犬が家具をかじる理由と対策|叱っても止まらないのはなぜ

犬が家具をかじる理由と対策

帰宅すると、ソファの脚がかじられている

テーブルの角が削られ、壁紙がはがされている——

叱っても、翌日にはまた同じことが起きる。

実は留守番中のかじりを後から叱っても、犬には伝わりません。それどころか「帰宅=怒られる」と学習させ、かじりを悪化させることがあります。

結論

家具をかじるのは歯のむずがゆさ・退屈・不安が主な原因です。後から叱っても伝わりません。対策は物理的に届かなくすることと、かじってよい物を用意すること。そして最も注意すべきは破片の誤飲です。

この記事でわかること

  • 家具をかじる5つの理由
  • 叱っても止まらない理由
  • 物理的に守る方法
  • かじってよい物を用意する
  • 誤飲したときの対応

家具をかじる5つの理由

犬が家具をかじる5つの理由
かじる理由によって、打つべき手が変わります。

まず理由を整理します。

見分ける鍵は「いつかじったか」です。

家具をかじる理由と対策の方向
理由 見分け方 対策の方向
歯のむずがゆさ 生後4〜7か月に集中 噛んでよい物を与える
退屈・運動不足 散歩が短い日に増える 運動量を増やす
留守番中の不安 出発直後から始まる 留守番に慣らす
においへの興味 特定の物だけかじる その物を片づける
かまってほしい 人が見ているときだけ 反応しない
ストレス 環境の変化のあとに増えた 原因を取り除く

留守番中か、目の前かで意味が違う

最も重要な切り分けが「人が見ているときか、いないときか」です。

  • 人が見ているときだけかじる——かまってほしい
  • 留守番中だけかじる——不安か退屈
  • どちらでもかじる——歯のむずがゆさ・習慣
  • 特定の物だけ——においや素材への興味
  • 出発直後に集中——分離への不安

人が見ているときだけなら、かじると反応が返ってくることを学習している可能性があります。

この場合叱ることも「反応」になるため、無反応にして別の物へ誘導するほうが効果的です。

室内カメラで、実態をつかむ

留守番中のことは実際に見てみないと分かりません

室内カメラを使うと多くのことが分かります。

室内カメラで分かること
確認できること 分かること
出発から何分後に始まるか 不安か退屈かの判断
鳴きながらかじっているか 不安の可能性が高い
途中で寝ているか 退屈の可能性
どの家具を狙うか 対策すべき場所
飲み込んでいないか 誤飲の確認

出発直後から鳴きながらかじるなら不安、しばらく寝てから起きてかじるなら退屈——

この違いで打つ手が変わります

カメラの映像は専門家に相談するときの資料としても非常に役立ちます。

言葉で説明するより、実際の様子を見てもらうほうが適切な助言につながります。

叱っても止まらない理由

叱っても止まらない仕組み
留守番中のかじりは、後から叱っても伝わりません。

ここが最も重要な部分です。

帰宅してから叱っても、犬には何のことか分かりません

犬が行動と結果を結びつけられるのは行動の直後、数秒以内だとされています。

後から叱ったときに起きること
飼い主の行動 犬の受け取り方
帰宅して壊れた家具を見て叱る 「帰ってきた飼い主が怒っている」
現場に連れて行って叱る その場所が怖くなるだけ
これを繰り返す 「帰宅=怒られる」と学習
犬が申し訳なさそうにする 反省ではなく、なだめる行動
さらに叱る 不安が増し、かじりが悪化

⚠ 「反省しているように見える」は誤解

帰宅時に犬が耳を下げ、目をそらし、身を縮めることがあります。

これを「悪いことをしたと分かっている」と受け取る方が多いのですが——

実際には飼い主の様子から「怒っている」と察してなだめようとしている状態です。

何をしたから怒られているかまでは理解できていないことがほとんどです。

さらに問題なのは、留守番中のかじりが不安から来ている場合です。

不安 → かじる → 帰宅時に叱られる → さらに不安——

この悪循環に入ると、状況は確実に悪化します

物理的に守る方法

家具の保護方法の比較
しつけより、届かなくするほうが確実です。

最も確実で、今日から効果があるのが物理的な対策です。

家具を物理的に守る方法
守り方 向いている場面 手間
ゲートで部屋に入れない 被害が特定の部屋に集中
サークル・ケージで過ごさせる 留守番中
家具の脚に保護カバーを巻く 特定の家具だけ狙われる
コーナーガードを貼る テーブルや棚の角
コードをカバーで覆う 電気コード(最優先)
壁に保護シートを貼る 壁紙をはがす場合
物を高い場所へ移す すぐできる基本対策

最優先は「電気コード」

家具よりも先に対策すべきなのが電気コードです。

かじって感電やけどを起こす危険があり、命に関わることもあります

  • コードカバー・配線モールで覆う
  • 家具の裏に隠す・壁に沿わせる
  • 使わない機器はコンセントから抜く
  • 延長コードを床に這わせない
  • 充電ケーブルを出しっぱなしにしない
  • 犬のいる部屋では特に念入りに

ホームセンターで数百円から対策できます。

あわせて観葉植物も確認してください。

犬にとって中毒を起こす植物があることが知られています。

かじる犬がいる家では手の届かない場所へ移すのが安全です。

今日中にやっておくべき対策だといえます。

苦味スプレーは、補助として使う

犬が嫌がる味のスプレーを家具に吹きつける方法があります。

ただしこれだけで解決することはあまりありません。

苦味スプレーの実際
内容
効果 個体差が大きい
持続時間 こまめに塗り直しが必要
平気な犬もいる まったく気にしない場合がある
家具への影響 目立たない場所で試してから
位置づけ 物理的対策の補助として

ゲートで入れない・カバーで覆うという確実な方法と組み合わせて使ってください。

かじってよい物を用意する

守るだけでは足りません。

犬には噛みたいという欲求があるためです。

かじってよい物の選び方
与えるもの 特徴 注意点
丈夫なゴム製おもちゃ 弾力があり歯に優しい 体格に合うサイズを
知育おもちゃ 頭も使える 丸呑みできない大きさで
ロープ状のおもちゃ 引っぱりっこもできる ほつれたら処分する
冷やしたタオル 歯のむずがゆさに 飲み込まないよう見守る
硬すぎる骨・角 歯が欠けることがある 慎重に

選ぶ目安は「爪で押して少しへこむ硬さ」です。

まったくへこまないほど硬い物は歯を痛める原因になることがあります。

  • 手の届く場所に数個置いておく
  • 家具をかじりそうになったら、さっと差し出す
  • おもちゃを噛んでいたら褒める
  • 数種類をローテーションして飽きさせない
  • 週に一度、ほつれ・欠けを確認する

「かじるな」ではなく「これをかじって」——

この置き換えが、犬にとっていちばん分かりやすい伝え方です。

かじっている最中を見つけたら

目の前でかじっているときはその場で対応できます

ただし叱るのは避けてください。

かじっている最中の対応
対応 犬にとっての意味 評価
大声で「ダメ」と叱る 反応が返ってきた 逆効果のことも
駆け寄って取り上げる 追いかけっこが始まった 逆効果
静かにおもちゃを差し出す こちらのほうが楽しい 効果的
おもちゃに移ったら褒める 正解が分かる 最も効果的
別の部屋へ誘導する 対象から離れる 効果的

重要なのが「おもちゃに移ったら褒める」ことです。

やめさせるだけでは何が正解か伝わりません。

「これならかじってよい」と示したうえで褒める——

この繰り返しで、自分からおもちゃを選ぶようになっていきます。

退屈と不安、それぞれへの対策

物理的に守りながら、原因のほうにも手を打ちます

退屈が原因の場合

散歩が短い日に増えるなら運動不足が背景にあります。

  • 散歩は距離より、におい嗅ぎの時間を取る
  • 同じコースにせず変化をつける
  • 知育おもちゃで頭を使わせる
  • 出かける直前におやつを詰めた物を渡す
  • 留守番前にしっかり運動させる

特に効果があるのが出かける直前に知育おもちゃを渡すことです。

「飼い主が出かける=楽しいことが始まる」と結びつけられれば、留守番への不安も減っていきます。

不安が原因の場合

出発直後から鳴きながらかじるなら分離への不安が疑われます。

不安が原因のときの対策
対策 内容
短時間から慣らす 5分→15分→30分と伸ばす
出発時に騒がない 淡々と出かける
予兆を消す 鍵を持っても出かけない日をつくる
帰宅時も騒がない 落ち着いてから挨拶する
囲われた寝床を用意 安心できる場所をつくる
生活音を残す テレビやラジオをつけておく

破壊に加えて、粗相・自分の体を舐める・何時間も鳴き続ける——

これらが同時に起きているなら、しつけの範囲を超えている可能性があります。

行動診療科のある動物病院への相談をおすすめします。

「わがまま」ではありません。治療や計画的な練習で改善できることがあります。

かじられやすい物には、共通点がある

被害に遭いやすい物にははっきりした傾向があります。

かじられやすい物と、その理由
狙われやすい物 理由
木製の家具の脚 ちょうどよい太さと硬さ
ソファの角・クッション 柔らかく噛み心地がよい
人のにおいがつく物 スリッパ・靴・リモコン
壁の角・巾木 出っ張っていて噛みやすい
カーテンの裾 動くので興味を引く
コード類 細くて噛みやすい。最も危険

特に注目したいのが「人のにおいがつく物」です。

スリッパ・靴・脱いだ服・リモコン——こうした物は飼い主のにおいが強く残っています

留守番中に安心を求めてかじることがあると考えられています。

  • 靴は下駄箱にしまう
  • スリッパは履かない・片づける
  • 脱いだ服を床に置かない
  • リモコンは引き出しへ
  • 洗濯物は手の届かない場所に

片づけるだけで防げる被害は思っている以上に多いものです。

誤飲したときの対応

誤飲の危険があるものチェックリスト
家具のかじりで最も怖いのは、破片を飲み込むことです。

家具のかじりで最も怖いのは誤飲です。

誤飲した場合の危険性
飲み込んだもの 危険性
電気コード 感電・やけど。命に関わる
ウレタン・スポンジ 腸に詰まりやすい
木片・プラスチック片 口や消化管を傷つける
ひも・カーテンの房 腸に絡まると危険
観葉植物 中毒を起こす種類がある
布・タオル 腸に詰まることがある

「元気だから大丈夫」という判断は非常に危険です。

腸に詰まる症状は時間が経ってから現れることがあります。

すぐ動物病院へ連絡する

飲み込んだ可能性があれば、すぐに連絡してください。

  • 何を、どれくらいの大きさで飲んだか
  • いつ頃飲んだか
  • 残っている物を持参する
  • 犬種・年齢・体重も伝える
  • 自己判断で吐かせようとしない
  • 元気そうでも受診する

特に自己判断で吐かせるのは危険です。

とがった物を吐かせると食道を傷つけることがあります。

必ず獣医師の指示に従ってください。

夜間や休診日に備えて、夜間救急動物病院の連絡先を今のうちに調べておくことをおすすめします。

冷蔵庫やスマホのメモに控え、車で何分かかるかまで確認しておくと、いざというとき慌てずに済みます。

次のような様子があれば緊急性が高いと考えてください。

  • 何度も吐こうとするが、何も出ない
  • お腹が張って苦しそう
  • ぐったりして動かない
  • 便が出ない
  • 食欲がまったくない

留守番の環境を、いちど見直す

破壊が留守番中に集中しているなら、過ごす場所そのものを見直す価値があります。

留守番中の過ごさせ方
過ごさせ方 向いている犬 注意点
サークル・ケージ 破壊が激しい犬 普段から良い場所にしておく
1部屋に限定(ゲート) 落ち着いていられる犬 その部屋の危険物を撤去する
家全体を自由に 破壊のない犬 誤飲のリスクは残る
窓が見える場所 刺激を求める犬もいるが 吠えの原因にもなる
静かな奥の部屋 不安が強い犬 外の音を減らせる

ケージ=閉じ込める場所と考えると抵抗があるかもしれません。

しかし安心できる自分の部屋として使えるようになれば、犬にとって大きな支えになります。

  • 普段からケージでおやつを与える
  • 扉を開けたまま、自由に出入りさせる
  • 寝床として使わせる
  • 叱るときに入れる場所にしない
  • 徐々に扉を閉める時間を伸ばす

いきなり長時間入れるのは逆効果です。

数分から始めて、少しずつ伸ばしていくのが基本になります。

いつまで続くのか

最後に、見通しの話をします。

かじり行動の時期別の見通し
時期 状態
生後4〜7か月 最も激しい時期
生後7〜12か月 少しずつ減りはじめる
1歳前後 多くは落ち着く
1歳以降も続く 退屈・不安・習慣を疑う
急に始まった 環境の変化・不調を疑う

歯の生え替わりが原因なら1歳前後で自然に落ち着きます。

それまでは物理的に守り、かじってよい物を与える——この2つで乗り切ってください。

一方1歳を過ぎても続くなら、退屈・不安・習慣のいずれかが背景にあります。

急に始まった場合は、引っ越し・家族構成の変化・留守番時間の増加など環境の変化を振り返ってみてください。

人への甘噛みについては犬の甘噛みはいつまで?で解説しています。

よくある質問

Q. 帰宅して壊れた家具を見つけたら、叱るべきですか?

A. 叱っても伝わりません。犬が行動と結果を結びつけられるのは数秒以内です。後から叱ると「帰宅=怒られる」と学習し、留守番の不安が増して悪化することがあります。

Q. 申し訳なさそうにするので、分かっていると思うのですが。

A. 反省ではありません。飼い主の様子から「怒っている」と察してなだめようとしている状態です。何をしたから怒られているかまでは理解できていないことがほとんどです。

Q. いちばん優先すべき対策は何ですか?

A. 電気コードの保護です。かじって感電やけどを起こす危険があり、命に関わることもあります。コードカバーや配線モールで覆い、使わない機器はコンセントから抜いてください。

Q. 苦味スプレーは効きますか?

A. 個体差が大きく、これだけでは解決しにくいのが実際です。まったく気にしない犬もいます。ゲートで入れない・カバーで覆うといった確実な方法と組み合わせて使ってください。

Q. 留守番中だけかじります。

A. 不安か退屈のどちらかです。室内カメラで確認してください。出発直後から鳴きながらなら不安、しばらく寝てから起きてなら退屈。この違いで対策が変わります。

Q. かじった破片を飲み込んだかもしれません。

A. すぐに動物病院へ連絡してください。何をどれくらいの大きさで飲んだかを伝え、残っている物を持参してください。自己判断で吐かせないこと。元気そうでも受診が必要です。

Q. いつまで続きますか?

A. 歯の生え替わりが原因なら1歳前後で落ち着くことが多いといえます。1歳を過ぎても続く場合は退屈・不安・習慣のいずれかが背景にあります。

まとめ|守ってから、原因に手を打つ

犬が家具をかじるのは歯のむずがゆさ・退屈・不安が主な原因です。

そして後から叱っても伝わりません。それどころか「帰宅=怒られる」と学習させ、不安から来るかじりを悪化させます。

最も確実なのは物理的に守ること。ゲート・カバー・コード保護——今日から効果があります

そのうえでかじってよい物を用意し、退屈や不安という原因のほうに手を打つ。この順番が、家具も犬も守る近道になります。

今日から試してみたい3つのこと

  • 1電気コードをカバーで覆う(最優先)
  • 2かじってよいおもちゃを、手の届く場所に数個置く
  • 3留守番中の様子を室内カメラで確認してみる

かじる行動には、必ず理由があります。叱る前に、守って、満たしてください。