猫はほめても分からない——
そう思われがちですが「良いことが起きた行動は増える」という原理は働きます。
問題は何をごほうびにするかといつ渡すかです。
この2点を外すとまったく伝わりません。
結論
猫にも「良いことが起きた行動は増える」という原理は働きます。大切なのはその猫にとってのごほうびを使うことと行動の直後に渡すことです。あとからでは結びつきません。大声でほめる・抱き上げてなでまわすのは猫にとってはごほうびにならないことがあります。
この記事でわかること
- ✓行動が増える仕組み
- ✓何がごほうびになるか
- ✓タイミングがすべて
- ✓ほめ方でやりがちな失敗
- ✓何をほめればいいのか
行動が増える仕組み

行動のあとに何が起きたかでその行動が増えるか減るかが決まります。
| 行動のあとに | その行動は |
|---|---|
| 良いことが起きた | 増える |
| 何も起きなかった | 徐々に減っていく |
| 嫌なことが起きた | その場では止まるが、隠れてやる |
| ときどき良いことが起きる | 最も強く定着する |
| 人が反応した | 反応自体がごほうびになりうる |
注目すべきなのは「ときどき良いことが起きる」が最も強く定着するという点です。
この仕組みは増やしたい行動にも減らしたい行動にも同じように働きます。
使い方次第で味方にも敵にもなると考えてください。
「ときどき与える」が要求を強める
食卓でねだる猫にたまに与えてしまう——
この形が最も要求を強めます。
- 「毎回もらえる」より「たまにもらえる」ほうが強い
- もらえないときも、粘るようになる
- 一切与えないほうが、結果的に早く減る
- 家族の誰かが与えていると、崩れる
- 減る前に、一時的に強くなることがある
- そこで折れないことが重要
やめさせたい行動にはいっさい反応しないことが基本の原則になります。
叱ることも「反応」である点を忘れないでください。
大声を出す駆け寄る——
これらは猫にとって「かまってもらえた」という経験になりうるものです。
叱ることの効果については猫を叱っても伝わらない理由で詳しく解説しています。
何がごほうびになるか

その猫が喜ぶものでなければごほうびになりません。
| ごほうび | 使い方 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| おやつ | 小さく割って、すぐ渡す | 最も分かりやすい |
| なでる | 好きな場所を、短く | 触られるのが好きな猫に |
| 遊ぶ | おもちゃを少し動かす | 遊び好きな猫に |
| 声をかける | 低めの穏やかな声で | 補助として |
| そっとしておく | 干渉しない | 触られるのが苦手な猫に |
| 食事 | いつもの食事を活用する | 量を管理しやすい |
触られるのが苦手な猫になでることはごほうびにはなりません。むしろ逆効果です。
その猫の「好き」を知っておく
何を喜ぶかは猫によってまったく違います。
- おやつに強く反応する猫
- 遊びのほうが好きな猫
- なでられるのが好きな猫
- 静かに過ごしたい猫
- 好きな場所(あご下・頬・背中)も違う
- 普段の様子から見つけておく
おやつに興味がない猫もいます。
その場合は遊びやなでることを使ってください。
「良いことが起きた」と猫が感じれば何でも構いません。
普段の様子をよく見ているとその猫が何に反応するかが見えてきます。
それが分かれば練習も進めやすくなります。
おやつの量には注意する
おやつを使うなら量の管理が必要になります。
| 工夫 | 内容 |
|---|---|
| いつものフードを使う | 食事から取り分ける |
| 小さく割る | 1粒を数回に分ける |
| 1日の総量から差し引く | 追加ではなく、置き換える |
| 回数を決めておく | 与えすぎを防ぐ |
| 体重を測る | 月1回でも確認する |
いつものドライフードをそのまま使うのが最も簡単で確実です。
「特別なもの」でなくてもその場で渡されればごほうびになります。
タイミングのほうが中身より重要だと考えてください。
高価なおやつをあとから渡すよりいつものフードをその場で渡すほうが効果があります。
タイミングがすべて

ほめるうえで最も重要なのがタイミングです。
| タイミング | 結びつき方 |
|---|---|
| 行動の直後(数秒以内) | その行動と結びつく |
| 10秒後 | 結びつきが弱まる |
| 数分後 | 別のこととして受け取る |
| あとで思い出して渡す | まったく意味がない |
| 次の日 | ただのおやつになる |
「あとであげよう」ではまったく意味がありません。
その場で、すぐに——
これが唯一の条件です。
猫が「今やったこと」と結びつけられる範囲はごく短いと考えてください。
数秒遅れるだけで別のことになってしまいます。
おやつを近くに置いておく
取りに行っている間にタイミングを逃すことがあります。
- よく使う部屋に、小分けして置いておく
- ポケットに数粒入れておく方法もある
- 爪とぎのそばに置いておく
- 使ったらすぐ渡せる状態にする
- 猫が届かない容器に入れる
- 湿気ないよう、密閉できるものを
爪とぎを使ったときにすぐ渡せるようにそばに用意しておくと逃さずにほめられます。
「準備しておく」ことも大切な工夫です。
キャリーのそばキャットタワーのそば——
ほめたい場面が起きる場所にあらかじめ置いておくと成功率が上がります。
ほめ方でやりがちな失敗

良かれと思った行動が逆効果になることもあります。
| やりがちなこと | 問題 |
|---|---|
| あとからおやつを渡す | 行動と結びつかない |
| 大声で「えらい!」と言う | 猫は大きな声を好まない |
| 抱き上げてなでまわす | 拘束されて、嫌な経験になることも |
| 頭を強くなでる | 強い接触を嫌がる猫もいる |
| 長々と続ける | 途中から不快になる |
| おやつの量を数えていない | 太る原因になる |
| 寝ているところを起こしてほめる | 睡眠を妨げる |
犬に対するほめ方をそのまま猫に使うとうまくいかないことがあります。
猫は「静かなほめ方」を好む
猫にとって大きな声は刺激が強すぎることがあります。
- 低めの、落ち着いた声で
- 短く、ひとことで
- ゆっくり近づく
- 急に触らない
- 好きな場所を、軽くなでる
- 猫が離れたら、追わない
あご下・頬・額を好む猫が多いとされています。
お腹や足先は嫌がる猫が多いためほめるときには使わないほうが無難です。
その猫の好きな場所を把握しておいてください。
触られて心地よい場所は猫によって違います。
普段なでているときの反応を思い出してみてください。
「もう十分」のサインを見る
ほめているつもりが不快な時間になっていることがあります。
| サイン | 意味 |
|---|---|
| しっぽを激しく振る | 不快・興奮している |
| 耳が横に倒れる | やめてほしい |
| 体が硬くなる | 緊張している |
| 皮膚がぴくぴく動く | 刺激が強すぎる |
| 顔を背ける | 距離を取りたい |
| ゴロゴロ言って、体を寄せる | 心地よい |
しっぽを振り始めたら手を止めてください。
そこで続けると咬まれることがあります。
短く終えることが「また触られたい」という気持ちにつながります。
もの足りないくらいでやめるのがちょうどよいと考えてください。
この加減はブラッシングや爪切りにもそのまま当てはまります。
何をほめればいいのか
ほめる対象が見つからないという方もいるかもしれません。
| 場面 | ほめるポイント |
|---|---|
| 爪とぎを使った | すぐにおやつ・声かけ |
| キャットタワーに登った | そこにおやつを置いておく |
| トイレを使った | そっと見守る。邪魔しない |
| キャリーに自分から入った | 中におやつを入れておく |
| 体を触らせてくれた | 1秒でも、終わったらおやつ |
| 落ち着いて過ごしている | 静かに、そっとなでる |
| 来客時に騒がなかった | あとで、おやつを渡す |
「何もしていないとき」をほめるという発想が重要になります。
困った行動が出たときだけ反応しているとそちらが増えていきます。
穏やかに過ごしている時間にこそ目を向けてください。
落ち着いている状態をほめる
騒いだときだけ反応すると騒ぐ行動が増えます。
静かにしているときに声をかけることでその状態が増えていきます。
- 鳴いているときは、反応しない
- 静かになった瞬間に、声をかける
- 落ち着いて座っているときに、なでる
- 要求鳴きへの対応も、同じ考え方でよい
- 「静かにしていれば構ってもらえる」と学ぶ
- 時間はかかるが、確実に変わる
要求鳴きに応えてしまうと鳴く行動が強まります。
鳴きやんだ瞬間に応えるようにしてみてください。
最初のうちは鳴き方が激しくなることがあります。
そこで応えてしまうと「もっと鳴けばよい」と学習させてしまいます。
ただし、体調不良の可能性もあるため急に鳴き方が変わったときは受診も検討してください。
練習の場面でもほめる
キャリーに慣らす爪切りに慣らす——
こうした練習でもほめることが軸になります。
| 練習 | ほめるタイミング |
|---|---|
| キャリーに慣らす | 近づいた・入った瞬間 |
| 体を触る | 触れて、離した直後 |
| 爪切り | 1本切るごとに |
| 投薬 | 口を触らせてくれたら |
| ブラッシング | 短時間で終えて、そのあと |
| 来客に慣らす | 落ち着いていられたら |
嫌がる前に終えてそのあとおやつ——
この流れがすべての練習に共通します。
嫌がってからやめると「暴れればやめてもらえる」と学習してしまいます。
まだ平気なうちにこちらから終える——
この順番を守ってください。
体を触る練習については猫の社会化は犬とは違うで詳しく解説しています。
名前を良い合図にしておく
名前を呼ばれたら良いことがある——
この状態を作っておくことには実用的な意味があります。
| 場面 | 呼び戻せると |
|---|---|
| 災害時 | 隠れていても出てきてもらえる |
| 脱走したとき | 反応してくれる可能性がある |
| 通院前 | 捕まえやすくなる |
| 危険な場所にいるとき | 呼んで離れさせられる |
| 投薬・処置の前 | 探し回らずに済む |
| 日常 | 関係が良くなる |
名前を呼んで、来たらおやつ——
この積み重ねで名前が良い合図になっていきます。
- 名前を呼んだら、必ず良いことがある形にする
- 叱るときには、絶対に名前を使わない
- 通院前に呼び寄せて捕まえる、も避けたい
- 嫌なことの前に呼ばない
- ごはんのときに呼ぶのは、良い練習になる
- 1日数回、呼んでおやつを渡す
嫌なことの直前に呼ぶと名前の価値が下がります。
捕まえたいときは呼ばずに、そっと近づくほうが長い目で見て得になります。
名前の価値を守っておくことがいざというときに効いてきます。
多頭飼いでのほめ方
猫が複数いる場合ほめ方にも工夫が必要になります。
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| おやつを1頭が独占する | 離して渡す |
| 控えめな猫がもらえない | 別室で個別に渡す |
| 取り合いになる | 同時に複数用意する |
| 誰をほめたか伝わらない | その猫のそばで、名前とともに |
| 量が把握できない | 個別に管理する |
| 嫉妬のような行動 | 順番に、平等に関わる |
積極的な猫がすべて持っていくという状況はよく起きます。
- 誰がどれだけ受け取っているか観察する
- 控えめな猫には、別室で個別に渡す
- 1対1の時間を意識して作る
- 練習も個別に行うほうが進みやすい
- おやつの量は、それぞれで管理する
- 体重も個別に測る
個別の時間を作ることは関係を深める機会にもなります。
短時間でもその猫だけに向き合うと効果が上がります。
3分でも構いません。
他の猫がいない場所で集中して関わる時間を作ってみてください。
すぐには変わらない
1回ほめただけで行動が変わることはありません。
| 期間 | 起きること |
|---|---|
| 最初の数日 | 変化は見えないことが多い |
| 1〜2週間 | 少しずつ変わり始める |
| 1か月 | 違いが分かってくる |
| 途中で戻ることも | 気にせず続ける |
| やめると | 元に戻ることがある |
猫の学習はゆっくりと進んでいきます。
数日で結論を出さず数週間続けてみてください。
「効かない」と感じるときはタイミングかごほうびを見直してください。
渡すのが遅いその猫が喜ばないものを使っている——
このどちらかであることが多いものです。
やり方を少し変えるだけで反応が変わることがあります。
あきらめる前に2つの点を確認してみてください。
家族で方針をそろえる
ほめ方も家族でそろえておくほうが猫にとって分かりやすくなります。
| 決めておくこと | 内容 |
|---|---|
| おやつの1日の量 | 誰がどれだけ渡したか把握する |
| ねだられたときの対応 | 与えるか、与えないかを統一する |
| ほめるタイミング | 行動の直後という点を共有 |
| 触り方 | 好きな場所・嫌がる場所を共有 |
| 叱らない方針 | 全員で守る |
| 子どもへの説明 | 接し方を教えておく |
一人だけが甘いとその人にだけ要求するようになります。
- おやつの量は、記録して共有する
- 「今日はもうあげた」が分かるようにする
- ねだられても与えない、を全員で守る
- 来客にも伝えておく
- 子どもには、追いかけないことを教える
- 方針が同じだと、猫も混乱しない
冷蔵庫にメモを貼るなどおやつの回数を見える形にすると与えすぎを防げます。
肥満は、関節や内臓に負担をかけるため軽く見ないでください。
ほめること自体は良いのですがおやつの与えすぎは別の問題を招きます。
フードを取り分けて使う形ならこの心配がありません。
よくある質問
Q. 猫はほめても分かりますか?
A. 「良いことが起きた行動は増える」という原理は働きます。大切なのはその猫が喜ぶものを使うことと行動の直後に渡すことです。
Q. いつ渡せばいいですか?
A. 行動の直後、数秒以内です。数分後では別のこととして受け取られ、あとで思い出して渡すのは意味がありません。
Q. おやつに興味がない猫はどうする?
A. 遊びやなでることを使ってください。「良いことが起きた」と猫が感じれば何でも構いません。触られるのが苦手ならそっとしておくことも報酬になります。
Q. 大きな声でほめてもいい?
A. 猫は大きな声を好みません。低めの落ち着いた声で、短くが基本です。抱き上げてなでまわすのも、嫌な経験になることがあります。
Q. なでていたら咬まれました。
A. 「もう十分」のサインを見逃しています。しっぽを激しく振る、耳が横に倒れる、皮膚がぴくぴく動く——そこで手を止めてください。
Q. 何をほめればいいのか分かりません。
A. 「何もしていないとき」をほめてください。落ち着いて過ごしている、静かにしている——その状態に声をかけると、そちらが増えていきます。
Q. 続けても変わりません。
A. タイミングかごほうびを見直してください。渡すのが遅い、その猫が喜ばないものを使っている——このどちらかであることが多いです。数週間は続けてみてください。
まとめ|増やしたい行動に、注目する
猫にも「良いことが起きた行動は増える」という原理は働きます。
大切なのはその猫が喜ぶものを使うことと行動の直後に渡すことです。
あとからでは結びつきません。
そして大声でほめる抱き上げてなでまわすのは猫にとってはごほうびにならないことがあります。
低い声で、短く。好きな場所を、軽く。やめさせたい行動を減らすよりしてほしい行動を増やすほうが関係も保てます。
今日から試してみたい3つのこと
- 1爪とぎのそばにおやつを置き、使った瞬間に渡す
- 2静かに落ち着いているときに、低い声で声をかける
- 3なでるとき、しっぽが振れ始めたら手を止める
叱る場面を減らすには、ほめる場面を増やすのが近道です。「増やしたい行動」に目を向けてみてください。
