

こんばんは。
今回「犬猫の悩みを即解決!」が自信を持ってお届けする記事は「犬の感染症|どこからうつるかで、防ぎ方が変わる」です。ではどうぞ!
犬の感染症について調べようとすると、聞き慣れないカタカナの病名がずらりと並びます。ジステンパー、パルボ、パラインフルエンザ、レプトスピラ——どれも読みにくく、覚えにくく、そして「自分の犬に関係あるのかどうか」がいちばん分かりにくいところです。
けれど、飼い主にとって本当に必要なのは病名を覚えることではありません。その病気がどこからうつるのか——つまり感染経路さえ押さえておけば、「うちの生活で何を塞げばいいのか」がはっきりします。
空気からうつるものには、人が近づけない場所を選ぶ。便からうつるものには、便の処理を徹底する。虫が運ぶものには、通年の予防薬を使う。経路が違えば、打つ手も違うのです。
この記事では、犬の感染症を6つの経路に分けて整理します。個別の病気の詳しい話はそれぞれの記事に譲り、ここでは全体の地図を作ることを目的にします。
結論
犬の感染症は「どこからうつるか」で整理すると、家庭で打てる手がはっきりします。経路は大きく空気・接触・排泄物・水と土・虫・母子の6つ。ワクチンで防げるもの(ジステンパー、パルボなど)と、環境と予防薬で防ぐもの(寄生虫、レプトスピラ)に分かれます。そして血便・繰り返す嘔吐・ぐったりしている——この3つがそろったときは、その日のうちに受診してください。感染症では、様子見の時間がそのまま重症化の時間になります。
この記事でわかること
- ✓病名ではなく、経路で整理する
- ✓6つの感染経路と、代表的な病気
- ✓ワクチンで防げるもの、防げないもの
- ✓家庭でできる、経路の塞ぎ方
- ✓受診をためらってはいけないサイン
病名ではなく、経路で整理する
動物病院で「混合ワクチンを打ちましょう」と言われたとき、その中身をすべて説明できる飼い主は多くありません。5種、8種、10種——数字だけが増えていき、何が入っているのかは分からないまま接種する。それ自体は悪いことではありませんが、ワクチンで防げない病気があることを見落とす原因にはなります。
たとえば、寄生虫はワクチンでは防げません。ノミが運ぶ条虫も、母犬から子犬に移る回虫も、予防薬と衛生管理でしか止められない。「ワクチンを打っているから安心」という思い込みがいちばん危ういのは、ここです。
だからこそ、経路で整理する意味があります。空気からうつるのか、便からうつるのか、虫が運ぶのか——それが分かれば、「ワクチンでカバーされている経路」と「自分で塞がなければならない経路」が見分けられるようになります。

そもそも「感染症」とは何を指すのか
感染症とは、体の外から入ってきた病原体が増えることで起こる病気の総称です。病原体にはウイルス、細菌、真菌(カビ)、寄生虫などがあり、それぞれ性質も、効く薬も違います。
| 病原体 | 代表的な病気 | 治療の考え方 |
|---|---|---|
| ウイルス | ジステンパー、パルボ | 直接効く薬が少なく、支える治療が中心 |
| 細菌 | レプトスピラ、緑膿菌 | 抗菌薬が効くことが多い |
| 真菌 | 皮膚糸状菌症など | 抗真菌薬。治療が長引きやすい |
| 寄生虫 | 回虫、鉤虫、条虫 | 駆虫薬。定期的な投与で防ぐ |
| 共通 | —— | 早く見つけるほど、治療は軽く済む |
ここで押さえておきたいのが、ウイルスには直接効く薬が少ないという点です。細菌なら抗菌薬で叩けますが、ウイルスの場合は体が自分でウイルスを排除するまで、点滴や栄養で体を支える——という治療になることが少なくありません。
つまり、ウイルス感染症では「かかってから治す」のが難しいのです。コアワクチンの対象がすべてウイルスであることには、こうした背景があります。防げるものは、防いでおく。それがいちばん確実な方法だからです。
6つの感染経路と、代表的な病気
ここからは、経路ごとに見ていきます。自分の犬の生活を思い浮かべながら読んでみてください。
①空気・飛沫——近くにいるだけでうつる
感染した犬のくしゃみや咳、鼻水の飛沫を吸い込むことでうつる経路です。もっとも防ぎにくいのがこの経路で、同じ空間にいるだけで感染が成立することがあります。
代表的なのがジステンパーと、ケンネルコフ。ジステンパーは非常に感染力が強く、飛沫のほか、尿や目やにに触れることでも感染します。ケンネルコフは複数の病原体が関わる呼吸器の症候群で、犬が集まる場所で広がりやすいものです。
この経路への対策は、ワクチンと、場所選びの2つしかありません。とくにワクチンが完了していない子犬をドッグランや多頭の場に連れて行くのは避けてください。
②排泄物——地面から、靴から入ってくる
感染した犬の便や尿に含まれる病原体が、口から入ることで感染します。犬が直接便をなめなくても、地面についたものを踏み、その足をなめるだけで成立します。
代表的なのがパルボウイルス感染症です。このウイルスは環境中で非常に長く生き残り、一般的な消毒薬では死にません。そして、人の靴の裏について家に持ち込まれることがあります。
寄生虫の回虫や鉤虫も、この経路が中心です。散歩中の拾い食いや、土をなめる行動がそのまま感染の機会になります。
③水・土——散歩コースが経路になる
水たまりや、川、湿った土に含まれる病原体が口や傷から入る経路です。代表的なのがレプトスピラ症。ネズミなどの野生動物の尿で汚染された水や土が感染源になります。
この病気は人にも感染します。そして地域によって発生の多さがかなり違うため、住んでいる場所と、散歩コースによってワクチンの必要性が変わってきます。
川や田んぼの近くを歩く、キャンプや山に連れて行く——そうした生活をしているなら、かかりつけの獣医師に地域の状況を聞いてみてください。
④虫が運ぶ——ノミ・蚊・マダニ
虫が病原体を運ぶ経路です。犬が条虫に感染する主な原因は、体をかんだときにノミを飲み込むこと。つまり、ノミ予防がそのまま条虫の予防になります。
蚊が媒介するフィラリア、マダニが運ぶ複数の病気も同じ枠組みです。この経路の特徴は、予防薬という明確な対策があること。「防ぎ方がはっきりしている」という点では、むしろ扱いやすい経路だと言えます。
かつては夏だけの対策とされていましたが、近年は通年の予防をすすめられることが増えています。室内飼いでも、人が持ち込むことがあるためです。
⑤母から子へ——生まれた時点で持っている
母犬の体内や母乳を通じて、子犬に病原体が移る経路です。回虫がその代表で、生まれたときからすでに感染していることがあります。
だからこそ、子犬を迎えたら早い段階で便の検査と駆虫を行います。駆虫の考え方については寄生虫の記事でまとめています。「うちの子は外に出していないから大丈夫」という理屈が通じないのが、この経路です。
⑥もともと体にいる菌——日和見感染
最後は、外から入ってくるのではなく、もともと皮膚や腸にいる菌が体の抵抗力が落ちたときに増えてしまう——というものです。
緑膿菌がその代表で、健康な犬では問題を起こしませんが、外耳炎や皮膚炎が長引いているところに入り込むと、薬が効きにくいやっかいな状態になります。
この経路への対策は、体の抵抗力を落とさないことと、皮膚や耳のトラブルを長引かせないことです。「そのうち治る」で放置した炎症が、抗菌薬の効きにくい状態を招くことがあります。
ワクチンで防げるもの、防げないもの

犬のワクチンは、国際的なガイドラインでコアワクチンとノンコアワクチンに分けて考えられています。
| 区分 | 考え方 | 対象となる病気 |
|---|---|---|
| コア | 生活環境に関わらず、すべての犬に | ジステンパー、パルボ、犬伝染性肝炎、アデノ2型 |
| ノンコア | 生活環境を考えて、必要な犬に | パラインフルエンザ、レプトスピラ |
| 狂犬病 | 日本では法律で義務づけられている | 年1回の接種 |
| 防げないもの | ワクチンでは対応できない | 寄生虫、フィラリア、ノミ・マダニ |
コアワクチンは、重症化しやすく、命に関わる病気が中心です。住んでいる場所や生活のしかたにかかわらず、すべての犬に免疫をつけておくべきものとされています。
一方のノンコアワクチンは、その犬の生活によって必要性が変わるもの。レプトスピラは地域差が大きく、パラインフルエンザは犬が集まる場に行くかどうかで判断が変わります。
⚠ 「ワクチンを打っているから安心」ではありません
寄生虫、フィラリア、ノミ・マダニ——これらはワクチンでは防げません。
予防薬と、日常の衛生管理でしか止められない経路です。
混合ワクチンを打っていても、虫の経路と、便の経路は別に塞ぐ必要がある——
この点を、はっきり分けて理解しておいてください。
なお、接種の回数やスケジュール、抗体検査という選択肢については混合ワクチンの記事で詳しく解説しています。
家庭でできる、経路の塞ぎ方

ここまでの整理をふまえて、実際に家庭でできることをまとめます。難しいことは何もありません。経路を1本ずつ塞いでいくだけです。
- ワクチンの接種記録を確認し、次はいつかを把握しておく
- 散歩でも家でも、便はすぐに片づける
- 水たまりや、たまった水を飲ませない
- ノミ・マダニ・フィラリアの予防薬を通年で使う
- 子犬はワクチンが完了するまで、多頭の場を避ける
- 年1回の健康診断に、便の検査を含めてもらう
とくに便の処理は、地味ですが効果の大きい対策です。パルボウイルスも、回虫も、鉤虫も、便を介して広がります。自分の犬を守るだけでなく、他の犬を守ることにもなります。
そして拾い食いをさせないこと。「放す」を確実に教えておくと、それだけで防げる感染がいくつもあります。
多頭飼いの家庭で、気をつけたいこと
犬が2頭以上いる家庭では、1頭が感染すれば、ほぼ全頭に広がると考えておいたほうが安全です。
- 新しい犬を迎えたら、まず健康診断と便の検査を
- 数日間は生活空間を分けて様子を見る
- ワクチンの状況を、頭数ぶん把握しておく
- 食器と水入れは、可能なら分ける
- 1頭に症状が出たら、他の頭も観察する
- トイレは、こまめに清潔にする
とくに新しく迎えたばかりの時期は注意が必要です。環境が変わるストレスで抵抗力が落ち、潜んでいた感染が表に出てくることがあります。
「迎えて数日で下痢をした」というのはよくあることですが、血が混じる、繰り返し吐くなら様子見はやめてください。
受診をためらってはいけないサイン

感染症で怖いのは、進行が速いことです。とくに子犬では、朝は元気だったのに夕方には動けなくなっている——ということが実際に起こります。
| サイン | 急ぎ方 | 考えられること |
|---|---|---|
| 血が混じった下痢 | 即日 | パルボウイルスなど |
| 繰り返し吐く | 即日 | 脱水が急速に進む |
| ぐったりして動かない | 即日 | 全身状態の悪化 |
| けいれん | 即日 | 神経症状の可能性 |
| 咳が続く | 翌日 | 呼吸器の感染症 |
| 目やに・鼻水が増えた | 翌日 | ウイルス感染の初期 |
子犬・高齢犬・持病のある犬では、同じ症状でも重症化しやすくなります。「様子を見ましょう」の基準を一段階早めると考えてください。
- 血が混じった下痢——即日受診
- 水を飲んでも吐く——即日受診
- 呼びかけへの反応が鈍い——即日受診
- 子犬・高齢犬は、判断を一段階早める
- 食欲がまる1日ないなら、翌日には受診する
- 迷ったら、まず電話で相談してよい
「電話で相談していいのか」とためらう方は少なくありませんが、症状を伝えて、急ぎかどうかを判断してもらうのは動物病院の日常業務です。遠慮する必要はありません。
受診するときは、いつから、どんな症状が、どれくらいを伝えられるようにしておくと診断が早くなります。下痢や嘔吐は写真を撮っておくと確実です。
🩺 受診時に伝えたい6つのこと
①いつから症状が出たか
②ワクチンの接種状況(母子手帳があれば持参)
③直近で行った場所(ドッグラン、旅行、トリミング)
④他の犬との接触があったか
⑤食欲と飲水の変化
⑥便と尿の状態(写真があるとなおよい)
よくある質問
Q. 室内飼いでも感染症にかかりますか?
A. かかります。パルボウイルスは人の靴の裏について家に持ち込まれることがありますし、回虫は母犬から子犬に移ります。「外に出していないから大丈夫」という理屈が通じない経路が複数あります。
Q. 混合ワクチンを打っていれば安心ですか?
A. すべての感染症を防げるわけではありません。寄生虫、フィラリア、ノミ・マダニはワクチンでは防げません。予防薬と日常の衛生管理で、別に塞ぐ必要があります。
Q. 何種のワクチンを選べばいいですか?
A. 住んでいる地域と、犬の生活のしかたで変わります。レプトスピラは地域差が大きい病気です。散歩コースや旅行の有無を伝えたうえで、かかりつけの獣医師と決めてください。
Q. 下痢をしたら、すぐ病院へ行くべきですか?
A. 血が混じる、繰り返し吐く、ぐったりしている——このどれかがあれば、その日のうちに受診してください。とくに子犬は進行が速く、半日で状態が変わることがあります。
Q. 人にもうつる病気はありますか?
A. あります。レプトスピラ症は代表的な人獣共通感染症です。回虫も、まれに人に感染することがあります。便の処理のあとに手を洗う——それが基本の対策になります。
Q. 新しい犬を迎えるとき、何をすればいいですか?
A. まず健康診断と便の検査を受けてください。先住犬がいる場合は、数日間は生活空間を分けて様子を見ます。環境が変わるストレスで、潜んでいた感染が表に出ることがあります。
Q. 予防薬は冬もいりますか?
A. 近年は通年の予防をすすめられることが増えています。室内の環境では冬でもノミが活動できますし、人が外から持ち込むこともあります。かかりつけの方針を確認してください。
まとめ|経路を1本ずつ、塞いでいく
犬の感染症は、病名で覚えようとするときりがありません。けれど経路で整理すれば、打つべき手は6つに収まります。
空気からうつるものには、ワクチンと場所選び。
便からうつるものには、便の処理と、拾い食いをさせないこと。
水や土からうつるものには、たまった水を飲ませないことと、地域に応じたワクチン。
虫が運ぶものには、通年の予防薬。
母子でうつるものには、子犬期の便検査と駆虫。
もともと体にいる菌には、皮膚や耳のトラブルを長引かせないこと。
そして、血便・繰り返す嘔吐・ぐったり——この3つは、その日のうちに受診してください。感染症で失われる時間は、そのまま重症化の時間になります。
今日できる3つ
- 1ワクチンの接種記録を出して、次の接種がいつかを確認する
- 2ノミ・マダニ・フィラリアの予防薬が今も続いているか確かめる
- 3次の健康診断に、便の検査を含めてもらうよう伝える
感染症の予防は、経路を1本ずつ塞いでいく作業です。どれも、今日から始められることばかりです。

本日の「犬猫の悩みを即解決!」の記事「犬の感染症|どこからうつるかで、防ぎ方が変わる」でした。
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