

こんばんは。
今回「犬猫の悩みを即解決!」が自信を持ってお届けする記事は「猫の胸腺腫|取れば、五年という報告があります」です。ではどうぞ!
咳が出て、呼吸が速い。
食べたものを、吐き出してしまう。
そして、胸に水がたまっていると言われた。
胸腺腫は、胸の前のほうにできる腫瘍です。「腫瘍」と聞けば身構えると思います。けれど猫では、手術後の中央生存期間が1825日と報告されています。
結論
胸腺腫とは胸腺の上皮細胞に由来する腫瘍で、前縦隔領域に発生し、猫では比較的稀な病気です。好発年齢は中〜高齢で、重症筋無力症や皮膚疾患、高カルシウム血症を伴うこともあります。前縦隔にしこりができると、気管や肺、食道を圧迫するため、咳、呼吸が速い、呼吸困難、嘔吐、吐出、食欲低下、元気消失、胸水貯留、体重減少、多飲多尿(高カルシウム血症)、立てないあるいは運動するとすぐに座り込む(重症筋無力症)などの症状が見られます。診断は細胞診検査や超音波検査などを行い腫瘍の鑑別を進め、同時に全身状態の確認のため、全身精査(血液検査やレントゲン検査、CT検査など)が必要となります。治療は、基本的に第1選択として外科手術が適応となってきます。外科手術単独での中央生存期間は、犬で790日、猫で1825日と報告されています。
この記事でわかること
- ✓胸の前のほうにできる腫瘍です
- ✓押されて、症状が出ます
- ✓胸水がたまることもあります
- ✓離れた場所に、症状が出ます
- ✓立てなくなることがあります
- ✓診断は、細胞を採って調べること
- ✓治療の第一選択は、手術です
- ✓猫では、見通しが良いのです
胸の前のほうにできる腫瘍です
まず、どこにできるのかから。
胸腺という臓器があります
胸腺は免疫に関わる臓器です。
子猫のころに大きく、成長とともに小さくなっていきます。
その胸腺の上皮細胞に由来する腫瘍が胸腺腫です。
前縦隔という場所です
前縦隔領域に発生します。
縦隔とは左右の肺にはさまれた、胸のまんなかの空間です。
前縦隔は、そのうち前寄りの部分——
心臓の手前あたりにあたります。
猫では、まれな病気です
猫では比較的稀な病気とされています。
好発年齢は中〜高齢です。
数は多くありませんが、胸水の原因として名前が挙がるものです。
押されて、症状が出ます

症状の成り立ちです。
そこには、大事なものが通っています
前縦隔にしこりができると、気管や肺、食道を圧迫します。
空気の通り道と、食べ物の通り道がすぐそばを通っているのです。
だから、大きくなれば押されます。
気管が押されると、咳が出ます
咳、呼吸が速い、呼吸困難——
これが、気管や肺を押されたときの症状です。
安静時呼吸数を数えると、増えていることがあります。
食道が押されると、吐き出します
嘔吐、吐出、食欲低下も現れます。
吐出とは力まずに、こぼれ落ちるように出てくることです。
胃から吐き戻すのとは、違います。
食道の途中で止まったものが、戻ってくるのです。
全身の症状も、出ます
元気消失、体重減少が見られます。
食べられないことと、
腫瘍そのものが体力を奪うことが重なります。
- 咳が出るようになった
- 呼吸が速い、苦しそう
- 食べたものを、吐き出す
- 食欲が落ちてきた
- 体重が減ってきた
- 元気がなく、動きたがらない
胸水がたまることもあります
この腫瘍の、重要な現れ方です。
胸に、水がたまります
胸水貯留が症状として挙げられています。
胸水は肺を押して、呼吸を苦しくします。
腫瘍そのものより、この胸水で気づかれることがあります。
胸水の原因として、探されます
猫の胸水では、胸腔内腫瘍が多い原因のひとつとされています。
だから、胸水が見つかったら前縦隔に腫瘤がないかを調べます。
抜いてから撮ると、隠れていた腫瘤が見えてくることもあります。
リンパ腫とも、区別します
前縦隔にできる腫瘍としては
リンパ腫も代表的なものです。
見た目が似ているため、細胞を調べて区別します。
治療も見通しも変わるので、ここを確かめることに意味があります。
前縦隔にできる、ほかのもの
| 考えられるもの | 特徴 |
|---|---|
| 胸腺腫 | 中〜高齢に多い。手術で1825日という報告 |
| リンパ腫 | 若い猫でも起こる。抗がん剤が中心になる |
| ほかの腫瘍 | 種類によって、対応が変わる |
| 嚢胞など | 腫瘍ではないものが見つかることもある |
| だから | 細胞を調べて、種類を確かめる |
「前縦隔に腫瘤があります」で終わらせないでください。
離れた場所に、症状が出ます

この腫瘍の、特徴的なところです。
腫瘍随伴症候群と呼ばれます
重症筋無力症や皮膚疾患、高カルシウム血症を伴うこともあります。
腫瘍がある場所とは違うところに、症状が出る——
それが、腫瘍随伴症候群です。
多飲多尿が、出ることがあります
多飲多尿(高カルシウム血症)が挙げられています。
血液中のカルシウムが上がると、水をよく飲み、尿が増えます。
腎臓の病気と思われることがあります。
血液検査で、カルシウムの値を見て気づかれます。
皮膚にも、出ることがあります
皮膚疾患を伴うこともあります。
広い範囲で皮膚が荒れる、毛が抜けるといった形で現れることがあります。
皮膚の治療をしても、なかなか治らない——
そのときに、胸を調べて見つかることがあります。
立てなくなることがあります
もっとも劇的な現れ方です。
重症筋無力症を伴います
立てない、あるいは運動するとすぐに座り込む(重症筋無力症)という症状が挙げられています。
神経から筋肉への信号が、うまく伝わらなくなる状態です。
力が入らず、すぐ疲れてしまいます。
歩けるのに、続かないのです
まったく動けないわけではありません。
歩き始めるのですが、すぐに座り込む——
そして、休むとまた少し動ける——
この「続かない」ところが特徴です。
食道にも、影響します
飲み込む筋肉も、うまく働かなくなります。
食道が広がって、動かなくなることがあります。
だから、吐き出すようになります。
そして、誤嚥性肺炎の危険も出てきます。
こんな様子を、見ておいてください
- 歩き始めても、すぐ座り込む
- 休むと、また少し動ける
- 高いところに、登らなくなった
- 食べたものを、そのまま吐き出す
- まぶたが下がって見える
- 声が、かすれてきた
「疲れやすい」と「すぐ座り込む」は違います。
動画に撮って、見てもらってください。
これが最初のサインになることもあります
咳より先に、立てなくなって気づかれる——
そういう順番になることがあります。
神経の病気を疑って調べたら、胸に腫瘍が見つかった——
そこまで含めて、この腫瘍の姿です。
診断は、細胞を採って調べること

どうやって確かめるのかです。
細胞診で、種類を絞ります
基本的には、細胞診検査や超音波検査などを行い、腫瘍の鑑別を進めます。
超音波で見ながら、細い針で細胞を採る——
それを顕微鏡で調べます。
リンパ腫との区別が、ここでつくことがあります。
全身も、調べます
同時に全身状態の確認のため、全身精査(血液検査やレントゲン検査、CT検査など)が必要となります。
カルシウムの値も、ここで確かめられます。
手術に耐えられる状態かもあわせて見ます。
CTで、広がりを見ます
どこまで広がっているか、
周りの血管や気管と、どう接しているか——
それが、手術できるかどうかを決めます。
だから、CTを勧められることがあります。
胸水があれば、先に抜きます
| 段階 | 行われること |
|---|---|
| 呼吸が苦しいとき | まず酸素。落ち着かせる |
| 胸水があれば | 抜いて呼吸を楽にし、性状を調べる |
| 落ち着いてから | レントゲンや超音波で、腫瘤を確かめる |
| 細胞を採る | 種類を絞る。リンパ腫との区別が大事 |
| そのあと | CTで広がりを見て、手術を検討する |
水がたまったままでは、その奥がレントゲンに写りません。
治療の第一選択は、手術です

治療の考え方です。
取ることが、基本です
治療は、基本的に第1選択として外科手術が適応となってきます。
胸を開けて、腫瘍を取り除く手術です。
専門的な設備と技術が必要になります。
紹介されることも多い手術です。
内科と放射線は、補うもの
他には、内科療法や放射線療法が挙げられますが、手術不適応の症例や、外科手術と併用して行っていくことが多いとされています。
手術ができない場合の選択肢であり、
手術と組み合わせる選択肢でもあります。
放射線は、よく反応します
放射線治療には、75%の患者が反応します。
四頭に三頭で、腫瘍が小さくなるということです。
けれど根治は難しく、腫瘍が縮小しても数ヶ月後には再腫大します。
効くけれど、抑え込みきれない——
そこが、放射線の位置づけです。
猫では、見通しが良いのです
ここが、この記事でいちばん伝えたいことです。
中央生存期間が、1825日です
外科手術単独での中央生存期間は、犬で790日、猫で1825日と報告されています。
1825日——
およそ五年ということです。
腫瘍の数字としては、かなり良いものです。
犬より、良い数字です
犬で790日、猫で1825日——
猫のほうが、倍以上長いという報告です。
同じ腫瘍でも、猫のほうが見通しが明るい——
これは、めずらしいことです。
数字は、中央値です
これは、中央値です。
その猫の余命が決まっているわけではありません。
もっと長い猫もいれば、短い猫もいます。
それでも、この数字は治療を選ぶときの支えになります。
だから、あきらめないでください
「胸に腫瘍がある」と言われたとき、
覚悟してしまう方が多いと思います。
けれど胸腺腫なら、取れば五年という報告があります。
まず、何の腫瘍かを確かめてください。
| 段階 | 確かめること |
|---|---|
| 胸水が見つかった | 抜いて調べ、腫瘤がないか見る |
| 腫瘤が見つかった | 細胞診で、種類を絞る |
| 胸腺腫と分かった | CTで広がりを見て、手術を検討する |
| 手術できるなら | 中央生存期間1825日という報告がある |
| できない場合 | 放射線や内科療法を組み合わせる |
⚠ こんなときは、その日のうちに
呼吸が速く、苦しそうにしている。
口を開けて呼吸している。
立てない、すぐ座り込む。
食べたものを、そのまま吐き出す。
胸水がたまっていれば、抜くだけで楽になります。
🩺 種類を確かめる意味
「胸の腫瘍」と聞いて、あきらめないでください。
胸腺腫なら、外科手術での中央生存期間は猫で1825日と報告されています。
まず、細胞を調べてもらってください。
受診のときに、伝えてほしいこと
- 咳や呼吸の変化が、いつからか
- 吐き出すことがあるか(吐くのとは別)
- すぐ座り込むことがあるか
- 水を飲む量が、増えていないか
- 皮膚に、変化が出ていないか
- 体重が、減っていないか
胸とは関係なさそうに思える話ほど、
この腫瘍では手がかりになります。
術後に、見ておくこと
腫瘍随伴症候群の症状は腫瘍が取れれば、改善することがあります。
立てるようになるか、
多飲多尿が治まるか——
そこも、経過を見る材料になります。
再発がないかも、定期的に確かめていきます。
取ったものは、必ず病理検査に出してもらってください。
取り切れているかどうかが、そのあとの見通しを決めます。
この記事の要点
胸腺の上皮細胞に由来する腫瘍で、前縦隔に発生します。猫では比較的稀です。
気管や肺、食道を圧迫するため、咳、呼吸困難、吐出、胸水貯留などが起こります。
重症筋無力症、高カルシウム血症、皮膚疾患を伴うことがあります。
第1選択は外科手術で、猫での中央生存期間は1825日と報告されています。
Q. 胸腺腫とは、どんな病気ですか?
A. 胸腺の上皮細胞に由来する腫瘍で、前縦隔領域に発生します。猫では比較的稀な病気で、好発年齢は中〜高齢です。
Q. どんな症状が出ますか?
A. 前縦隔にしこりができると、気管や肺、食道を圧迫します。咳、呼吸が速い、呼吸困難、嘔吐、吐出、食欲低下、元気消失、胸水貯留、体重減少などが見られます。
Q. 胸水がたまることがありますか?
A. あります。胸水貯留が症状として挙げられており、腫瘍そのものより先に、胸水で気づかれることもあります。
Q. 立てなくなることがありますか?
A. あります。重症筋無力症を伴うことがあり、立てない、あるいは運動するとすぐに座り込むという症状が出ます。
Q. 水をよく飲むようになりました
A. 高カルシウム血症によることがあります。多飲多尿が、この腫瘍に伴って現れることがあります。血液検査でカルシウムの値を確かめます。
Q. 皮膚にも症状が出ますか?
A. 皮膚疾患を伴うこともあります。皮膚の治療をしても治らないときに、胸を調べて見つかることがあります。
Q. 腫瘍随伴症候群とは何ですか?
A. 腫瘍がある場所とは違うところに症状が出ることです。重症筋無力症、高カルシウム血症、皮膚疾患などが挙げられます。
Q. どうやって診断しますか?
A. 細胞診検査や超音波検査で腫瘍の鑑別を進めます。同時に全身状態の確認のため、血液検査やレントゲン検査、CT検査などの全身精査を行います。
Q. リンパ腫と、どう区別しますか?
A. 細胞を調べて区別します。どちらも前縦隔にできるため見た目が似ていますが、治療も見通しも変わります。
Q. 治療はどうしますか?
A. 基本的に、第1選択として外科手術が適応となります。内科療法や放射線療法は、手術不適応の症例や外科手術と併用して行うことが多いとされています。
Q. 放射線は効きますか?
A. 75%の患者が反応します。ただし根治は難しく、腫瘍が縮小しても数か月後には再腫大するとされています。
Q. 手術後の見通しは?
A. 外科手術単独での中央生存期間は、犬で790日、猫で1825日と報告されています。猫では、およそ五年という数字になります。
Q. 犬より、見通しが良いのですか?
A. この腫瘍では、そう報告されています。犬790日に対し、猫は1825日と倍以上の数字です。
Q. その数字は、確実ですか?
A. 中央値です。その猫の余命が決まっているわけではありません。それでも、治療を選ぶときの支えになります。
Q. 手術のあと、症状は戻りますか?
A. 腫瘍随伴症候群の症状は、改善することがあります。立てるようになるか、多飲多尿が治まるかも経過を見る材料になります。
まとめ|「腫瘍」で止まらず、種類まで確かめてください
胸に腫瘍があると言われたとき、
その場で覚悟してしまう方は少なくありません。
けれど、胸腺腫なら話が変わります。
外科手術単独での中央生存期間は、猫で1825日と報告されています。
およそ五年——腫瘍としては、かなり良い数字です。
そして、この腫瘍は胸の症状だけでなく、立てない・水をよく飲むといった形でも現れます。
だから、胸とは関係なさそうな症状もまとめて伝えてください。
まず、細胞を調べてもらう。
そこから、五年という見通しが開けることがあります。
今日できる3つ
- 1寝ている猫の呼吸数を、15秒数えて4倍する
- 2食べたものを吐き出していないか、様子を見る
- 3遊び始めてすぐ座り込まないか、確かめる
胸の腫瘍にも、見通しの明るいものがあります。「何の腫瘍か」を、必ず確かめてください。

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