

こんばんは。
今回「犬猫の悩みを即解決!」が自信を持ってお届けする記事は「犬の潜在精巣|降りてこない精巣は、10倍腫瘍になる」です。ではどうぞ!
子犬を迎えた日に、数えた方はどれくらいいるでしょうか。
陰嚢の中に、精巣が2つあるかどうか——
触れば分かることですが意識して確かめる機会は意外と少ないものです。
そして、1つしかない、あるいはどちらも触れない——
その状態を潜在精巣(せんざいせいそう)といいます。停留睾丸、陰睾(いんこう)とも呼ばれます。
本来なら生後6か月ごろまでにお腹の中から陰嚢へ降りてくるはずの精巣が途中で留まってしまった状態です。
そして、この病気にははっきりした数字があります。
降りてこなかった精巣は腫瘍の発生率が正常な精巣の10倍以上——
結論
潜在精巣は生後6か月ごろまでに陰嚢へ降りてこなかった精巣を指します。鼠径部(足の付け根)か、お腹の中に留まっており、体温の高い場所に置かれ続けることで腫瘍の発生率が正常な精巣の10倍以上になるとされています。チワワ、トイ・プードル、ポメラニアン、マルチーズ、ミニチュア・ダックスフンドなど小型の純血種に多く、遺伝が関わる病気でもあります。生後8か月前後まで降りていなければ、その後も降りる可能性は低いとされており、摘出する手術がすすめられます。繁殖に用いないことも重要とされています。
この記事でわかること
- ✓精巣は、移動してくる臓器です
- ✓なぜ、10倍になるのか
- ✓どこに留まっているか
- ✓遺伝する、ということ
- ✓手術と、その時期
- ✓子犬のうちに、数えてください
精巣は、移動してくる臓器です

あまり知られていないことから始めます。
精巣は、最初から陰嚢にあるわけではありません。
生まれる前、精巣は腎臓の近く——お腹の中にあります。
そして成長にあわせて少しずつ下へ移動し、鼠径部(足の付け根)の管を通って陰嚢に収まる——
| 時期 | 本来の状態 |
|---|---|
| 生まれる前 | お腹の中、腎臓の近くにある |
| 生後まもなく | 下へ向かって移動を始める |
| 生後2か月ごろ | 多くは、陰嚢に降りている |
| 生後6か月 | ここまでに降りるのがふつう |
| 生後8か月以降 | 降りる可能性は低いとされる |
なぜ、わざわざ体の外に出るのか——
精子をつくるには体温より低い温度が必要だからです。
陰嚢という体の外にぶら下がった袋はまさにそのための構造——体温より2〜3度低く保たれるようにできています。
つまり——降りてこなかった精巣は本来より高い温度に置かれ続けていることになります。
ここが、この病気のすべての出発点です。
降りてこない理由はひとつではありません。
- 通り道である鼠径部の管が、狭い、あるいは塞がっている
- 精巣を引き下ろす組織の働きが十分でない
- ホルモンの働きに、ずれがある
- そもそも遺伝的な素因がある
- 小型の純血種に多い、という傾向がある
- 片側だけ起こることが、もっとも多い
いずれにしても飼い方や育て方で起きるものではありません。
「何かしてしまったのか」と思われる必要はない——そこは、はっきり書いておきます。
なぜ、10倍になるのか

体温の高い場所に長く置かれた精巣には変化が起こりやすくなります。
降りてこなかった精巣の腫瘍発生率は正常な精巣の10倍以上とされています。
| 項目 | 正常な精巣 | 潜在精巣 |
|---|---|---|
| 位置 | 陰嚢の中 | 鼠径部、または腹腔内 |
| 温度 | 体温より低い | 体温と同じ |
| 腫瘍の危険 | 基準となる値 | 10倍以上とされる |
| しこりへの気づき | 触って分かる | 腹腔内なら分からない |
| ねじれ | 起こりにくい | 起こることがある |
| 対応 | 去勢は選択 | 摘出がすすめられる |
「10倍」という数字も重いのですがそれ以上に問題なのは気づけないことです。
陰嚢にある精巣ならしこりができれば触って分かります。左右で大きさが変われば見て分かります。
けれど、お腹の中にある精巣はどれだけ大きくなっても外からは何も分かりません。
気づいたときにはかなり進んでいた——そうなりやすい構造をしているのです。
精巣腫瘍が出すもの
精巣の腫瘍にはホルモンを出すタイプがあります。
女性ホルモン様の物質が過剰に出ると左右対称に毛が抜ける、乳頭が大きくなる、皮膚が黒ずむといった変化が現れることがあります。
さらに進めば骨髄の働きが抑えられ、血液がつくれなくなることもあります。
「オスなのに、見た目が変わってきた」——そうした変化は受診の理由になります。
そしてもうひとつ——
お腹の中で精巣がねじれることがあります。
精巣捻転——血の流れが止まり、激しい痛みが出る状態です。
急に激しく痛がる、うずくまって動かない、吐く——そうした急変が起こりうるのです。
そして、そのときには原因が分かりません。
お腹の中で何が起きているのか——検査をしてはじめて「ここに精巣があった」と分かることになります。
潜在精巣であることを知っているかどうかでそのときの初動が変わります。
だからこそ、気づいた時点でカルテに残しておくことにも意味があります。
どこに留まっているか

留まっている場所によって手術の内容が変わります。
| 場所 | 分かり方 | 手術 |
|---|---|---|
| 鼠径部 | 触れることがある | その部分を切開して取り出す |
| 腹腔内 | 外からは分からない | 開腹して探す必要がある |
| 片側だけ | 数えれば気づける | 両方を摘出する |
| 両側とも | 陰嚢が空に見える | 2か所を探すことになる |
| 場所の確認 | 超音波などで探す | 事前に分かれば負担が減る |
もっとも多いのは片側だけというかたちです。
片方は陰嚢にあるため「ある」と思い込んで見過ごされやすい——数えなければ気づけないのはそのためです。
そして、手術では両方とも摘出します。
「正常なほうは残せませんか」と思われるかもしれません。
けれど片方だけ残せば男性ホルモンは出続けます。前立腺の病気も、マーキングも、そのまま——そして何より、遺伝を止められません。
腹腔内にある場合
お腹の中に留まっている場合手術は通常の去勢より大きくなります。
- お腹を開いて、精巣を探すことになる
- 事前に超音波などで、位置を確かめておく
- 探す範囲が広ければ、時間もかかる
- 麻酔の時間も、通常より長くなる
- 入院が必要になることもある
- それでも、放置するよりは負担が小さい
「そこまでするなら」と迷われるかもしれません。
けれど、腫瘍ができてからの手術はもっと大きくなります。
大きくなった腫瘍、周囲との癒着、そして高齢という条件——それらが重なった状態での開腹と健康な若い犬の開腹では負担がまるで違います。
遺伝する、ということ
この病気にはもうひとつ、知っておくべき面があります。
遺伝が関わるということです。
常染色体劣性の遺伝が関与するとされており、だからこそ「繁殖に用いないこと」が重要だと言われます。
| 犬種 | 傾向 |
|---|---|
| チワワ | 発生が多いとされる |
| トイ・プードル | 発生が多いとされる |
| ポメラニアン | 発生が多いとされる |
| マルチーズ | 発生が多いとされる |
| ミニチュア・ダックスフンド | 発生が多いとされる |
| 共通する点 | 主に、小型の純血種に多い |
「うちの子だけの問題ではない」——そこが、この病気の特殊なところです。
繁殖に使えば同じことが次の世代でも起こります。
そして、その子犬たちも同じように腫瘍のリスクを抱えることになる——
だから、潜在精巣の犬は繁殖に用いない——これは、犬全体のための約束事だと受け取ってください。
逆に言えば——繁殖の予定がないのであれば迷う要素はほとんどありません。
摘出することで腫瘍のリスクがなくなり、ねじれの心配もなくなり、遺伝も止められる——
失うものが、ほとんどないのです。
ブリーダーやペットショップとの話
迎えたあとで潜在精巣だと分かった——
そういうとき、販売元に伝えるべきかを迷われるかもしれません。
伝えてください。
遺伝が関わる病気ですから同じ親から生まれた犬にも同じことが起きている可能性があります。
そして、その親を繁殖に使い続けるかどうかという判断にもつながります。
責めるためではなく、情報として渡す——そういう伝え方で十分です。
手術と、その時期

いつ手術するか——
「若い年齢での去勢が望まれる」とされています。
| 時期 | 考え方 |
|---|---|
| 生後6か月まで | 降りてくる可能性がまだある |
| 生後8か月前後 | ここまで降りなければ、期待しにくい |
| 1歳前後 | 手術がすすめられる時期 |
| 数年後 | 腫瘍のリスクが積み上がっていく |
| 高齢になってから | 麻酔の負担も増している |
| 共通 | 早いほど、体への負担は小さい |
「もう少し様子を見ましょう」と言われることがあります。
生後6か月より前ならそれは自然な判断です。まだ降りてくる可能性があるからです。
けれど、8か月を過ぎてなお降りていないなら「待つ」という選択には意味が薄くなっていきます。
そこから先は「降りてくるのを待つ時間」ではなく「腫瘍のリスクが積み上がる時間」に変わるからです。
🩺 症状がないうちに、なぜ手術するのか
「元気なのに、なぜ手術するのか」——
この病気でもっとも自然に浮かぶ疑問だと思います。
今、症状は何もありません。痛がってもいないし、元気も食欲もある。
けれど、この手術は「今ある病気を治すもの」ではなく「起こることを防ぐもの」です。
症状が出てから動くのでは遅い——そういう性質の病気だと受け取ってください。
そして手術の際には前立腺の病気も同時に防げます。
男性ホルモンがなくなれば前立腺肥大も前立腺炎も起こりにくくなります。
ひとつの手術で複数の病気を遠ざけられる——そこも、考える材料になるはずです。
手術のあとに気をつけたいことも書いておきます。
- 傷を舐めないよう、カラーなどで守る
- 数日は、走り回る運動を控える
- 傷の腫れや出血がないか、毎日見る
- 元気や食欲が戻っているかを確かめる
- 抜糸や再診の日を、忘れずに受ける
- 術後は太りやすくなるため、食事量を見直す
開腹をともなう手術なら通常の去勢より回復に時間がかかります。
それでも、多くは数日でふだんの様子に戻ります。
そして、去勢後は必要なカロリーが下がります。同じ量を与え続ければ太っていく——体重の管理はそのまま続けてください。
子犬のうちに、数えてください
この記事でもっとも伝えたいことを書きます。
数えてください。
陰嚢に、精巣が2つあるかどうか——それだけでこの病気は見つかります。
- まず、数が2つあるかを確かめる
- 左右の大きさに、差がないかを見る
- 生後6か月の時点で、もう一度確かめる
- 健診のたびに、獣医師にも見てもらう
- 1つしかなければ、その時点で相談する
- 迎えるときに、確認しておくのも有効
「触るのが難しい」と感じられるかもしれません。
子犬の精巣は小さく、動きます。嫌がって暴れることもあります。
無理に確かめる必要はありません。健診やワクチンのときに「精巣は2つありますか」と聞けば済むことです。
その一言がこの病気を早い段階で見つけます。
ひとつ、紛らわしいことを書いておきます。
子犬の精巣は驚いたときや、寒いときに一時的に上へ引き上げられることがあります。
「さっきは触れたのに、今は分からない」——そういうことが起こりうるのです。
だから、一度触れなかっただけで決めつけないでください。落ち着いているとき、体が温まっているときにもう一度確かめる——それでも分からなければ受診で確かめてもらうのが確実です。
成犬になってから気づいた場合
「うちの子は、もう5歳です」——
そういう場合でも手術は検討されます。
年齢を重ねるほど腫瘍のリスクは積み上がります。そして、麻酔の負担も増していきます。
「今日が、これから先でいちばん若い日」——そう考えて一度相談してみてください。
すでに腫瘍ができていないかを超音波で確かめるだけでも意味があります。
そして、手術をしないと決めた場合にも定期的に見てもらってください。
お腹の中の精巣は触っても分かりません。けれど、超音波なら大きさや形の変化を追えます。
年に一度、健診のときに見てもらう——それだけでも気づける時期が変わります。
そして、左右対称の脱毛や乳頭が大きくなるといった変化が現れたらすぐに受診してください。ホルモンを出す腫瘍がすでにできている合図かもしれません。
よくある質問
Q. 潜在精巣とはどんな状態ですか?
A. 生後6か月ごろまでに陰嚢へ降りてこなかった精巣のことです。停留睾丸、陰睾とも呼ばれます。鼠径部(足の付け根)か、お腹の中に留まっています。
Q. 待っていれば降りてきますか?
A. 生後8か月前後まで降りていなければ、その後も降りる可能性は低いとされています。6か月より前なら待つ判断もありますが、それを過ぎたら「待つ時間」は「リスクが積み上がる時間」に変わっていきます。
Q. 放置すると、何が起こりますか?
A. 腫瘍の発生率が、正常な精巣の10倍以上になるとされています。体温の高い場所に置かれ続けることが原因です。お腹の中にある場合は、大きくなっても外から気づけません。
Q. 正常なほうの精巣は残せませんか?
A. 両方とも摘出するのが基本です。片方を残せば男性ホルモンは出続け、前立腺の病気も防げません。そして何より、遺伝を止められません。
Q. 遺伝するのですか?
A. 常染色体劣性の遺伝が関与するとされています。だからこそ、潜在精巣の犬は繁殖に用いないことが重要とされます。チワワ、トイ・プードル、ポメラニアンなど小型の純血種に多く見られます。
Q. 手術は大がかりになりますか?
A. 留まっている場所によります。鼠径部ならその部分を切開して取り出せますが、お腹の中にある場合は開腹して探すことになります。事前に超音波などで位置を確かめておくと、負担が減ります。
Q. 元気なのに、手術する必要がありますか?
A. この手術は「今の病気を治すもの」ではなく「起こることを防ぐもの」です。症状が出てから動くのでは遅い——そういう性質の病気です。同時に、前立腺の病気も遠ざけられます。
まとめ|まず、2つあるか数えてください
潜在精巣は「症状のない病気」です。
痛がりもしない。元気も食欲もある。だから、そのまま何年も過ぎていきます。
けれど、その間ずっと本来より高い温度に置かれ続けている——
そして、腫瘍の発生率は10倍以上。
お腹の中にあれば大きくなっても気づけません。
この病気の対応ははっきりしています。
摘出すること——それで、腫瘍のリスクも、ねじれの心配も、遺伝も、すべて止まります。
失うものがほとんどない処置だと言えます。繁殖の予定がないのであれば、なおさらです。
そして、見つけるのは簡単です。
数えるだけ——
特別な検査も、費用も要りません。陰嚢に触れて2つあるかを確かめる——それだけでこの病気は見つかります。
そして、見つかれば対応もはっきりしている——
今日できる3つ
- 1陰嚢に精巣が2つあるか、数を確かめる
- 2左右で大きさに差がないかを見る
- 31つしかない、または分からなければ、次の受診で聞いてみる
生後6か月が、ひとつの区切りです。「あるはず」ではなく、数えて確かめてください。

本日の「犬猫の悩みを即解決!」の記事「犬の潜在精巣|降りてこない精巣は、10倍腫瘍になる」でした。
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