

こんばんは。
今回「犬猫の悩みを即解決!」が自信を持ってお届けする記事は「猫の天疱瘡|自分の皮膚を、攻撃してしまう病気です」です。ではどうぞ!
天疱瘡(てんぽうそう)は、免疫が自分の皮膚を攻撃してしまう病気です。
表皮細胞間接合部に対する自己抗体の形成を特徴とする免疫介在性疾患——そう説明されます。
むずかしい言い方ですが、意味はひとつです。皮膚の細胞どうしをつなぐ部分を、自分の免疫が壊してしまうということです。
そして、大事なことを先にお伝えします。この病気は、うつりません。
結論
天疱瘡は表皮細胞間接合部に対する自己抗体が形成される免疫介在性疾患で、この病気が猫で起こることは非常にまれです。落葉状天疱瘡では膿疱がみられることは少なく、膿疱が形成されてもすぐにつぶれてしまうため、かさぶたの形成、膿を含んだ湿疹や赤みが特徴的になります。症状は主に頭部、鼻梁、耳介などの顔に認められ、爪床にチーズ様の滲出物やかさぶたの形成が認められることがあります。好発部位は頭部、顔面および耳であり、また爪床、肉球にできることもよくあります。自己免疫疾患のため、現在のところ予防法はありません。治療は異常な免疫反応を抑えるため、免疫抑制剤による治療を行い、長期的に投薬する必要があります。一旦発症してしまうと完治が難しい病気で、長期間もしくは生涯の治療が必要となります。
この記事でわかること
- ✓うつる病気では、ありません
- ✓自分の皮膚を、攻撃しています
- ✓猫では、非常にまれです
- ✓顔と耳、そして足先に出ます
- ✓膿疱は、すぐつぶれます
- ✓見つけ方は、生検です
- ✓治療は、抑え続けることです
- ✓長く付き合うために
うつる病気では、ありません

最初に、はっきりさせておきたいことがあります。
この病気は、ほかの猫にも人にもうつりません。
外から来た菌やウイルスによるものではなく、体の内側で起きていることだからです。
だから、隔離する必要もありません
多頭飼いのお宅でも、分ける必要はありません。
寝床や食器を共有していても、ほかの猫に広がることはありません。
人が触っても、問題ありません。抱いたり、撫でたりすることを控える理由もありません。
ワクチンでは、防げません
自己免疫疾患のため、現在のところ予防法はありません。
ワクチンは、外から来る病原体に対して免疫をつくるものです。自分の免疫が暴走する病気には、効きません。
「予防できなかった」と自分を責める必要はありません。この病気は、防ぐ方法がまだないのです。
飼い方のせいでは、ありません
「不衛生だったから」「何かが悪かったのでは」——そう考えてしまう方がいます。
けれど、この病気は免疫のしくみそのものに関わるものです。掃除や食事、環境の問題ではありません。そこは、切り離して考えてください。
自分の皮膚を、攻撃しています

では、体の中で何が起きているのでしょうか。
皮膚は、細胞がつながり合ってできています。その細胞どうしをつなぐ部分に対して、自己抗体ができてしまうのがこの病気です。
免疫が「そこは敵だ」と誤って判断し、攻撃を始めます。
つながりが、ゆるんでいきます
攻撃を受けると、細胞どうしのつながりがゆるみます。
皮膚は、まとまりを失って層がはがれるようになっていきます。
落葉状という名前は、皮膚が葉のようにはがれ落ちる様子から来ています。
猫で見られるのは、この落葉状天疱瘡がほとんどです。
猫では、非常にまれです
この病気が猫で起こることは、非常にまれです。
犬でも多い病気ではありませんが、猫ではさらに少なくなります。
だから皮膚に異常が出たとき、真っ先に疑われる病気ではありません。
ほかを外してから、たどり着きます
かさぶたのできる皮膚病は、ほかにいくつもあります。
| まず考えるもの | 見分けの手がかり |
|---|---|
| ノミアレルギー | 腰から尾に集まる。ノミの糞がある |
| 疥癬 | 耳と顔から始まり、激しくかゆい。うつる |
| 真菌(カビ) | 円形に毛が抜ける。人にもうつる |
| 膿皮症 | 細菌感染。抗生物質で改善する |
| 好酸球性肉芽腫症候群 | 唇の潰瘍、お腹のただれなど |
| 天疱瘡 | これらを外したあとに残る候補 |
「治療しても、よくならない」——そこから疑われることが多い病気です。
だから診断までに時間がかかることがあります。
顔と耳、そして足先に出ます

この病気には、出やすい場所がはっきりしています。
症状は主に頭部、鼻梁、耳介などの顔に認められます。
そして好発部位は頭部、顔面および耳であり、また爪床、肉球にできることもよくあります。
鼻すじと耳のふちを、見てください
鼻梁——つまり鼻すじの上に、かさぶたができることがあります。
耳のふちや、耳の内側にも出ます。
左右対称に出ることが多いのも、この病気の特徴です。
- 鼻すじの上に、かさぶたがある
- 耳のふちが、かさかさしている
- 額や頭に、かさぶたができている
- 左右対称に出ている
- その部分の毛が、薄くなっている
- かさぶたをはがすと、赤くただれている
疥癬も顔と耳に出るため、見た目が似ることがあります。
けれど、こちらは激しくかゆがるとは限りません。そして、うつりません。
足先にも、出ます
この病気で特徴的なのが爪のまわりと肉球です。
爪床にチーズ様の滲出物やかさぶたの形成が認められることがあります。
爪の付け根から、白っぽくねばついたものが出る——そんな見え方になります。
肉球は厚くなり、ひび割れることがあります。
そうなると、歩くのを痛がるようになります。
⚠ こんなときは、早めに受診してください
- 顔と耳に、左右対称のかさぶたがある
- 鼻すじの上が、かさかさしている
- 爪の付け根から、ねばついたものが出る
- 肉球が厚くなり、ひび割れている
- 歩き方が、おかしくなってきた
- 治療しているのに、よくならない
足先の症状は、この病気でとくに手がかりになります。顔だけでなく、肉球と爪も見てください。
膿疱は、すぐつぶれます
天疱瘡という名前には「疱」——つまり水ぶくれという字が入っています。
けれど、実際にはそれを見ることはあまりありません。
落葉状天疱瘡では膿疱がみられることは少なく、膿疱が形成されてもすぐにつぶれてしまいます。
だから、かさぶたとして見つかります
かさぶたの形成、膿を含んだ湿疹や赤みが特徴的——これがこの病気の見え方です。
つぶれたあとの乾いた膜が、皮膚に張りつきます。
それをはがすと、下は赤くただれています。
無理にはがさないでください。出血しますし、痛みも増します。きれいにしたい気持ちは分かりますが、そこは待ってください。
痛みも、出ることがあります
かゆみより、痛みが目立つことがあります。
とくに肉球や爪のまわりに出た場合、歩くたびに痛みます。
足を気にしてなめる、歩きたがらない、抱き上げると鳴く——そうした変化が出ることがあります。
「皮膚の病気なのに歩き方がおかしい」という組み合わせは、この病気を疑う手がかりになります。
見つけ方は、生検です
この病気を確かめるには、皮膚の組織を採って調べることが必要になります。
獣医師は、患部の皮膚サンプルを取り、顕微鏡で検査することで病気の診断を確定します。
| 検査 | 分かること |
|---|---|
| 皮膚生検 | 組織を採り、顕微鏡で確定診断をつける |
| 細胞診 | 膿やかさぶたの下から、細胞を採る |
| 細菌・真菌の検査 | 感染症でないことを確かめる |
| 寄生虫の検査 | 疥癬などがいないかを確かめる |
| 血液検査 | 全身の状態と、治療前の基準を知る |
| ほかの病気の除外 | まれな病気なので、まず一般的なものを外す |
生検には、麻酔が必要です
組織を採るには麻酔をかけることになります。
「そこまでするのか」と感じられるかもしれません。
けれど、この病気の治療は免疫を抑える薬を長く使うものです。
確実な診断がないまま、そういう治療は始められません。
診断をつけることが、その後を決めます。あいまいなまま始めれば、効かない薬を長く使うことになりかねません。
採る場所も、大事です
新しくできた病変から採るほうが、診断がつきやすくなります。
古いかさぶたは、特徴が消えてしまっていることがあります。
また抗生物質やステロイドを使っていると、所見が変わってしまうことがあります。
「いま使っている薬」は、必ず伝えてください。
治療は、抑え続けることです

天疱瘡では異常な免疫反応を抑えるため、免疫抑制剤による治療を行い、長期的に投薬する必要があります。
ステロイドや免疫抑制剤を使用し、天疱瘡は一旦発症してしまうと完治が難しい病気ですので、長期間もしくは生涯の治療が必要となります。
目標は「治すこと」ではありません
この病気の治療では、目標を切り替えることになります。
免疫の誤りをなくすことはできません。できるのは、その反応を抑えておくことです。
つまり症状のない状態を、薬で保つ——それが治療のかたちになります。
薬をやめれば、また出てきます。そこは、最初に理解しておいてください。
量を、調整していきます
最初はしっかり抑える量から始めます。
症状が落ち着いたら、少しずつ減らしていけることがあります。
- 最初は、症状を抑えきる量から始める
- 落ち着いたら、少しずつ減らしていく
- 減らして悪化すれば、また戻す
- その猫にとっての最少量を探していく
- 定期的に血液検査を受け、副作用を確かめる
- 自己判断で、増減させない
その猫にとっての、いちばん少ない量を見つけていくことになります。
🩺 獣医療の現場では
この治療で確かめておきたいのは「どのくらいで減らせそうですか」と「副作用は何を見ますか」の二つです。
免疫を抑える薬は、感染症にかかりやすくなることがあります。そのぶん、ふだんの体調の変化に気を配ることになります。
よくなるまでの、目安
薬が効き始めると、数週間で新しいかさぶたが出なくなってきます。
すでにできているかさぶたが取れ、その下から毛が生えてくるまでにはもう少し時間がかかります。
肉球の厚みやひび割れは、いちばん最後まで残ることがあります。歩き方が戻るのを目安に見ていてください。
「よくなっている」と感じられるまでに一か月ほどかかることも珍しくありません。焦らず、記録をつけながら見ていってください。
長く付き合うために
この病気は、治療を続けながら暮らしていくものになります。
そのために、家でできることがあります。
| すること | なぜ大切か |
|---|---|
| 薬を決まった時間に続ける | 間があくと、症状が戻ってくる |
| 皮膚の様子を記録する | 写真があると、変化が分かる |
| 体重を月に一度量る | 薬の影響や、全身の状態が見える |
| 感染症に気をつける | 免疫を抑えているぶん、かかりやすい |
| 定期検査を受ける | 副作用を早く見つけるため |
| 環境を清潔に保つ | 皮膚の傷から、感染が起こらないように |
写真が、いちばん役に立ちます
皮膚の状態は、毎日見ていると変化が分かりません。
月に一度、同じ場所を同じ角度から撮っておくと比べられます。
顔、耳、肉球——この三か所を撮っておくとよいと思います。
薬を減らしていくときの判断材料にもなります。
感染症には、気を配ってください
免疫を抑える薬を使っているあいだ、体は感染に弱くなっています。
ささいな不調でも、早めに受診する——そのくらいの姿勢がちょうどよいものです。
完全室内飼育にすることも、この病気では意味を持ちます。外での感染の機会を、減らせるためです。
ワクチンをどうするかも、獣医師と相談しておいてください。免疫を抑えているあいだの接種には、考えることがあります。
よくある質問
Q. 天疱瘡とは、どんな病気ですか?
A. 免疫が自分の皮膚を攻撃してしまう、免疫介在性疾患です。皮膚の細胞どうしをつなぐ部分に対して自己抗体ができ、つながりがゆるんで皮膚が壊れていきます。
Q. ほかの猫にうつりますか?
A. うつりません。外から来た菌やウイルスによるものではなく、体の内側で起きていることだからです。隔離の必要もありません。
Q. 人にうつりますか?
A. うつりません。抱いたり撫でたりすることを控える理由もありません。
Q. ワクチンで防げますか?
A. 防げません。自己免疫疾患のため、現在のところ予防法はありません。ワクチンは外から来る病原体に対するもので、この病気には効きません。
Q. 飼い方が悪かったのでしょうか?
A. そうではありません。免疫のしくみそのものに関わる病気で、掃除や食事、環境の問題ではありません。
Q. どこに症状が出ますか?
A. 主に頭部、鼻梁、耳介などの顔に出ます。また爪床や肉球にできることもよくあり、爪のまわりにチーズ様の滲出物やかさぶたが見られます。
Q. 水ぶくれはできますか?
A. 見られることは少ないものです。膿疱が形成されてもすぐにつぶれてしまうため、かさぶたの形成や、膿を含んだ湿疹、赤みが特徴的になります。
Q. どうやって診断しますか?
A. 皮膚の組織を採って、顕微鏡で確かめます。生検には麻酔が必要ですが、免疫を抑える薬を長く使う治療になるため、確実な診断が欠かせません。
Q. 猫では、よくある病気ですか?
A. 非常にまれです。そのため、まずノミアレルギーや疥癬、真菌、膿皮症などを外してからたどり着くことが多く、診断までに時間がかかることがあります。
Q. 治りますか?
A. 一旦発症すると、完治が難しい病気です。長期間もしくは生涯の治療が必要となります。目標は「治すこと」ではなく「症状のない状態を保つこと」になります。
Q. 薬はずっと続けるのですか?
A. 続けることが多くなります。ただし症状が落ち着けば、少しずつ減らしていける場合があります。その猫にとっての最少量を探していくことになります。
Q. 治療中に、気をつけることはありますか?
A. 感染症に気を配ってください。免疫を抑えているぶん、体は感染に弱くなっています。ささいな不調でも早めに受診し、定期検査で副作用も確かめてください。
まとめ|うつらないこと、そして長く付き合うこと
この病気について、まず知っておいてほしいのはうつらないということです。
隔離も、ワクチンも必要ありません。飼い方のせいでもありません。
そして、猫では非常にまれな病気です。診断までに時間がかかることがありますが、確実に診断をつけることがその後を決めます。
治療は、長くなります。完治を目指すのではなく、症状のない状態を保つ——そういう考え方に切り替えることになります。
顔と耳、そして肉球。この三か所を月に一度撮っておけば、そのまま治療の記録になります。
生涯の治療と聞くと、重く感じられると思います。けれど薬で抑えられていれば、猫はふつうに暮らせます。
症状のない日を、どれだけ長く保てるか——この病気で目指すのは、そこです。
今日できる3つ
- 1鼻すじと耳のふちに、かさぶたがないか見てみる
- 2肉球を触って、厚くなったりひび割れたりしていないか確かめる
- 3皮膚の治療が続いているなら、顔と足先の写真を撮っておく
この病気は、うつるものではありません。だから、猫との距離を変える必要はありません。

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