猫の脳血管障害|起きた原因を、探すことが治療です

猫の脳血管障害

さっきまで普通だったのに、急にふらついている。

同じところで、グルグル回っている——

脳の血管に、何かが起きたのかもしれません。

脳血管障害は、突然始まります。そして、梗塞そのものへの特異的な治療はありません。だから、その手前にある病気を探すこといちばんの治療になります。

結論

脳血管障害とは脳の血管が詰まる、あるいは破れることでその先の組織が傷んでしまう状態です。症状としては、突然の嘔吐、痙攣、歩行困難、麻痺、無目的な歩行、旋回(同じところでグルグル回る)、抑うつ状態、昏睡状態などがあります。脳出血では脳圧が上昇し、嘔吐がみられたり、意識レベルが低下したりします。原因としては、高血圧症、血管炎、脳血管の形成不全、外傷、原発性脳腫瘍もしくは転移性脳腫瘍からの出血が考えられます。磁気共鳴画像検査は脳内の血管や組織の状態を詳細に描出できるため、脳血管障害を早期に発見し、正確に診断するうえで必須の検査となります。損傷した部位(梗塞)に対する特異的な治療はなく、原因疾患を特定することが優先事項です。起きてしまった神経徴候に対しては、リハビリや対処療法などが回復に必要不可欠です。発見が早く処置が適切に行われれば軽度の症状で済み、回復して元気になる可能性があります。

この記事でわかること

  • 突然、始まります
  • 回る、ふらつく、けいれんする
  • 手前に、原因があります
  • 高血圧が、いちばん多いのです
  • 脳腫瘍とは、始まり方が違います
  • 画像で、確かめます
  • 原因を治すことが、治療です
  • 早ければ、回復します

突然、始まります

まず、この病気の始まり方から。

ある瞬間から、変わります

脳の血管が詰まる、あるいは破れる——

それは、ある瞬間に起こります。

だから、症状も突然始まります。

「さっきまで普通だった」というのが、この病気の特徴です。

そこから、大きくは進みません

起きてしまったあとは、そこで止まることが多いものです。

最初の数時間で、悪くなることはあります。

けれど、何日もかけて悪化し続けることはあまりありません。

だから、経過を伝えてください

いつから、どう始まったか——

それが、いちばん大事な情報です。

「今朝、急に」なのか

「一か月前から少しずつ」なのか——

そこで、考える病気が変わります。

その日のうちに、受診してください

発見が早く処置が適切に行われれば、軽度の症状で済み、回復して元気になる可能性があります。

早さが、そのまま結果を変えます。

様子を見ないでください。

夜中でも、連絡してください。

回る、ふらつく、けいれんする

現れる症状
突然、始まります。

どんな症状が出るのかです。

同じところで、回ります

旋回(同じところでグルグル回る)

症状として挙げられています。

片側へ、ぐるぐると回り続ける——

脳の異常を強く疑う動きです。

目的なく、歩き回ります

無目的な歩行も症状に含まれます。

どこかへ行こうとしているわけでもなく、ただ歩いている——

そういう様子になります。

けいれんが、起こることもあります

痙攣この病気の症状です。

体が硬直し、手足をばたつかせる——

初めて起きたなら、すぐに受診してください。

そして、動画に撮っておいてください。

意識が、落ちることもあります

抑うつ状態、昏睡状態

症状として挙げられています。

呼びかけへの反応が鈍い、起きているのにぼんやりしている——

そこまで来ると、非常に危険な状態です。

  • 同じところで、回っている
  • 目的なく、歩き回っている
  • 急に、ふらついて立てない
  • けいれんを起こした
  • 急に、吐き始めた
  • 呼びかけへの反応が、鈍い

どれかがあれば、夜間でも受診してください。

出血なら、吐き気も出ます

脳出血では脳圧が上昇し、嘔吐がみられたり、意識レベルが低下したりします。

頭の中の圧が上がる

吐き気として現れるのです。

急に吐き始めたことも、伝えてください。

手前に、原因があります

背景にある原因
手前に、理由があります。

ここが、この病気でいちばん大事なところです。

いくつもの原因があります

原因としては、高血圧症、血管炎、脳血管の形成不全、外傷、原発性脳腫瘍もしくは転移性脳腫瘍からの出血が考えられます。

脳の血管が詰まる、破れるのには

必ず理由があります。

腫瘍からの出血もあります

脳腫瘍背景にあることもあります。

腫瘍の中の血管は、もろいことがあります。

そこから出血して、急に症状が出ることがあります。

外傷が、きっかけになることも

外傷も原因として挙げられています。

頭を打ったあと、時間をおいて症状が出ることも

あります。

心当たりがあれば、必ず伝えてください。

原因が分からないことも、あります

調べても、はっきりしないことがあります。

その場合も、症状を抑える治療は続けられます。

分からないまま、というのはつらいことですが、

調べた事実そのものに意味があります。

だから、原因を探します

損傷した部位(梗塞)に対する特異的な治療はなく、原因疾患を特定することが優先事項です。

詰まってしまったものを、元に戻すことはできません。

けれど、次を防ぐことはできます。

高血圧が、いちばん多いのです

猫でとくに大事な原因です。

血圧が、血管を傷めます

高血圧症原因の筆頭に挙げられています。

高い圧がかかり続ければ、細い血管は傷んでいきます。

そして、破れることがあります。

猫の高血圧は、二次性が多いのです

高血圧症

猫では、ほかの病気に伴って起こることが多いものです。

腎臓病や、甲状腺機能亢進症——

その背景を探すことになります。

だから、血液検査も行われます

「脳の症状なのに、血液検査?」

思われるかもしれません。

けれどそこに答えがあることがあります。

腎臓や甲状腺の数値を、必ず確かめます。

血圧を測ることが、大事です

猫でも、血圧は測れます。

高血圧が見つかれば、薬で下げられます。

それが、次の発作を防ぎます。

目の奥の出血も、同じ原因で起こります。

急に目が見えなくなった猫で、高血圧が見つかることがあります。

血管が傷むのは、脳だけではありません。

⚠ すぐに受診してください

急に、ふらついて立てない。

同じところで、回り続けている。

けいれんを起こした。

呼びかけへの反応が、鈍い。

早ければ、軽度で済むことがあります。

脳腫瘍とは、始まり方が違います

突然か、じわじわか
始まり方で、分かれます。

区別のしかたです。

突然か、じわじわか

脳血管障害は、突然始まります。

脳腫瘍少しずつ進みます。

そこが、いちばん分かりやすい違いです。

経過を、思い出してください

「前からおかしかったか」

思い出してみてください。

性格の変化や、夜鳴きが前からあったなら——

それは、腫瘍かもしれません。

脊髄でも、同じことが起こります

線維軟骨塞栓症

脊髄の血管が詰まって起こる病気です。

脳で起これば旋回やけいれん、脊髄で起これば麻痺——

場所で、現れ方が変わります。

どちらにしても、調べてください

区別は、家ではつきません。

経過を伝えることだけ、してください。

あとは、検査で分かります。

斜頸が、残ることもあります

後遺症が残っても、環境を整えれば暮らしていけます
残ることのある症状 暮らしへの影響
首が傾く(斜頸) まっすぐ歩きにくくなる
片側の足が弱い 高い所へ登れなくなる
目が揺れる(眼振) 落ち着かず、酔ったようになる
ふらつき 滑る床で、転びやすくなる
それでも 猫は、その状態に順応していきます

回復には、数週間から数か月かかります。

画像で、確かめます

診断と治療の流れ
原因を、探します。

診断の進め方です。

まず、神経の検査です

目の動き、反射、姿勢

細かく確かめていきます。

脳のどのあたりが傷んでいるか

それでおおよそ分かります。

血圧と血液を、調べます

高血圧症が背景にないか

腎臓や甲状腺に問題がないか——

その日のうちにできる検査です。

原因が、そこで見つかることがあります。

磁気共鳴画像検査が、必須です

磁気共鳴画像検査は脳内の血管や組織の状態を詳細に描出できるため、脳血管障害を早期に発見し、正確に診断するうえで必須の検査となります。

麻酔が必要で、施設も限られます。

紹介されることが多い検査です。

詰まりか、出血かも分かります

血管が詰まったのか、破れたのか——

画像で、そこが区別できます。

その違いで、注意する点が変わります。

受診のときに、伝えてほしいこと

  • いつから、どう始まったか
  • 前から、おかしいところがあったか
  • 頭を打った可能性がないか
  • けいれんの回数と、続いた時間
  • 持病があるか、薬を飲んでいるか
  • 撮った動画があれば、見せる

「今日、急に」なのか「前からじわじわ」なのか——

そこが、いちばん大事な情報です。

原因を治すことが、治療です

治療の考え方です。

梗塞そのものは、治せません

損傷した部位(梗塞)に対する特異的な治療はありません。

傷んでしまった脳の組織は、戻りません。

そこは、正直にお伝えしておきます。

だから、原因を治します

原因疾患を特定することが優先事項です。

高血圧なら、血圧を下げる——

腎臓や甲状腺の病気なら、そちらを治療する——

それが、次の発作を防ぎます。

症状を、和らげます

起きてしまった神経徴候に対しては、リハビリや対処療法などが回復に必要不可欠です。

脳のむくみを抑える、けいれんを止める——

そうした治療が、あわせて行われます。

リハビリが、回復を支えます

動かない足を、動かしてあげる——

体を支えて、立たせてみる——

それが、機能の回復につながります。

やり方を、必ず教わってください。

梗塞そのものより、その手前を治すことが治療になります
段階 行われること
まず 脳のむくみを抑え、状態を安定させる
同時に 血圧を測り、血液検査で原因を探る
画像検査 詰まりか出血か、場所はどこかを確かめる
原因が分かれば その病気を治療する
そのあと リハビリを続け、回復を支える

早ければ、回復します

希望のある部分です。

軽度で済むことがあります

発見が早く処置が適切に行われれば、軽度の症状で済み、回復して元気になる可能性があります。

「元気になる」という言葉が使える——

それが、この病気の希望です。

周りの組織が、助けます

脳は、傷んだ部分の働きを周りが補うことがあります。

だから、時間とともに戻ってくるのです。

数週間かけて、少しずつ良くなります。

後遺症が残ることもあります

傷んだ範囲が広ければ、後遺症が残ることもあります。

首が傾いたまま、片側の足が弱いまま——

それでも、猫は順応していきます。

次を、防いでください

原因が残っていれば、また起こります。

血圧の管理、持病の治療——

それを続けることが、いちばん確かな予防です。

家で、見ておいてほしいこと

  • 回る、ふらつく様子が減っているか
  • けいれんの回数と、続いた時間
  • 食べているか、水を飲めているか
  • 尿と便が、出せているか
  • 血圧の薬を、続けられているか
  • ぶつかっていないか、転んでいないか

回復の様子は、週ごとに動画で残してください。

少しずつの変化が、そこで分かります。

こんな工夫が、助けになります

首が傾いていると、食べる姿勢そのものがつらくなります
困りごと できる工夫
ふらついて転ぶ 床にマットを敷き、爪を短く保つ
まっすぐ歩けない 通り道の障害物を、片づける
高い所から落ちる 登れる場所を、減らしておく
食べにくそう 器を高くし、体を支えて食べさせる
トイレに間に合わない 寝床の近くに、もう一つ置く

器を少し高くするだけで、食べやすくなることがあります。

暮らしの環境も、整えてください

床を滑らなくする、段差を減らす——

家具の配置を、変えないでおく——

ふらつく猫にとって、覚えている道筋は助けになります。

危ない場所は、塞いでおいてください。

🩺 その手前を、探してください

脳の血管が詰まる、破れる——

それには、必ず理由があります。

猫では、高血圧症が大きな原因です。

そして高血圧の背景には、腎臓や甲状腺の病気があります。

この記事の要点

突然の嘔吐、痙攣、歩行困難、麻痺、旋回、意識レベルの低下などが現れます。

原因は高血圧症、血管炎、脳血管の形成不全、外傷、脳腫瘍からの出血などです。

梗塞そのものへの特異的な治療はなく、原因疾患を特定することが優先されます。

発見が早く処置が適切なら軽度で済み、回復して元気になる可能性があります。

Q. どんな症状が出ますか?

A. 突然の嘔吐、痙攣、歩行困難、麻痺、無目的な歩行、旋回、抑うつ状態、昏睡状態などです。

Q. 急に始まりますか?

A. 突然始まります。「さっきまで普通だった」というのが、この病気の特徴です。

Q. 同じところを回っています

A. 旋回といって、この病気の症状のひとつです。脳の異常を強く疑う動きです。

Q. 急に吐き始めました

A. 脳出血では脳圧が上昇し、嘔吐がみられることがあります。意識レベルの低下を伴うこともあります。

Q. 原因は何ですか?

A. 高血圧症、血管炎、脳血管の形成不全、外傷、脳腫瘍からの出血などが考えられます。

Q. なぜ血液検査をするのですか?

A. 高血圧の背景を探すためです。猫の高血圧は、腎臓病や甲状腺機能亢進症に伴うことが多いためです。

Q. 血圧は、猫でも測れますか?

A. 測れます。高血圧が見つかれば薬で下げられ、次の発作を防げます。

Q. 脳腫瘍とは、どう違いますか?

A. 始まり方が違います。脳血管障害は突然、脳腫瘍は少しずつ進みます。

Q. どうやって診断しますか?

A. 磁気共鳴画像検査が必須の検査となります。脳内の血管や組織の状態を、詳細に描出できるためです。

Q. 詰まりと出血は、区別できますか?

A. 画像で区別できます。その違いによって、注意する点が変わります。

Q. 治療はどうしますか?

A. 梗塞そのものへの特異的な治療はなく、原因疾患を特定することが優先されます。

Q. 何もできないのですか?

A. そうではありません。リハビリや対症療法が、回復に必要不可欠とされています。

Q. 回復しますか?

A. 発見が早く処置が適切に行われれば軽度の症状で済み、回復して元気になる可能性があります。

Q. また起こりますか?

A. 原因が残っていれば、また起こることがあります。血圧の管理と持病の治療を、続けてください。

Q. 家では何に気をつけますか?

A. 床を滑らなくし、家具の配置を変えないでください。覚えている道筋が、ふらつく猫の助けになります。

まとめ|「なぜ起きたか」まで、進んでください

脳血管障害は、突然始まります。

ふらつく、回る、けいれんする——

その日を境に、変わってしまいます。

そして、傷んだ脳を元に戻す方法はありません。

けれどその手前には、必ず原因があります。

高血圧症、血管炎、外傷、腫瘍からの出血——

それを見つけて治すことが、次を防ぎます。

猫の高血圧は、腎臓や甲状腺の病気に伴うことが多いのです。

だから、血液検査までしっかり受けてください。

今日できる3つ

  • 1ふらつきや回る様子を、動画に撮っておく
  • 2高齢の猫なら、健康診断で血圧を測ってもらう
  • 3床を滑らなくし、家具の配置を変えないでおく

起きてしまったことは、戻せません。けれど、次を防ぐことはできます。