

こんばんは。
今回「犬猫の悩みを即解決!」が自信を持ってお届けする記事は「犬の中耳炎|首が傾いたら、耳の奥を疑ってください」です。ではどうぞ!
首が、片側に傾いている。
まっすぐ歩けず、ふらつく。
片方のまぶたが下がって、眠そうに見える——
こうした変化を見たとき多くの方が「脳の病気ではないか」と考えます。
その心配はもっともなことです。
けれど、実際には耳の奥で起きていることが少なくありません。
中耳炎です。
鼓膜の向こう側で炎症が起きている状態をいいます。
そして、この病気の特徴は症状が耳に出ないことにあります。
掻かない。振らない。耳を見ても、汚れていないことさえある——
代わりに、顔と、目と、体のバランスに出るのです。
結論
中耳炎は鼓膜の向こう側で起きる炎症で、多くは外耳炎から炎症が広がって起こります。中耳には顔の神経や、目に関わる交感神経が通っているため、顔の麻痺(まぶたが下がる、口の端が下がる)やホルネル症候群(瞳の大きさの左右差、まぶたが下がる、目が奥に引っ込む)が現れます。さらに内耳まで広がると、眼振(目が揺れ動く)や斜頸(首が傾く)が出てきます。治療は抗生剤の内服が中心で6〜8週間の長期投与によく反応するとされています。反応しない場合や慢性化した場合には、鼓膜切開による洗浄や外耳道の切除が検討されます。
この記事でわかること
- ✓耳は、3つの部屋に分かれています
- ✓鼓膜の向こうに入ると、症状が変わります
- ✓顔に出るサインを、見てください
- ✓首が傾く——内耳まで進んだとき
- ✓治療は、6〜8週間かかります
- ✓老犬のふらつきとの、見分け
- ✓受診と、日ごろの観察
耳は、3つの部屋に分かれています

耳は外耳・中耳・内耳という3つの部分に分かれています。
| 部分 | どこか | 何があるか |
|---|---|---|
| 外耳 | 耳の穴から鼓膜まで | 耳道。ここが外耳炎の場所 |
| 鼓膜 | 外耳と中耳の境目 | 薄い膜。破れると奥へつながる |
| 中耳 | 鼓膜の向こう側 | 耳小骨。顔の神経と交感神経が通る |
| 内耳 | さらに奥 | 聞こえと、平衡感覚をつかさどる器官 |
| その先 | 頭の中へ | 神経を通じて、脳へつながる |
外耳炎は「鼓膜の手前」の病気です。
痒みと痛みが出て、掻く、頭を振る——飼い主にも分かりやすい症状が出ます。
けれど、炎症が鼓膜を越えてしまうと——
そこにはまったく別のものが通っています。
- 顔面神経——まぶたや口を動かす神経
- 交感神経——瞳の大きさやまぶたに関わる経路
- 耳小骨——音を伝える、小さな骨
- そのすぐ奥に、平衡感覚の器官がある
- いずれも、耳とは思えない働きをしている
- だから、症状も耳らしくない
「耳の病気なのに、顔が動かない」——
不思議に思われるかもしれません。
けれど、中耳という部屋を顔の神経が通り抜けているのですからそこが炎症を起こせば神経も巻き込まれます。
これが、この病気を理解する鍵です。症状の場所が炎症の深さを教えてくれる——そう考えると見るべきものがはっきりします。
鼓膜の向こうに入ると、症状が変わります

中耳炎の多くは外耳炎から炎症が広がって起こります。
長く続いた外耳炎で鼓膜が薄くなり、破れる——
そこから、菌が奥へ入り込むのです。
| 段階 | 症状 | 気づき方 |
|---|---|---|
| 外耳炎だけ | 掻く、振る、におい、耳垢 | 耳を見れば分かる |
| 中耳へ | 顔の麻痺、瞳の左右差 | 顔を見ないと分からない |
| 内耳へ | 首が傾く、ふらつく、目が揺れる | 歩き方で分かる |
| 痛み | 耳の下を触ると嫌がる | 口を開けるのを嫌がることも |
| 共通して | 耳を掻かなくなることがある | 「治った」と誤解されやすい |
ここで注意してほしいことがあります。
炎症が奥へ進むと外耳の症状はかえって静かになることがあります。
「掻かなくなった」「振らなくなった」——
それを「よくなった」と受け取ってしまう——
けれど、実際には炎症の場所が変わっただけという場合があるのです。
掻かなくなったから治った、とは限りません
外耳炎の治療中に掻く動作が減った——
ふつうは、よくなっている合図です。
けれど、同じ時期に顔つきが変わっていないかを確かめてください。
まぶたが下がる、瞳の大きさが違う、首をわずかに傾けている——
そうした変化が同時にあるならそれは治ったのではなく奥へ進んだ合図かもしれません。
顔に出るサインを、見てください

中耳を通っている神経が炎症に巻き込まれると顔に症状が出ます。
大きく2つあります。
| 顔面神経の麻痺 | ホルネル症候群 | |
|---|---|---|
| 関わる神経 | 顔面神経 | 目に関わる交感神経 |
| まぶた | 閉じられない | 下がってくる |
| 瞳 | 変わらない | 小さくなる(左右差) |
| 目の位置 | 変わらない | 奥に引っ込む |
| 口 | 端が下がる、よだれ | 変わらない |
| 共通 | 片側だけに出る | 片側だけに出る |
ホルネル症候群——聞き慣れない名前だと思います。
目に関わる交感神経の経路がどこかで障害を受けたときに現れる症状のまとまりをそう呼びます。
中耳炎は、その原因のひとつとされています。交感神経の経路が中耳を通っているからです。
顔面神経の麻痺ではまばたきができなくなることが問題になります。
まばたきは、目の表面を潤す動きです。
それができなければ角膜が乾き、傷ついていきます。
だから、顔面神経の麻痺があるときには目薬で角膜を守るという治療が並行して行われます。
食べ方にも、出ます
顔面神経の麻痺は口の動きにも影響します。
- 片側の口の端から、よだれがこぼれる
- 食べ物を、口の片側にためてしまう
- 水を飲むとき、うまくすくえない
- 食べこぼしが増える
- 顔の左右で、たるみ方が違って見える
- 鼻の先が、わずかに片側へ寄る
「最近、食べこぼすようになった」——
歯や口の問題だと思われがちですが顔の神経が背景にあることもあります。
とくに、片側だけに偏っているなら神経の問題を考える理由になります。
首が傾く——内耳まで進んだとき
炎症がさらに奥、内耳まで広がると症状はもっと分かりやすくなります。
内耳には平衡感覚をつかさどる器官があります。
体がどちらを向いているか、傾いているかを感じ取っている場所です。
- 首が片側に傾く(斜頸)
- まっすぐ歩けず、ふらつく
- 同じ方向に、ぐるぐる回ってしまう
- 目が左右や上下に細かく揺れる(眼振)
- 吐き気が出て、食べられなくなる
- 立ち上がれず、横になったまま転がる
眼振——目が細かく揺れ動くという症状は見ればすぐに分かります。
そして、強い吐き気を伴うことが多い——
人でいえばひどい乗り物酔いのような状態だと想像してください。
本人はとてもつらく、水も飲めなくなることがあります。
ここまで来ればその日のうちに受診すべき状況です。
そして、この段階では生活の支え方も変わります。
まっすぐ歩けない犬は段差や階段で転げ落ちる危険があります。
床にすべり止めを敷く、階段を使わせない、水と食器を横になったまま届く場所に置く——
そうした工夫が回復までの数日から数週間を支えます。
抱き上げるときも体を包むように支えてください。宙に浮くと本人はさらに不安になります。
そして内耳は聞こえにも関わるため聞こえの問題が残ることもあります。
治療は、6〜8週間かかります

治療は抗生剤の内服が中心になります。
そして、この病気で知っておくべきことは期間の長さです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 期間 | 6〜8週間の内服が必要とされる |
| 反応 | 多くは、長期の内服によく反応する |
| 点耳薬 | 鼓膜の状態を見て、使えるものを選ぶ |
| 洗浄 | 鼓膜切開による洗浄が行われることもある |
| 目のケア | まばたきできないなら、角膜を守る目薬 |
| 反応しない場合 | 外耳道の切除など、外科的な治療へ |
6〜8週間——
長いと感じられると思います。
けれど、中耳は薬が届きにくい場所です。
短期間でやめれば残った菌がまた増える——そして、そのたびに慢性化へ近づいていきます。
途中で症状が消えても指示された期間は続けてください。
とくに、顔の麻痺や首の傾きは薬が効き始めてもすぐには戻りません。
神経が回復するには時間がかかるからです。
「症状が残っている=効いていない」ではない——そこを、最初に確認しておいてください。
逆に、確かめておきたいこともあります。
「どのくらいの期間で、何がどう変わっていれば順調なのか」——
目安を聞いておくと長い治療のあいだ迷わずに済みます。
ふらつきは数日で軽くなることが多く、顔の麻痺は数週間から数か月——そうした違いを知っていれば焦らずに続けられます。
そして、途中で悪化した場合には次の予約を待たずに連絡してください。
慢性化すると、どうなるか
薬に反応しない、あるいは何度も繰り返す——
そういう場合には外科的な治療が検討されます。
- 鼓膜を切開して、中耳を洗浄する
- たまった膿や液を、直接出す
- 外耳道の一部を切除して、通りをよくする
- 重度なら、全耳道切除まで進むこともある
- いずれも、麻酔下で行われる
- そこまで進ませないことが、いちばん
慢性化した耳には緑膿菌のような薬が効きにくい菌が入り込んでいることもあります。
そうなれば培養検査で効く薬を調べるところからやり直すことになります。
老犬のふらつきとの、見分け
高齢の犬が急に首を傾け、ふらついて立てなくなる——
そういうときもうひとつ考えられるものがあります。
前庭疾患です。
| 中耳炎・内耳炎 | 特発性の前庭疾患 | |
|---|---|---|
| 背景 | 外耳炎が先にあることが多い | とくに前ぶれがない |
| 年齢 | どの年齢でも | 高齢の犬に多い |
| 耳の状態 | 汚れやにおいがあることが多い | 耳はきれいなことが多い |
| 顔の症状 | 麻痺や瞳の左右差が出ることも | 出ないことが多い |
| 経過 | 治療で改善していく | 数日から数週間で自然に落ち着く |
| 共通 | 受診して調べなければ分からない | 受診して調べなければ分からない |
症状だけを見ればよく似ています。
どちらも首が傾き、ふらつき、目が揺れる——
だから、自宅で見分けることはできません。
ただ、「これまで外耳炎を繰り返していたか」という情報は大きな手がかりになります。
受診のときに必ず伝えてください。耳の治療歴があるかどうかで疑う順番が変わってきます。
🩺 自宅で見分けようとしないでください
首が傾いて、ふらつく——
この症状は耳だけでなく脳の側でも起こります。
だから、「耳だろう」と決めつけずに受診してください。
耳の中を見て、画像検査をして、はじめてどこで起きているかが分かります。
そして、急に起きた症状ほど早く診てもらう意味があります。
受診と、日ごろの観察
受診のときに伝えてほしいことを挙げます。
- これまでに外耳炎を繰り返していないか
- いつから、どの症状が出たか
- どちら側に傾いているか
- 顔つきに左右差がないか
- 食べられているか、吐いていないか
- 使っている薬や、持病はないか
そして、動画を撮っておいてください。
ふらつき方、目の揺れ方、傾きの向き——診察室では落ち着いてしまって出ないことがあります。
検査としては耳鏡で鼓膜を見る、レントゲンやCTで中耳の状態を調べるのが基本です。
鼓膜が破れているか、中耳に液がたまっているか——そこが分かれば使える薬も決まります。
日ごろ、見ておきたいこと
- 顔を正面から見て、左右差がないか
- まぶたの高さ、瞳の大きさを比べる
- 首の角度が、いつもと違わないか
- 耳のにおいや汚れが続いていないか
- 呼びかけへの反応が鈍っていないか
- 歩き方が、まっすぐかどうか
とくに外耳炎を繰り返している犬では顔を正面から見る習慣をつけてほしいと思います。
横から見ていては左右差に気づけません。正面に回って、両目を同時に見る——それだけで見え方が変わります。
正面から、まぶたと瞳を比べる——数秒でできる確認です。
写真を撮っておくのも有効です。
左右差は毎日見ていると気づきにくいもので数か月前の写真と比べてはじめて分かることがあります。
そして、首の傾きも同じことです。
わずかな傾きは「そういう癖」だと受け取られやすい——けれど、以前の写真ではまっすぐだったならそれは変化です。
そして、激しく頭を振り続けているなら耳血腫も起こりえます。
垂れ耳で外耳炎を繰り返しやすい犬種——たとえばアメリカン・コッカー・スパニエルのような犬では中耳炎まで進むことも少なくありません。
よくある質問
Q. 中耳炎はなぜ起こるのですか?
A. 多くは外耳炎から炎症が広がって起こります。長く続いた外耳炎で鼓膜が薄くなり、破れて、そこから菌が奥へ入り込みます。だから、繰り返す外耳炎を治しきることが予防になります。
Q. 耳を掻いていないのに、中耳炎ですか?
A. 炎症が奥へ進むと、外耳の症状はかえって静かになることがあります。「掻かなくなった」を「治った」と受け取ってしまうのが、この病気の落とし穴です。同じ時期に顔つきが変わっていないかを確かめてください。
Q. 顔が動かないのは、なぜですか?
A. 顔面神経が、中耳という部屋を通り抜けているためです。そこが炎症を起こせば神経も巻き込まれます。まぶたが閉じられない、口の端が下がる、よだれがこぼれるといった症状が出ます。
Q. 瞳の大きさが左右で違います
A. ホルネル症候群かもしれません。目に関わる交感神経の経路が中耳を通っており、中耳炎はその原因のひとつとされています。まぶたが下がる、目が奥に引っ込むといった症状を伴います。
Q. 首が傾いてふらつきます。脳の病気ですか?
A. 内耳まで炎症が広がった場合にも、同じ症状が出ます。脳の側で起こることもあるため、自宅で見分けることはできません。急に起きた症状ほど、早く受診してください。
Q. 治療にはどれくらいかかりますか?
A. 抗生剤を6〜8週間、内服することが多いとされています。中耳は薬が届きにくい場所のため、長く続ける必要があります。多くは、この長期の内服によく反応します。
Q. 症状が残っているのは、薬が効いていないからですか?
A. 神経の回復には時間がかかります。顔の麻痺や首の傾きは、薬が効き始めてもすぐには戻りません。「症状が残っている=効いていない」とは限らないため、自己判断でやめないでください。
まとめ|耳ではなく、顔を見てください
中耳炎は「耳の病気なのに、耳に症状が出ない」というやっかいさを持っています。
掻かない。振らない。だから、気づかれにくい。
代わりに顔と、目と、体のバランスに出る——
まぶたが下がる。瞳の大きさが違う。首が傾く。ふらつく——
これらを「歳のせい」で済ませないでください。
そして、この病気の多くは外耳炎から始まります。
繰り返す外耳炎を治しきることがそのままこの病気の予防になります。
治療は長くかかります。6〜8週間——
けれど、多くはその内服によく反応します。
早く始めるほど戻せるものが多い——そういう病気です。
顔の麻痺も、首の傾きも神経が回復すれば戻ることがあります。
時間はかかりますが「もう治らない」と決めるのは早すぎます。
まずは、顔を正面から見るところから——
今日できる3つ
- 1顔を正面から見て、まぶたと瞳の左右差を確かめる
- 2首の角度と、歩き方がまっすぐかを見る
- 3外耳炎を繰り返しているなら、そのことを次の受診で伝える
耳を掻かなくなったから治った、とは限りません。顔と、歩き方を見てください。

本日の「犬猫の悩みを即解決!」の記事「犬の中耳炎|首が傾いたら、耳の奥を疑ってください」でした。
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