ふさふさとした大きな尾、首まわりを覆う豊かな襟毛、そして光の当たり方で色が動く被毛。ソマリは、「キツネのような猫」と呼ばれることがあります。
この猫は、アビシニアンの長毛版です。別の猫種として扱われていますが、体格も性格も、抱えている遺伝性疾患もアビシニアンとまったく同じです。
違うのは、毛の長さだけ。そしてその一点が、飼い主にひとつの大きな課題を持ち込みます。
この猫は、まったくじっとしていません。走り、跳び、登り、あらゆるものを前足で確かめる。その猫を、どうやってとかすのか。
この記事では、動き回る猫の長い毛を現実的にどう手入れするかを中心に書いていきます。
結論
ソマリはアビシニアンの長毛版で、性格も遺伝性疾患も共通しています。違うのは被毛の手入れが加わることだけ。じっとしていない猫なので、「長く押さえる」より「短く何度も」が現実的なやり方になります。絡まるのは脇の下・内股・しっぽの付け根の3か所に集中しています。
この記事でわかること
- ✓ソマリの体重・寿命・価格の目安
- ✓アビシニアンとの違いは、毛の長さだけ
- ✓ティックドコートが長毛になると、どう見えるか
- ✓動き回る猫を、現実的にどうとかすか
- ✓共通して残る3つの遺伝性疾患
ソマリの基本データ
まずは数字で全体像をつかみます。

体重はオスで3.5〜5kg、メスで3〜4kgほど。アビシニアンとまったく同じです。ただし毛のボリュームがあるため、見た目はひとまわり大きく感じられます。
平均寿命は12〜15歳。細身でしなやかな体つきに、豊かな毛が乗っている——というのがこの猫種の姿です。
アビシニアンとの違いは、毛の長さだけ
ソマリは、アビシニアンの繁殖のなかで生まれた長毛の個体から確立された猫種です。
| 項目 | ソマリ | アビシニアン |
|---|---|---|
| 毛の長さ | 中長毛 | 短毛 |
| 手入れ | 週3〜4回 | 週1〜2回 |
| 体格 | 同じ | 同じ |
| 性格 | 同じ。非常に活発 | 同じ。非常に活発 |
| 遺伝性疾患 | 同じ3つ | 同じ3つ |
| 価格 | やや高め | やや抑えめ |
選ぶ基準は、手入れの手間を引き受けられるかどうかだけです。それ以外の点で迷う必要はありません。
「キツネのような」と言われる理由
ソマリの特徴的な見た目をつくっているのは、全身の毛ではなく2か所の毛です。
- しっぽ——毛が長く広がり、太く見える
- 襟まわり——首を囲むように毛が生える
- この2か所が、キツネのような印象をつくる
- 背中や体側の毛は、それほど長くない
- そのため全身が長毛の猫より軽やかに見える
- 後ろ足の飾り毛(ブリーチズ)も特徴のひとつ
実際には「中長毛」に分類されることが多く、ペルシャのような全身の長毛とは違います。そのため手入れの負担も、長毛種のなかでは軽めの部類に入ります。
なお、この毛が完成するまでには時間がかかります。子猫のうちは、アビシニアンとほとんど区別がつかないことも珍しくありません。
襟毛やしっぽの飾り毛がはっきりしてくるのは生後半年以降。完全に整うのは1歳を過ぎてからという個体もいます。
ティックドコートが長毛になると
アビシニアンと同じく、ソマリの毛もティックドコートという構造をしています。
1本の毛に、濃い色と淡い色の帯が交互に入っている——というものです。
帯の数が増え、色に奥行きが出る
毛が長くなると、1本の毛に入る帯の数も増えます。アビシニアンで4〜6本とされる帯が、ソマリでは10本以上になることもあります。
この違いが、色の深さと、光による変化の大きさを生みます。同じ猫でも、日なたと室内ではまったく違う色に見えることがあります。
| 毛色の名称 | 見た目 |
|---|---|
| ルディ | 赤褐色。最も一般的で知られている |
| レッド(ソレル) | 明るい赤みのある色 |
| ブルー | 灰色がかった青。落ち着いた印象 |
| フォーン | 淡いベージュ。最もやわらかい色合い |
| シルバー | 銀色の地に濃い帯。団体により扱いが異なる |
毛色による性格や健康の差はありません。選ぶ基準は好みだけで構いません。
動き回る猫を、どうとかすか
ここが、この記事でいちばん実用的な部分です。

長毛の猫の手入れというと、「膝に乗せて10分かけてとかす」という光景を想像するかもしれません。
この猫種では、それは無理です。1分もじっとしていません。
「短く、何度も」に切り替える
現実的なやり方は、1回30秒〜1分を、1日に何度かという形です。
- 全身を一度にやろうとしない。1か所だけと決める
- 今日は脇の下、明日は内股——と分けてよい
- 猫が落ち着いているとき(食後・寝起き)を狙う
- 嫌がる前にやめる。1分でも十分
- 終わったらおやつを渡し、良い経験として残す
- 追いかけて捕まえてとかすのは、最もやってはいけない
嫌がってからやめるのは最悪の終わり方です。「暴れればやめてもらえる」と学習してしまい、次からもっと激しく抵抗します。
まだ平気なうちに、こちらから終える。この順番を守れるかどうかが、この猫種の手入れの成否を分けます。
絡まる場所は、3か所に集中している

全身を均等にとかす必要はありません。絡まる場所は決まっています。
脇の下、内股、しっぽの付け根。この3か所を押さえておけば、深刻な毛玉はほぼ防げます。
背中や体側は、猫自身の毛づくろいである程度対応できます。自分の舌が届かない場所を人が手伝う、という考え方です。
道具は、コームが基本になります。コームを立てて入れ、根元から毛先へ。表面をなでるだけでは、下の絡まりは取れません。
毛玉ができてしまったら
固まってしまった毛玉を、はさみで切るのは危険です。皮膚を巻き込んでいることがあります。
小さいものは指でほぐし、大きく固まっている場合は動物病院かトリマーに相談してください。
そして、毛玉ができると触らせてくれなくなります。引っ張られて痛いためです。そこからさらに毛玉が増えるという悪循環に入ります。
道具の選び方と、慣らし方
手入れの成否は、道具と慣らし方でかなり変わります。
この猫種に向く道具
| 道具 | 用途 | 向き・不向き |
|---|---|---|
| コーム(目の粗いもの) | 絡まりをほぐす | 最初に使う。必須 |
| コーム(目の細かいもの) | 仕上げ・ノミの確認 | 毛が整ってから |
| スリッカーブラシ | 抜け毛を取る | 力を入れすぎると皮膚を傷める |
| ラバーブラシ | 短い毛を撫でて取る | 嫌がりにくい。導入に向く |
| 手袋型ブラシ | なでる感覚でとかせる | 触られるのが苦手な個体に |
| ハサミ | 毛玉を切る | 使わないこと |
まずはコームを1本用意してください。この猫種で本当に必要なのは、これだけです。
ブラシは抜け毛を取るには向きますが、絡まりをほぐす力はありません。表面がきれいに見えても、下でフェルト化が進んでいることがあります。
嫌がる個体をどう慣らすか
すでに手入れを嫌がる場合、いきなりコームを入れないでください。
- まず手で撫でるだけ。道具は見せるだけにする
- 次にラバーブラシや手袋型で、撫でる感覚から始める
- 触られても平気な場所(背中・頭)から始める
- 脇の下や内股は、いちばん最後にする
- 1回ごとにおやつを渡し、良い経験として結びつける
- 数週間かけて、ゆっくり範囲を広げていく
急がないことが、いちばんの近道です。一度「嫌なもの」として定着すると、取り戻すのに何倍もの時間がかかります。
子猫のうちから慣らせるなら、それが最も理想的です。毛が短い時期から道具に触れさせておくと、本格的に必要になる頃には抵抗がなくなっています。
飲み込む毛の量も増える
長毛になるということは、毛づくろいで飲み込む量も増えるということです。
| サイン | 何が起きているか | 対応 |
|---|---|---|
| 毛玉を吐く回数が増えた | 飲み込む量が多い | ブラッシングの頻度を上げる |
| 便に毛が多く混じる | 同上 | 問題ないが、量は減らしたい |
| 吐こうとして吐けない | 胃腸で塊になっている可能性 | 受診する |
| 食欲が落ちた | 消化管が詰まりかけている | 受診する |
| 便が出ていない | 腸で詰まっている可能性 | 受診する |
「吐こうとして吐けない」状態が続くときは、様子を見ないでください。飲み込んだ毛が胃や腸で塊になり、手術が必要になることもあります。
毛玉ケア用のフードや、毛の排出を助けるサプリメントもあります。ただしいちばん確実なのは、飲み込む前にとかしてしまうことです。
換毛期には、抜ける量が一気に増えます。春と秋の数週間だけは、毎日とかすようにしてください。
この時期を乗り切れば、残りの季節は週3〜4回で十分に維持できます。一年中同じ頻度でやる必要はありません。
性格は、アビシニアンと同じ
被毛の話が続きましたが、性格の面ではアビシニアンとまったく変わりません。
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| とにかく動く | 一日中、家中を移動している |
| 好奇心が非常に強い | 何でも前足で確かめる |
| 高い場所が好き | 冷蔵庫の上、棚の上に登る |
| 人によく懐く | あとをついて回る個体が多い |
| 賢く、覚えが早い | ドアを開けることも |
| 鳴き声は小さい | うるさい猫種ではない |
必要なのは上下に動ける空間と、1日15分の遊びです。運動不足は、いたずらと夜鳴きに変わります。
高さのあるキャットタワー、壁面のステップ、窓辺の足場——床の広さより、上下に動ける経路を優先してつくってください。
そして、ここにひとつ利点があります。遊んで疲れたあとは、この猫も比較的おとなしくなります。
遊んだ直後は、ブラッシングの好機です。満足して落ち着いている数分間に、1か所だけコームを通す。この流れをつくれると、手入れがぐっと楽になります。
そして好奇心の強さは、そのまま事故のリスクにもなります。ひも状のものの誤飲、脱走、落下——対策はアビシニアンの飼い方にまとめてあります。
遺伝性疾患も、共通している

ソマリは、アビシニアンと同じ3つの疾患を受け継いでいます。
| 名称 | どんな病気か | 確認方法 |
|---|---|---|
| PK-Def | 赤血球が壊れ、貧血になる | 遺伝子検査で防げる |
| PRA-rdAc | 網膜が変性し、失明に至る | 遺伝子検査で防げる |
| 腎アミロイドーシス | 腎臓に異常物質が沈着する | 検査がない。年1回の血液検査で早期発見 |
前の2つは、両親の遺伝子検査で確実に防げます。どちらも両親そろって遺伝子を持つ場合にだけ発症するためです。迎えるときに必ず確認してください。
腎アミロイドーシスには確立された遺伝子検査がありません。年に一度の血液検査を習慣にし、水を飲む量が急に増えたら受診してください。
お迎え費用と、毎年かかるお金
| 項目 | 金額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 子猫の価格 | 18〜35万円 | アビシニアンよりやや高め |
| 初期の用品一式 | 5〜8万円 | 高いタワーとコームが必要 |
| 初年度の医療 | 3〜5万円 | ワクチン、健康診断、避妊去勢 |
| 年間のフード代 | 4〜7万円 | 毛玉ケア用はやや高め |
| 年間の医療・予防 | 3〜8万円 | 年1回の血液検査を含む |
| おもちゃ・消耗品 | 年1〜3万円 | よく遊ぶぶん消耗が早い |
アビシニアンと比べると、子猫の価格がやや高めになる傾向があります。頭数がやや少ないためです。
生涯でかかる金額は、12〜15年暮らすとしておおよそ160〜250万円が目安になります。
手入れをトリマーに頼む場合は、ここに年間で数万円が上乗せされます。ただし自分でとかせるようになれば、この費用はほぼ不要です。
毛玉ができてから病院で処置してもらうと、麻酔が必要になることもあり費用がかさみます。毎日1分の習慣が、いちばん安上がりだと言えます。
迎えるときに確認したいこと
- 両親がPK-Defの遺伝子検査を受けているか
- 両親がPRA-rdAcの遺伝子検査を受けているか
- 検査結果の書面を見せてもらえるか
- 血縁に腎臓の病気が出ていないか聞いてみる
- 被毛にもつれがないか、実際に触らせてもらう
- 子猫が体を触られることに慣れているか確認する
被毛の状態は、その環境のケアの質を映します。脇の下や内股が固まっている個体がいる場合、他の面でも手が回っていない可能性があります。
そして、すでに手入れに慣らされている個体を迎えられれば、その後が大きく変わります。「体を触らせてくれますか」と聞いてみてください。
よくある質問
Q. アビシニアンと何が違うのですか?
A. 毛の長さだけです。体格も性格も、抱えている遺伝性疾患も同じです。違うのは、週3〜4回のブラッシングが必要になることだけ。選ぶ基準は、その手間を引き受けられるかどうかです。
Q. じっとしていないので、とかせません。
A. 「長く1回」ではなく「短く何度も」に切り替えてください。1回30秒〜1分、1か所だけと決めて行います。食後や寝起きの落ち着いた時間を狙い、嫌がる前にやめて、おやつを渡してください。
Q. 全身をとかす必要がありますか?
A. ありません。絡まるのは脇の下・内股・しっぽの付け根の3か所に集中しています。背中や体側は猫自身の毛づくろいである程度対応できます。
Q. 毛玉ができてしまいました。切ってもいいですか?
A. 皮膚を巻き込んでいることがあるため、はさみで切るのは危険です。小さいものは指でほぐし、大きく固まっている場合は動物病院かトリマーに相談してください。
Q. 毛玉を吐く回数が増えました。
A. ブラッシングの頻度を上げてください。飲み込む毛の量が多くなっています。ただし吐こうとして吐けない状態が続くときは受診してください。胃腸で塊になっている可能性があります。
Q. PK-DefとPRAは防げますか?
A. 両親が遺伝子検査で陰性であれば、受け継ぐことはありません。どちらも両親そろって遺伝子を持つ場合にだけ発症します。迎える前に必ず確認してください。
Q. 長毛だから、暑さに弱いですか?
A. 全身が長毛のペルシャなどと比べると、体側の毛はそれほど長くありません。極端に暑さに弱いわけではありませんが、夏は室温28度以下を目安に保ってください。
まとめ|違いは毛だけ。だからこそ、毛が判断基準になる
ソマリは、アビシニアンと同じ体、同じ性格、同じ疾患を持った猫です。違うのは、ふさふさした尾と襟毛。そして、それに伴う手入れの手間だけです。
この猫はじっとしていません。長く押さえてとかすことはできません。だからこそ、「短く、何度も」という形に最初から切り替えてください。
絡まるのは3か所だけ。そう分かっていれば、1日1分の習慣で十分に維持できます。
毛の手入れは、体を触って異常に気づくための時間でもあります。とかす習慣は、そのまま日々の健康管理につながっていきます。
迎える前・迎えた後に、この3つを
- 1「両親はPK-DefとPRA-rdAcの検査を受けていますか」と確認する
- 2脇の下・内股・しっぽの付け根を、1日1分だけコームで通す
- 3年に一度、血液検査を受けて腎臓の数値を記録しておく
この猫の手入れは、追いかけた時点で失敗します。落ち着いている一瞬を狙える飼い主が、うまくいきます。
