ネコの病気    猫伝染性腹膜炎|うつるのは、この病気ではありません

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猫伝染性腹膜炎|うつるのは、この病気ではありません
猫伝染性腹膜炎
モフ@ペット好き

こんばんは。
今回「犬猫の悩みを即解決!」が自信を持ってお届けする記事は「猫伝染性腹膜炎|うつるのは、この病気ではありません」です。ではどうぞ!

猫伝染性腹膜炎——名前に「伝染性」とついているため、同居している猫にうつる病気だと受け止められがちです。

けれど、正確にはそうではありません。うつるのは猫コロナウイルスというありふれたウイルスで、多くの猫が持っていながら、何も起こさずに過ごしています。

この病気は、そのウイルスがごく一部の猫の体の中で変異したときに起こります。変異したあとの状態が、猫から猫へ伝わるわけではありません。

ですから「一頭が発症したから、家じゅうの猫が発症する」という考え方は当てはまりません。

結論

猫伝染性腹膜炎は猫コロナウイルスが体内で変異し、全身の炎症を引き起こす病気です。現れ方はウェットタイプ(滲出型)とドライタイプ(非滲出型)に分かれ、両方の特徴を併せ持つ混合型もあります。ウェットタイプではお腹(腹水)や胸(胸水)に液体がたまり、ドライタイプは液体の貯留が目立たず、目や神経、腎臓・肝臓などの臓器に肉芽腫と呼ばれる病変ができます。かつては治療の手立てがほとんどありませんでしたが、いまはGS-441524が第一選択の治療として推奨されており、代表的な治療薬として知られています。モルヌピラビルという低コストの選択肢も出てきていますが、症例数が少なく安全性が確立されていない点に注意が必要です。

この記事でわかること

  • うつるのは、この病気ではありません
  • ありふれたウイルスが、体の中で変わります
  • 二つのタイプがあります
  • 若い猫に、多く出ます
  • 診断は、簡単ではありません
  • 「治らない病気」ではなくなりました
  • 治療のあいだ、家ですること
  • 同居している猫のために

うつるのは、この病気ではありません

ありふれたウイルスが変わるまで
うつる段階と、発病する段階は別です。

まず、ここを整理させてください。この病気には「うつる段階」と「発病する段階」があり、その二つは別のものです。

分けて考えたい二つ
猫コロナウイルス 猫伝染性腹膜炎
何か ありふれたウイルス それが変異して起こる病気
持っている猫 多くの猫が持っている ごく一部の猫だけが発症する
症状 ないか、軽い下痢程度 全身の炎症が起こる
うつるか 糞便などを介して広がる この状態が伝わるわけではない
だから 同居猫は持っていることが多い 持っていても、多くは発症しない

多頭飼いのお宅で一頭が発症すると、ほかの猫も同じ運命になるのではと不安になります。

けれど、同居猫がもともと猫コロナウイルスを持っていたとしても、そのほとんどは何も起こさないまま過ごします。

それでも、環境は影響します

とはいえ、まったく無関係というわけでもありません。多頭飼いの環境や保護施設など、多くの猫が集まる場所では感染リスクが高まります。

これは、猫コロナウイルスそのものが広がりやすいからです。持っている猫が増えれば、変異が起こる機会も、そのぶん増えます。

さらにストレスや免疫力の低下も、リスクを高める要因とされています。過密、環境の変化、慢性の病気——そうしたものが重なるほど、体はウイルスを抑え込みにくくなります。

ありふれたウイルスが、体の中で変わります

猫コロナウイルスは、糞便などを介して猫から猫へ広がります。同じトイレを使っていれば、自然に伝わっていくものです。

多くの猫では、これといった症状は出ません。出ても、軽い下痢で済みます。

ところがごく一部の猫の体内で、このウイルスの性質が変わってしまうことがあります。変わったウイルスは、免疫の細胞に入り込み、全身へ運ばれていきます。

免疫が抑え込めるかどうかで分かれます

性質が変わっても、免疫がうまく抑え込めれば、そこで止まります。

抑え込めなかったときに、血管のまわりで激しい炎症が起こります。その炎症の結果として、水がしみ出したり、臓器にしこりができたりします。

体の中で起きているのは「感染」というより「炎症の暴走」——そう捉えると、症状の広がり方が理解しやすくなります。

二つのタイプがあります

二つのタイプ
同じ病気でも、見え方が違います。

症状の出方によって、ウェットタイプ(滲出型)とドライタイプ(非滲出型)の2つに分けられ、両方の特徴を併せ持つ混合型もあります。

ウェットタイプ——水がたまります

ウェットタイプではお腹(腹水)や胸(胸水)に液体がたまるのが特徴です。

お腹に水がたまると、痩せてきているのに、お腹だけが張って大きくなります。この「ちぐはぐさ」が、気づくきっかけになることがあります。

胸に水がたまった場合は、肺が広がれなくなります。浅く速い呼吸、口を開けての呼吸が出てくれば、その日のうちの受診が必要です。

ドライタイプ——見つけにくいほうです

ドライタイプは液体の貯留が目立たず、目や神経、腎臓・肝臓などの臓器に肉芽腫と呼ばれる病変ができます。

お腹が張らないぶん、外からは分かりません。熱が続く、元気がない、体重が落ちる——そうした漠然とした形で進んでいきます。

目に出れば、目が濁る、色が変わるという変化が現れます。神経に出れば、ふらつく、けいれんする、後ろ足がうまく動かないといった症状になります。

⚠ この様子があれば、早めに受診してください

  • 熱が下がらない日が続いている
  • 痩せてきたのに、お腹だけ張っている
  • 呼吸が浅く速い、口を開けて息をする
  • 目が濁ってきた、色が変わった
  • ふらつく、けいれんする
  • 元気と食欲が、だんだん落ちている

とくに抗生物質を使っても下がらない熱は、この病気を考える手がかりのひとつになります。

若い猫に、多く出ます

気づくきっかけ
はじまりは、はっきりしません。

この病気は、1歳前後の若い猫で見つかることが多いものです。

元気に育っていた子猫が、急に熱を出して食べなくなる——そういう形で始まることがあります。

理由のひとつは、若い猫ほど猫コロナウイルスに新しく出会い、体内でウイルスが活発に増える時期があることだと考えられています。

環境の変わり目に、出やすくなります

  • 保護施設や譲渡会から迎えたばかり
  • 多頭飼いの環境から来た
  • 引っ越しや同居猫の追加があった
  • 去勢・避妊手術のあとだった
  • ほかの病気の治療を受けていた
  • 環境が大きく変わったあとだった

こうした場面に共通するのは、猫にとって負担が重なった時期だということです。

迎えたばかりの子猫を、いきなり環境ごと変えない——落ち着ける場所を用意し、無理に慣れさせようとしない。そうした配慮が、結果としてこの病気の予防にもつながります。

診断は、簡単ではありません

この病気には、一発で決まる検査がありません。いくつかの結果を組み合わせて判断していくことになります。

組み合わせて判断します
検査 分かること
血液検査 炎症反応が起きているかどうかを確かめる
超音波検査 腹部の異常や、液体の貯留を確認する
腹腔穿刺 たまった液体を採り、その性状を調べる
たまった水の検査 色、粘り、たんぱくの量などが手がかりになる
目や神経の診察 ドライタイプでは、ここが手がかりになる
遺伝子検査 ウイルスの存在を調べることがある

腹腔穿刺は、腹部の液体を採取し、その液体を検査することで病気の原因を特定する方法です。少し不快感を伴いますが、診断には非常に重要な検査になります。

ドライタイプは、とくに時間がかかります

水がたまっていれば、それを調べられます。けれどドライタイプでは、採るべき液体そのものがありません。

そのためほかの病気を一つずつ外していく形で診断が進むことがあります。

時間がかかることを、あらかじめ知っておいてください。「はっきりしないまま何日も過ぎる」のは、見落としではなく、この病気の性質によるものです。

「治らない病気」ではなくなりました

治療の選択肢
ここが、大きく変わりました。

この病気について、いちばん大きく変わったのがここです。

かつては、診断された時点でほとんど手立てがありませんでした。けれどいまは違います。

GS-441524がFIPの第一選択治療として推奨されており、信頼性が高く症例数も多いため、代表的な治療薬として知られています。

どういう薬なのか

GS-441524は、この病気を引き起こすウイルスの複製を止める薬です。ウイルスが増えていく道すじそのものを断つ、という働きをします。

報告されている成績も、以前とは比べものになりません。注射剤の単剤療法で、92%の成功率が報告されているというデータもあります。

もうひとつの選択肢として、モルヌピラビルがあります。近年流通している低コストな治療薬で、治療費は半分以下に抑えられます。

ただし症例数が少なく、安全性が確立されていない点に注意すべきとされています。

🩺 獣医療の現場では

治療を始める前に、確かめておきたいことがあります。どの薬を使うのか、期間はどのくらいか、費用はどれくらいかかるのか。

この治療は数か月にわたり、費用も小さくありません。途中でやめると再燃することがあるため、始める前に見通しを立てておくことが大切になります。

早いほど、届きやすくなります

治療の効果は、始めた時期に左右されます。

全身の炎症が進み、臓器の傷みが大きくなってからでは、ウイルスを止められても体が戻りきらないことがあります。

ですから「原因の分からない熱が続く」段階で疑ってもらうことが、そのまま結果に効いてきます。

若い猫で熱が下がらないとき、この病気の可能性についても聞いてみてください。

治療のあいだ、家ですること

治療は長い期間にわたります。そのあいだ、家での支え方が結果を左右します。

家での支え方
すること なぜ大切か
薬を決まった時間に続ける 間があくと、ウイルスが盛り返すことがある
体重を定期的に量る 戻り始めていれば、効いている合図
食べた量を記録する 回復のいちばん分かりやすい指標になる
熱の様子を見る 下がってくるかどうかが、初期の手がかり
お腹の張りを見る 水が減っていれば、良い方向
静かに過ごさせる ストレスは、この病気で不利に働く

とくに体重と食欲は、検査より先に変化が見える指標です。

「食べる量が戻ってきた」という一言が、治療の方向を確かめる材料になります。

途中でやめないでください

元気になってくると、もう治ったのではと感じることがあります。

けれどこの治療は、決められた期間を通しきることが前提です。途中でやめると、再び症状がぶり返すことがあります。

やめるかどうかは、検査の結果を見てから決めてください。

同居している猫のために

最後に、多頭飼いのお宅へ。

一頭が発症したとき、ほかの猫を隔離すべきか迷うと思います。けれど、この病気そのものがうつるわけではありません。

同居猫がすでに猫コロナウイルスを持っていることは十分ありえますが、持っていることと発症することは別です。

できるのは、機会と負担を減らすことです

  • トイレの数を増やし、こまめに掃除する
  • 過密にならないよう、居場所を分散させる
  • 隠れられる場所、高い場所を用意する
  • 新しい猫を、急に同居させない
  • 環境の変化を、いちどきに重ねない
  • ほかの病気を早めに治しておく

猫コロナウイルスは糞便を介して広がります。ですからトイレの管理は、そのまま量を減らすことにつながります。

そしてストレスを減らすこと——これは抽象的に聞こえますが、この病気では意味を持ちます。免疫が働けているかどうかが、発症するかどうかを分けるためです。

ほかのウイルス感染症も、確かめておいてください

猫白血病ウイルス感染症猫免疫不全ウイルス感染症があると、免疫が落ちています。

免疫が働けないことは、この病気にとって不利な条件です。外で暮らしていた猫を迎えたなら、そちらもあわせて調べておいてください。

よくある質問

Q. 猫伝染性腹膜炎とは、どんな病気ですか?

A. 猫コロナウイルスが体内で変異し、全身の炎症を引き起こす病気です。血管のまわりで激しい炎症が起こり、水がたまったり、臓器に病変ができたりします。

Q. 同居している猫に、うつりますか?

A. この病気そのものがうつるわけではありません。うつるのは猫コロナウイルスというありふれたウイルスで、多くの猫は持っていても何も起こさずに過ごします。

Q. では、多頭飼いは関係ないのですか?

A. まったく無関係ではありません。多頭飼いの環境や保護施設など、多くの猫が集まる場所では猫コロナウイルスが広がりやすく、変異が起こる機会も増えます。ストレスや免疫力の低下も、リスクを高める要因とされています。

Q. どんな症状が出ますか?

A. タイプによって違います。ウェットタイプではお腹や胸に液体がたまり、ドライタイプは液体の貯留が目立たず、目や神経、腎臓・肝臓などに肉芽腫ができます。

Q. お腹が張ってきました

A. ウェットタイプでは、腹水がたまってお腹が大きくなります。痩せてきているのにお腹だけ張っている、というちぐはぐさが手がかりです。早めに受診してください。

Q. どうやって診断しますか?

A. 一発で決まる検査はなく、いくつかの結果を組み合わせます。血液検査で炎症を確かめ、超音波検査で液体の貯留を見て、腹腔穿刺でたまった液体を採取して調べます。

Q. どんな猫に多いですか?

A. 1歳前後の若い猫で見つかることが多いものです。保護施設から迎えたばかり、環境が大きく変わったあとなど、負担が重なった時期に出やすい傾向があります。

Q. 治りますか?

A. かつては治療の手立てがほとんどありませんでしたが、いまは違います。GS-441524が第一選択の治療として推奨されており、注射剤の単剤療法で92%の成功率が報告されているというデータもあります。

Q. 治療費はどのくらいかかりますか?

A. 大きな負担になります。モルヌピラビルという低コストな選択肢もあり、治療費は半分以下に抑えられますが、症例数が少なく安全性が確立されていない点に注意が必要です。始める前に、期間と費用の見通しを確かめておいてください。

Q. 治療の途中でやめてもよいですか?

A. 自己判断でやめないでください。元気になっても、途中でやめると再びぶり返すことがあります。やめる判断は、検査の結果を見てから行われます。

Q. 人にうつりますか?

A. 人への感染リスクは非常に低いとされています。猫のウイルスであり、通常は人に感染することはありません。

Q. 予防できますか?

A. 確実に防ぐ方法はありませんが、条件は整えられます。トイレを清潔に保ち、過密を避け、環境の変化をいちどきに重ねないこと。免疫が働ける状態を保つことが、いちばん現実的な備えになります。

まとめ|名前の印象より、事実を見てください

「伝染性」という名前は、この病気を実際以上にこわく見せています。

うつるのは、ありふれたコロナウイルスのほう。多くの猫がそれを持ちながら、何も起こさずに一生を終えます。

そして、この病気をめぐる状況は大きく変わりました。かつては手立てのなかった病気に、いまは治療薬があります。

だからこそ、早く疑ってもらうことの意味が以前より重くなりました。若い猫で、原因の分からない熱が続いているなら——そのときに、この病気の名前を出してみてください。

今日できる3つ

  • 1若い猫で熱が続いているなら、この病気の可能性も相談してみる
  • 2痩せてきたのにお腹だけ張っていないか、触って確かめる
  • 3多頭飼いなら、トイレの数と掃除の頻度を見直す

この病気は、名前ほど「うつる」ものではありません。そして、もう「治らない」病気でもありません。

モフ@ペット好き

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