫合のほうが再発の危険は下がります。そして、耳の中の炎症を治さなければ掻く動作は止まりません。
この記事でわかること
- ✓耳の中ではなく、耳たぶが腫れます
- ✓なぜ、抜いただけでは戻るのか
- ✓治療の、選び方
- ✓放置すると、耳の形が変わります
- ✓本当の原因は、耳の中にあります
- ✓自宅でしてはいけないこと
- ✓受診と、その後
耳の中ではなく、耳たぶが腫れます

耳介——いわゆる耳たぶの部分は薄い軟骨を両側から皮膚がはさんだ構造をしています。
そして、その皮膚と軟骨のあいだには細い血管がたくさん通っています。
| 部分 | 説明 |
|---|---|
| 外側の皮膚 | 毛の生えた面 |
| 軟骨 | 耳の形をつくっている、薄い板 |
| 内側の皮膚 | 耳の内側の面。ここが腫れやすい |
| そのあいだ | 細い血管が通っている |
| 血がたまると | 皮膚が持ち上がり、膨らむ |
激しく頭を振ると耳たぶは強い力で振り回されます。
垂れ耳の犬ならその重さもかかります。
後ろ足で掻けば爪が当たり、皮膚がこすれます。
そうした力が繰り返しかかることで中の細い血管が切れる——
切れた血管から血が漏れ、皮膚と軟骨のあいだに広がっていく——
それが、この病気の起こり方です。
症状は、見た目で分かります。
- 耳たぶが、ぷっくりと膨らんでいる
- 触ると、やわらかく波打つような感触
- 熱を持っていることがある
- 触られるのを嫌がる
- 片耳だけのことが多い
- 頭を、その側に傾けていることがある
痛みがあるため触ろうとすると避けることもあります。
そして、重くなった耳を気にしてさらに振る——悪循環になりやすい病気でもあります。
膨らみ方には幅があります。
耳の一部だけが少し盛り上がる程度のことも耳たぶ全体が厚くふくれあがることもあります。
小さいから軽い、とは限りません。掻く動作が続いていれば小さな膨らみも数日で大きくなっていきます。
だから、「様子を見る」という判断はこの病気とは相性がよくないのです。
なぜ、抜いただけでは戻るのか

「血がたまっているなら、抜けばいいのでは」——
自然な発想です。そして、実際に抜く治療は行われます。
問題は、そのあとです。
血がたまっていた場所には皮膚が持ち上がってできた空間が残ります。
袋のようなものだと思ってください。
| 抜くだけ | 切って縫う | |
|---|---|---|
| 処置 | 針で液を抜く | 切開して抜き、縫い合わせる |
| 麻酔 | 不要なことが多い | 必要になる |
| 空いた袋 | そのまま残る | 閉じるように縫う |
| 再発 | 少なくない | 危険が下がる |
| 通院 | 複数回になることがある | 抜糸まで数回 |
| 耳の形 | 繰り返せば変形しやすい | 保たれやすい |
袋が残ったままで掻く動作が続けばそこにまた血や液がたまっていきます。
「抜いてもらったのに、3日でまた膨らんだ」——
珍しいことではありません。
だから、抜いたあとに炎症を抑える薬を注入するという方法がとられることがあります。
袋の内側の炎症を抑え、液がたまりにくくする——そういう狙いです。
再発を「失敗」だと思わないでください
抜いたのに、また膨らんだ——
そのとき、「治療がうまくいかなかった」と感じられるかもしれません。
けれど、この病気はもともと再発しやすい構造をしています。
負担の軽い方法から始めて、戻るようなら次の方法へ——そういう進め方がとられることも多いのです。
「何回目か」を伝えることで方針が切り替わります。
治療の、選び方

治療法にはいくつかの段階があります。
| 方法 | 内容 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 穿刺 | 針で液を抜く | 初めて、量が少ない |
| 薬の注入 | 抜いたあと、炎症を抑える薬を入れる | 繰り返しを減らしたいとき |
| 穴をあける | 器具で小さな穴をあけ、出し続ける | たまり続けるとき |
| 切開・縫合 | 切って抜き、袋を閉じる | 繰り返す、量が多い |
| 共通して | 耳の中の治療も同時に行う | すべての場合 |
どれを選ぶかは膨らみの大きさ、起きてからの時間、そして年齢や持病で決まります。
「切って縫うほうが再発しにくい」のはその通りですが麻酔の負担もあります。
高齢の犬、心臓や腎臓に持病のある犬ではそこを含めて考えることになります。
「まず抜いてみて、戻るようなら手術」という進め方もよくとられます。
負担の軽いほうから試す——理にかなった順番です。
ただしその間も時間は進んでいます。
何度も抜いて、そのたびに戻るという経過をたどるうちに耳が硬く縮んでいくこともあります。
「あと何回まで抜いて、だめなら次に進むか」——そこを最初に決めておくと判断が遅れません。
治療にかかる時間
- 抜くだけなら、その日のうちに終わる
- ただし、数日おきに通うことがある
- 切開・縫合なら、麻酔と手術の時間が必要
- 抜糸まで、およそ2週間ほど
- そのあいだ、カラーをつけることが多い
- 耳の中の治療は、それとは別に続く
「1回で終わる病気」ではないと最初に知っておいてください。
とくに、耳の中の炎症は耳血腫が平らになったあとも続けて治療していくものです。
放置すると、耳の形が変わります
「痛そうだけれど、そのうち引くのでは」——
たしかに、たまった血は時間をかけて吸収されていきます。
けれど、そのあとに残るものが問題です。
| 経過 | 起きること |
|---|---|
| 数日 | 膨らみが続き、痛みもある |
| 1〜2週間 | 少しずつ吸収され始める |
| その過程で | 組織が硬く、縮んでいく |
| 数週間後 | 耳がしわ状に縮み、厚くなる |
| そのあと | 元の形には戻らない |
| さらに | 耳道の入口が狭くなることもある |
縮んで硬くなった耳はもう元に戻りません。
見た目の問題だけではありません。
耳が変形すれば耳道の入口も変わります。空気の通りが悪くなり、外耳炎がさらに起こりやすくなる——
そして、外耳炎がまた掻く動作を呼ぶ——
この病気は、放置すると循環に入ります。
だから、「そのうち引くだろう」で待たないでください。
早く処置するほど耳の形は保たれます。
カリフラワーのような耳
変形した耳を見たことがあるという方もいるかもしれません。
厚く、しわが寄って縮み、硬くなった耳——
たまった血が吸収されていく過程で組織が引きつれてそうなります。
痛みはなくなります。本人が気にするそぶりもなくなるでしょう。
けれど、耳道の入口が狭くなれば空気が通らなくなります。
湿気と熱がこもり、外耳炎が起こりやすい耳に変わってしまう——
そこが、見た目の話では済まない理由です。
本当の原因は、耳の中にあります
ここが、この病気でもっとも見落とされやすい部分です。
耳血腫そのものを治しても犬が耳を掻き続けているならまた同じことが起こります。
なぜ掻いているのか——
| 背景 | 説明 |
|---|---|
| 外耳炎 | もっとも多い。痒みと痛みが出る |
| 耳ダニ | 強い痒み。黒く乾いた耳垢が特徴 |
| アレルギー | 耳だけでなく、全身に痒みが出る |
| 異物 | 片耳だけ、急に気にし始める |
| 外傷 | ぶつけた、噛まれたなど |
| 中耳・内耳の問題 | 頭を傾ける、ふらつくなどを伴う |
もっとも多いのは外耳炎です。
耳の中で炎症が起きているから痒くて、頭を振り、後ろ足で掻く——
その結果として耳たぶの血管が切れる——
つまり、耳血腫は「外耳炎の合併症」だと言ってもいいのです。耳の中の炎症が長く続いていた犬ほど起こしやすくなります。
耳ダニも強い痒みを起こします。とくに若い犬で黒く乾いた耳垢が大量に出るなら寄生虫の可能性を考えることになります。
そして、頭を傾けている、ふらつくという症状が一緒にあるなら中耳炎のようにもっと奥の問題が隠れていることもあります。
垂れ耳で、耳の毛が多く、皮脂も出やすい犬種——たとえばアメリカン・コッカー・スパニエルのような犬では耳血腫も繰り返しやすくなります。
自宅でしてはいけないこと

膨らみを見ると「潰したくなる」という気持ちが湧くかもしれません。
やめてください。
- 自分で潰さない——感染して、もっと悪くなる
- 針を刺さない——自宅での穿刺は危険
- 強く揉まない——血管がまた切れる
- 熱いタオルなどを当てない——出血が増えることがある
- そのまま放置しない——耳の形が変わる
- 掻くのを見過ごさない——カラーで守るのも方法
自宅でできるいちばん有効なことは「これ以上、掻かせないこと」です。
エリザベスカラーをつけておくだけで後ろ足で掻くことは防げます。
頭を振る動作は止められませんがそれでも、掻く回数が減れば悪化のスピードは落ちます。
「カラーはかわいそう」と感じられるかもしれません。
けれど、掻き続けた結果として耳が縮んで硬くなるほうが本人にとってはつらい結末です。
数日から数週間——期限のある我慢だと考えてください。
そして、耳が痒いこと自体が本人にとってはずっと不快な状態です。
耳の中の治療が進めば痒みは引いていきます。掻かなくなればカラーも外せます——そこを目指すのがいちばんの近道です。
🩺 元気でも、待たないでほしい理由
「膨らんでいるだけで、元気はあります」——
そのとおりだと思います。食欲もあるし、散歩にも行きたがる。
けれど、この病気で急ぐべき理由は元気かどうかではなく「時間とともに戻せなくなること」にあります。
早ければ、抜くだけで済むこともある。遅れれば、耳が縮んで硬くなる。
元気だからこそ、早いうちに処置しておいてください。
受診と、その後
受診のときに伝えてほしいことを挙げます。
- いつ、膨らみに気づいたか
- その前から、耳を掻いていなかったか
- 片耳か、両耳か
- 耳のにおいや汚れはどうか
- 過去に外耳炎を繰り返していないか
- 頭を傾ける、ふらつくなどがないか
とくに「その前から掻いていたか」——
これが、背景を探る出発点になります。
診察では膨らみを確かめると同時に耳の中も見てもらってください。
耳鏡で耳道と鼓膜を見る、耳垢を顕微鏡で調べる——そこで掻いていた理由が分かります。
耳血腫の処置だけを受けて帰るとまた同じことが起こります。
「耳の中も見てもらえますか」——
その一言で十分です。
膨らみが目立っているためそちらに話が集中しやすいのですがこの病気で本当に治すべき相手は耳の中にあります。
そして、耳血腫を起こすほど強く掻いていたのならその外耳炎も軽いものではありません。
点耳薬や洗浄をしばらく続けることになると考えておいてください。
処置のあと、見ておくこと
- また膨らんできていないか
- 縫った部分が、腫れたり出てきていないか
- まだ耳を掻いていないか
- カラーを外していないか
- 耳のにおいや汚れが減っているか
- 次の通院日を、忘れていないか
再発は、処置から数日以内に起こることが多いものです。
「また膨らんできた」と感じたら次の予約を待たずに連絡してください。
早く分かれば方法を切り替えられます。
そして、処置が終わったあとにも耳の中の治療は続きます。
膨らみが引いた時点で通院をやめてしまう——それが、この病気でもっとも多いつまずき方です。
見た目が治っても痒みが残っていればまた掻きます。
「耳の中はもう大丈夫ですか」と確かめてから終わりにしてください。
よくある質問
Q. 耳血腫とはどんな病気ですか?
A. 耳たぶ(耳介)の皮膚と軟骨のあいだに血がたまる病気です。外耳炎や耳ダニなどで耳が痒くなり、頭を激しく振ったり後ろ足で掻いたりする物理的な刺激で、中の細い血管が破れて起こります。
Q. 血を抜けば治りますか?
A. その場では平らになりますが、また溜まることが少なくありません。血がたまっていた空間が袋のように残るためです。抜いたあと薬を注入する、切開して縫い合わせるといった方法もあります。
Q. 切って縫うほうがよいのですか?
A. 袋そのものを閉じるため、再発の危険は下がります。ただし麻酔の負担があります。膨らみの大きさ、起きてからの時間、年齢や持病を含めて、その犬に合う方法が選ばれます。
Q. 放置するとどうなりますか?
A. たまった血は吸収されますが、耳がしわ状に縮んで硬くなります。そうなると元の形には戻りません。耳道の入口も変わるため、外耳炎がさらに起こりやすくなり、悪循環に入ります。
Q. 自分で潰してもよいですか?
A. 絶対にやめてください。感染を起こしてもっと悪化します。針を刺す、強く揉む、熱いタオルを当てるといったことも避けてください。
Q. 自宅でできることはありますか?
A. これ以上、掻かせないことです。エリザベスカラーをつけておけば、後ろ足で掻くことは防げます。頭を振る動作は止められませんが、悪化のスピードは落ちます。
Q. なぜ繰り返すのですか?
A. 耳の中の炎症が治っていないためです。耳血腫は外耳炎の合併症のようなものです。痒みが残っていれば掻き続け、また血管が切れます。
まとめ|膨らみより、掻いている理由を
耳血腫は見た目に分かりやすい病気です。
耳たぶが膨らむ——誰でも気づきます。
けれど、気づいてからの向き合い方で結果が変わります。
「抜けば治る」ではなく「抜いても袋は残る」。
「耳たぶの病気」ではなく「耳の中の病気の、結果」。
そして、「そのうち引く」ではなく「引いたあとに、縮んだ耳が残る」——
この3つを知っているかどうかで数週間後の耳の形が変わってきます。
治療そのものは難しいものではありません。抜くにしても、切って縫うにしても確立した処置です。
結果を分けるのは「いつ連れて行ったか」——ほとんど、そこだけです。
膨らみを見つけたら、できるだけ早めに受診してください。
そして、そのとき耳の中も見てもらってください。
膨らみを平らにすることと掻かなくて済むようにすること——
この2つがそろってはじめて治療が完了します。
片方だけでは同じ場所がまた膨らみます。
今日できる3つ
- 1耳たぶの膨らみを、そっと確かめる(潰さない)
- 2耳の中のにおいと汚れを見て、掻いていた理由を探す
- 3掻き続けているなら、カラーで守って受診する
膨らみは、結果です。掻かせている理由を、耳の中に探してください。

本日の「犬猫の悩みを即解決!」の記事「犬の耳血腫|抜くだけでは、また溜まります」でした。
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