

こんばんは。
今回「犬猫の悩みを即解決!」が自信を持ってお届けする記事は「猫の毛包虫症|出たときは、別の病気を探します」です。ではどうぞ!
毛包虫は、もともと猫の体に常在しているダニです。
健康な猫の皮膚にも、少数がいます。そして、いるだけでは何も起こしません。
けれど免疫が落ちると、抑えが効かなくなって増えていきます。
だからこの病気では、皮膚を治すだけでは足りません。なぜ免疫が落ちているのか——そちらを探すことが本体になります。
結論
毛包虫症(ニキビダニ症)は猫の体に常在しているネコニキビダニが増えて起こる皮膚病です。猫ではごくまれな病気で、皮膚科診療において遭遇することは稀とされています。そのため発症したときは猫免疫不全ウイルス感染症、猫白血病ウイルス感染症、糖尿病をはじめとした内分泌疾患、腫瘍、免疫抑制剤の使用などが発症要因として考慮されます。猫の毛包虫には二種類あり、毛包の中に住む種類では、頭部や頚部を中心に脱毛、毛包一致性の丘疹・鱗屑、紅斑などの皮疹を認めることが多く、皮膚表層に生息する種類では、毛孔に一致する皮疹を認めることは少なく、一方で強い掻痒を伴うことが多いという違いがあります。治療は駆虫薬、シャンプー療法、毛包の角質や皮脂を減らす方法が用いられ、免疫力を落とす病気の治療も同時に行われます。
この記事でわかること
- ✓もともと、体にいるダニです
- ✓猫では、まれな病気です
- ✓だから、裏を探すことになります
- ✓二種類あります
- ✓見つけ方は、皮膚を調べることです
- ✓治療は、二本立てになります
- ✓うつることもあります
- ✓犬とは、事情が違います
もともと、体にいるダニです

ニキビダニ症は、猫の体に常在している体長2〜3ミリメートルの細長いネコニキビダニが原因で発症する疾患です。
常在している——ここが、この病気の特徴です。
外から来る寄生虫ではありません。もともといるものが、増えてしまう病気です。
だから、いること自体は問題になりません
健康な猫の皮膚を調べれば、少数の毛包虫が見つかることがあります。
それは異常ではありません。免疫が数を抑えているかぎり、何も起こらないからです。
問題になるのはその抑えが効かなくなったときです。
「うつされた」のではなく、「増えてしまった」——そう考えると、この病気の性質が見えてきます。
母猫から、子猫へ受け継がれます
このダニは、授乳のときに母猫から子猫へ渡ると考えられています。
つまりほとんどの猫が、子猫のうちから持っているということです。持っていることを、心配する必要はありません。
猫では、まれな病気です
犬では、比較的よく知られた病気です。けれど猫では違います。
猫ではごくまれな病気で、猫の皮膚科診療において、毛包虫症と遭遇することは稀です。
この「まれである」という事実が、そのまま重要な意味を持ちます。
まれだからこそ、意味があります
ふつうの猫では起こらない病気が起きている。それは、ふつうではない何かがあるということです。
だから、この病気が見つかったとき皮膚科の問題として終わらせないのです。
体のどこかで、免疫が働けなくなっている——そう考えて、探しにいきます。
見た目には、脱毛やぶつぶつという皮膚の問題です。けれどそれは表に出ている一部分にすぎないかもしれません。
だから、裏を探すことになります

FIV(猫免疫不全ウイルス感染症)、FeLV(猫白血病ウイルス感染症)の感染、糖尿病をはじめとした内分泌疾患、腫瘍、免疫抑制剤の使用などが発症要因として考慮されています。
つまり、この病気はもっと大きな問題の入り口であることがあります。
ウイルスの検査を、すすめられます
猫免疫不全ウイルス感染症と猫白血病ウイルス感染症は、免疫を落とす代表的な病気です。
これらがあると、ふだんは何でもない常在菌やダニが問題になります。
皮膚の病気で来院したのに血液検査やウイルス検査をすすめられるのは、このためです。
遠回りに見えて、いちばんの近道になります。
内分泌の病気も、確かめます
糖尿病などの内分泌の病気でも、抵抗力は落ちます。
そのため水を飲む量、食べる量、体重をあわせて確かめることになります。

- 体重が、減っていないか
- 水を飲む量が、増えていないか
- 食欲が、変わっていないか
- 元気がなくなっていないか
- 口内炎などが、くり返していないか
- ほかの治療で、免疫を抑える薬を使っていないか
免疫を抑える薬を使っている場合、この病気はその副作用として起こることがあります。使っている薬は、必ず伝えてください。
二種類あります

猫の毛包虫には、二つの種類があります。
そして住む場所が違うため、症状も違います。
| 毛包の中に住む種類 | 皮膚の表層に住む種類 | |
|---|---|---|
| 住む場所 | 毛穴(毛包)の中 | 皮膚の表面近く |
| 出やすい場所 | 頭部や首を中心に | 体のあちこち |
| 見た目 | 脱毛、毛穴に一致したぶつぶつ | 毛穴に一致した皮疹は少ない |
| ふけ・赤み | 鱗屑や紅斑を伴う | 目立たないことがある |
| かゆみ | 強くないことがある | 強い掻痒を伴うことが多い |
| うつるか | 基本的にうつらない | 猫から猫へうつることがある |
かゆがるほうは、うつります
皮膚の表層に生息する種類のほうは、強い掻痒を伴うことが多いとされています。
そして、この種類は猫から猫へうつることがあります。
多頭飼いで複数の猫がかゆがっているなら、こちらの可能性を考えます。
その場合は、同居猫もあわせて治療することになります。
なめて、毛が短くなることもあります
かゆみが強い猫は、なめることでしのごうとします。
その結果毛が短く刈られたようになり、脱毛して見えることがあります。
見た目には心因性の脱毛とよく似ています。
「ストレスのせい」と決めつける前に、皮膚を調べてもらう意味があるのは、このためです。
ほかの皮膚病と、まぎらわしいところ
毛が抜ける皮膚病は、ほかにもいくつもあります。
- 真菌(カビ)——円形に毛が抜ける
- 疥癬——耳と顔から始まり、激しくかゆい
- ノミアレルギー——腰から尾に集まる
- 心因性の脱毛——お腹や内股をなめる
- アレルギー——顔や首に出やすい
- 内分泌の病気——左右対称に薄くなる
見た目だけでは、分けられません。顕微鏡で確かめることが必要になります。
とくに真菌との区別は大切です。こちらは人にもうつるため、対応がまったく変わってきます。
見つけ方は、皮膚を調べることです
診断は、皮膚を調べてダニを探すことで行います。
皮膚の表面を軽くこすり取ったものや、抜いた毛を顕微鏡で見て、ダニを確認します。
| 検査 | 分かること |
|---|---|
| 皮膚の掻爬検査 | こすり取って、顕微鏡でダニを探す |
| 抜毛検査 | 毛根に付いたダニを確認する |
| テープでの採取 | 表層に住む種類は、こちらで見つかることも |
| 血液検査 | 背景の病気がないかを確かめる |
| ウイルス検査 | 免疫が落ちる病気がないかを見る |
| ほかの皮膚病の除外 | 真菌やアレルギーとの区別をつける |
表層に住む種類は、見つけにくいものです
毛包の中に住む種類は、毛を抜けば毛根に付いてきます。
けれど表層に住む種類は、猫がなめて取ってしまうため検査に出てこないことがあります。
そのため何度か検査したり、治療してみて反応を見たりすることになります。
「見つからなかった=いない」ではない——この病気でも、そこは同じです。検査を一度で終わらせず、疑いが残るなら別の日にも調べてもらってください。
治療は、二本立てになります
治療は駆虫薬、シャンプー療法、毛包の角質や皮脂を減らす方法が用いられ、免疫力を落とす病気の治療も同時に行われます。
皮膚のほうと背景のほう——この二つを、同時に進めることになります。
皮膚への治療
- 駆虫薬で、ダニの数を減らす
- 薬用シャンプーで、皮膚を整える
- 毛包にたまった角質や皮脂を減らす
- 細菌が重なっていれば、抗生物質を使う
- かゆみが強ければ、それを抑える薬も使う
- 効果を見ながら、期間を決めていく
毛包の角質や皮脂を減らすという手当ては、ダニの住みかを減らすという考え方です。薬で叩くだけでなく、居心地を悪くして数を抑えるという方向からも攻めます。
背景への治療のほうが、大事です
駆虫薬でダニを減らしても、免疫が落ちたままなら、また増えます。
そのため免疫力を落とす病気の治療を同時に行うことが欠かせません。
糖尿病があるなら、そちらを整える。ウイルス感染症があるなら、その管理をする。免疫抑制剤を使っているなら、量を見直す。
そちらが動かないかぎり、皮膚も落ち着きません。
逆にいえば、背景の病気が整えば、皮膚も自然に落ち着いてくることがあります。免疫が戻れば、ダニをまた抑え込めるようになるためです。
皮膚は、体全体の調子を映す鏡でもあります。この病気は、そのことをはっきり示しています。
🩺 獣医療の現場では
皮膚の病気で来院して、血液検査やウイルス検査をすすめられると「そこまで必要ですか」と感じるかもしれません。
けれどこの病気では、皮膚は結果であって原因ではありません。原因を探さずに薬だけ続けても、同じことがくり返されてしまいます。
時間がかかることを、知っておいてください
この病気の治療は、短期間では終わりません。
ダニは毛包の奥に住み、卵からも次々と育ってきます。数週間から数か月かけて減らしていくことになります。
- 決められた間隔で、駆虫薬を続ける
- 定期的に検査を受け、ダニが減っているか確かめる
- 見た目がよくなっても、勝手にやめない
- 背景の病気の治療も、並行して続ける
- 体重や食欲の変化を、記録しておく
- 次の受診の予定を、その場で決めておく
検査でダニがいなくなったことを確かめてから終了する——それがこの病気の基本です。
「毛が生えてきたから、もう大丈夫」という判断は、早すぎることがあります。
うつることもあります
毛包の中に住む種類は、基本的にうつるものではありません。
常在しているものが増えるだけなので、同居猫に広がる心配は小さいものです。
けれど表層に住む種類は違います。猫から猫へうつることがあります。
多頭飼いで、複数がかゆがっているなら
そういう場合は、うつる種類を疑います。
その場合、症状が出ていない猫も含めて治療することがあります。
あわせて寝床やブラシを分けることも対策になります。
どちらの種類なのかを確かめることが、対応を決めるうえで重要になります。
うつる種類であれば、背景の病気がなくても発症することがあります。健康な猫でも、うつされれば症状が出るためです。
「まれな病気だから、必ず裏がある」とは限らないのは、この種類があるからです。
人にはうつりません
猫の毛包虫が、人に感染することはありません。
人にも別の種類の毛包虫が常在していますが、それぞれの動物に固有のものです。
猫を触ること、抱くことを怖がる必要はありません。この点は、疥癬や真菌の場合とは違うところです。
犬とは、事情が違います
この病気は、犬ではよく見られます。とくに子犬の時期に出ることが多いものです。
けれど猫では、ごくまれです。
この差が、猫で見つかったときの意味の重さをつくっています。
| 犬の毛包虫症 | 猫の毛包虫症 | |
|---|---|---|
| 頻度 | 比較的よく見られる | ごくまれ |
| 出やすい時期 | 子犬の時期にも出る | 年齢を問わないが、まれ |
| 背景 | 免疫の未熟さでも起こる | 免疫を落とす病気を探す |
| 検査の広がり | 皮膚の検査が中心 | 全身の検査に広がる |
| 見つかったときの意味 | 皮膚の問題として扱えることも | 別の病気の合図と考える |
犬の情報をそのまま当てはめない——この病気では、そこが大切になります。調べものをするときも、猫について書かれたものを読んでください。
よくある質問
Q. 毛包虫症とは、どんな病気ですか?
A. 猫の体に常在しているネコニキビダニが増えて起こる皮膚病です。外から来る寄生虫ではなく、もともといるものが増えてしまう病気です。
Q. うちの猫も、持っているのですか?
A. 多くの猫が持っていると考えられます。授乳のときに母猫から渡ると考えられており、持っていること自体は異常ではありません。
Q. 持っているだけで、大丈夫なのですか?
A. 免疫が抑えているかぎり、何も起こりません。問題になるのは、その抑えが効かなくなって増えたときです。
Q. 猫では、よくある病気ですか?
A. ごくまれです。猫の皮膚科診療において、毛包虫症と遭遇することは稀とされています。
Q. では、発症したらどう考えますか?
A. なぜ免疫が落ちているのかを探します。猫免疫不全ウイルス感染症、猫白血病ウイルス感染症、糖尿病などの内分泌疾患、腫瘍、免疫抑制剤の使用などが要因として考慮されます。
Q. 皮膚の病気なのに、血液検査が必要ですか?
A. 必要です。この病気では、皮膚は結果であって原因ではありません。背景を探さずに薬だけ続けても、同じことがくり返されます。
Q. 種類があると聞きました
A. 二種類あります。毛包の中に住む種類は、頭部や首を中心に脱毛や毛穴に一致したぶつぶつが出ます。皮膚の表層に住む種類は、毛穴に一致した皮疹が少ないかわりに、強いかゆみを伴うことが多いものです。
Q. どうやって診断しますか?
A. 皮膚をこすり取ったり毛を抜いたりして、顕微鏡でダニを探します。ただし表層に住む種類は猫がなめて取ってしまい、検査に出てこないことがあります。
Q. 治療はどうしますか?
A. 駆虫薬、シャンプー療法、毛包の角質や皮脂を減らす方法が用いられます。そして、免疫力を落とす病気の治療も同時に行われます。
Q. ほかの猫にうつりますか?
A. 種類によります。毛包の中に住む種類は基本的にうつりませんが、皮膚の表層に住む種類は猫から猫へうつることがあります。
Q. 人にうつりますか?
A. うつりません。毛包虫はそれぞれの動物に固有のもので、猫のものが人に感染することはありません。
Q. 犬でも同じ病気がありますね
A. ありますが、事情が違います。犬では比較的よく見られ、子犬の時期にも出ます。猫ではごくまれなため、見つかったときの意味が重くなります。
まとめ|皮膚だけを、見ないでください
この病気は、外から来るものではありません。もともといるダニが、増えてしまう病気です。
そして猫では、ごくまれです。
だから、見つかったときには「なぜいま増えたのか」を考えることになります。
ウイルス感染症、糖尿病、腫瘍、免疫を抑える治療——そのどれかが、背景にあるかもしれません。
皮膚の治療だけで終わらせないこと。それが、この病気でいちばん大切な考え方です。
見た目には、皮膚の病気です。けれど実際には、体からの知らせであることがあります。
「まれな病気が出た」ということ自体に意味がある——そう受け止めて、検査を受けてください。早く背景が分かれば、そちらへの手当ても早く始められます。
今日できる3つ
- 1脱毛やぶつぶつが、頭や首から出ていないか確かめる
- 2体重と、水を飲む量に変化がないか見ておく
- 3ウイルス検査を受けたことがあるか、記録を確かめる
この病気は、皮膚からの知らせです。本体は、別のところにあることがあります。

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