

こんばんは。
今回「犬猫の悩みを即解決!」が自信を持ってお届けする記事は「猫の尿崩症|水を取り上げては、いけません」です。ではどうぞ!
尿崩症という名前から、「おしっこの我慢ができなくなる病気」を思い浮かべる方がいます。
けれど、そうではありません。崩れているのは排尿の制御ではなく、体に水を留めておく仕組みのほうです。
そのため、この病気の猫は水のように薄い尿を、大量に出し続けます。そして失った分を追いかけるように、水を飲み続けます。
ここでいちばん大切なことを、先にお伝えします。「飲みすぎだから」と水を取り上げてはいけません。この病気では、それが命に関わります。
結論
尿崩症は抗利尿ホルモン(バソプレシン)の働きが失われ、非常に薄い尿が過剰につくられる病気です。型は二つあり、脳からの指令そのものが足りない「中枢性尿崩症」と、指令は出ているのに腎臓が応じない「腎性尿崩症」に分かれます。ただし犬猫の視床下部や下垂体に先天的な異常があって発症する中枢性尿崩症は、報告はあるものの非常にまれです。ですから水をよく飲む症状があるときは、まず慢性腎臓病・糖尿病・甲状腺機能亢進症といった頻度の高い病気を外していくことになります。治療は中枢性なら足りないホルモンを補い(デスモプレシン)、腎性なら背景にある原因に対応します。そして共通して水はいつでも飲めるようにしておくことが絶対条件です。
この記事でわかること
- ✓「おもらし」の病気ではありません
- ✓体で起きているのは、水を留められないこと
- ✓二つの型があります
- ✓猫では、とてもまれな病気です
- ✓だから、ほかの病気を先に外します
- ✓水を取り上げないでください
- ✓診断は、管理された環境で行います
- ✓治療と、これからの暮らし方
「おもらし」の病気ではありません

まず、名前の整理からさせてください。尿崩症と尿失禁は、まったく別のことを指しています。
| 尿失禁 | 尿崩症 | |
|---|---|---|
| 何が起きているか | ためておけず、漏れる | 体に水を留めておけない |
| 尿の量 | 増えているとは限らない | はっきり増えている |
| 尿の濃さ | ふつう | 水のように薄い |
| どこで出すか | 寝床などで漏れる | トイレで出していることが多い |
| 飲む量 | 変わらない | 非常に増える |
| 問題の場所 | 膀胱や尿道、神経 | ホルモン、または腎臓の反応 |
この病気の猫は、トイレの失敗をするとは限りません。きちんとトイレに行き、そこで大量に出しています。
尿が出せない状態とも、方向が逆です。出せないのではなく、出続けてしまうのがこの病気です。
体で起きているのは、水を留められないこと
体には、水分をむだに失わないための仕組みがあります。その中心にあるのが抗利尿ホルモン(バソプレシン)です。
このホルモンは脳から出て、腎臓に届きます。そして腎臓に「水を体に戻しなさい」と指令を出します。その働きがあるおかげで、尿は必要な分だけ濃く作られます。
ところが、バソプレシン(抗利尿ホルモン)の欠乏のために非常に薄い尿が過剰に作られる——それが尿崩症です。
だから、飲む量も尋常ではありません
出ていく水が多ければ、体は渇きます。猫は失った分を取り戻そうとして、水を飲み続けます。
- 水入れが、一日で空になる
- 置き場所を増やしても、どれも減っている
- 風呂場や流しの水を飲みに行く
- トイレの固まりが、極端に大きい
- 掃除の回数が、明らかに増えた
- 尿の色が、ほとんど透明に近い
とくに尿の色は手がかりになります。ふつうの猫の尿は、しっかり色がついています。水のように薄い尿が続いているなら、濃くする仕組みが働いていない可能性があります。
二つの型があります

同じ症状でも、問題が起きている場所は二つに分かれます。
中枢性——指令そのものが出ていない
脳の視床下部や下垂体に問題があり、抗利尿ホルモンが十分に出ない状態です。指令を出す側が働けていないということになります。
腎臓そのものは正常なので、足りないホルモンを外から補えば、尿は濃くなります。そこが、この型のわかりやすいところです。
腎性——指令は届いても、応じない
ホルモンは出ているのに、腎臓がそれに反応できない状態です。指令は届いているのに、受け取る側が動けないと考えると分かりやすいでしょう。
背景には、腎臓そのものの病気やホルモンの異常、使っている薬の影響などがあります。
この場合、ホルモンを補っても効きません。背景にある原因のほうを治療していくことになります。
腎臓の病気が進んでいるときにも、尿を濃くする力は落ちていきます。薄い尿が出続けるという点では、見え方がよく似ています。そのため、まず腎臓の状態を確かめることが出発点になります。
「どちらの型ですか」と聞いてください
この病気では、型が分かると先の話が組み立てられます。
中枢性なら、補う治療が中心になります。腎性なら、背景の病気を探して治すことが中心になります。同じ病名でも、通う頻度も薬も変わってきます。
猫では、とてもまれな病気です
ここは、正直にお伝えしておきたいところです。
犬猫の視床下部や下垂体に先天的な異常があって発症する「中枢性尿崩症」は、報告はありますが非常にまれです。
つまり、水をよく飲む猫のほとんどは、尿崩症ではありません。もっと頻度の高い病気が、先に控えています。
それでも、知っておく意味があります
まれな病気を知っておく意味は、「ほかを全部外したあとに、まだ残る答えがある」と分かっていることです。
検査をしても腎臓の数値は正常、血糖も正常、甲状腺も正常——それでも水を飲み続ける。そうしたとき、この病気が候補に挙がります。
「異常なし」で終わらせないための知識だと思っていただければと思います。
だから、ほかの病気を先に外します

水をよく飲む、尿が多い——この症状で受診したとき、検査は頻度の高い病気から順に進んでいきます。
| まず考えるもの | 見分けの手がかり |
|---|---|
| 慢性腎臓病 | 高齢に多い。食欲が落ち、痩せ、毛づやも悪くなる |
| 糖尿病 | 食欲はあるのに痩せる。尿に糖が出る |
| 甲状腺機能亢進症 | よく食べ、落ち着きがなく、夜に鳴く |
| 子宮の感染 | 避妊していない雌。陰部からの分泌物、発熱 |
| 肝臓の病気 | 黄疸、食欲不振をともなうことがある |
| 尿崩症 | 上を外してもなお、薄い尿が大量に出続ける |
この順番には理由があります。慢性腎臓病や糖尿病、甲状腺機能亢進症は、いずれも治療の手立てがあり、しかも頻度が高いためです。
まれな病気を先に疑うより、多いものから確実に外していくほうが早く答えに着きます。
水を取り上げないでください

この記事でいちばん伝えたいのが、ここです。
水を飲む量があまりに多いと、「飲ませすぎでは」と考えてしまうことがあります。水入れを片づけたり、量を決めて与えたり——良かれと思ってのことです。
けれど、この病気ではそれが最も危険な行動になります。
飲めなくても、尿は減りません
尿崩症では、水を濃くする仕組みそのものが働いていません。ですから飲む量を減らしても、出ていく量は減らないのです。
入ってくる水だけが減り、出ていく水はそのまま。その差は、あっという間に体を乾かします。
- 水入れは複数の場所に置き、いつでも飲めるようにする
- 留守番のあいだも、切らさないようにする
- 「飲みすぎ」を理由に、量を制限しない
- 飲んだ量は、減らすのではなく記録する
- 受診のときに、その記録を見せる
飲む量は、減らすものではなく測るものです。その数字が、そのまま診断の材料になります。
⚠ こんな様子なら、その日のうちに
- 水を飲めない状態が続いている
- ぐったりして、動かない
- 目がくぼんで見える
- 皮膚をつまむと、戻りが遅い
- 吐いて、水も飲めていない
- ふらつく、反応が鈍い
尿崩症の猫にとって、飲めない時間はそのまま脱水の時間です。様子を見る余裕は、ほかの病気より少ないと考えてください。
どこからが「多い」のか
「よく飲む」という感覚は、人によって幅があります。だからこそ、量にしておくと話が早くなります。
一般には体重1キロあたり、一日100ミリリットルを超えると多飲と考えられています。体重4キロの猫なら、一日400ミリリットルが目安です。
測り方は難しくありません。朝に決まった量を入れておき、翌朝に残りを量るだけです。蒸発や、ほかの猫が飲んだ分もあるので、厳密でなくてかまいません。
大事なのは正確さより、「先週と比べてどうか」が分かることです。同じ容器で続けて測れば、その変化はきちんと見えてきます。
診断は、管理された環境で行います
尿崩症を確かめる検査に、水を飲めない時間をつくって尿の濃さを見る方法があります。
これは絶対に、家で真似をしないでください。病院で、状態を見ながら行うものです。
尿崩症の猫は、短い時間でも危険な脱水に傾きます。だからこそそばで確かめられる環境が必要になります。
| 検査 | 分かること |
|---|---|
| 尿検査 | 尿の濃さ。薄いままかどうかを確かめる |
| 血液検査 | 腎臓、血糖、甲状腺などをまとめて外していく |
| 飲水量の記録 | 実際にどれだけ飲んでいるかを数字にする |
| 水制限の検査 | 尿を濃くできるかどうか。管理下でのみ行う |
| ホルモンを使った検査 | 補えば濃くなるか。中枢性か腎性かを分ける |
| 画像検査 | 脳や腎臓に、背景となる異常がないか |
🩺 獣医療の現場では
この病気の診断で、いちばん役に立つのは家でとった飲水量の記録です。
同じ容器で、同じ時間に、どれだけ減ったかを書いておく。それだけで「本当に多いのか」がはっきりします。数日ぶんあれば、診察の進み方が変わります。
治療と、これからの暮らし方
治療は、型によって変わります。
中枢性であれば、足りないホルモンを補うのが基本です。デスモプレシンという薬が使われ、効けば尿の量は落ち着いてきます。
腎性であれば、ホルモンを補っても効きません。腎臓が応じられない理由——背景にある病気や薬の影響を探し、そちらに手を打つことになります。
暮らしの中で、整えておきたいこと
- 水は複数の場所に、常に新しいものを置く
- トイレを増やし、こまめに掃除する
- 砂の減りと固まりの大きさを、目安として見る
- 体重を月に一度量っておく
- 長時間の留守番では、水切れを必ず防ぐ
- 移動や入院のときも、水を切らさないよう伝える
尿の量が多いということは、トイレの負担も大きいということです。汚れたままだと我慢してしまい、別の問題につながります。
猫の数より一つ多いトイレ、というのが一般的な目安ですが、この病気ではさらに余裕をもたせておくと安心です。
記録が、そのまま治療の材料になります
尿崩症では、「どれだけ飲んで、どれだけ出しているか」がそのまま病状の指標になります。
| 記録すること | どう役立つか |
|---|---|
| 一日に飲んだ水の量 | 治療が効いていれば、減っていく |
| トイレの固まりの数と大きさ | 尿の量を、間接的に映す |
| 尿の色 | 濃くなってきていれば、良い方向 |
| 体重 | 脱水や、背景の病気の進み方が分かる |
| 食欲と元気 | 全体の調子を確かめる |
| 薬を使った日と量 | 効き方との対応を見られる |
とくに飲んだ水の量は、この病気にとって血液検査に近い意味をもちます。
毎日でなくてかまいません。受診の前の数日だけでも記録があれば、その数字が判断を早めます。
よくある質問
Q. 尿崩症とは、どんな病気ですか?
A. 抗利尿ホルモン(バソプレシン)の働きが失われ、非常に薄い尿が過剰につくられる病気です。体に水を留めておけなくなるため、飲む量も尿の量も大きく増えます。
Q. おしっこを我慢できなくなる病気ですか?
A. 違います。尿失禁とは別の病気です。尿崩症の猫はトイレでちゃんと出していることが多く、問題は「量が異常に多く、水のように薄い」ことにあります。
Q. どんな症状が出ますか?
A. 水を大量に飲み、薄い尿を大量に出します。水入れが一日で空になる、トイレの固まりが極端に大きい、尿の色がほとんど透明に近い——といった形で現れます。
Q. 二つの型があると聞きました
A. 中枢性尿崩症と腎性尿崩症です。中枢性は脳から抗利尿ホルモンが出ない状態、腎性はホルモンは出ているのに腎臓が応じない状態です。治療の方向が変わるため、区別が重要になります。
Q. 猫では、よくある病気ですか?
A. 非常にまれです。犬猫の視床下部や下垂体に先天的な異常があって発症する中枢性尿崩症は、報告はありますがごく少ないものです。水をよく飲む猫のほとんどは、別の病気です。
Q. では、何を先に疑うのですか?
A. 慢性腎臓病、糖尿病、甲状腺機能亢進症などです。いずれも頻度が高く、治療の手立てもあります。これらを外してもなお薄い尿が続くとき、尿崩症が候補になります。
Q. 水を減らしたほうがよいですか?
A. 絶対に減らさないでください。この病気では飲む量を減らしても尿は減らないため、入ってくる水だけが減り、急速に脱水します。水はいつでも飲める状態にしておいてください。
Q. どうやって診断しますか?
A. 尿検査と血液検査で、ほかの病気を外していきます。そのうえで、水を飲めない時間をつくって尿を濃くできるかを見る検査や、ホルモンを補って反応を見る検査を行うことがあります。いずれも病院で、状態を管理しながら行うものです。
Q. その検査を、家でやってもよいですか?
A. 家では絶対に行わないでください。尿崩症の猫は短い時間でも危険な脱水に傾きます。そばで状態を確かめられる環境が必要です。
Q. 治療はどうしますか?
A. 中枢性なら、足りないホルモンを補います。デスモプレシンという薬が使われます。腎性の場合はホルモンを補っても効かないため、背景にある病気や薬の影響を探して対応します。
Q. 治りますか?
A. 型と原因によります。背景にある病気を治せる場合は改善が期待できますが、ホルモンを補い続ける形で管理していくこともあります。いずれにしても、水を切らさない環境が前提になります。
Q. 家でできることはありますか?
A. 飲んだ水の量を記録してください。同じ容器で、どれだけ減ったかを数日ぶん書いておくだけで、診察の進み方が変わります。トイレを増やし、こまめに掃除しておくことも役立ちます。
まとめ|減らすのではなく、測ってください
尿崩症は、猫ではまれな病気です。水をよく飲む猫の多くは、腎臓や糖尿病や甲状腺のほうに答えがあります。
それでも、この病気を知っておく意味があります。ひとつは、水を取り上げてはいけないと知っておくため。もうひとつは、検査で異常が見つからなかったときにまだ探す先が残っていると分かるためです。
水をよく飲むという症状は、たいていの場合、体からのはっきりした知らせです。減らして隠すのではなく、量を測って持っていってください。
その数字が、答えにいちばん早く近づく道になります。
今日できる3つ
- 1水入れを同じ容器にして、一日でどれだけ減るか測ってみる
- 2トイレの固まりの数と大きさを、数日ぶん書き留める
- 3水をよく飲むと感じたら、まず血液検査と尿検査を受ける
この病気で、いちばんやってはいけないのが水の制限です。飲む量は、減らすのではなく測ってください。

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